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第45話 左近と徳松 ①
しおりを挟む十兵衛たちが泥沼藩に行っている間、左近たちがおとなしくしているワケもなく……
駿河の城下町に繰り出していた。
当然のことながら、徳松も一緒である。
町中で綱吉と呼ぶと、将軍 今川綱吉とバレるので通称のままで呼び合うことにしている二人である。
二人に巻き添えをくらった弥太郎は涙目である。
大変なのは警護の者たちで、少し離れながら二人の行方を観察していた。
もちろん、近くで警護している者も居る。
半兵衛から左近の面倒を言いつかった光矢忍者の才蔵、総司、竜魔である。
町人に化けていることもあり、左近から偽名をもらった三人は微妙な顔をしていた。
助三郎、角之進、八兵衛である。
「助さん、角さん、八兵衛、噂の食事処に行くわよ !」
せっかく元服したのだから、お酒を呑みに行こうと云う話しになったのだ。
「義元公が考えた澄み酒と云うのが、駿河の名物なんだぞ、左近 !」
── 本来なら濁り酒しかなかった時代だが、中身が転生者である今川義元が、いろいろと改変していったのだ、それはもういろいろと…… ──
左近と徳松のすぐ後ろを歩いている三人は、ヒソヒソと話しあっていた。
「棟梁(半兵衛)が俺たちに左近さまを任せたのって……」
「それ以上、言うな ! 決してお守りを押し付けられた、なんて言ったら不敬になるぞ !」
「言ってるし……。 棟梁が嬉々として十兵衛殿たちについて行った気持ちが解るよ。
身体は楽だが……精神的にクル物があるな。
胃の腑がキリキリと痛むんだが……」
いきなり前の二人が駆け出した !
あわてて、才蔵、総司、竜魔も追いかける。
三人の嫌な予感は的中することに……
目的の店の前では町人の娘が浪人たちに絡まれていた。
◇◇◇◇◇
※時間を少し巻き戻します。
【左近side】
「ん~、美味しい ! 」
目的の店の前に甘味屋さんで買った焼きモチが美味しい。
甘い餡子をお餅で挟んであって、焼きたてだから最高だわ。
徳松さんも寡黙に食べているのは、気に入った証拠ね。
お城だと、毒味役が間に入るから徳松さんが食べる頃には冷めてしまうものね。
見習い女神に成る前の女子高校生時代を思いだすわ。
あの頃は、学校帰りに友達と よく買い食いをしたわね。
水分を持ち前の水筒(竹製品)で喉を潤す。
水分が染み渡るわぁ~。
甘味屋さんの看板娘の南ちゃん、べっぴんさんだったわ。
そのせいか、男性客がいっぱいだった。
モテる女の子はツラいわね。
だいたい、十代後半くらいかな。
この時代なら結婚適齢期。
わたしのところにも、お見合いの話しがあるらしいけど、心は女、身体は男の身としては躊躇してしまうわ。
パリン !
「何をするか !」「無礼者 !」「兄貴の着物が汚れたではないか ! 」
「申し訳…… 「この不始末、謝って済むと思っているのか、娘 !」
ヤバいわ !
時代劇で見たような典型的なチンピラだわ。
助けに行かないと !
わたしが駆け出すと徳松さんも一緒に付いて来てくれた。
持つべきものは親友よね !
チンピラ浪人の一人が居酒屋の看板娘の しのぶちゃんの手を掴んでいる。
「許せと申すなら、誠意を見せてもらおうか。
来い、娘 ! 」
あわてて店の中から店主が現れて謝罪しているけど、
「口先だけの謝罪など、いらんわ !」
「兄貴をバカにしておるのか ! 」
ドカッ、バギッ、ゴツッ !
チンピラが殴る蹴るの暴力を始めた。
「やめて ! やめて ! 誰か、お父ちゃんを助けて !」
しかし、周りの町人たちは、チンピラ浪人を恐れて見て見ぬふりをしている。
「待ちなさい !」
チンピラ浪人が、暴力をやめて此方を見ている。
「もう一度言うわ、やめなさい !」
「「「ギャァ、ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ !」」」
── チンピラ浪人たちは、指を指しながら笑い続ける。
目に映っているのは、左近と徳松のみ。
上品なお坊ちゃんだと勘違いしているのだろう。
次回、どうなる左近 ! ──
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