復縁なんてしない!!

鳴宮鶉子

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元彼からの妨害

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「……専属ありがとうございますと言わないといけない所だけど、かなり迷惑。3ヶ月間、私の同伴とアフターをママにお願いしたって、辞めてくれない!!」

コロアの流行が治り銀座クラブの休業が明けた。
ママに1千万以上のお金を渡し、私を専属にした蓮。
ママから他のお客様の相手はせず蓮だけを接客しろと言われ、顔を引きつらせて黒服が運転するベンツに乗り込み蓮を迎えにいった。

同伴は入店前にホステスとお客様が一緒にご飯を食べたりデートしたりする事で、18時に六本木にあるアメバステーションに蓮を迎えにいき、蓮が予約した赤坂にある料亭に連れていかれた。

「同伴とアフターで美玲がおっさんに抱かれてると知った以上……グラブを辞めるまでお前を俺の専属にする」

ライトアップされた庭園を見える個室に案内され、仲居さんが懐石料理のコースを配膳し出ていき、2人きりになってから、クラブのキャストの立場を忘れ、蓮に歯向かった。

「はっ、蓮、私と別れたの、私が他の男と身体関係を持ったと思わされたからだったよね?私、蓮と別れてから銀座のクラブでキャスト始めて、かなりの人数の男に抱かれてきたよ。そんな女、嫌なんじゃないの?」

「……そういう女にしてしまったのは俺だ。俺と別れた後にしでかした事は目を瞑る。美玲に手を出した男達を地獄送りにしたいぐらい腹ただしいが。俺がせれなとやったから自暴自棄になったんだろ」

いきなりLINEメッセージで別れを伝えられ、別れを切り出された理由を問いただしに蓮がいるアメリカへ飛び、アパートでみたあの光景……。

中高一貫校時代の6年間、常に隣にいた愛していた人の裏切り行為に私の心はガラスが砕けるように粉々になった。

「……美玲の心を取り戻したいから、同伴とアフターに美玲を連れ出すがお前を抱かない。飯をさっさと食って店にいこう。」

銀座クラブでの時間は、蓮にずっと監視された。
28歳になると常連客を新規でとるのは難しくなる。
通ってくれる客の数も年々減ってくるから卒業を考える歳で、ママは私をアメバステーションの社長をしてる蓮と寿で引退させようと思ってるのかもしれない。

ママにクラブを辞める事を伝えた。蓮が私を辞めさせて側に置きたいと話してたらしく、即日で辞める事ができた。

潮時だとは思っていたけど、こんな引退はしたくなかった。


「椎名さんが火曜日と木曜日以外に出勤するって珍しいですね!!」

「……仕様についての確認ができるし、このプロジェクトが終わるまでは出勤します」

ソミーが電気自動車の開発に着手するにあたり、スマートスピーカーや遠隔操作機能などの機能をつけるため、かなり複雑なシステムを組まないといけなく、私の技量では在宅勤務で取り組むのは無理と判断し出社する事にした。

デイトレードの方は株価が目論見通りに戻ってきてるけど、でもまだ下がる前よりは安いから売却するタイミングではないと判断し、しばらくは様子見する事にした。

『椎名さんが大学院時代に開発したスマートスピーカー、かなり高性能だったね。あんな感じで自動車用のもお願いしていい?』

大学時代に4年間かけてノートパソコン用のスマートスピーカーを開発し、ソミーのノートパソコンVAIOSに装備された。
それがきっかけでソミーにスカウト入社し、特別待遇で在宅勤務が許された。

『椎名さんって、蓮の彼女だっただけあって優秀なんだな』

火曜日と木曜日は東條専務は部署にいるけど、他の曜日は滅多に顔を出さない。
蓮がいると蓮に気を使ってか、蓮が私に指示し、東條専務と話す事ができなくて近づく事もできない。

蓮がいない日だと、東條専務は部署に顔を出した際に私に話しかけてくれる。

「……AIが自然なコミュニケーションをとれるってかなり高度な事だよ。椎名さん、さすがだ!!」

誉め上手で面倒見がよく、さり気なくアドバイスをくれるから蓮が東條専務を慕う理由がよくわかった。

「椎名さん、在宅勤務が条件でうちに入社してくれたのに毎日出社させてすまないな。体調が悪い時は休んでいいから。無理するのが1番いけないから」

東條専務は私の体調を気にして気遣いもしてくれる。側にいるだけで癒される。

ーー東條専務の事を私は本気で好きになってしまった。

でも東條専務は、私が蓮の元カノで、蓮が私と寄りを戻したいと思ってるのを知ってるから、大切な後輩で仕事の右腕を出し抜くような事をしそうにない東條専務だから、私を恋人にはしない気がする。

東條専務に、どう好意を伝え私の事を好きになって貰うかを悩み考えた。

そして、私もせれなちゃんみたいに手段を選ばない事にした。


蓮のセンサーは鋭い。私が東條専務に惹かれてるのをキャッチし、仕事があがる時間帯にソミーに顔を出す。

アメバステーションの社長は暇なのか、蓮は常に私を監視してる。

終業後に東條専務と2人で食事に行きたいなと思っても、東條専務は夜にお父様の社長に呼び出されて、花嫁候補と食事に出ていて誘うのは不可能。
東條専務は年齢的に結婚を急かされついて、だから相手が決める前に気持ちを伝えて私を選んで貰わないといけなくて私は焦ってた。

「……頭が痛い。早退します」

蓮がいない月曜日の午前。

東條専務が部署に顔を出したタイミングで私はパソコンのキーボードから手を離し、こめかみを手で押さえた。

蓮に捨てられた精神的ショックから私はメニエール発作を起こすようになった。
常にメニエール発作が起きてる状態の中で生活をしてるから、発作に慣れてはいるも、最近、身体がふらつき重度な症状が出ていて体調が本当に悪かった。

「椎名さん、大丈夫!!家まで送っていく。病院にも行った方がいいな!!」

東條専務がすぐに私の所に駆けつけてくれて、肩を支えてくれた。

「……すみません。新橋にある真田脳神経外科に連れていって下さいませんか。後、蓮に私が倒れた事は絶対に伝えないで下さい」

タクシーを呼んで多忙な東條専務が私に付き添ってくれて、ふらつきがあるから診察も一緒に受けてくれた。

「椎名さん、……悪化してますね。メニエール発作が常に起きてる状態で出歩いたら危ない。しばらく自宅安静で仕事も休みなさい」

主治医の真田凛子先生に怒られた。真田先生が東條専務に私の病状について説明し、ストレスが原因で起きてると伝えてくれて、私の家まで送り届けるタクシーの中で蓮に復縁を迫られるのがストレスだと打ち明けた。

東條専務は私と蓮が別れた理由をたぶん知ってる。

「しばらくの間、在宅勤務をして。仕事についてはテレビ電話か俺が椎名の家に指示しにいくから、ふらつきが治るまでは家から1歩も出ないように。何か必要な物があったら俺にLINEを送って」

マンションの部屋の前まで東條専務が送ってくれて、帰り際にそう言って私の頭を撫でてくれた。

メニエールの発作は常にある。
でも、慣れれば普通に日常が送れるから、就職の際に在宅勤務で採用して貰うために助かったぐらいで、治療は薬物療法だけでそれ以外は特にしてなかった。
真田脳神経外科は心療内科も併設していて、カウンセリングを受けるよう言われたけど、メニエール発作が起きてしまった原因について精神科医とカウンセラーに打ち明けれなくて、脳神経外科でメニエール発作を和らげる薬のみを処方して貰い飲んでた。

在宅勤務は可能だからと、出勤せずに仕事をする生活に戻り、ストレスの原因が蓮と東條専務に打ち明けたから蓮が私のマンションに押しかけてきたりとかはなく、テレビ電話の対応も蓮でなく東條専務で穏やかな日々を過ごす。

直接東條専務に会えないのが物足りないけれど、日に何度か時間を作ってテレビ電話をかけてくれるのが嬉しくて、ずっとiPhoneを握ってた。

でも、直前、東條専務に会いたいと思ってしまう私。
蓮がソミーにいない時間だけ、出勤しようと金曜日に久しぶりに職場へ足を運んだ。

スマートスピーカーのシステム開発に携わっていて、“ソミー、(渋谷)までよろしく”で自動運転するようプログラムを組んでいて、観光地案内の設定なども他のプログラマーに指示し、順調に開発は進んでた。

「……椎名さん、無理はしない方がいい」

「……大丈夫です。在宅勤務だと組んだシステムの確認ができないので、その確認だけしにきました。それが終わったら帰ります」

私が出勤したから東條専務が部署に駆けつけてきて、体調を気遣って側で見守ってくれた。

メニエール発作は悪化していて、顔色が悪くふらついていて、でも、私は終業後まで仕事を続けた。

金曜日だけは蓮はソミーにこない。

「椎名さん、家まで送っていく」

「ありがとうございます。あの……、東條専務に相談したい事があります。この後、食事をご一緒できませんか?」

東條専務は先約にお断りの電話を入れ、私を食事に連れていってくれた。



グランドプリンセスホテル品川の最上階にある日本料理のお店で、すき焼きメインに豪華なお刺身の盛り合わせと焼き鳥を注文する。

「ここ、うな重も有名だから」

うな重も追加で注文し、私に勧めてくる。
メニエール発作で食欲が湧かず、在宅勤務をしていたから家に引きこもりがちで買い物にも行かなかったから、少し痩せた気がする。
銀座のクラブでキャストをしていた時は体型維持のために毎朝ジョギングをしていたけど、今はその必要がなく、運動不足な生活を送ってた。
身体がふらついて動ける状態ではなく、運動ができないのもある。

「明日、付き添うから病院にいこう。顔色が悪いし、かなり痩せた気がする。……もしかして、蓮が付きまとってたりする?」

「……付きまとわれてないです」

蓮からLINEメッセージや通話がかかってくるけど、東條専務が私に仕事の指示を出す事になったから出ずに無視してる。
住んでるマンションはたぶん知ってる。知っててもセキュリティーがしっかりしてるタワーマンションだから、コンシェルジュに止められ入る事はできない。

「そっか、ならよかった。出社する日は連絡くれたら迎えにいく。1人で出歩くの危ないからしばらくは家でゆっくり休んで。明日、病院に連れていくからな」

仕事中に何度もめまいでくらっとしていて、そのたびに東條専務に早退を勧められ、医務室に連れていかれそうになった。

メニエール発作が悪化してる理由はわかってる。

食事を終え、椅子から立つと意識が飛ぶくらいのめまいがして、倒れそうな私を東條専務が支えてくれた。

「……1人で大丈夫か?」

「……ちょっと今日は無理したみたいです。すみません。家に帰るのがつらいので、ホテルの部屋をとって、部屋まで連れていって下さいませんか」

メニエール発作がでてる時にタクシーに乗ると、車酔いで猛烈な吐き気と頭痛で苦しむ事になる。

東條専務はメニエールについて色々調べて私の状態を理解してくれてる。

「……わかった」

一階下にあるデラックススイートルームの部屋まで、東條専務は私を抱き上げ、連れていってくれた。





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