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第78話 討ち入り
しおりを挟むとある年の十二月十四日。町には昨日、降り積もった雪が残っていた。
深夜、草木も眠る丑三つ時に駿府の武家屋敷に続く道を静かに行軍する集団があった。
言わずとしれた赤穂浪士四十七士
「 百名近くいたのに、いざ討ち入りと成ったら半分以下か……
まあ、いい。 少数精鋭に成ったと思えば良いのだ 」
自分に言い聞かせるようにつぶやく大石内蔵助に周り赤穂浪士たちもうなずいた。
霞賢四郎や椿三十郎や赤穂藩の医師だった百合庵も、いつの間にか抜けてしまった。
殿のご乱行、愚行の犠牲者の身内だから責める者もいなかったのは幸いか。
皆、緊張しているのか無口に成っている。
やがて、吉良邸が近づいて来たのだが……
皆に動揺が走った !
明るいのだ ! 丑三つ時にも関わらず、吉良邸の周りだけ沢山のかがり火が炊かれている。
吉良邸の門は全開に開かれているのに、誰もいなかった。
ただ、殺気だけは充満している。
吉良邸の中だけでは無く、周りの武家屋敷からも殺気が立ち込めていた。
もしや、謀られたか !?
大石内蔵助が気づくも遅かった……
事前に吉良の足軽たちが住む長屋には出て来れないように関貫が下ろすのには成功した赤穂浪士も、このようなことは予想出来なかった。
「空城の計か、いったい誰の仕業だ ! 」
誰かがつぶやいた。
「 確か、孔明の策だったか……」
大石内蔵助の頭には昔、読んだ物語が浮かんでいた。
「左近様……吉良上野介義央様のお考えだ。
『赤穂浪士の皆さんをお・も・て・な・しせよ』とのご命令だ。
存分に、お・も・て・な・し をしてみせよう 」
「一人で、何が出来る ! 少々腕に自信があるようだが、我ら全員を相手に出来るもんか !
名を名乗れ、冥土の土産だ聞いてやろう 」
竹林唯七が鼻息荒く挑発するが、判らないのだろうか ?
目の前の若い侍の覇気からただ者ではないことを……
案の定、他の者たちが現れた。
全員、恐ろしい程の使い手だと伝わってくる。
「柳生新陰流 柳生十兵衛三厳 」
若い侍が名乗る……
「宝蔵院流槍術 宝蔵院胤舜」
「尾張柳生 柳生如雲斉」
「柳生新陰流 田宮坊太郎」
「柳生新陰流 荒木又右衛門」
「火盗改方同心 長谷川正成」
「火盗改方同心 北大路主水」
柳生十兵衛が宣言した……
「人、触れれば人を斬り
馬、触れれば馬を斬り
鉄、触れれば鉄を斬る
柳生新陰流は活人剣なれど、太平の世を乱す輩は斬り殺す !
それでも良ければ、来るがいい……」
駄目だ ! 勝てる筋が見えない。
一騎当千
大石内蔵助は、頭に浮かんだ言葉に恐怖した……
間十次郎と武林唯七が刀を抜き、
「ガキと年寄りに何が出来る !」
「おうさ ! 一番槍は我らが頂いた ! 」
二人して襲いかかるも、宝蔵院胤舜の槍……石突きの部分で殴られ昏倒した。
「不甲斐ない、鍛練不足である !」
宝蔵院胤舜の言葉に凍り付いた。
役者が違い過ぎる !
神崎与五郎率いる弓隊が狙いを定めるも……
突然、闇から現れた忍びたちに戦闘不能にされてしまった。
逃げ出そうとした仲間たちも、気がつけば周りを幕府軍に囲まれているのを見て、逃げるのをあきらめてしまった。
「ああ、天はわれわれを見捨てたらしいッ!」
大石内蔵助の言葉を聞いた赤穂浪士たちは気力が無くなり座り込んでしまったのだった。
── 数年後、『不忠臣蔵』と云う芝居が流行ることに成り、後世まで伝えられることに成った ──
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