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小学生編
5、小学三年生 アルファ(多分)の転校生がきた。やさぐれ過ぎだろこいつ 上
しおりを挟む諸君おはよう、私だ、利根田 理子だ。
最近キムチと牛乳にハマってしまって買い物をする母に「キムチは? 私の白菜キムチは? 私の毎日骨強は?」とねーねー、ねーねー作戦で付き纏っていたら、毎日買って貰えるようになった利根田 理子だ。
その代わりおやつでよく買っていたジャガチを禁じられてしまった可哀想なる利根田 理子だ。そして胃腸はそこまで強くないので最近トイレの個室とお友達の哀れなる利根田 理子だ。
一応昨日の夜も今日の朝も食べて来たぞ。うむ、美味である。
この味は世界を超えるようであるな。世界は世界でも地球規模でなく平行世界規模で。
そういえば今更ながらこの世界の名前を説明していなかったな。その名も『地球』である。
え? 別の名前じゃないのかって?
私に聞かないで欲しい。まあ私が読み漁ってきた作品達でも大抵が地球が舞台だったのだ。やはりわざわざ異世界要素を足さないあたり使い回しやすさも出てよいと思うのだがどうであろう?
ああ、だがこの現代設定もいいが異世界設定もいいな…、モンスターや魔物要素とか足してみよ……、戦闘のさなかの従軍騎士との関係変化とか、家で帰りを待つ婚約者が居る身でとか、敵国の将軍であった運命の番とか………、ふうーー!!! おっとよだれが
「理子ちゃんおはよ~。今日ね、転校生が来るんだって~。なんかね、聖也くんが教えてくれたの」
「お花ちゃんおはよ。え! そうだったんだ」
私の耳元へと手と口元を寄せ、こっしょり教えてくれるお花ちゃん。
周りの子たちは知らないのに、他クラスでもお花ちゃんに有用情報を流す聖也くん…。愛と呼ぶには既に恐ろしいものを感じさせる小学三年生である。一体何処から情報を仕入れているのか。お前は一体何処の怪盗なのか。
お花ちゃんの柔らかそうな髪が揺れると、ふんわりとした甘いお菓子みたいないい香りが鼻をくすぐる。
お花ちゃんがもしオメガだとしたら、これが噂のアルファが感じれるという香りなのだろうか。
うむ、朝から癒されるというかお腹も空くいい香りである。
すると、お腹を意識したせいであろうか、唐突に腹部へと慣れ親しんだ激しい痛みが襲ってきた。
あ、やばい、もうお腹壊した。
瞬間、絶望して机に突っ伏す。
キムチめぇ…、牛乳めぇ…! お金を落としまくっているのだからもう少し胃腸に優しい対応になれよ…! 慣れてても内なる痛みは我慢出来ないんだぞ…!! お腹にやさしい乳酸菌を殺菌して死滅させてるからだとでも云うのか…!! 乳酸菌頑張って生き残ってくれよ! そこで諦めたら試合終了だろ…!
普段なら朝起きたらお腹痛いが最近の恒例行事だったのに、起きても痛くも痒くもないからようやく胃腸がレベルアップして慣れたのだと思ったらこれである。ぬか喜びもいい所だ。発酵するなら私のお腹でなく別の所でして欲しい。時間差具合の不意打ちっぷりに絶望するしかない。私涙目。
裏切るとか酷いぜブルータス…!!
まぁ主にというかキムチと牛乳にお金を落としているのは母であるが、家族なのでいいのである。これでいいのだぁ
あ、やばい、意識逸らそうとする余裕すらなくなりそ…
認識してしまった途端、脂汗たらたらの顔面真っ青で涙目状態である。急に俯いてお腹を抑えながら震え出した私におろおろするお花ちゃんを雰囲気で感じるが、状況を説明する余裕すらない。
汚い話だが、下痢になったことのある者ならわかろう……、いま、波の一次ピークである。
波よ頼む引いてくれぇ…!動いたら何か、もう、何かあかん…!!
下手な似非関西弁が出る程度には崖っぷちのピンチである。
やばいやばいやばい、これはやばい
だが漏らすなど言語同断…!! 私の未来は今後お先真っ暗奈落のブラックホールへと吸い込まれてしまう…! あだ名がピー子とかになってしまう…! おすぎなんかお呼びでない…! お花ちゃんから距離を置かれるどころかクラスの皆から腫物を触るように距離を置かれて、りこ菌だぁ~とかでいじめられてしまう…!
あ、それは無理泣く。そうしたら私全力で登校拒否して引き籠る。オメガバースの世界に転生したけど小学三年生で詰んだ件とかで小説書いて死んだ魚の目になる。
あと絶対健太が率先して揶揄ってくるッ! 健太に馬鹿にされるなど死んでも御免である…というか何故今年も健太と同じクラスなのか。腐れ縁とかやめてほしい
それにしても、舌の好みを引き継ぐのなら何故胃腸の強さも引き継いでくれなかったのか。まだ肉体年齢のレベルが足りないとでも言うのか。あと二十二年待てとかそういうことだろうか。舐めプし過ぎであろう。その頃には絶対もうキムチと牛乳のマイブーム過ぎてる自信しかないわ…!!!
え? 精神と肉体は違う?
知ってるよこんにゃろう!前世の山田 莉子は明らかに異臭を放つ牛乳を間違ってコップ一杯分飲み干してもびくともしなかった鋼鉄の女であったのに…!
ふぐぐっ、ふぐう、よし、一旦小休止に入ったぞ…
脂汗塗れになりながら顔を上げて天井付近に掛けてあるシンプルな丸時計を見る。
い、いける、まだ朝礼開始まで五分ある…
時計を確認し、希望の光が見えた瞬間、更に痛みが治まってきた気がする不思議である。やはり人は絶望だけでは前を向いて生きていけないのだ。
もしかしたら五分では戻れないかもしれないが、お花ちゃんに先生への伝言を頼めば少しくらい許されるであろう、そうであろう、そうしよう
決意し、事は一刻も争うと机に手を掛け腰を上げたその時だった
――――ガラララッ……
朝の光と共に一筋だけ伸びる漆黒の影
音と共に逆光の中、出入口に立ちはだかる壁、もとい、悪魔、もとい担任の先生
パンパンととってもいいご報告があるのーと言いたげに手を叩く様はまるで生贄に捧げられた供物を嘲笑っているように見える。というかそうに違いない。
ちょ、ま、マジでそろそろ限界なん―――
「はーい、みんなー席に着いてねー。今日から新しくみんなと一緒に勉強する転校生を紹介するよー。――――ん? ほら、りこちゃんも早く座ってねー」
絶望的な闘いが、今、幕を開けた。
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