ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第六章 エルフ王国編

第226話 衝動

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 結局、エルフ王国についたのは5日目の朝だった。
 ほぼ不眠不休で歩いたのに。
 ルーナはとっくに帰ってきているだろう。
 何度も道を間違えてしまった。
 GPSマップがないのは辛い。

 エルフ王国はちょっとした見ものだった。
 空高く伸びる巨大な一本の大木。
 今まで見たことがないくらい高くて、太い樹。
 東京ドームがそのままの広さで、スカイツリーくらい伸びちゃいましたみたいなバカバカしいスケールだった。
 世界樹。
 ふとそんな言葉が脳裏に浮かんだ。
 そういえば、ルーナとセレナがエルフの世界樹がうんたら言ってた気がするが、この樹の事だろうか。
 世界樹の木肌? というかもうすでに山の尾根に見える場所からは、何本もの滝が流れていて、その滝は虹を作り出していた。
 山のような大木に何本もの虹がかかる光景。
 思わず息を呑むほどの美しさだった。
 これが観光と言うやつだろうか。
 出不精の俺には、珍しい感慨に襲われた。
 しかも、大木の木肌にはチラホラと家のようなものが見える。
 ぱっと見でも数百……いや、数千はあるだろうか。
 この大木で、人が生活しているのだ。
 おそらくエルフ達が。
 すげえな、エルフ王国。


 ぼへーと世界樹を見上げながら、てくてくと歩いた。
 辺りにはすでに大勢の人やエルフがいて、皆大木の根本を目指している。
 きっとあそこが入り口なのだろう。
 その他大勢に紛れるように、俺もその入り口を目指した。
 ていうか、こんな大勢のエルフって初めて見た。
 皆、金髪で耳が尖っていて、一様に若い。
 とはいえ、美男美女ばかりかと言われると、そうでもないような気がする。
 確かに、人間に比べたら顔立ちは整っているのだが。
 ルーナに比べると大したことないような気がする。
 あいつってエルフの中でも美人だったのだろう。
 なんで俺なんかの側で妻ヅラしてたのか本当に不思議だった。
 しかも、お姫様なのだ。
 変な女である。
 とはいえ、愛おしい。

 やがて、大木の入り口にたどり着いた。
 そこには、金色の全身鎧を身にまとったエルフの兵士が、警備を固めていた。
 ものすごく高そうな鎧だった。
 鎧の材質はなんだろう。
 見た目通りの金というわけでもなく、どこか不思議な色をしている。
 わずかに緑色に発光しているようにも見える、謎の金属だった。
 またオリハルコンみたいなファンタジー物質なんだろう、きっと。
 鎧には精緻な文様が彫刻してあって、悔しいけどかっこよかった。
 ちょっと着てみたい。

「止まれ。身分証を見せなさい」

 キリッとしたエルフのお兄さんだった。
 真面目そうで、ちょっぴり怖そうな。
 とはいえ、はて。
 身分証?
 そんなもの持ってないのだが。
 免許証でいいんだろうか。
 そういえば、免許証すら持ってないけど。

「なぜ黙っている!? 身分証を見せろと言っているんだ!!」

 エルフのお兄さんはキレる寸前だった。
 カルシウムが足りてないんだろうか。

「あ……う……」

 身分証なんて持っていないし、この人知らない人だしで、変な声が出た。
 リアルであうとか言っちゃう人初めて見た。
 まあ、私なんですが。

「馬鹿にしているのか、人間!!」

 種族名で怒られた。
 やだ、怖い。

「……持ってないです」

「何? 怪しい奴め。領主の許可を得ずに我が王国まで来たのか?」

 誰だろう、それ。
 そんなもんに許可してもらった覚えはない。
 脳内で、エレインがぷんすか怒っている画が浮かんだ不思議。

「ラグニード王国の人間か!?」

 矢継ぎ早に質問される。
 なんだろう、この感じ。
 一時停止無視でパトカーに捕まった時を思い出す。
 なんという威圧感か。

「……さあ?」

「馬鹿にしているのか!?」

 エルフのお兄さんは、すちゃっと槍を向けてきた。
 聞き慣れない国名を言われたので、素直に答えただけなのに。
 なんか俺の剣と似た名前だったけど。
 こんなにキレなくたっていいんじゃなかろうか。

「どうした!?」 「何事だ」

「ここに怪しいやつが!!」

 なんか同じく金色の鎧を着たエルフさんたちがわらわらと集まってきた。
 囲む気だ。
 なんというヤンキー気質。

「待ってください! 俺は別に怪しい人間じゃありません」

 これでも30オーバーの社会人である。
 こういう時に、落ち着いて話をする余裕くらいある。
 対人恐怖症なので、心臓はバクバク言っているが。
 こんな事ならセレナあたりに付いてきて貰えばよかった。

「何ぃ!? 真っ赤な全身鎧に、黒いマント。背中には大剣まで刺したお前のどこが怪しくないと言うのだ!? せめて兜くらいとらんかっ!」

 やだ、何その怪しい人。
 まあ、私ですが(笑)。
 あと兜は取らない。
 顔を晒すのは、いろいろとまずい気がする(クズの勘)。
 エルフのお兄さんたちは、キレながらも顔を青ざめさせていた。
 よっぽど俺がやばいヤツに見えるんだろう。
 ちょっとかわいそうだった。

「どうした曲者か!」 「応援を呼べ!」

 どうしよう。
 なんか兵隊さんたちが続々と集結してくる。
 辺りの通行客からも注目を集めているし。
 どうしてこうなった。
 俺は何も悪くないのに。
 もう帰りたい。

「我がエルフィニアに何の用で来たのだ!? 強盗か!?」

 え、もっと他に目的は思い浮かばないのだろうか。
 観光とかさ。
 まあ、完全武装で観光に来る意味がわからないが。

「今、我が国は大事な行事を控えて、厳戒態勢なのだ。返答次第ではただでは置かんぞ」

 なんと間の悪い。
 ルーナめ。
 何も厳戒態勢の時に、実家に帰らんでもと思う。
 ただちょっと興味が湧いた。
 大事な行事ってなんだろう。
 声優さんのライブとか、AV女優のサイン会とかだったら参加してみたいな。

「……今、なんかやってんすか?」

「む……そんなことも知らんのか。我が国の王女殿下が結婚式を挙げられるのだ。周辺各国にも通達済みのはずだがな」

 ほほう。
 お姫様の結婚式。
 それは一大イベントである。
 ん? お姫様?
 それって、ルーナのことなんじゃ……。
 冷や汗がブワッと吹き出した。

「……ちなみに、それはいつ?」

「今日だ! だから、こうして厳戒態勢を敷いているんだろうが!!」

 いやいや。
 ないない。
 家出してからまだ一週間くらいしか経ってないのに!!
 それでもう結婚とか。
 尻が軽いにも程があるだろ!!!
 てへっと可愛らしく舌を出すルーナの顔が脳裏に浮かんだ。
 イラッとした。

「…………ち、ちなみにどこでやるんすかね?」

「エルフィニア大聖堂に決まっているだろうが! そんなことも知らんのか、貴様!!」

 その時、りんごーんと大きな鐘の音が聞こえた。
 見上げれば、巨木の中腹あたりにでっかい教会みたいな建物が目についた。
 あそこだろうか。
 めっちゃくちゃ結婚式やってそうなオーラを放っている。
 女の子の憧れ! って感じがビンビン伝わってくる。
 あんなDQN総本山みたいな場所で?
 俺のルーナが結婚???

「え、絶対許さん」

 素直な気持ちが、言葉となって己の口から漏れる。
 なんとしても阻止せねば。

「……すみません、通してください」

 冷や汗をだくだく流しながら、兵隊さんたちの間をすり抜けようとした。
 しかし、ガキンと何本もの槍に阻まれる。

「通すわけがないだろう!! き、貴様、頭がおかしいのか!?」

 兵隊さんたちはドン引きしていた。
 まあ、気持ちはわかる。
 俺が悪いのわかる。
 だが。

「……通せっつってんだろうが」

 《重力魔法レベル2:他者重力変動発動》。

 ――ズン。
 周囲の空気が、突然ひしゃげた。

「ぐ、ぐう」 「なんだこれは……!」

 地面に崩れ落ちるエルフの兵隊達。
 大丈夫、殺しはしない。
 めきっと音を立てて。
 兵隊たちが、地面にめり込んだ。
 怪我はするかもしれないが。

 俺はおもむろに歩き出す。
 心臓はバクバクと鳴りっぱなしだ。
 これって犯罪だろうか。
 そんな事に怯える小市民な俺。
 警官を殴り倒したようなもんである。
 絶対やっちゃ駄目なことな気がするが。
 今は、それどころではない。

「……ルーナ」

 自然と小走りになっていた。
 自分の女が結婚しちゃう瀬戸際なのだ。
 このままじゃルーナが新婚初夜を迎えちゃう!!
 絶対に阻止せねば。
 俺は、肚をくくった。
 目指すは、エルフィニア大聖堂……!
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