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第120話 タッチ。
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「画面のタッチをお願いします」
「ここを押せばいいのかのう……?」
「そうですね。お願いします」
「むむぅ……なかなか反応せんの……」
年齢確認の画面タッチは年配のお客さんから非常に評判が悪い。
理由は明確。どう見ても未成年じゃないお客さんでも、たばこやお酒を購入する際には必ずディスプレイにタッチしなければならないのだ。そしてこの画面タッチの反応の悪さも原因の一つである。若い人だと、スマホなどの操作に慣れているせいか一発で押すことができるが、人によっては何回押しても反応しない人もいる。そのせいかイライラしてしまい、力任せに押す人も中にはいる。まあ気持ちは理解できないわけでもないんだが……。画面タッチぐらい優しくやってほしい。
「なかなか反応しないですね……」
「そうじゃのう……」
「代わりに押しましょうか」
「いや!待っておくれ!!!」
「え?」
「わしが絶対に押すんじゃあ!!!」
「あ……はい……」
男のプライドみたいなものだろうか。意地でも自分の手でタッチしたいらしく、何度も何度も画面をタッチする。……お客さんの列ができてるから早くしてほしい。
「ぐぬぅ!!!こやつめ!!!」
「お、お客さん。やっぱり代わりに押しましょうか?」
「嫌じゃあ!!負けてたまるか!!!」
「……指で押すイメージより、爪で軽く触れたほうが上手くタッチできますよ」
「そうなのか!!」
その後、おじいちゃんは何度も何度もタッチをするが、アドバイスの意味もなく全く反応しない。……気持ちはわからないでもないけど、並んでるお客さんもイライラし始めてるし、頼むから早くしてほしい。
「なぜじゃ!!!なぜ反応せんのじゃ!!!」
「……財布の角とかでタッチしても反応するんですよ。指で押すより反応がいいし、その方法で押しませんか?」
「嫌じゃ!!わしの指でタッチしたいんじゃ!!」
こっちのアドバイスを無視し、【20歳以上です】と書かれたボタンを連打し続ける。おじいちゃんも息を切らしながら顔を真っ赤にしている。もうわかったから。20歳以上なのは十分わかったから!だからもう俺に押させて!!
「お客さんそろそろやめましょう!!」
「絶対嫌じゃあ!!!」
「つ、次押してダメなら諦めましょう。他のお客さんも並んでいるんで」
「…………そ、そうじゃのう……」
周りの様子を見て冷静になってくれたみたいだ。おじいちゃんには申し訳ないが、周りのお客さんに迷惑をかけるのはよくない。
――――おじいちゃんは深呼吸を行い、息を整えている。
俺もよくわからない汗がぶわぁーっと溢れだし、緊張し始める。
最初はめんどくさい客だと思っていた。しかし、俺はおじいちゃんがめげずにずっと画面をタッチする姿に、いつの間にか魅了されていたのかもしれない。
頭の中に「頑張れ」という文字が浮かんだ。
周りを見渡すとイライラしていたお客さん達も同じ思いのようだ。「次の一回で絶対に成功させる」というおじいちゃんの思いがひしひしと伝わり、息を呑みながらその様子を伺っている。
「わしの全ての力をこの指に込める……!!」
おじいちゃんは全ての力を1点に集中させるように指をじっと睨みる。……凄い殺気だ。これならば、もしかしたらタッチすることができるかもしれない。
お客さんの中にいた少年が叫び出す。
「頑張れ!おじいちゃん!負けるなー!!!」
その声をきっかけに周りの客も「頑張れ!」と応援をし始める。鳴りやまぬ声。店内はライブ会場のように一つになった。
さあいけ!!!おじいちゃん!!!皆あなたのファンだ!!!
「くらえええええええええええ!!!!」
鋭い槍のように飛び出したおじいちゃんの指はディスプレイを揺れ動かした。ドンッと鈍い音が店内に響き渡る。……怖くて半分閉じかけていた目を恐る恐る開け、確認する。
―――――ディスプレイには変わらず年齢確認の画面が出ていた。
「わしの負けじゃ…………」
「お客さん……」
「今日は帰ることにするかのう……」
「また…………うちの店にチャレンジしにきてください」
「…………さらばじゃ」
おじいちゃんの悲しそうな背中をじっと見つめる。
……何故だかわからないが、俺の目には涙が零れていた。
「ここを押せばいいのかのう……?」
「そうですね。お願いします」
「むむぅ……なかなか反応せんの……」
年齢確認の画面タッチは年配のお客さんから非常に評判が悪い。
理由は明確。どう見ても未成年じゃないお客さんでも、たばこやお酒を購入する際には必ずディスプレイにタッチしなければならないのだ。そしてこの画面タッチの反応の悪さも原因の一つである。若い人だと、スマホなどの操作に慣れているせいか一発で押すことができるが、人によっては何回押しても反応しない人もいる。そのせいかイライラしてしまい、力任せに押す人も中にはいる。まあ気持ちは理解できないわけでもないんだが……。画面タッチぐらい優しくやってほしい。
「なかなか反応しないですね……」
「そうじゃのう……」
「代わりに押しましょうか」
「いや!待っておくれ!!!」
「え?」
「わしが絶対に押すんじゃあ!!!」
「あ……はい……」
男のプライドみたいなものだろうか。意地でも自分の手でタッチしたいらしく、何度も何度も画面をタッチする。……お客さんの列ができてるから早くしてほしい。
「ぐぬぅ!!!こやつめ!!!」
「お、お客さん。やっぱり代わりに押しましょうか?」
「嫌じゃあ!!負けてたまるか!!!」
「……指で押すイメージより、爪で軽く触れたほうが上手くタッチできますよ」
「そうなのか!!」
その後、おじいちゃんは何度も何度もタッチをするが、アドバイスの意味もなく全く反応しない。……気持ちはわからないでもないけど、並んでるお客さんもイライラし始めてるし、頼むから早くしてほしい。
「なぜじゃ!!!なぜ反応せんのじゃ!!!」
「……財布の角とかでタッチしても反応するんですよ。指で押すより反応がいいし、その方法で押しませんか?」
「嫌じゃ!!わしの指でタッチしたいんじゃ!!」
こっちのアドバイスを無視し、【20歳以上です】と書かれたボタンを連打し続ける。おじいちゃんも息を切らしながら顔を真っ赤にしている。もうわかったから。20歳以上なのは十分わかったから!だからもう俺に押させて!!
「お客さんそろそろやめましょう!!」
「絶対嫌じゃあ!!!」
「つ、次押してダメなら諦めましょう。他のお客さんも並んでいるんで」
「…………そ、そうじゃのう……」
周りの様子を見て冷静になってくれたみたいだ。おじいちゃんには申し訳ないが、周りのお客さんに迷惑をかけるのはよくない。
――――おじいちゃんは深呼吸を行い、息を整えている。
俺もよくわからない汗がぶわぁーっと溢れだし、緊張し始める。
最初はめんどくさい客だと思っていた。しかし、俺はおじいちゃんがめげずにずっと画面をタッチする姿に、いつの間にか魅了されていたのかもしれない。
頭の中に「頑張れ」という文字が浮かんだ。
周りを見渡すとイライラしていたお客さん達も同じ思いのようだ。「次の一回で絶対に成功させる」というおじいちゃんの思いがひしひしと伝わり、息を呑みながらその様子を伺っている。
「わしの全ての力をこの指に込める……!!」
おじいちゃんは全ての力を1点に集中させるように指をじっと睨みる。……凄い殺気だ。これならば、もしかしたらタッチすることができるかもしれない。
お客さんの中にいた少年が叫び出す。
「頑張れ!おじいちゃん!負けるなー!!!」
その声をきっかけに周りの客も「頑張れ!」と応援をし始める。鳴りやまぬ声。店内はライブ会場のように一つになった。
さあいけ!!!おじいちゃん!!!皆あなたのファンだ!!!
「くらえええええええええええ!!!!」
鋭い槍のように飛び出したおじいちゃんの指はディスプレイを揺れ動かした。ドンッと鈍い音が店内に響き渡る。……怖くて半分閉じかけていた目を恐る恐る開け、確認する。
―――――ディスプレイには変わらず年齢確認の画面が出ていた。
「わしの負けじゃ…………」
「お客さん……」
「今日は帰ることにするかのう……」
「また…………うちの店にチャレンジしにきてください」
「…………さらばじゃ」
おじいちゃんの悲しそうな背中をじっと見つめる。
……何故だかわからないが、俺の目には涙が零れていた。
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