異世界モノつめあわせセット

銀狐

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1.神に逆う勇者が創る新世界

1-4

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「おはよう。もう行く?」
「私は準備が整ったからいつでもいいけど。ジンは?」
「うん。もう大丈夫だよ。じゃあ行こうか」

 昨日夕食を食べた食堂へ行き、朝食をいただいた。
 これからどうしたもんか。
 やりたいことはたくさんある。
 まずは魔法についてや勇者についていろいろ調べたい。
 それ以外にも服や武器も揃えたい。
 書籍のほうは城にあるからそれは夜でもいいだろう。
 それなら街へ行った方がいいな。
 言えば街のほうへ行けるのかな?

「サツキ、この後街の方へ行ってみようと思うけど一緒に行く?」
「もちろん行く!」
「じゃあそうしようか。すみません、街の方へ行きたいんですが」
「かしこまりました。お付きの者をご用意いたしますので少々お待ちくださいませ」
「えっと、できれば二人だけでいけたりはできないかな?」
「かしこまりました。それではこちらをどうぞ。金貨30枚ございます」
「こっちだとどれくらいの価値になるの?」
「まず銅貨が基本の硬貨となります。銅貨100枚で銀貨1枚。銀貨100枚で金貨1枚となります。例えばこのパンは銅貨10枚になります。服でしたら銀貨1枚からが多いです」

 銀貨1枚の洋服3千着分か。けっこう高いお金をもらったな。
 買い物に渡す金額ではないぞこれ。
 向こうだと洋服が2千円として3千着だから6百万!?
 バカじゃないのかこの人…。
 もしかして金銭感覚狂ってるんじゃないのか?

「えっと、こんなにもらっていいの?」
「貴族様方がご購入される服では数着しか買えません。武器もお買いになられるのでしたら足りないかもしれません。
ですが国王様には一日この金額までは出せると仰せになっておりました。申し訳ございませんが、この分だけで納めていただけるようお願いいたします」
「毎日この金額!?ジン、絶対落とさないでよ!!」
「それでしたら魔法でしまったりすることをおすすめします。何か書かれておりませんか?」

倉庫アイテムボックスってのでいいのかな?」
倉庫アイテムボックスをお持ち何ですか!?…さすが勇者様。それは魔力を使って入口ゲートを出し、別の空間に保存する魔法です」
「普通はどうしているの?」
「こちらのような袋を持ち、『収納拡大化』を使い運んでおります。このように」

 祭りの時によく見る巾着袋ぐらいの大きさの袋。
 袋の中を見ると明らかに中が違っていた。
 2倍3倍どころではなく人間が3人ぐらいは入れるぐらいのスペースがあった。

「俺たちもこのぐらいあるの?」
「『倉庫アイテムボックス』は『収納拡大化』の上位魔法となっております。『収納拡大化』のレベルが10になると『倉庫アイテムボックス』へスキル進化します。私はレベル2ですので単純に5倍以上のスペースがございます」
「「広すぎるよ!」」
「そうおっしゃられましても…」

 ステータスや攻撃以外もチート級か。
 これも勇者のおかげなのか、あいつのおかげなのか。

「試しに使ってみてはどうでしょうか?」
「俺が使ってみるよ。『倉庫アイテムボックス』」

 目のまえに黒いモヤができると入り口ができた。
 魔力も全然使わずいくらでも使えるみたい。
 入らなくても分かる。広すぎる。
 ボックスどころではなくまさしく倉庫。
 この城の一部屋丸々の大きさだ。

「広いねぇ。ここで暮らせるぐらいの広さだわ」
「残念ですが『収納拡大化』を含め『倉庫アイテムボックス』は空いてる間は入っても大丈夫なのですが、入っている間に閉じると二度と戻れないと言われております」
「えっ…。そんな恐ろしい魔法なの?」
「ご安心ください。閉じるのは魔法を使ったものだけです。好奇心でやらない限り大丈夫です」
「よかったー…」

 中に入ってみると何もない新築の部屋みたいな造りだった。
 家具があれば本当にただの部屋だな。
 たしかに住んでみたいけどこんなところでバッドエンドを迎えたくはない。
 でもこんなにスペースがあるんだ。武器やあればアイテムなどを入れれるかもしれない。
 ゲームと違って報酬とかもこういうところに入れないといけないし、自動で入っていくわけでもない。
 あるだけまだいい方だろう。

「ではここに置かせてもらいます。馬車をご用意し終わりましたので勇者様方の用意が終わりましたらいつでも出発できます」
「私たちはいつでも大丈夫よ。ね?ジン」
「ああ。さっそく行こうか」

*

「ではわたくしはここにおりますのでお帰りになる際は声をかけてください」
「うん。ありがとう」

 俺たち以外にも馬車は走っていた。
 それでも降りた時、周りから見られていた。
 やっぱり目立つんだな。生徒代表で前に出て話した時を思い出す。
 平然に見えてもけっこう緊張がすごいんだよな。

「それじゃあ行きましょう!服屋さんはあっちかな?」
「あ、おい。引っ張るなって」

 周りの目なんてお構いなしに引っ張ってくる。
 不思議と連れまわされてもいい。そんな風に思っている。
 前までなら絶対嫌だったのにな。丸くなったのか?
 いやいや、そんなはずはない。これが人を好きになった時の感情だろう。
 知らなかった感情を知る。これは成長だ。

 ん?なんだあいつは?
 なんでそんな目で見ているんだ?
 他の連中は物珍しさの目で見てくる。
 ただあいつだけは違う。
 あれは興味を持って今にも飛び込む、まるで獲物を捕らえる動物の目だ。

「どうかしたの?」
「いや、あいつが――」
「誰もいないじゃない。それより行きましょう!良い服がたくさんありそうだわ!」
「あ、ああ」

 一瞬だけ目を離したときには消えていた。
 人ごみに紛れていたとは言え、全身に布を被っていた。
 あたりを見渡しても見つからない。
 走っていったのか?それなら周りもそっちを見るだろう。
 魔法でどこかへ行ったのか。
 でも一体、どうして俺たちを。

「また何か考えているの?相談に乗ろうか?」
「だ、大丈夫だよ。それに、近い」
「ご、ごめん!」

*

「あとはどうするの?」

 服屋を周ること2時間。
 ずっと見ては試着、見ては試着の繰り返し。
 結局勝ったのは金貨1枚分。
 一軒だけ貴族の方の服屋に行ったが、高すぎてやめた。
 俺は構わないと言ったけどサツキは遠慮した。
 その中にあった服、見てみたかったけどなあ。

「次は武器屋に行ってみたいと思ってたんだ」
「そういえばジンは魔法より武器とか使ったほうがよかったもんね」
「ああ。それもあるし、もしかしたらサツキに合う魔法能力を上げる武器もあるかもしれないよ」
「杖みたいなやつかな?まるで魔法少女みたいだね」
「…そうだね」
「引かないでよ!」

 まさか魔法少女みたいなポーズをとるとは。
 正直驚きだよ。いつもはそんなことやる雰囲気はなかったのに。

「もしかして、楽しいのか?」
「もちろん!よくわからない世界に飛ばされて不安しかなかった…。けどジンがいたから、ジンがそばにいるだけで私は私でいられる。そんな気がするの。そのせいでいつもは抑えていたことをしちゃうのかな?あはは…」
「そうか…。抑えていることをしちゃうか」
「ジンもそうだよ?私しかいないんだからさ、ため込まずに素直に言ってね」
「うん、言うときが来たら言うよ。ただ今言えるのはサツキと一緒でよかった。そう思うよ」
「…うん」

 嬉しそうで、顔をほんのり赤く染めていた。

「それより先にお昼食べに行く?」
「そうだね。私のせいで長引いちゃったからね…ごめんね」
「気にしていないよ。俺も楽しかったし」

 先にお昼を食べることにした。
 場所は服屋を周っているときに見つけた屋台のお店。
 噴水を囲むようにいろいろなお店も出ていた。
 服屋の人に聞いたら毎日お昼時にお店を出しているとのこと。
 どうやらここは市場らしい。

「これはケバブかしら?」
「なんだそりゃ?これは平たいパンに肉と野菜を混ぜてこの特製ソースをかけた俺のオリジナル料理!ミートソウルだ!!」
「ケバブだな。レシピもほぼ同じみたいだし」
「んだよ。他のところにもあったのか。それより買っていくのか?」
「うん!美味しそうだから買うわ」
「そっちの彼氏さんは?」
「彼氏じゃないけど…まあ俺も買うよ」
「照れんなって!負けてやるからさ。ほら、合計で銀貨1枚だ!」
「ありがとう!おじさん!」
「いいってことよ!」

 噴水の囲いに座って食べることにした。
 俺たち以外にも同じように食べている人がいる。
 小さな子供からお年寄りまで。たくさんの人がいる。
 ここで住んでいたら平和で過ごせるだろう。
 周りのみんなは笑顔であふれかえっている。

「ここの人達ってみんないい人ね。いきなり呼んできたからどんな王様なんだろうって思ったけどいい人そうみたいだね」
「確かにそう見えるな。でもまだわからないよ」
「ジンっていっつもそうやって疑ってばっかりだよねー。たまには信用してみようよ」
「会ってないやつを信用しろって言われても難しいよ」
「ふーん。疑い深いね」

「他にも何か食べる?」
「けっこう量があったからいいかな。武器屋に行く?」
「そうするか」

「なんだ兄ちゃん。武器が欲しいのか?」
「さっきのケバブおやじ」
「ミーロソウルな。武器屋ならいい店知ってるぞ」
「本当か!?教えてくれないか?」
「ああ、いいぜ。兄ちゃんは剣士なのか?そんなひょろっとした見た目で」
「あまり言いたくはないけど、声に出したりしなかったら教えるよ」

「わかった。それで職業は?」
「勇者だよ」
「!?!?…あっぶねえ。まさかその言葉が出るとは…。咄嗟に口をふさがなかったら大声を出していたぞ」
「警告しておいてよかったよ…」
「それならあの通りを進んで剣が交差している店に行くと言い。あそこはあまり知られていないが王国戦闘部隊の隊長が買いに来るほどいいのがある」

「サラウディさんがここまで来るの?」
「嬢ちゃんたち知っていたのか。サラウディ様は我々市民を大切に思ってくださっている。国王を慕いつつも守ってくれる。子供たちが憧れる存在でもあるんだ」

 そんなに有名なのかあの人。
 ここでわざわざ向かいに来てくれた人なんて言えないよな。
 このケバブおやじも尊敬のまなざしをしている。言ったら夢を壊してしまいそうだ。

「それじゃあ行ってみるよ。教えてくれてありがとう」
「ああ。…必ず、魔王を倒してくれ」
「もちろんよ。じゃあね」

 俺は手を振った。
 それはあいつのシナリオ。倒すことは保証できない。

*

「ここかしら?ずいぶんボロボロだけど…」
「外見は外見。中は違うかもしれない」
「いらっしゃーい。どういうのが欲しいの?」
「えっと、武器が欲しいんだけど」
「武器と言われてもねぇ。見ての通りたくさんあるわよ?」
「じゃあ勇者が持つ剣」
「…ほう?」

 武器屋にしては珍しく女性。
 さっきまでは普通の客を相手するように見ていたけど勇者が持つ剣と言った瞬間目の色が変わった。
 何か今日はいろんなやつからいろんな目で見られるな。
 生徒会長の時でもそんなことはなかったのに。
 こっちの世界の人はどうなってるんだよ。

「まさかそんなことを言うガキが来るとはな!」
「ガっ…!?」
「いいぜ!ならこれを抜いてみろ!これが勇者様が持つ剣だ!てめえみてえな青臭いガキが抜けるはずがねえよ!」
「…言ってくれるじゃねぇか」
「ジン…そんなすぐに怒らないの。顔がすごいことになっているよ」
「…ごめん」

「ただ抜けばいいんだろ?なんでそんなことを」
「これは先代勇者様が使っていた剣、破滅の剣キーブレイクだ!」
聖剣エクスカリバーじゃないのかよ…」
聖剣エクスカリバーは初代勇者様が使っていたやつだろ?あんなの迷信だ。迷信」
「それになんで破滅なんだよ。魔王が使うような剣じゃないか」

「…いいところを突くなあ。これはかつて魔王が使っていた剣だ」
「それって大丈夫かしら?持ったら悪に染まったり、とかはしないよね?」
「当たり前だ。そもそもこの剣は勇者や魔王ぐらいしか使えない剣だからな。この世で5本しかない幻の剣だ。他は知らんがな」

「じゃあ俺が剣を抜けれたらこれはただでもらうぞ」
「いいぜ!それにその方が剣がよろこぶ!」
「がんばって、ジン…!」
「ああ」

 持ってみると分かる。素人でもわかる。
 剣が『実力を示せ』と言っている。
 どうしてだろうな、物がしゃべるわけなんてないし。
 こっちに来てからサツキのように俺も変わったみたいだな。
 あいつを潰そうと思ったが、今がどうしようもなく楽しい。
 俺はこんな出来事を望んでいたのか。
 ――いくぞ、破滅の剣。
 俺はてめえを使う勇者様だからな!

「おいおいおいおい…。本当に抜きやがった…」
「ジン!!おめでとう!」
「ああ。動作もなかったけど」

 言葉通り動作もない。
 なにせただ抜いただけだからな。
 もしかして『武具拒否無効』のおかげなのか?
 この剣、本当に意志を持っていたりする、とか?
 ないない、こんな世界でもそんなことありえない。

「……」
「……」
「剣を見つけてどうしたんだい?」
「いや、別に」
「大丈夫?」
「大丈夫だから、本当に」

 ほんの少ししゃべるんじゃないのか期待したが無駄だった。
 そりゃあしゃべらないよな。
 俺がどうかしてた。

「おめでとう。何人かこの剣の話を聞きつけたやつが来たが誰も抜けれなかった。あのサラウディもな」
「サラウディさんもここに来て試していたんだ」
「知っているのか?それにしても驚いたよ。あんた、勇者だろ?」
「…よくわかったね」
「当たり前だ。直接じゃないけどこの剣を受け取った時先代勇者様が言ったそうだ。『次にこれを使うのは新しい勇者だ。それまでこれを預かっていてほしい』とな」

 勇者は未来でも見れるのか?
 まさにその通りになったが。
 あいつが仕込んだんだろうが本当の出来事のように言っているみたいだ。

「そっちのお嬢ちゃんは仲間か?」
「私も勇者よ?」
「アハハ!もう笑いしか出てこない。あの有名な『伝説の勇者』の再来か?もう何が何だかわからねえわ!」
「そ、そうね…」

 最初はおとなしそうな女性かなあと思っていた。
 今はそれとは反対で足を開いて大笑い。
 どっかの海賊の船長みたいな笑い方をしているし。

「それならいい武器がある。その剣には劣るがこっちの――」
「私、魔法が得意だからそういう武器が欲しいんだけど…」
「それならこれだな。ウチだとこれが一番いいやつだ」
「これは杖?」
「そうだ。魔法使いっぽいだろ。名前は『白の使いザ・ホワイト』。それは昔魔法が得意だった勇者がつくった杖だ。ただ何本かつくったせいで値段が少し安い。それでも金貨10枚はするけどな」
「うっ!?これはあきらめたほうがよさそうね…」
「いいよ。せっかくだし買おう」
「え!?でも…」
「俺の分から使えばいい。無料タダで手に入ったから構わないよ」
「あら?かっこいいわね、彼氏くん。青臭いガキじゃなかったわね」
「うるせーよ!」

 こうして俺とサツキは武器を手に入れた。
 まだステータスカードを見ていないから分からないけど何か影響があるはずだ。
 後は帰ってからにしよう。
 ここにいるとまたからかわれそうだし。
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