上 下
13 / 69

この神様、すごいことカミングアウトした

しおりを挟む
 全然寝れなかった!
 まさかやっちゃうとは。
 前の世界でも楽しみの前日は寝れなかったし。

 くっそー!
 シロは爆睡してる!
 何かいい起こし方はないかな?

「まずはこれで」
「ん~?」
「あははっ!」

 口の近くに水をたらしたらおいしそうに飲んだ。
 しかもなんかふくれっ面で。

「あら?小さな女の子を襲っているのかしら?」
「リーシュさん!?」
「今はリーシュちゃん、ね?」

 びっくりしたー!
 いつの間に部屋に?

「そうね、前の世界だと犯罪だもんね」
「そんな目で見ないでください!違いますから!」

 誤解されたまま終われせてたまるかー!

「ところでシロちゃんといちゃつくのもいいけど、同じ家族だとちょっと、ね?」
「あぁ、まあ妹と思っているので」
「…シロちゃんも大変ね」

 リーシュちゃんはそう言いながらシロの頭をなでている。
 すごく安心した顔になっている。

「ところでなんでリーシュちゃんがここに?」
「2人の様子を見に来たのよ」
「様子?体調なら崩してませんけど」
「ちがうちがう!こっちの世界に慣れているかよ」

 ちがう世界だと慣れないとかあるのかな?
 魔力があるんだし体の構造が違ったりするのか?

「と言ってもこっちで転生したんだから関係ないんじゃ?」
「魂の方よ。こっちの世界だと精神と身体は別々として存在しているの。精神がなくなるともう終わりだけど身体だけがなくなっても大丈夫なの」

 なんかゲームのアバター選びみたい。
 今ので満足しているから変える気もサラサラないけど。

「大丈夫そうね。よかったわ」
「ところでリーシュちゃん」
「何かしら?」
「ちょっと気になっていたんですが?」

「なんでこっちまで来たんですか?」
「…嫌だったかしら?」
「いえ!全然!そんなことないです!」
「そう。よかったわ!」

「来た理由だけど、うーん…そうね」
「言えないことなんですか?」
「いえ、そういうわけじゃなくて、いい説明方法が…あっ!」
「思いついたんですか?」
「ええ!例えばあなたが新しいゲームを作るとする」
「はい」
「あなただったらどうする?」
「もちろん、やってみますよ。何かバグとかあったら嫌ですし」
「つまりそういうことよ!」
「えっ?」

「この世界にバグがあるんですか!?」
「強いて言うならあなたとシロちゃんがそのバグよ」
「ダメじゃないですか!?」
「それは大丈夫よ!故意的なバグだからいいの」

「問題は自然的なバグの方よ」
「そうですよね…。あったら困りますし…」
「というのは建前で私が来たかったからよ!」
「おい!?」

 なんて自由な神様なんだ。
 おかげで楽しくやらせて貰ってますけどね!

「だってぇ…。作ったゲームやりたくなるじゃーん…」
「ゲームっていう規模じゃないですけどね」

 やれることが多いとやることのスケールもでかくなる。

「その身体にしたのは魔法なんですか?」
「そうよ!こうやればっ!」
「初めて会った姿ですね」

 初めて見た時の可愛い姿。
 でも羽はなかった。
 もう1回見たかったなあ。

「そうよ!でもこの姿には基本ならないわよ」
「何かまずいんですか?」
「こっちの姿で来ちゃったからね。できれば変えたくないわ」

 いきなり成長!
 っていうのはまあないだろうからね。

「でもわざわざ冒険者になるために学校に来なくてもよかったんじゃ?」
「えっと…ちょっと言いづらいんだけど…」
「何言っても驚きませんから」

 もうすでに驚きっぱなしだからね。
 これ以上に驚くことはないでしょ。

「実はこの世界を放置しすぎちゃってね?最近のことが全然知らないの」
「何やっているんですか!?」
「しっー!シロちゃんが起きちゃう!」

 声抑えられないよ!
 無責任すぎるだろ!?

「なんで放置してたんですか!」
「だって同じ背景を300年見続けたのよ?ゲームをやってて飽きないことなんてなかった?」
「ありましたけど全然違いますからね!?」

 なかなかやばい神様だな。
 だんだん怖くなってきたわ。

「ちなみに放置していた期間は?」
「200年くらいかしら?」
「リビアルがいた時期かな」
「そうそう!リビアル!彼が革命を起こしたときはよく見ていたけどそれから何もなくて…」
「…それはよくないですよ。しっかり責任もってやってくださいよ」
「…はい。だから来たのよ!」

 う~ん。
 まあ反省しているんだからこれ以上なにも言わないでおこう。

「じゃあそろそろシロちゃんを起こそうかしら。今日はいつもより早く行かないといけないでしょ?」
「そうだった!シロ!起きて!」
「じゃあ私は戻っているわ」
「一緒に行かないんですか?用意はすぐ終わると思うけど」
「私とジルくんが一緒にいたらシロちゃん怒るからね。おとなしく帰るわ」
「?そうですか。じゃあまたあとで」
「ええ。バイバーイ」

 手をひらひら振りながら出て行った。
 っと、それよりシロだ。
 早く起こさないと。

*

「「おはようございまーす」」
「おはよー!シロ!」
「クロおはよー!」
「今日は遅かったな、ジル」
「ちょっと手間取ってね」

 いつもより早く起きないといけないのになかなかシロが起きなかった。
 無理やり起こしたらまた噛みつかれそうになったし。

「みんなおはよー!」
「おはよーリーシュちゃん!」
「おはよクロちゃん!あちゃー、私が最後だったかー」

 あれ?
 なんでリーシュちゃんが最後なんだろ?
 何か準備でもしてたのかな?

「みんなおはよ!よかった、しっかり全員いるね!」
「おはようございます。いないときなんてあるんですか?」
「私の時だけど一人寝坊をしちゃっていたわ」

 一人の乱れで予定も乱れる。
 その人相当怒られただろうな。

「じゃあグダグダ話してないでさっそく行こうか!」
「「「「「はい!」」」」」
「あっ!剣を持って行かないと!取りに行ってから学校の玄関に集合ね!」

*

「よし!みんないるね。じゃあ行こー!」
「「「「「おー!」」」」」
「しっかり付いてくるのよ!はぐれないでね!」

「シロ見てこの花!きれー!」
「ほんとだー!」

 さっそくばらける二人。
 幸先不安だなあ。


◆~ リーシュ・アクアリア ~◆

 時は冒険日前日。
 戦闘訓練の日の食後の部屋でのことだった。

(あーあー。聞こえますかー?)
(ええ、聞こえるわ。どうかした?)

 彼女はカルシュ・ラリベット。
 同じ神様の一人。
 今は彼女に私の分を補ってもらっている。

(少し問題がおきましてね…)
(珍しいわね。何があったの?)
(どうやらその世界に異変があるそうですよ)

 異変ねえ。
 しばらく見てないと起きるものなのかしら?

(異変の正体はわかる?)
(いえ、ですからリーシュに探してもらおうかと。)

 今は彼女に神様でのやることを頼んでいる。
 それなのにこの世界まで見てくれているのだ。
 これ以上迷惑をかけるわけにはいかないわ。

(まかせて。私が確認するわ)
(大丈夫でしょうが一応気を付けて行動をしてください)
(大丈夫よ。私が誰か知っているでしょ?)
(知っているから心配なのよ)

 なによその言い方!
 ちょっと目を離していただけなのに…。

(やっぱり見方をつくるのが賢明だと思うけど)
(それはもう目星を付けているわ。安心して)
(そう。私からは以上だわ。何か私にできることがあったら呼んでちょうだいね)
(ええ、ありがとう。じゃあまたね)

 魔法での通話が切れた。
 放置した機械を再び使えば不具合が起きる。
 そんな感じかしらね。

 味方ねえ。
 やっぱあの子しかいないわ。
 明日の朝でも潜り込んでみましょうか。
しおりを挟む

処理中です...