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第9章: 未来への序章、鋼鉄の誓い
第33話: 鋼鉄の選択
しおりを挟む中央管理棟と第二研究棟。
二つの戦場で、俺たちの反撃は熾烈を極めていた。
しかし、敵もまた、最後の牙を剥き出しにする。
「ふふ、ショータイムはこれからよ」
中央管理棟。俺に追い詰められたかに見えたリン・シャオユウは、不敵な笑みを浮かべ、懐から取り出した黒い球体を床に叩きつけた。
瞬間、球体は眩い光を放ち、周囲の空間そのものが捻じ曲がり始める!
「うわっ!?」
「なんだこれは!?」
立っている床が波打ち、壁が歪み、重力が不規則に変動する。ランダムな空間断裂が走り、回避するだけで精一杯だ。
「これが私の『領域歪曲』……この不安定な空間の中では、あなたほどの能力者でも、本来の力の半分も出せないはずよ!」
リンは、歪んだ空間の中を浮遊するように移動しながら、短剣を構え、俺に襲いかかってきた。
精神感応による思考の読み取りと、予測不能な空間攻撃のコンボ。厄介極まりない!
「くそっ、動きが読みづらい!」
猛が鋼体化して突進するが、歪んだ空間に軌道を逸らされ、壁に激突する。
「目標が安定しない……!」
詩乃の精密射撃も、空間の歪みに影響され、狙いが定まらない。
「これじゃ、近づけない!」
美衣も瞬間移動を繰り返すが、移動先が予測できず、効果的な攻撃ができない。
(まずい……このままでは……!)
俺は、襲い来る空間の歪みとリンの攻撃を捌きながら、必死に活路を探る。
SSS級の超感覚を最大限に研ぎ澄ませ、カオスフィールドの法則性……あるいは、その僅かな綻びを見つけ出そうとする。
(法則がないなら……法則を、創ればいい!)
俺は覚悟を決め、自身の能力をフィールド全体へと広げ始めた。
物理法則への干渉能力。
この歪んだ空間を、俺の力で「上書き」する!
一方、第二研究棟の地下へと続く通路では、奏太たちがアナスタシア・ペトロヴァと死闘を繰り広げていた。
「ふふ、なかなか楽しませてくれるじゃない。でも、お遊びはここまでよ!」
アナスタシアの手から放たれるエネルギー鞭は、蛇のようにしなり、予測不能な軌道で奏太たちに襲いかかる。
その威力は絶大で、コンクリートの壁すら容易く切り裂いた。
「うおおおおっ!」
奏太は、限界突破した速射能力で応戦する。
光弾の雨がアナスタシアを襲うが、彼女はエネルギー鞭を巧みに操り、そのほとんどを弾き、あるいは相殺してしまう。
「援護します!」
優希が目にも止まらぬ速さで踏み込み、アナスタシアの懐へ斬り込む!鋭い剣閃が鞭と激しく火花を散らす!
「邪魔だ、小娘!」
アナスタシアは鞭の一薙ぎで優希を吹き飛ばした。
「優希ちゃん!」
「このアマァ!」
愛が浮遊で、舞がパワーで、利央が瓦礫操作でアナスタシアに襲いかかるが、格の違いは明らかだった。アナスタシアは最小限の動きで彼女たちの攻撃をいなし、的確な反撃で戦闘不能寸前まで追い込んでいく。
「くそっ……! このままじゃ……!」
仲間たちが次々と倒れていくのを見て、奏太の怒りが再び沸点を超える。
(守るんだ……俺が……みんなを!)
その時だった。
『警告! 警告! 地下第7層、生体エネルギー反応、計測限界突破! 隔壁が内部から破壊されています! 何かが……目覚めようとしています!』
春香からの絶叫に近い報告が、全てのインカムに響き渡った。
同時に、第二研究棟全体が、まるで巨大な地震に襲われたかのように激しく揺れ始めた! 地下深くから、地の底から響くような、禍々しい咆哮が聞こえてくる!
「ククク……ハハハ! ついに始まったか!」
アナスタシアが、狂ったように高笑いした。
「私たちの真の目的は、あなたたちの捕獲だけじゃない! あれを目覚めさせ、制御下に置くこと……それこそが、『オメガ・プロトコル』の最終段階よ!」
「あれ……? オメガ・プロトコル……!?」
奏太が愕然と呟く。
中央管理棟でも、地下からの異常な振動とエネルギー反応は感知されていた。
「まずいわね……予定より早い……!?」
リンの表情に、初めて焦りの色が浮かんだ。
彼女は俺から距離を取り、撤退しようと動き出す。
「逃がすか!」
俺は、歪む空間を掌握し始めていた。物理法則を書き換え、カオスフィールドを強制的に安定させる。
そして、リンの退路を断つように、空間ごと彼女を拘束した!
「お前の企みも、ここまでだ!」
「ぐっ……馬鹿な……私のフィールドが……!?」
驚愕するリンを、俺は容赦なく無力化する。
第二研究棟でも、決着の時が近づいていた。
地下からの異変に動揺したアナスタシアの動きが一瞬、鈍る。
その隙を、奏太は見逃さなかった。
「終わりだぁぁぁっ!!」
猛の鉄壁のガード、利央の最後の妨害、愛と舞の捨て身の突攻、詩乃(司令室からの遠隔支援)の精密な援護射撃、そして優希の渾身の一太刀――仲間たちが作り出した、一瞬の好機。
そこに、奏太の持てる全てのエネルギーを込めた、最大出力の速射が叩き込まれた!
閃光が通路を走り、アナスタシアのエネルギー鞭と防御壁を粉砕し、その身体を壁へと叩きつける!
「……がはっ……!」
アナスタシアは、信じられないものを見たという顔で奏太を見つめ、そして、力なく崩れ落ちた。
リンとアナスタシア、二人の強力な工作員は、ついに退けた。
だが、安堵する間もなかった。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
研究棟全体の揺れが、さらに激しくなる!
地下から溢れ出すエネルギーは、もはや計測不能なレベルに達し、空間そのものを侵食し始めている! 壁に亀裂が走り、天井から破片が降り注ぐ!
「な、なんだよ……これは……!?」
奏太が、地下へと続く暗い通路の奥を睨みつけながら、戦慄の声を上げる。
冬香が予知した「大きな影」。
オメガ・コープが研究していたという、禍々しいエネルギーの正体。
『オメガ・プロトコル』の最終段階。
それらが今、一つになり、最悪の形で、このエリュシオン・アカデミーに、いや、もしかしたらこの世界に、新たな絶望をもたらそうとしていた。
本当の脅威は、今まさに、地下深くから目覚めようとしているのだ。
俺たちの戦いは、まだ終わっていなかった。
むしろ、これから始まるのかもしれない。本当の、悪夢が……
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