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八重&十八番《エース》 編

七之助の秘密 ?

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【サファイアside】

 道真公に寄る勉強が始まった。
 嫌がるかと思っていた、八重も十八番も大人しく道真公の授業を聞いている。
 てっきり、勉強なんて嫌がり『遊びたい !』と愚図グズルことを期待していたのに……

 まだ、小学一年生なのに家庭教師なんて早すぎると思って雫や道真公に抗議したけど、

「好奇心旺盛おうせいな今の内から勉強に慣れ親しんだ方が良いのじゃ !
 大きく成ってから勉強の仕方も分からないのに、必要にられて仕方無く勉強をしても、勉強嫌いに成ってしまうだけなのじゃ !

 『何時やるの ?  今でしょう !』

 と、有名な塾講師も言ったのじゃ !」


 道真公の授業を聞いてみると、平安時代の人物のハズなのに、令和の教科書を使い教えている。
 猫魈とは云え、妖怪であるボクには内容が把握出来ないけど、学問の神様は伊達じゃないと云うことなのかな。

 そして、ウチの妖怪たちはと云うと……

「ご主人さまの前世のことを教えてよ、雫 !」

 タマ九尾の狐が雫に七之助の前世に興味を持ちお願いすると、他の妖怪たちも集まってきた。
 タヌキ娘化けタヌキダイフクモチ人狼たち、七之助に名付けされた妖怪たちだ。
 当然、さくらも最前列に座っていた。

「お兄ちゃんのことなら、何でも知りたいに決まっているでしょう !
 きっと、前世のお兄ちゃんも優しくて素敵なんだろうなぁ~ 」

 七之助にベッタリなさくらには、何を言っても無駄だから黙っておく。
 ボクも、少しだけ興味があるからね。


♟♞♝♜♛♚

 雫が目を閉じて昔を思い出すように語り始めた。

「主さまの前世、安倍鷹久あべのたかひさは、平安時代の陰陽師だったのじゃ。
 そう、安倍晴明の一族、土御門つちみかどの一族じゃ 」

 へえ~、陰陽師とは意外だった。
 昔は、ボク達、妖怪と陰陽師は敵対していたからね。

「陰陽師と言っても、主さまは御札作りが専門で、妖怪退治など花形は他の陰陽師の独壇場だったのじゃな。 
 縁の下の力持ちである主さまを他の陰陽師どもは馬鹿にしていたが、主さまは気にしていなかったのじゃ。
 むしろ、目立たないようにしていたように思えるのじゃ 」

 ん ?  随分ずいぶんくわしいけど、雫は何処で七之助と知り合ったのだろうか。

「ねえ、雫は何時からご主人さまと一緒に居たの ?
 雫の他にもご主人さまに仕えていた妖怪とか居るのかしら ? 」

 タマも気になるらしく質問をしている。

「そう、くでない。
 主さまとの付き合いは、主さまがわらべだった時からの付き合いじゃ。
 まだ、みずちに成る前には影取大蛇と呼ばれていたのじゃ。
 一応、退治されたことに成っているのじゃが、瀕死ひんしで弱り、小さな蛇に化けて逃げた処、主さまが妾を保護してくれたのじゃ。
 他の陰陽師の手前、妾を主さまの式神の一種にしてもらい生き長らえることが出来たのじゃ。
 つまり、主さまは妾の命の恩人でもあるのじゃ。
 宮中の権力争いに巻き込まれた主さまは、この地に追いやられたものの、むしろ のんびり過ごすことが出来ると喜んでいたのが印象的だったのう。
 主さまが亡くなる前に、主さまの願いもあり、妾はこの地を守る為に水神としてまつられることに成ったのじゃ。
 何時の日か、転生した主さまに逢えることを願いながら、長い長い時を過ごしていたのじゃ 」

 蛇の妖怪……どうりで執念深い訳だ…………まてよ!

「ねえ、雫。  雫 以外にも七之助……鷹久の式神は居るのかな ?  落ちこぼれなら、雫だけだよね ! 」

 すっご~~く凄く嫌な予感がするんだけど……

「『妾だけ』と言いたいところじゃが、他にも居たぞ。  落ちこぼれなどと言われていたが、主さまは安倍晴明にも負けないくらいには陰陽師としての『力』は有ったのじゃ。
 ただ、権力には興味が無く、当時から和歌などの巻物を読むのが好きだったようじゃのう 」

 七之助の本好きは筋金入りなのは知っていたけど、前世からだったとは呆れてしまうよ。

「かつての仲魔たちにも連絡をしたから、その内に遊びに来るはずなのじゃ 」

 …………まだ、増えるの妖怪や神?が……勘弁してよ、七之助 !








    
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