Sランクパーティから追放された俺、勇者の力に目覚めて最強になる。

石八

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元Sランクの俺、途方に暮れる

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 レンがギルドを飛び出してから時は過ぎ、太陽は沈み始め、街の大通りから人混みが消えていく。

 そんな中、無一文のレンは街の北門付近にある噴水広場に赴(おもむ)き、噴水付近にあるカップルたちが座っていそうなベンチに腰を下ろしながら深々とため息を吐いていた。

「はぁ、なんで……俺がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ…………」

 ギルドからこの噴水広場まで距離でいうと数百メートル。あまり遠くはなく、ものの数分で到着する距離だ。

 しかしそのたった数分の間で、レンの怒りは冷めていき、逆に言葉では言い表せないような寂寥感が襲ってきたのである。

「あんなに頑張ったのに。誰よりも前線で戦って、誰よりも魔物を倒し、パーティに貢献したのに……」

 一人寂しく頭を抱えて嘆いてる姿は傍から見たら滑稽である。だが嘆かずにはいられなかった。嘆かないと、頭がおかしくなりそうだからである。

 目の前に通行人が通り、レンを見てはなにやら耳打ちをする。だがレンはそんなことを気にせず、未だにブツブツと嘆き続けていた。

「そうだ……そうだ! ヤツらを見返せばいいんだ! 俺を追放したのを後悔するくらい強く、有名になればいいんだ!」

 先ほどまで嘆いていたのに、レンはその場で立ち上がって高笑いをあげる。だがその瞬間周りの視線が異常に集まっていることを知り、逃げるようにその場を後にする。

 その足取りはとても軽かった。腰にはAランクの《ホーリーメアキャンサー》と呼ばれる魔物の素材をふんだんに使用して製作した聖剣をぶら下げ、背中には生活必需品を詰めた鞄を背負っている。

 それだけでも軽く20キロは超えているのに、レンは気にすることなく走っていた。いくら準備期間中で身体能力が下がっていようと、レンは元Sランク冒険者という実績がある。なのでこれくらいの重さは気にすることもなかった。

「ふぅ、これくらい離れればいいだろ。それよりこれからどうするかな。お金は全部置いてきたから宿に泊まれない。馬車を借りることもできない。でも、歩くのはめんどうだな……」

 そう悩んでいると、ヒゲを生やしたおじさんが御者の馬車が通っていく。その馬車には様々な道具が積まれており、一瞬で商人であることが理解出来た。

 そんな目の前を通り過ぎていく商人の馬車を目で追っていると、レンはなにかを閃いたのか目を輝かせながらその馬車の前まで全速力で走っていった。

「おじさん! ちょっとストップ!」

「うおぉお!? い、いきなり前へ出てくるな! 下手したら大怪我だぞ!?」

 いきなり死角から現れたレンに驚きを隠せないのか、商人は目を丸くし、慌てながらも馬車を止めていた。

「なぁ、おじさん。よかったら次の街まで俺の乗せてってくれないか?」

「なに言ってるんだ。確かにワシは次の街までこの道具を売りに行くが、金を払ってまで護衛を雇う気はない。金を集るなら他にしな」

「まぁ待ってよ。話くらいは聞いてよ。な?」

 あまりにもしつこいレンに食い下がったのか、馬車を動かそうとしていた商人はため息を吐きながらも手綱を離し、レンの話に耳を傾けた。

「俺は別に金が欲しいわけじゃない。ただ次の街に行きたいだけだ。確かにここらは魔物が少ないけど、万が一のことを考えたら馬車で逃げ切るのは不可能。そしたらおじさんは大損害。生きてけなくなる。そうだろ?」

「ふむ、確かにその通りだな」

「そこで、その万が一の時のために俺がおじさんの馬車を護衛してあげるよ。報酬は俺を次の街まで運ぶことだ。どうだ? お互いにウィン・ウィンの関係だろ?」

「うーむ……」

 レンの説得により、商人は悩んでいるのか腕を組んで喉を低く唸らせていた。

 それを見ていたレンはニヤリと笑い、さらに畳み掛けることにした。悩むということは、請け負った場合のことを考えているからである。

「確かにウィン・ウィンではある。だがもしお前さんでも相手できない魔物が現れたらどうするつもりだ?」

「それなら、この剣を見てほしい。商人ならこの剣の価値が分かるだろ?」

 自分の腰から鞘に収まっている聖剣を抜き、商人に手渡しする。

 最初はその剣をまじまじと疑い深く観察する商人であったが、鞘を抜いた瞬間口を半開きにして「これは……」と言葉を発していた。

「ホーリーメアキャンサーの甲羅に含まれてる鉱石を使用して作った剣か。確かホーリーメアキャンサーのランクはA……まさかお前さんにそんな実力があるとは思わなかった」

「だろ? 確かに金さえあればその武器を手に入れることは可能だ。でも俺はホーリーメアキャンサーと戦い、癖や特徴を全て見極めた。これでも信じられなかったら、ここで長々と武勇伝を語ってみせようか?」

「いや、いい。ワシはこれでも商人として長く生きてるからな。人が嘘をついてるかついてないかくらいは分かる。いいだろう。乗ってけ! その代わり、魔物が来たらしっかり頼むからな」

「分かった。おじさん、ありがとう」

 商人と交渉成立を示す握手を固く交わし、レンは馬車の中に乗り込む。

 そしてレンが商人に合図を送ると、商人は「落ちるなよ」と一言いってから馬車を動かした。

「ふぅ、とりあえずこれで次の街までは行けるな。やっぱり交渉って大事。自ら率先して交渉係に回ってよかった」

 ガタガタと揺れる馬車に腰を下ろしたレンは、ゆっくりと一息ついてから窓を開け、外の空気を浴びる。

 乗り心地は良いというわけではない。それでも勝手に次の目的地まで運んでくれることを考えれば十分許容範囲内であった。

「おーい、お前さん! 次の街ってのは《ケルア》であってるよな?」

「あ、はい。そこまでお願いします」

 ケルアとはここから半日で到着する街で、あまり規模は大きくないもののギルドがあり、冒険者や観光客で賑わう賑やかな街であった。

 確か5ヶ月ほど前ケルア付近の森でクエストを受けたはず。今になってそんな記憶が蘇り、怒り半分寂しさ半分でなんとも言えない感情になっていた。

「もう過ぎたことだ。忘れよう。俺はまた1からやり直すんだ。そして、絶対に見返してやるんだ」

 護衛をするために乗っていたはずなのに、疲れからかレンは壁に寄り添って眠りについてしまう。

 夕方の太陽に照らされた大地は朱色に染まり、空も青から大地と同じ色に染まっていく。

 そんな和な草原の真ん中を走る馬車の中。レンは聖剣を大事そうに抱きつつ、頬に一筋の涙を流しながら意識を水底へと沈めていった。
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