Substitute lover

鳴宮鶉子

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死ねなかった

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将生の元へいけると思ってたのに、薬物自殺に失敗してしまった。
確実に逝ける方法だったのに、服用後直ぐに見つけられ、胃洗浄の処置をされてしまい、死ねなかった。

将也が私が薬物自殺をするために精神安定剤と睡眠薬を集めてた事に気づいてた。
将也は医学に関する書物を片っ端から読んでる。
処方薬説明書は家には持ち帰ってなかったけど、錠剤の形を見て調べ、ア●●サ●ンとつきとめ、血液透析などによる解毒・排泄は不可能な薬品だからすぐに胃洗浄するよう救急隊員に伝えたと、救命救急センターの和田先生が言ってた。

将也は将生の血をひいてる。
将生と私も血は半分同じ。
私と将生と将也、よく似てる。

翔太は翔琉に似てる。
喜怒哀楽が少し激しいけど、誰からも可愛がられる子で社交的な子。

死なないでと泣きじゃくって私にすがってきた翔太の姿を見て、この子達を残して死ねないと思った。

そして、私が薬物自殺を図ってから私から、かたときも離れない翔琉。

処置が早かったから軽症ですみ、年末年始休暇を明けるまで自宅安静する事になった。
3週間も療養する事になり、働き詰めだった私は戸惑う。

翔琉も仕事が多忙な時期なのに仕事を休み、私のマンションにいて、息子達の幼稚園も休ませた。

薬物自殺を図り胃洗浄の処置を受けたから、胃に痛みがあり食事が進まない私の事を心配し、なんとか食べさせようと3人でハンバーグや餃子を作ってくれた。
息子達が作ってくれた料理に手をつけないわけにはいかないないから、なんとか半分は食べた。

「……もう、死のうとしないから、だから、普通に生活をさせて。何もしない生活を送る方が気持ちが滅入る」

引きこもり生活、10日間はなんとか耐えた。
でも、何もせずのんびり過ごすのに慣れてないのと、販売開始して2ヶ月の医療手術ロボット竜馬の事が気になり、じっとできなかった。

臓器の形に個性がある。
サイズや強度など人によって違う。
だからオート機能での執刀で、ミリ単位だけど切りすぎたりなどの不具合が出てしまってた。

息子達も、9日間も家に引きこもり、翔琉と家事をしてその後、レゴプログラミングで遊び、私の隣で本を読みあさってる。
楽しそうだけど、不健康だ。

息子達を幼稚園に連れて行き、翔琉とテルパスに出社する事にした。


私が休んでる間に20件も不具合のメールとFAXが届いてた。

11日で20件。
そのうちの18件は命を落とすような不具合ではない。
ロボットが執刀する事を良く思わない外科医から寄せられる小言のようなクレーム。
だけど、2件は早急に対処しないといけない案件だった。
執刀に関するプログラムを書き換えシミュレーションさせ、類似症例でオペをし、確認をしてから早急にアップデートしないといけないと焦った。

東京大学病院に電話をかけ、手術部部長にお願いして類似オペの執刀をお願いした。
明日、同じ症例のオペが3件行われる事になっていて、その執刀を任せて貰う事にした。

翔琉は私が仕事復帰する事に対して反対してたけど、息子達は私がいつも通りに戻ったと喜んでた。

「もう、私、大丈夫だから、麻布の家に帰っていいよ」

「帰らない。家事と双子の世話をするから、ここに居させて」

テルパスの専務をしてるから翔琉も多忙なのに、夕方、毎日、息子達を幼稚園に迎えにいき、ご飯を食べさせてから、病院勤務を終えた私を迎えにきて、テルパスに連れて行く。

家事も率先してやってくれるから助かった。

息子達のクリスマスプレゼントを用意し忘れてた私の代わりに用意してくれて、夜もケータリングでケーキと料理を頼んでくれた。

親として不甲斐ない私の代わりに、翔琉が息子達を育ててくれた。

将生の元にいく事を諦めてない私。
医療手術ロボット竜馬の改良を終えたタイミングで、もう1度、決行する事にした。

感が冴える将也に悟られてしまうから薬物自殺はできない。

この手は使いたくなかったけれど、私は病院から持ち帰ったメスで手首にある橈骨動脈を切って、失血死する事にした。

仕事復帰はしたけど、私がまだ自殺願望があると思ってる翔琉。
常に誰かが私の側にいて、見張ってる。

翔琉が社外会議で身動きが取れない日に、体調不良なふりをして病院を早引きをし、決行する事にした。

息子達に血をみせるわけにはいかないから、バスタブに水を流し続けた状態で、手首局部麻酔薬の注射を打ち、動脈を切っても痛みを感じなくし、私は橈骨動脈にメスをあてた。

やっと将生の所へいけると思った。


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