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アンドロイド主任とハッピーエンド

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「心菜ちゃん、起きてる?」

理子ちゃんがわたしの部屋をノックする音で、わたしと律樹くんは目を覚ました。

「ごめん、今起きた。リビングに行くからちょっと待ってて」

慌てて律樹くんと服を拾って着る。
敷布団に赤い薄い血が付いていて、恥ずかしい。
後で洗わないといけないと思いつつ、律樹くんとリビングに行った。

わたしの部屋から律樹くんと2人で出てきたからそういう事かと、理子ちゃんと橘課長が察してくれてるのがわかり恥ずかしい……。

リビングの応接セットのソファに律樹くんと並んで座る。
L字型の大きいソファだから、斜め前に理子ちゃんと橘課長がいて、理子ちゃんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら沈黙が流れた。

「心菜ちゃん、あのね、わたし、結弦と復縁を通り越して結婚する事になった。それでね、今日から結弦のうちで暮らそうと思うんだけど、いいかな?」

理子ちゃんが申し訳なさそうに、わたしに言う。

刈谷駅付近の1人暮らし用の賃貸マンションは高く、2人で2LDKの賃貸マンションを借りた方が得だからと、『女2人で生きていこう!!』とルームシェアを始めた。

理子ちゃんとの2人での暮らしは、お互い適度に距離を置いて楽しく過ごせた。

理子ちゃんと一緒に暮らせなくなると思うと、寂しく思った。

でも、理子ちゃんから橘課長と復縁し結婚をすると報告を受けて、理子ちゃんが自分の気持ちに素直になり幸せを掴んだ事が、わたしは嬉しかった。

「理子ちゃん、わたしの事は気にしないでいいよ。理子ちゃんが橘課長と寄りを戻すだけでなく結婚すると聞いて、良かったって、思ってる」

わたしがそう言うと理子ちゃんはほっとした表情を浮かべた。

「それで提案なんだが、家賃の問題もあるし、真宮くん、ここで心菜ちゃんと暮らす気無いか?」

突然、橘課長が律樹くんにとんでもない事を提案してきた。
律樹くんは初めは驚いた表情をしていたけれど、

「そうですね。仲の良い心菜と香坂さんを引き離すのは可哀想ですし、私がここに引っ越してきます。私も心菜と仕事だけでなくプライペートも一緒に居たいと思ったので」

律樹くんがわたしの方を見て、優しく微笑みながらそう言ってくれた。

わたしと理子ちゃんの ルームシェアは解散し、お互いカップルで暮らす事になり、理子ちゃんは自分の部屋にある衣類と私物だけを橘課長と暮らす家に持って行き、その他の一緒に買い揃えた家具や家電はわたしに残して行ってくれた。
律樹くんも衣類とパソコンなどを1人暮らしをしている賃貸マンションから車で持って来て、理子ちゃんと入れ替わりでわたしと一緒に暮らし始めた。

同じマンションに住んでいるから、週末に一緒にご飯を食べに行ったり、うちに招いてホームパーティを開いたりした。

そんなある日、わたしの身体に異変が起きる……。
好んで毎日お酒を飲んでないわたし。久しぶりにうちで夜にホームパーティーを開き、ビールを飲もうとしたら一口飲んだだけで気持ち悪くなり吐いてしまった。

「心菜、……大丈夫?」

トイレに着いてきてくれて背中をさすってくれる理子ちゃん。

「食あたりかな……」

あたるような物を食べてなくて、ふと、生理が3ヶ月来てない事に気づく。

わたしのはっとした表情を見て鋭い理子ちゃんに、

「妊娠して悪阻がきた?」

とリビングにいる律樹くんと橘課長に聞こえないよう小さい声でわたしに聞いてきた。

「たぶん………」

理子ちゃんが「ツマミを追加で買ってくる」と飲んだくれてる男どもに言ってドラックストアに妊娠検査薬を買ってきてくれて、検査をしてみた。

「……ばっちり陽性だね。避妊してなかったんだ」

「……初めてした時にゴムが無くて。でも外に出したらしいから大丈夫だと思ってた」

わたしのお腹の中に命が芽生えてると思うと、嬉しかった。
律樹くんと交際始めてからは3ヶ月だけど仕事のパートナーとして4年半一緒にいたから、お腹に芽生えた命を産み、律樹くんと育てたいと思った。

理子ちゃんとリビングでビールを飲みながらすき焼きを食べてる律樹と橘課長の元へ向かう。

「心菜ちゃんから報告があります。そこの2人、注目!!」

理子ちゃんが手を叩き、律樹と橘課長がわたしの方を見た。

「……わたし、妊娠したみたい。たぶん、3ヶ月」

律樹がどうリアクションするか怖かった。

「心菜の月一でくるやつが来ないからもしかしたらと思ってた。そっか、心菜のお腹の中に俺の子がいるんだ。嬉しい。順序が違うけど、心菜、結婚して一緒にこの子を育てよう」

律樹は予想していたようで、わたしに優しく笑いかけて、わたしを安心させてくれた。

わたしの妊娠を知り、35歳の橘課長は心底羨ましそうに、

「せっかくだから、俺たちもできちゃった婚でなく授かり婚をするか?」

と言って、理子ちゃんに睨まれてた。

橘課長はデンタの次期社長で、3ヶ月後の6月に結婚式を挙げる事が決まってる。

「……実は俺、トミタの経営一族の跡取りの三男なんだ。
三男坊だから社長にはなれないし、デンタにこのままいるか、4月にトミタに戻るか悩んでる。
あっ、結婚に縛りは無いし、俺は跡取りにはなれなかったから、結婚式を盛大にあげないといけないとかは無い」

ハンサムでハイスペックな律樹が仕事に関して冷静沈着で無表情なアンドロイドみたいだったのはトミタの社長になれなくてトミタでなくデンタに就職をし、仕事に関して完璧にこなしていてもやりがいを感じてなく無気力だったからと知った。

「真宮、デンタにいろ。俺が社長に就任したらお前を副社長にする。一緒にデンタを守ってくれ!!」

橘課長が律樹の両肩に手を置き、デンタを辞めないよう説得し始めた。

「ありがとうございます。この4人での和気藹々とした関係が好きだから、デンタに残ろうと思います。その方が、心菜と子供にとってもいいと思うし。心菜、幸せになろうな」


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