バツイチになりましたが、元彼とヨリは戻しません

サレ妻だけど、子供が欲しい

結婚後は週に２回はあった夫婦生活。
それが、月に１回か、それ以下に落ちた。

仕事を理由に、夫は会社に泊まり込んでたと嘘を吐き、同僚と不倫してる。
月の大半、一緒に暮らしているマンションに帰ってこない。
夫婦生活をするタイミングが、ない。

ーーだから、子供を授かる事はできない。

『……誠司くん、やりたい』

排卵日に私から夫婦生活を誘うも『ごめん疲れてるし出来ない』と拒否された。
だから、夫が気まぐれで抱いてくれる時に使用した避妊具を使い、シリンジ法で妊活をしてた。

夫は私との子供を欲していない。

『今は仕事が楽しいから、仕事を優先したい』

仕事を理由に子作りを拒絶された。
私を愛する気持ちがなくなり、不倫相手に夢中な夫。

ーー夫が不倫してる事を、私は知ってる。

だけど、夫と離婚したくないから、気づいてないふりをしてる。
夫の不倫相手は、私の元彼の幼馴染だから。

彼女は、……私への復讐心から、私の夫を誑かし、不倫関係を持ってる。

「……どうしよう。幼稚園に事情を話して、頼翔を預かって貰わないといけない」

在宅勤務の気晴らし。
昼休憩の時間に、コンビニへおやつを買いに行こうと玄関から出ると、1ヶ月ほど前に越してきた、香坂伽音さんが困ってた。

香坂伽音さんは、シングルマザー。
5歳の息子、頼翔くんを1人で育ててる。

華奢で小柄な可愛い系の香坂伽音さん。
頼翔くんをセレブ御用達の麻布清和幼稚園に通わせていて、昼間家にいる事から、別れた夫か御両親から援助を受け、暮らしてると思ってた。

「なんでWEB会議にしてくれないのかな。イブウイルス対策でIT企業関連はWEB会議主流なのに、kittyの社長、頭、おかしいんじゃない！！」

香坂伽音さんの口から発された社名が耳に入り、思わず、彼女の方を振り向く。
午前保育で帰ってきた頼翔くんが、不安そうに香坂伽音さんを見上げてる。

「kitty、主人が勤めてる会社です。ご迷惑をおかけしてすみません」

「…… 真宮さん、イブウイルス落ち着いてますが、対面会議は極力避けた方がいいと御主人に伝えておいて下さい」

フリルのついた白のブラウジング・ブラウスに、淡いピンクの小さな花柄のシフォン・スカートを身に纏っている香坂伽音さんと、目が合う。

「ーー伝えときます」

香坂伽音さんは、超絶に可愛い。
モデルやアイドルよりも格段に上。
面食いの相葉社長の好みのタイプで、それで呼びつけられてるのかもしれない。

“お隣の香坂伽音さん、幼稚園に通ってる5歳の息子がいて、kittyに対面会議で呼び出されて困ってたよ”

“ウチのお隣さん、香坂さんなのかっ！！マジかっ！！香坂さん、結婚して、子供いたんだ！！”

“シングルマザーだって。だから、対面会議じゃなくなってWEB会議にして欲しいって”

誠司くんにLINEメッセージを送ったら、いつもは既録スルーなのに、珍しく帰ってきた。

“相葉さん、香坂さんに直接会いたがってるからな。伝えとてはおく。あっ、今日も納期のやつが終わらないから会社に泊まる。たぶん、明日も帰れない”

相葉社長は既婚者。
奥様は、元人気アイドルアキバ娘の櫻井遥香さん。
デキ婚した事になってるけど、実はその子供は相葉社長の子ではなく、離婚を考えてるらしい……。
遺伝子検査で自分の子供ではないとわかってはいても、人気インフルエンサーでママタレの櫻井遥香さんを手放したくない。

ーー仮面夫婦で夫婦関係を継続しているらしい。

誠司くんは、今日も明日も帰ってこない。

「……今日、排卵日なんだけどな。シリンジ試すしかないか」

コンビニにオヤツを買いにいくのを辞めて、家の中に入る。
冷凍庫にはもう、使用済みの避妊具のストックは1つしかない。

猛烈に寂しさが押し寄せ、涙が溢れ出る。
今日も、私の夫は、私以外の女性を抱く。