復縁なんてしない！！

追い込まれた悪女

翔琉さんがせれなちゃんを刑事告訴し、その裁判が今日行われる。

せれなちゃんが私に対して行った卑劣な行為の証拠を突き出し、翔琉さんが民事裁判でなく刑事告訴に踏み切った。

有罪を勝ちとる事が難しい事例だけど、ソミーグループの顧問弁護士全員で対策をしたから大丈夫だと飯塚さんが言ってた。

せれなちゃんが個人探偵を雇って、ずっと私を監視しているのが恐怖で、メリエール発作を過度に起こし続け、薬も飲んでなかった事から、裁判が行われる前日に、私は失神して昏睡状態になってしまい、私の様子を見にきた飯塚さんが真っ青な顔をしてホテルのベッドに横になってる私をみて救急車を呼んでくれて近くの総合病院の産婦人科病棟に運ばれてしまった。

意識レベルが低下し、流産もしかけていて、私自身もかなり危ない状態に陥っていた。
産婦人科医と耳鼻咽喉科医と脳神経外科医と診療方針の話し合いが行われ、次の日目覚めた私に医師が病状と治療に関する説明にきて、
『妊娠中に飲める薬がないから赤ちゃんを諦めた方がいい』
と言われ、それに対し拒絶し、今に至る。

ストレス・睡眠不足・疲労が原因で、お腹の赤ちゃんを失いかけてる事に対して、病室で1人涙を流した。

特別個室にしばらく入院する事になった。私が安心できるよう常に探偵事務所の誰かが護衛で病室の外にいてくれる。

ーーそれでも、せれなちゃんが何かしてこないか怖かった。

飯塚さんや他の探偵事務所のスタッフの方がずっと私の側にいたから、命を狙われたりはしなかったけれど、身の危険を感じる事が何度かあった。

だから、
『吉川せれなのクレジットが止められたから、探偵を雇うお金はないはずだから、もう、大丈夫だと思う』
と、海堂さんが翔琉さんが雇ってる探偵事務所の人から情報を得てきて教えてくれたけど、不安が拭えなかった。

刑事裁判が終わる時間帯に判決がどうなったか気になり、iPhoneでSafariを開きヤホトピを見てたら、新着で“フジテックの悪徳令嬢　懲役3年　有罪判決”と入ってきて嬉しかった。

ーーせれなちゃんに、傷害罪と名誉毀損罪で有罪判決がでた。

せれなちゃんが私にしでかした卑劣行為がすべてトピック記事に記載されてた。

テレビをつけると判決後の特番ニュースが流れてた。
せれなちゃんのお父さんが娘がしでかした卑劣行為に頭を下げ、娘を更生させるために罰金は出さず懲役5年をさせ、刑期が終わったら海外生活をさせて日本の地を2度と踏ませないと言ったのを聞き安心した。

そして、
『婚約者を傷つけた卑劣行為に刑が処され、嬉しく思ってます。彼女を傷つけた事を俺は決して許さない』
と翔琉さんがインタビューに応じてる姿を見て、涙した。
翔琉さんが私のためにせれなちゃんと闘ってくれた。
今度は私が頑張る番。
翔琉さんの所に戻り、翔琉さんの奥さんになり、翔琉さんの赤ちゃんを無事に産んで一緒に育てる。

ーー私は、全てが終わったと安堵してた。


せれなちゃんが拘置所に送られ刑務所に送りになるとわかり、もう私に嫌がらせ行為をしてこないと思い、安堵感から私は久しぶりにぐっすり眠ってた。

メニエール発作で気を失ったのとは違って心地のよい眠りの中にいた。

それが、急に胸が痛くなり全身が痺れて苦しくなった。
目を覚ますとナース服を着たせれなちゃんがニヤッと恐ろしい笑みを浮かべて立っていて、恐怖感に苛まれた。

ーー夢なのか現実なのかわからない。

苦しむ私を嬉しそうに見つめるせれなちゃんが私の耳元で言い放つ。

「アメリカで死刑執行に使われるミダゾラム、臭化ベクロニウム、塩化カリウムを点滴薬に入れたの。ゆっくり苦しんで死んで。美玲、いつも父と母に貴方と比べられ、辛かった。それに私が本気で好きになった人はいつも貴方の事が好きで、貴方の存在が邪魔だった。貴方は私の人生を台無しにした。死んで継ぐなって」

苦しくて声が出ず助けも呼べない私は、もう死ぬんだと諦めた。
死ぬ前に、テレビ越しだけど最後に翔琉さんの顔が見れてよかったと思った。

苦しくて意識が無くなる寸前に、
「ーー美玲、無事か！！」
と、愛しい人の声が聞こえた。

死ぬ前の幻なのかと思ったけど、本物の翔琉さんが私のところに駆けつけてきてくれて、私の右手を握りしめてくれた。
すぐに看護師さんが毒薬が入った点滴を抜き、別の点滴を私の腕に刺し、私を生かすための処置をしてくれた。

走って逃げ出したせれなちゃんは、病室の外で現行犯で刑事さんに逮捕された。

「……美玲、間に合わなくてごめん。苦しい想いをさせてしまった。でも、絶対に助けるから！！」

跪いて私の手を握り、私の顔を心配そうに見つめながら翔琉さんは言う。

なんとか意識を保ってたけど限界がきて、私は眠りについた。