魔界食肉日和

トネリコ

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2、死神郵便

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「トカゲ好きだ、あとうまい」
「ワニ死ね。ちょうどよく死神郵便届いてるぞ」
 
 ぶっしゃーと左手から血が出てずぼっと生える。
 この間一秒
 我が体は最高なり
 いや、そのせいで便利な非常食とワニに思われているのか
 クソッ! 糞な体め!

「やあワニさん、あなたの郵便も預かってますよ」
「おう死神、どれだー?」

 骸骨顔、骨の手足、おどろおどろしい陰気な雰囲気とぼろい黒ローブの死神。まぁ一般的に死神と聞いて想像できる容姿まんまだな。もっと洒落てる奴もいるけど、郵便屋に勤めてる奴は大概こんな感じの格好である。やっぱ商売イメージも大事らしい。勤め人は大変だよなぁ。まぁ私も勤め人っちゃあ勤め人だが。
 眺めているとガサゴソと死神がぼろ黒ローブの袖を漁った。ちな、鎌は邪魔だからどうやってか袖に入れてるらしい。勤めてなけりゃあ個人的には商売イメージなどどうでもよいそうな。情緒の身も蓋もない奴である。身はないが。
 そんなこんなでぽいっとワニに渡されたのはでっかい四角い箱。カラフルな虹色の箱であり、真っ赤な可愛らしいリボンで結ばれたそれは女からのプレゼントに見える。つい、いいスクープだとにやにやと近付いて見守る。やっぱ中身気になるじゃん?
 ワニには天地がひっくり返っても似合わない可愛らしいリボンを引っ張れば開くっぽいのだが、バカにはわからないようだ。
 普通リボンを引くだろ? え? 引くよな?
 お前はプレゼント貰ったことねぇ童貞か? ええ?
 死神から渡された虹色の箱を数秒眺めて何故か頷いたワニは一声。


「開けるかー」


 そうしてワニは面倒がってかリボンとう存在を丸ごと無視して何のためらいもなく箱を真っ二つに裂いた。


 瞬間、爆発した。


 もう一度言う

 
 瞬間、目の前で凄まじいまでの閃光と熱風と爆風が轟いて爆発した。


 流石の私も脚からの再生だったから五秒掛かった。
 現状の把握には更に十秒掛かった。
 ほら、脳みそ治ってから考えるのに時間いるし
 まだ煙が舞っているが死神は吹っ飛ばされたようだ。
 そういえば郵便を貰い忘れた。

 …、おいワニ! おま、珍しく金出して密林に頼んだのにぶっ壊れてたらどうしてくれる!!!

 苛立ちのまま煙が晴れるのを待った。
 目が痛い。防御力が切実に欲しい

「トカゲー、兄貴からの悪戯だったわー。びっくり箱とか幼稚だよなー」

 ぐわっはっはーとワニが大口を開けて無傷で笑っていた。
 殺意が湧いた。

「ワニ死ね」
「なんだトカゲ、遊びたかったのかー?」
「爆風によって粉々の微塵と化したワニをワニの兄貴に送ってやりてえ」
「顔合わせは照れるなー」

 くねくねしだしたキモいワニは放置することにした。
 こいつの脳みそは爆風と共に吹き飛ばされたのだろう
 脳無しに言語理解は不可能だったのだ

「トカゲー、おーい待てよー」
「ワニ、まずはその爪を引っ込め――あー」

 ぶっしゃーと肩が抉られる。
 マジで殺意が天元突破しそうだぞ
 こちとら荷物の無事確認が大事なんだっつの!
 死神? どうせあいつも無傷だ。
 郵便屋も色んな所に行くから強者のエリート職場なのである。これが種族格差か…、けッ
 まぁかなりのブラック職場らしいので溜飲は下がるが。
 
「もー、あとで割増料金取りますからねー。で、これがトカゲさんの分ですー。着払いで3魔5戦円でーす」
「え、税込3万2戦じゃ」
「えーっと、いや確かに合ってますよー」

 マジか、手持ちが足りない。いつも何処か食われるから最低限しか持ってないのが仇なした
 
「まけろ死神」
「いやムリっすよー、私関係ないんで」
「そこをなんとか」
「諦めてくださーい。んじゃ次あるんで」

 催促してくる骸骨の目の部分に指を突っ込んで脅していると、急にお金が目の前に現れた。
 咄嗟に掴む

「トカゲ金いるのかー?」
「いる」
「んじゃやるぜー」
「おう」

 そうだ、そもそもワニが所構わず私を食わなければこんな自体にならなかったのだ。
 貰っても構わないに違いない
 ガッツリと差し出されたお金をゲットして死神に渡した。
 躊躇い? そんなクソなものさっきの爆風で吹っ飛んでるな。もしくは食われた時に消化されてるな。

「まいどありー、ではこれを。それでは~」

 去りゆく死神を無視してゲットした包を開く。
 ひゃっほーい!!魔王様の写真集ゲットだぜー!!

「トカゲー、それ何だー?」
「ワニには関係ねぇ、さっさと有り金全部置いて去れ」
「いいけど重さで潰れて死ぬぞー」
「じゃあいいや」

 にまにまと写真集の表紙を眺めていたら目の前を歩いていたワニが急に立ち止まった。
 空気椅子状態で脚を組んでいる。
 どうした、脳みその名残すら腐り落ちたのか?
 
「トカゲどうだー?」
「ワニ、何がだ」
「ほら同じだろー」
 
 片足空気椅子で指さしたのは写真集の表紙。
 よく見れば魔王様と同じポーズである。

「ワニよ、外見を考えろ、烏滸がましいぞ」
「トカゲ冷てえ、でも好きだ、結婚してくれ」
「だが断る」

 ずんっずんっと片足空気椅子のまま付いてくるワニを無視して仕事場に戻った。 
 今日も平和である









後書き





◆死神◆
 骨さん。カルシウムを取ると防御力が上がる(気がする)
 今回登場したのは郵便屋に就職した奴である。
 上司に速達専門の死神もいるらしい。速達の方が勤続年数が上がりベテラン枠。その分社畜度も上がる。彼らは飼い慣らされたエリート社畜なのだ。
 かなりのブラック職場。
 鳥族が午前部担当だとしたら、死神達は午後部担当である。
 最近転職も考えている模様。
 溜め息が尽きないが呼吸はしていない。溜め息が尽きないが禿げる心配もない。 
 やったね死神さん!☆(ぇ

 

 
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