秘密の二足の草鞋

鳴宮鶉子

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東京は京都と違って、街並みを歩く人の速度がかなり速い。
作家兼アーティストとしてデビューをした時に東京で行われる授賞式等に呼ばれましたが、人見知りのわたしは、人前に出るのを躊躇い、欠席をした
そして、わたしの代わりにわたしの理想な女の子の絵を描き、アニメーション化させたVTRを作成し、それをわたしの分身として公に出した。
わたしの分身のキャラクターは、ひまわりが、似合う15歳ぐらいの小さな華奢な髪の長い女の子。
でも、本当のわたしは、背は標準で細身だけど凹凸があるグラマラスなボディな西洋人形みたいな姿形。
パパがイギリス人だから、容姿が日本人離れしてる。
ちなみにわたしはパパには会ったことがない。
ママがフランス留学中にわたしを身籠り、勝手に産んだから、パパはわたしの存在を知らない。
ママは帰国後、パパとは一切連絡を取らず居場所も隠してるから、ママに似た顔の作りで色素が薄い容姿をメディアに晒すことを躊躇った。
ママはパパにわたしの存在を知られたくないと思ってるから。
ママは外資系ファンドでバリバリのキャリアウーマンをしてお金を稼ぎ、わたしを育てくれた。
仕事が忙しくて、京都の純日本家屋の一軒家で日本人離れした容姿のわたしと年老いたひいおばあちゃんが2人で暮らしてたり。
だから、クラスメイトにからかわれ、人と関わるのが面倒くさく感じ、学校ではいつもひとりでいて、本ばかり読んでた。
自分の世界にひきこもり、家で創作活動に精を出した。
その結果、作家兼アーティストとしてデビューができた。
でも、公には顔は晒せない。

眠い目をこすり、昨夜は24時15分の終電で帰社したのに、朝も6時45分の電車に揺られて会社へ向かう。
4月1日に入社し、新入社員研修の時は定時に帰社できたのに、配属部署のwebエンジニア研修からはオフィスに泊まり込みでWebサイトのページやアプリを淡々と更新していく。
80名の同期のうち、20名が総務、20名が営業、40名が技術職。
わたし、杉瀬凛花は女子では珍しい技術職のwebエンジニアとして採用され、オフィスで無言でカタカタパソコンのキーを叩いてる。
アンドロイドみたいに無表情で、社畜化してる。
webエンジニアに配属された新入社員は3年間、処理能力からS、A、B、C、Dランク付けされる。
わたしは研修を始めてから半年でSグループまで上がった。
大学時代に大学に通いながら夜間の情報系の専門学校へ通い勉強をし、資格を何個かとった事と、
高校時代から知念日向として作曲しオリジナルのアニメーションで動画を上げ、HP等を自作していて、業務内容に慣れてるから能力的にSグループに選ばれたのもある。
Sグループは他のグループよりも難しい業務を多数扱う事から給料は残業代抜きで42万とDグループよりも10万高く、残業代に至っては時給5千円と稼げる仕事だ。
でも、知念日向として作家兼アーティストとしてバンバン作品を発表してる時よりも収入は1/5に減った。
帰社後に寝る間を惜しみ、知念日向として3ヶ月に1度、小説の原稿とオリジナルアニメーション付きの新曲を発表しているが、ブログやツイッターがおなざり、ファンが減りつつある

「杉瀬、早いな。アメバニュースのトリックページ更新終わった?」
同じSグループの天宮蓮翔が爽やかなスマイルで隣の席に座り、パソコンの電源を入れながら聞いてきた。
天宮は東京大学理科II卒でハーバード大学の院を卒業しMBIもとってる頭がかなりきれる男で、しかも容姿は高身長で細マッチョでさやわか系の美青年だ
容姿端麗、頭脳明晰で、小説の世界にしか存在しないような王子様のような天宮に、いつもドキドキ胸がときめくのを必死に堪える。
天宮は新入社員研修を終え、webエンジニアとして配属された後、そのままSグループで新入社員なのにリーダーを務めている。
わたしは配属されて3ヶ月後にDグループからSグループに飛び級で配属された。
Sグループの一員になり、天宮の隣の席で仕事を始め、もうすぐ半年になる
天宮の王子様オーラに萎縮し、淡々とパソコンをカタカタ無言でマッハ級に仕事をこなす事から、わたしは【アンドロイド】と周りから言われ、同僚や同期から仕事を横流しされたりし、常に仕事に追われてる。
パソコンでの仕事だから、横流しでわたしが処理してる事は管理職はわかっていても納期に間に合う事と仕上がりが重要な事から咎められたりとかはない。
そのかわり、業務件数が増え、わたしの評価はうなぎのぼりになる
天宮もチームリーダーだから難関の業務を数多く請け負っているが、毎日22時に帰社し、毎朝8時半に出社してくる。
毎月の成果グラフは1位が天宮で、2位はわたし。
勤務時間はわたしの方が長いのに天宮に勝った事がなく、涼しい顔でパソコンを触る彼の姿に見惚れながらも嫉妬を抱いてたりする。
「おはようございます。更新の業務はもう終わらせました。」
パソコンの方を見ながら、指は高速でキーを打ちながら、天宮だけに聞こえる声でこたえた。
どうしても、天宮を直視できない
わたしの容姿は決して悪くないとは思う。
フランス人と日本人のハーフだから色素が薄く、顔は大きなクリクリした二重まぶたの目に、高いスッとした鼻
くちびるはふっくらで小さめて、顔の輪郭が卵型で整ってはいる。
でも、ふんわか天パの茶色地毛はボサボサで、視力は悪くないけどパソコンで目を傷めないために大きめの眼鏡をかけていて、仕事に追われて身だしなみがかなりマズイわたしは女子力がかなりマズイ。
モテモテの天宮の隣の席で仕事をしてるから女子社員からの嫉妬が怖かったりもしましたが、わたしの女子力の無さに、敵判定されずにすんでる。

新年度になり、入社2年目なのに、わたしと天宮はベテランの位のしかもSグループに配属された。
この位になると取り組む業務が難関で、1日やそこらで取り組める内容でなく、1人では到底無理な内容に唖然とした。
3~5人でチームを組むところ、なぜか新入りのわたしと天宮が2人で組まされた。
「杉瀬、オレとペアを組むなら勤務時間は8時半から遅くても22時までだからな。それと、頼まれたからとリーダー以外からの仕事以外は請け負うな」
初日、天宮がわたしの前でわたしの目をみながら言われ、顔から火が出るぐらい赤面したと思う。
新入社員1年目はライブアメバの社員としての仕事が忙しく、【知念日向】としての仕事が激減し、知念日向がスランプで身を隠したというガセネタがネット上で話題になった。
作品を仕上げる時間がなく、内容が薄っぺらいものだったから余計にそう思わせてしまったのかもしれない。
天宮とペアで仕事をするようになり、【知念日向】としての仕事にも力を注げるようになり、仕事に追われるだけでなく楽しめるようになった。

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