上 下
57 / 94
八重&十八番《エース》 編

玉龍と迷子の迷子の八重ちゃん ③

しおりを挟む

 しばらくすると由利凛が八重や十八番の母親と父親である栞と七之助の車に乗りナビゲーターをしながら戻ってきた。
 何故か、その後ろに由利子の長女であり由利凛や恵利凛の姉である天音あまねの運転する車まであったが……

 両親である二人を見た途端に、八重が泣きながら走り寄って行く。

「おがあぢゃ~~ん、おどうぢゃ~~ん !」

 母親である栞に真っ直ぐに飛び込む八重を優しく抱きしめる栞は女神のような美しさだった。
 一方、父親の七之助は八重を抱きしめようと広げた手を下ろせずにガッカリしているところに、

 ポフッ

 十八番エースが七之助に抱きついた。

「お父さん、僕、頑張ったよ……」

 泣きそうに成っているのを我慢している息子を抱きしめて頭を撫でながら、

「頑張ったな、十八番。  流石、俺の自慢の息子だ ! 」

「エヘヘ、うん、お父さんみたいに成るんだ、僕 」

 そう言ってから、由利凛と天音の存在に気がついた十八番は、

「お姉さん達、ありがとうございます 」

 にぱぁ ♪

 ズキューン !  「グッ !」
 バキューン !  「ウッ !」

 由利凛も天音も十八番にタラシ込まれたようだった。
 そう、この姉弟そろって妖怪タラシが進化したハイパータラシに成っていたのだ。 

 その後、福岡田家と潮来家は急速に仲良く成っていった。

 特に双子の妹たちと違い、『年齢=彼氏いない歴』の天音は歳の差を忘れて本気で十八番をお婿さんにすることを考えていた。

 その様子を見て妖怪たちはあわてていた。 

 そう、この三姉妹は実は…………

 隠れて見ていたサファイアは、急いで人間に化けた。
 今回は改良版の変身で、キチンと猫耳も尻尾も隠れている。




「八重、十八番、迎えに来たよ。
 駄馬はボクが連れて帰るから、二人は七之助や八重と一緒に帰りなよ。
 七之助も店をアルバイトに任せて来たから心配だろう。
 早く帰ることを勧めるよ 」

 四人を車に押し込めてから、

「御礼は後日にして、一旦 帰りなよ。
 ここは、ボクに任せてさ ! 」


♟♞♝♜♛♚

 一方、由利子を先に帰した天音、恵利凛、由利凛はサファイアを見て、直ぐに正体を見破っていた。
 なにせ、三姉妹は女神の転生者だったのだから。

 いつもは、誰が相手でも遠慮をしないサファイアでも相手が女神と成ると勝手が違うのか、冷や汗が止まらない。

 三姉妹の前で、ひざまずきながら、

「失礼しました。
 ボクの名はサファイア、月読さまの眷属妖怪です。
 はじめまして、、異世界の女神さま 」

 そう、三姉妹は女神で人間の世界で修行するために転生して来ていたのだ。

「天音お姉ちゃん、いくらなんでも歳の差が有りすぎるのじゃ !
 きっと、お姉ちゃんに相応しい男の人が居るはずだから、軽率なことだけはしないで欲しいのじゃ !」

「由利凛の言う通りだよ、天音お姉ちゃん !
 ステキな彼氏が絶対に見つかるから、焦らないで ! 」

 しかし、既に彼氏が居る妹たちの声は天音天照皇大神には届かなかった。

「いくら大好きな由利凛ちゃんや恵利凛ちゃんの頼みでも、これだけは譲れ無いわ !
 やっと見つけた私の王子様、運命の赤い糸の相手が見付かったのよ !
 もちろん、エース君が育つまで待つつもりだけど……
 私、あきらめないんだからね ! 」

 タラシ込んだ相手が相手だけに、サファイアは頭を抱えていた。
 もちろん、ぬらりひょんを含めた妖怪たちもだった。

「ミッションインポッシブルじゃないか !
 ボクのスローライフが全集中で走り去っていくよぉ !」

 サファイアの絶叫がむなしく響くのだった。 



※作者より
 私の物語「邪神が転生! 潮来 由利凛と愉快な仲間たち』と同じ世界間です。

 よろしくお願いします🙇
しおりを挟む

処理中です...