Love is over

鳴宮鶉子

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Lonely woman's daily life

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「医師免許とったのに、薬学部に編入して創薬研究員になるなんて、藤宮さんはキャリアを無駄にしてます!!」

医学部を卒業後、初期研修を受け、一応ドクターの免許は持ってる。
その後、2年間、医師として海外青年協力隊として、エポックウイルスが流行しているアフリカに渡り治療に携わった。

ワクチンを投与していたから私は感染せずに済んだ。
アウトブレイクした国を転々と渡り歩き、1年半、患者の治療に当たった。

私が創薬研究員になったのは、流行病の治療方法が、経口または点滴の補液で行う支持療法や特異的な症状への対症療法しかない事から、医師としてではなく、薬とワクチンを開発し、多くの命を救いたいと思ったから。

帰国後、薬学部の3年次に編入し、卒業後、私は精密機械製造メーカー最大手のオリパスの子会社、オリパス製薬に入社した。

オリパス製薬は、抗インフルエンザ薬とワクチンの開発で成果を出していて、効く薬がなく対症療法しかないといわれてるウイルス、ロタとノロと、アデノの症状を緩和させる薬も開発してる。

抗ウイルス薬の創薬は大手よりも中堅の方が開発に力を入れていて、オリパス製薬はその分野で最大手の会社だ。

「医師をするより、抗ウイルス薬の創薬研究に携わり、薬やワクチンを開発した方が多くの命を救える」

抗ウイルス薬の創薬研究員の仕事に携わるようになって2年。

抗インフルエンザのワクチンと薬の開発プロジェクトメンバーとして、私は仕事に日々、打ち込んでいた。


金曜日の午後9時。
仕事から帰ってからシャワーを浴び、菫色のスマートエレガンスなワンピースを身にまといと少し濃い目にメイクをしてから格式が高いホテルの会員制BARへ向かう。

そして、マスターがシェーカーを降るカウンターの席に座る。

『一緒に呑みませんか?』

1人で呑んでたら、会員もしくはホテルに宿泊する男性が声をかけてくれて、カクテルを2、3杯ご馳走になってからホテルの部屋に誘われ、ワンナイラブを楽しんだ。

中高一貫校で出会い、初期研修医を終えるまで付き合っていた恋人と別れてから、気づけば8年、私は恋人という存在がいない。

だから、その場限りの割り切った関係でSEXをする相手を求めてる。

海外青年協力隊でアフリカに派遣されていた時は、性欲は全く湧かず、ひたすら医療行為に従事していたけれど、日本に帰国し、薬学部の大学に編入してからは疼いてしまう体を満足させるために、ホテルの最上階にあるBARの会員になり、そこで出会った男性とワンナイトラブを楽しんでた。


「藤宮美羽、男狩りか!!34歳なんだから、特定の男を作れよ!!」

「樋山くん……フルネームで名前を呼ばないでくれるかな」

中高一貫校時代の同級生、樋山蓮が飲みに来ていて、私に気づき、隣の席に腰をかけた。

大学時代にIT企業のアメバエージェントを立ち上げ社長をしている樋山はかなりモテる。
モデルやアイドルを喰い物にしていて、ワイドショーを騒がせてる。

「34歳だともう肌に艶も張りなく、感度も悪くなってそうだな。もう、相手してくれる男いないんじゃないか?あっ、俺、今日、フリーだから、ボランティアで抱いてやろうか」

「……酷い言われようだけど、久しぶりに樋山としたい」

性病を持ってなくて、中年太りをしてない、そして顔が悪すぎなければ、誰でもいい。

多忙な癖に毎日スポーツジムで2時間汗を流し、見事な細マッチョな体つきをしてる樋山。
タイプではないけど、彫りの深い眉目秀麗な男らしい顔立ちをしてる。
何より、テクニックとスタミナがあるから、朝方まで楽しませてくれる。

普段、特上級の女性の体を楽しんでる樋山にとっては私の体なんて、お粗末過ぎるだろうけど、丁寧に抱いてくれる。

「じゃ、スイートルームに行きますか!!」

樋山が、にかっと笑みを浮かべ、私の手を取る。
女性として産まれた喜びを感じるひとときが送れると、私は胸が昂まった。

ピースハイアット 東京の51階、地上450mからは都内が一望できる。
最高の景色を愉しみながら、繰り広げられる愛欲の情事。

赤、青、黄、白の人工灯がチカチカ光り輝くその景色を見下ろしながら、バックの体勢で思いっきり激しく腰を打ち付けられるのが好き。

ガラスの壁に両手をつき、都心のきらびやかな夜景を眺めながら、お気に入りのワンピースを着たままショーツとストッキングを脱がされて、避妊具を装着させた雄竿に一気に貫かれた。

潤ってない蜜壺にいきなり埋め込まれ痛みを感じるも、すぐに愛蜜が溢れ出て、快感が走る。

熱をもった剛直によって、潤ってない膣壁を無理矢理広げられたのに、すぐに愛蜜が溢れだし、淫な水音を奏でさせ、喘いでしまう。

リズムかるに腰を打ち付けてくる。
浅く深く角度を変えながら抽挿をされ、最奥を強く突かれるたびに、弓なりに体を反らせ全身を震わせた。

樋山にされてる行為だけど、私は頭の中では唯一愛した男に抱かれてた。

「……美羽、お前、極上の体をしてる。堪らない。もたない……クッ」

何度も達し、その度に樋山の雄竿を締めつけた。
奥歯を噛みしめ、必死に耐えていた樋山だけど、限界がきて、私の腰を掴み、激しく律動させ、子宮口を貫いてくる。

あまりの心地がいい快楽に、視界がチカチカし、体もガクガクと震えた。
それと同時に樋山が熱い欲望をドクドクと放出する。
膜越しに感じる緩やかな振動と温かさに膣壁がキュンとなり、達したばかりの雄竿を締め上げる。

「……本当に、堪んねー。グラドルよりも断然イイ。クセになりそう」

達したばかりなのに硬度を取り戻した樋山が、そのまま私を抱こうとする。

「……一緒にお風呂に入ろう。さすがにこのままやるのはマズイ!!」

「……そうだな」

樋山とは体だけの関係。
だから、妊娠なんてしたくない。
熱をもった剛直が蜜壺から抜かれ、樋山はバスルームへ向かう。
大理石でできたバスタブに湯を溜めにいった樋山が戻ってくると、夜景の光をバックにお互いの服を脱がしあう。

この日、明け方まで樋山に体を求められた。

金曜日の夜は明け方まで体を求め合い快楽に溺れるから、次の日はチェックアウトギリギリの昼前に目覚める。
交代で情事でベタつく体をシャワーで洗い清め、ホテルを出た後はそのまま解散。

樋山だけでなく、その場限りの関係を持った人ともそう。

見知らぬ相手の場合は、私が目覚めた後に居ない事が大半。
枕元にさり気なく諭吉が3~5枚置かれてたりする。

たまに、“セフレになって欲しい”と口説いてくる男もいるが、連絡先は絶対に交換しない。
BARでまた会ったらその時にと声かけをし、シャワーを浴びたらそそくさとホテルから出ていく。

そして、新宿駅側にある2LDKのタワーマンションに戻り、溜まってる洗濯物と家の掃除して、来週売り買いする株の銘柄を検討し、決める。

初期研修医を終え、医師としてエポックウイルスが蔓延する地に行った私に対して、両親と兄は呆れてた。
しかも、帰国後に医師をするのでなく、薬学部に編入したことで家族から見放されてしまい、薬学部に通う学費を稼ぐために、私は救命救急外来の医師として休日と夜間にバイトとデイトレードをしてた。

思いのほか感が冴えていてデイトレードでそれなりの金額が稼げ、今も創薬研究員をしながらやってる。

だから、新宿駅から徒歩5分の所にあるタワーマンションの中層階を分譲する事ができた。

私は結婚するつもりもなく、恋人を作る気もない。
住む家もあり、週末にBARで適当な男で性欲を満たせばいい。

この生活をずっと続けていくと、私は思ってた。




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