鬼畜元彼と激甘今彼、結婚するならどっち？

誠実すぎる仮染め夫

「新井先生、藤島先生といつ離婚するんですか？」

藤島先生は循環器センターの結婚したい男ランキングＮｏ．1。
女遊びが激しい鬼畜な最低男、相良蓮との結婚を取りやめにするために、私と契約結婚している事は病院関係者全員に知れ渡っている。

「母が6月に結婚式場を予約してるから、それまでは夫婦のふりができたらありがたいなと思ってます」

結婚式には循環器領域の大学病院教授や有名な医師、医療機器メーカーの社長をお招きして、盛大にあげるらしい。
蓮との結婚を避けるなら、それまでは藤島先生と戸籍上の夫婦でいたい。

「藤島先生を新井総合病院に連れていかないよね？」

「そのつもりはありません。両親から言われても、拒絶します」

契約結婚とわかっていても、藤島先生の事が好きな女医や看護師は、私に藤島先生をとられないか気が気ではないらしい。

戸籍上夫婦でも同僚でしかない。
これからの事についての話し合いで仕事の後に食事によく行くけど、その後すぐに解散で、オンコールがかかってくるかもしれないからアルコールを摂取しないから、一夜の過ちは起きない。

「……蓮、相良先生も最低極まりない男ですが、葛城病院にいた時に慕っていた指導医も酷い男で、私、付き合ってると思ってたら遊びで、救命救急センターでこき使われていて、挙句は自然消滅で、その彼、創業者一族の御令嬢とデキ婚しました。優秀な男性医師って、そういう人が多いのかなと思ってしまいました」

蓮が優秀な男性医師の大半が女遊びをしていると言っていた。
実際に、佐久間先生もしていた。

「……人より性欲がないのもあり、欲情に駆られる事は少ない」

藤島先生と長い時間を共にしている。
オペチームのメンバーで指導医なのもあり、常に側にいる。

「……そうなのですね」

藤島先生は私に対して同僚以上の感情は抱いていない。
私は彼の性的対象ではないのだろう。
33歳と若くなく、容姿も普通だ。
女性的な魅力はない。

「俺も男だから、駆られる事はある。理性で本能を抑えるけど。……新井先生に欲情してる事、ある」

「えっ！？」

「新井先生に一目惚れした。指導医として側にいて、新井先生が欲しいと思った。だから、契約結婚持ちかけた」

真面目で誠実な藤島先生。
私の事を好きになってくれていた。

「私も……藤島先生の事が好きです。契約結婚ではなく一生を共にする夫婦になりたいです」

「新井……理知、俺の奥さんになって下さい」

「はい」

藤島先生こと大雅さんの事が好きな循環器センターの女性達を裏切る事になったけど、私は彼と書類上だけでなく心も体も、彼の奥さんになった。