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八重&十八番《エース》 編
初めてのお使い ③
しおりを挟む初めてのお使いで商店街に来ている八重と十八番は、仲良しの友達と手を繋いで歩いている為に非常に目立っていた。
「おや、八重ちゃんに十八番くん。
二人そろってデー……お出かけかい ? 」
たこ焼き屋の多古八郎が声をかけてきた。
「うん、ヤエね。 はじめてのおつかいなの ♬ 」
「はい、ねえさんといっしょですけど、はじめてのおつかいです 」
「ほう~、二人とも偉いねえ~ 」
「うん、ヤエ、えやいんだよ、エッヘン ! 」
「ありがとうございます、おじさん 」
褒められて、小さな胸を張りながら喜んでいる八重に対し十八番は、少し大人びていた。
『兄より優秀な弟は居ない』と云う都市伝説はあるが『姉より優秀な弟は居る』ようだ。
「じゃぁ、おじさんがご褒美に皆に、たこ焼きを奢ってあげよう 」
そう言うと保温庫から温かいたこ焼きにソースやマヨネーズ、鰹節をかけて二皿出して来て八重と十八番に渡した。
一皿六個入っている、たこ焼きには 爪楊枝が三つづつ刺さっている。
「アリアト、おじちゃん 」
「ありがとうございます、おじさん 」
六人の幼児は、たこ焼き屋のベンチに座らせてもらい食べ始めた。
真雪と雪夫は猫舌の為に念入りに、フーフーしながら、たこ焼きを冷ましていた。
多古八郎は、普段から七之助の店から天カスを貰っていたので、お礼がてら奢ったようだ。
ケチだから二皿しか渡さなかったのでは無く、幼児が一皿食べてしまうと、家でご飯が食べられなくなり怒られると考えたからだった。
やがて、幼児たちは目的地の八百屋やお肉屋に行くまでに、アチコチの店のオーナーや買い物客から、お菓子などを貰っていた。
八百屋で合流した夏鬼に残っていた、たこ焼きを渡し喜んで食べている夏鬼。
そんな子供たちを、ダイフクモチとタマは見守っていた。
グゥーー !
ダイフクモチの腹が鳴ると、
「バレたら、どうするのよ、駄犬 !
ご主人様から御飯を貰ったばかりでしょう ! 」
タマに怒られたダイフクモチは反論した。
「そんなことを言ったて、育ち盛りなんだから仕方ないでござる !
そう言う、お主だってヨダレが出ているでござる ! 」
「仕方ないじゃ無い ! お弁当工房から、お稲荷さんを貰っていたじゃないの !
あれは、わたしへのお土産だわ!
アノ甘じょっぱいお稲荷さんは、わたしの大好物だと知っているでしょう !
条件反射よ、条件反射! 」
流石に、これだけ騒いでいれば勘の良い子供たちにはバレる訳で……
「タマもモチもヒドイでしゅ。
もうクチをきいてあげないでしゅ 」
八重に怒られた、タマもダイフクモチも しょんぼりしていた。
ふたり共、獣状態の為にペットが怒られて居るようだったので、周りの大人たちは温かい目で見詰めていた。
見るにみかねた八百屋の那須邑輝は、
「まあ、まあ、八重ちゃん。
サービスするから、その辺で許してあげなよ 」
そう言いながら、ピーマンを数袋取り出して来た。
「やーー ! ピーマン、きやいーーー ! 」
八重を筆頭に子供たちはにげだした。
「ハッハッハッ、やっぱり子供たちには嫌われているな、ピーマン 」
そんな八百屋のオヤジを周りの客は冷めた目で見ていた。
このオヤジ、子供が好き過ぎて、つい からかい過ぎてしまうのだ。
その頃、商店街の上空には、妖魔に成りつつある浮遊霊(悪霊)が居た。
他の地域で雑霊や低救霊を吸収して、今では下級悪魔である妖魔に成る程の力を持っていた。
早く妖魔どころか、上級悪魔に成りたいと思っていた悪霊は、更なる力を求めていたのだ。
〖足りない、まだ足りない ! もっともっと力が欲しい…………ムッ ! 〗
悪霊は、八重や十八番たちを見ていた。
〖 いいぞ、いいぞ、俺はついている!
あのガキ共を取り込めば、一気にパワーアップして上級悪魔の仲間入りだ !
グッ ハッハッハッハッ、グゥーーーっドタァイミィングゥーーーー ! 〗
隙を見て、まとめて子供たちを取り込もうとしている悪霊には、気付いている人間は居なかった。
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