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【KAC20241】黒猫サファイアの出張▪看板猫 ── 飲食店の掟《おきて》 ──

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【黒猫サファイアside】

 

 お客様が来店したら、お茶とオシボリ、メニューをお持ちする。
 アルコールの注文があれば、サービス無料のお通しとアルコールを出して、お待ちいただく。

 飲食店によっては、お通しが有料な店も多いけど、七之助の店ではサービス無料で出している。
 お人好しの七之助らしいけど、そこにはがあると知った。

 本来、ボクは本屋の看板猫なんだけど、七之助の愛猫である三毛猫のさくらが、
『どうしても見たいテレビ番組があるから』と代役を引き受けている。

 初めての七之助の店での代理看板猫だけど……

「三毛猫のさくらちゃんも可愛いけど、黒猫も良いわねぇ~ 」

 そうでしょう、そうでしょう、ボクの魅力にお客様はメロメロさ !

 ガラガラ ガラガラ

「よう、大将 ! 四人なんだけど、席は座れるかい ? 」

「いらっしゃいませ。
 こちらのお席にどうぞ 」

 七之助の嫁、栞ちゃんがお迎えすると、お客様の目尻が下がっている。
 七之助の店は、年配者が多いので自分の娘か孫みたいに感じるのだろうね。

「大将、とりあえず生ビールを四つ頂戴 ! 」

 お客様の注文に、ことを守って、栞ちゃんが生ビールをサーバーから注ぎお盆に乗せて持っていく。
 そして、二人の子供である八重やえ十八番エースが、お通しを持って行くと……お客様は大喜びしていた。

 それはそうだろう、自分達の孫か曾孫ひまごくらいの子供が親のお手伝いを一生懸命にしているのだから !

 流石、七之助 !
 趣味で書いているけど、商売は上手いよね !

 えっ、『ボクは手伝いをしないのか ?』だって……
 ボクは可愛い黒猫だから可愛いがられるのが仕事さ !
 だいたい『猫の手』なんて、前々回のKACのお題じゃないか !
 そんな昔のことなんて、覚えている人なんていないさ。

 庭に面している部屋には縁側で、お客様からおこぼれをもらっている野良猫たちが居る。
 普通ならクレームがきても仕方がないのだけど、このあたりは住む人がないままに、荒れはてた家屋。廃家 はいかが多いので、ネズミが増えているのだ。

 だから、野良猫たちが番猫をしているお陰で、店にはネズミが寄り付かない。

 ボクやさくらは可愛いがられるのが仕事だから、ネズミなんて取らないよ。
 何処かの青いタヌキみたいにネズミが怖いワケでは無いからね !

 本屋の方は大丈夫か、だって ?

 立っているものは親でも使え、と言うだろう。
 本屋の方は栞ちゃんの両親が見ているから大丈夫 !
 ボクの代理で義妹のルビーが看板猫をしてるしね。

「サファイアちゃん、マグロ食べるかい ? 」

 「ニャァ~ン ❤️」

 お客様のご指名に愛想笑いをするボク。
 役得やくとく、役得 !

 お客様にサービスしているんだから、後から七之助にもアルバイト代を請求しないとね。

 ガラガラ ガラガラ

 また、お客様が来た !
 サービス、サービス !


◇◆◇◆◇◆◇

作者より

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第1回お題

書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』

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 用に書いた作品です。
 カクヨムだけに載せるのは、勿体無いので此方にも載せますね。
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