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第3章:臨界突破、反撃の狼煙
第11話:蛇頭を討て
しおりを挟む「雑魚がいくら集まろうと、結果は変わらん!」
禍月は言い放ち、両手を広げた。
彼の周囲の空間が、陽炎のように揺らめき始める。空間支配……その能力は、攻防一体、まさに絶対的な力を彼に与えていた。
「来るぞ!」
恭介が叫ぶと同時に、禍月は歪めた空間から無数の不可視の刃を生成し、四方八方から4人に向けて撃ち出した!
「させない!」
恭介は即座に多重次元防御フィールドを最大出力で展開。
不可視の刃はフィールドに接触し、火花を散らして弾かれる。
しかし、その威力は凄まじく、フィールドの一部に亀裂が入った。
「援護する!」
詩乃がライフルのスコープを覗き込み、煉獄の能力発動の僅かな隙を突いて、特殊なエネルギーフィールドを中和する弾丸を撃ち込む。
「チッ……!」
禍月は舌打ちし、空間障壁を展開して弾丸を防ぐが、一瞬、不可視の刃の制御が甘くなった。
「今だ、優希!」
「はあっ!」
その隙を見逃さず、優希が禍月へと肉薄する。
彼女の見えない剣が、常人には捉えられない速度で、空間の歪みそのものを斬り裂くかのように振るわれる!
禍月は驚愕の表情でそれを回避するが、コートの裾が僅かに切り裂かれた。
「奏太!」
「連射!!」
優希が作り出した僅かな硬直時間。
奏太の両手の銃から、圧縮されたエネルギー弾が凄まじい勢いで連射される!
弾丸の雨は、禍月の空間障壁に連続して着弾し、眩い光と衝撃波を撒き散らした。
「やるな、小童ども!」
禍月は障壁の内側で叫び、さらに能力を解放した。
部屋全体の重力が、不規則に変動し始める!
床に叩きつけられそうになったり、逆に天井に吸い寄せられそうになったり、4人は体勢を維持するだけで精一杯になる。
「くっ……重力操作まで!」
奏太が呻く。
「恭介、奴の能力のコアはどこだ!?」
詩乃が叫ぶ。
彼女の狙撃も、重力変動の影響で精度が落ちている。
「わからない……! だが、能力を使う瞬間、僅かに空間座標の揺らぎが生じるはずだ!」
恭介は超感覚を研ぎ澄ませ、禍月の能力発動の兆候を探りながら、仲間たちを防御フィールドで守り、自身の能力で重力の影響を相殺しようと試みる。
戦闘は激しさを増し、旧管理棟の最上階はもはや戦場と化していた。
壁は崩れ、天井には穴が開き、床にはクレーターができている。
禍月は空間断裂、重力操作、さらには局所的な空間転移まで駆使し、神出鬼没に4人を翻弄する。
「このままじゃジリ貧だ!」
優希が斬撃を繰り出しながら叫ぶ。
禍月の防御は固く、決定的なダメージを与えられない。
「詩乃! あのコンソールの上! 奴が一瞬だけ転移の起点にしてる座標がある!」
恭介が煉獄の動きのパターンを読み切り、指示を出す。
「了解!」
詩乃は重力変動の中、驚異的な集中力でライフルを構え、恭介が示した一点を狙う。
放たれた弾丸は、禍月がまさに次の空間転移を発動させようとした座標に、寸分の狂いもなく着弾した!
「ぐ……!?」
転移が不完全に終わり、禍月は僅かに体勢を崩した。
「もらったァ!」
奏太が、その一瞬を見逃さなかった。
彼は自身のエネルギーのほぼ全てを注ぎ込み、凝縮した最大出力のエネルギー砲を煉獄に向けて放つ!
「終焉!!」
灼熱の光線が、禍月の空間障壁を貫通し、その身体に直撃した!
「がはっ……!」
禍月は、初めて明確なダメージを受け、吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
黒いコートは焼け焦げ、口からは血が流れている。
「やったか!?」
奏太が息を荒くしながら叫ぶ。
だが……
「……甘いな」
瓦礫の中から立ち上がった禍月の瞳は、怒りと憎悪で赤く染まっていた。
「貴様ら……よくも、この俺を……!」
彼の周囲の空間が、これまで以上に激しく歪み始める。
部屋全体の空気が圧縮され、息苦しくなるほどのプレッシャー。
これは、まずい。禍月は、自らの命と引き換えに、この空間ごと全てを破壊するつもりだ!
「冬香を盾にする気か!」
恭介は禍月の卑劣な意図を察知し叫んだ。
歪みの中心は、禍月自身と、そして奴が守るように立つ冬香の周辺だ。
「道連れだ! 貴様らも、この娘も、俺の理想と共に消えろ!」
禍月が高笑いする。空間の歪みは臨界点に達しようとしていた。
(もう、手段を選んではいられない……!)
恭介は覚悟を決めた。
仲間たちを、そして何よりも冬香を守るために。
恭介は自身の内に秘めた力の、さらに奥深くへと意識を沈めた。
SSS級万能型能力の、その真髄へ。
「みんな、伏せろ!」
恭介は叫び、両手を煉獄へと突き出した。
恭介の掌から放たれたのは、目に見えるエネルギーではない。
それは、物理法則そのものを書き換える、純粋な「概念」の波だった。
「……世界書き換え:『停止』」
恭介が紡いだ言葉と共に、禍月の周囲で激しく歪んでいた空間が、ピタリと動きを止めた。
まるで時間が停止したかのように、圧縮されようとしていたエネルギーも、砕け散ろうとしていた物質も、その場で凍り付く。
禍月自身も、驚愕の表情のまま、身動き一つできなくなっていた。
「な……何が……起こっ……」
禍月は、かろうじて言葉を発するが、それも途切れ途切れだ。
恭介が干渉したのは、彼の能力だけではない。彼の存在そのものを構成する時間と空間の連続性そのものだった。
「終わりだ、禍月」
恭介は静かに告げ、凍り付いた禍月に近づくと、その額に指先を触れた。
「お前の野望は、ここで潰える」
指先から流し込まれたのは、相手の精神と肉体を内側から崩壊させる特殊なエネルギー。
禍月は苦悶の声を上げることすらできず、その身体は光の粒子となって、静かに霧散していった。
後に残ったのは、禍々しいオーラが消え去った、静寂だけだった。
戦闘が終わった。
半壊した部屋の中、恭介、奏太、詩乃、優希は、荒い息をつきながら立ち尽くしていた。
全身に疲労が蓄積し、満身創痍だ。だが、その表情には、強敵を打ち破った達成感が浮かんでいた。
「……やった……のか?」
奏太が呟く。
「ええ……なんとか」
詩乃がライフルを下ろす。
「……強かった」
優希が、ふらつきながらも安堵の息をつく。
恭介は仲間たちに頷き返すと、すぐに拘束されたままの冬香の元へと駆け寄った。
「冬香! しっかりしろ!」
恭介は、彼女の頭部に装着されたヘッドギアを慎重に取り外し、拘束具を能力で破壊した。
意識のない冬香を抱きかかえ、恭介は静かに彼女の名前を呼び続ける。
蛇の頭は討ち取った。
だが、まだ全てが終わったわけではない。
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