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七之助&栞 編
年貢の納め時
しおりを挟む【七之助side】
遼さんと香さんに呼び出された。
栞さんと一緒に来るように言われたので仕事が終わった後で行ってみると、
「七之助 !
聞いたぞ、お前は まだ、栞に手を出す処かキスさえしてないんだってぇー!
かぁーーー 、情けない ! それでも男かよ、七之助 !
今どきの高校生より奥手だなんて、遼ちゃん 情けなくて涙が出てくらぁー !
俺が若い頃には…………
「『俺が若い頃には』の続きは、遼太郎 !?
是非、わたしも聞きたいなぁ~ 」
遼さんが両手を付いて香さんに謝りだしていた。
仲いいなぁ~、二人共。
「このバカは ホットクとして、七之助くん。
貴方のお父様は、お何歳なの ? 」
香さんの質問に
「え~と、今年で 75歳に成ると思いますけど、それが何か ? 」
「お母様は亡くなっているのよね。
だったら、お父様に結婚した姿を見せて安心させてあげなさいな !
そして、孫を抱かせてあげるのが親孝行と云うものよ 」
「いやいや、まだ お付き合いを始めて1ヶ月くらいなのに急ぎ過ぎではないですか ?
栞さんの気持ちだって大事なんですし、無理を言っても困りますよ、香さん 」
「かぁーーー、お前たちだって若く無いんだから、そんな悠長なことを言っていたら、結婚する頃には爺さん婆さんに成っているぞ ! 」
「栞の両親は『栞の決めた相手なら反対はしない』と言っていたわ。
むしろ、私達が『七之助のことを太鼓判を押す』と言ったら積極的に賛成すると言っていたから、後は貴方達しだいなんだからハッキリしなさい ! 」
どうやら外堀は埋まっていたようだ。
「今すぐとは言わないが、無駄に時間をかけていたら、親孝行に間に合わなくなるぞ。
孝行したいときに親はなし、と云う諺があるように俺のようには成るなよ、七之助、栞 」
「遼…………」
俺達の家に帰る途中、無言だった俺と栞さん。
家に着いて車を駐車場に止めて 家に入らずに、しばらく二人で月を見ていた。
「 今夜は月が綺麗だね、栞さん 」
「ええ、七之助さんと一緒に見るからでしょう」
「「ふふふ 」」
俺達は、お互いの気持ちが一緒なのを確認した。
「栞さん、これからも よろしくお願いします 」
「七之助さん、こちらこそ よろしくお願いしますね 」
そうして、俺達は一緒に家の中に入って行った、恋人繋ぎをしながら。
🌕️🌔🌓🌙🌑
【サファイアside】
「ねえ ねえ、サファイア。
お兄ちゃんとお姉ちゃんのアレ は、どういう意味なの ?
月が綺麗なのは、何時もと一緒でしょう 」
さくらが不思議そうに聞いてきた。
最近、猫又に成ったばかりの若いさくらでは知らないかもね。
「『月が綺麗ですね』と云うのは、プロポーズの言葉なんだよ、さくら。
『アイラブユー』と違って奥ゆかしい日本人にはピッタリだろう。
夏目漱石と云う文豪の作品に出てくるんだよ。
本好きの二人には、お似合いの愛の告白だったね。
ボクも苦労したカイが有ったようで嬉しいよ 」
感心したように さくらが、
「サファイアは物識りだねぇ、やっぱり長生きしている猫魈は違うなぁ 」
「それは違うよ、さくら。
ボクは由緒正しい本屋の看板猫だから知っているんだよ。
他の猫魈や猫又とは違うのさ ! 」
「ボクは栞お姉ちゃんが、お兄ちゃんの番の相手なら 許してあげても良いよ。
今まで、お兄ちゃんに近づく女の人は全員、ボクが追い払ってたカイがあったね、サファイア 」
なるほど、七之助が今まで独身だったのは 七之助がニブチンだったせいだと思っていたけど、ヤキモチ焼きのさくらが居たからだったとは盲点だったよ。
うん、少しだけ七之助にも優しくしてやるか。
応援ありがとうございます!
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