終末のダンジョンアカデミア

三國氏

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2人をくっつけろミッション

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 真司が学園長に呼ばれ学園長室へ向かい、日直の杏花が当番日誌を職員室へと届けにいった後、教室に残っているのは数人の生徒だけになっていた。
 そんな中2人の女子生徒が必死に声を抑えようとしつつも、漏れ出る声を抑えきれずはしゃいでいた。

「あの2人は絶対くっつくでしょ。というかもうすでにその辺のカップルどころか、長年連れ添った老夫婦並みの安定感じゃない?あなたもそう思うでしょ詩音?」

 そう言ったのは真司達と同じ1-A組の生徒で、その名を鍵束千佳峯。
 杏花とは同じヒーラーとして入学して間も無く打ち解けている。
 千佳峯は短めの黒髪をサイドテールで結んだ、少しつり目ぎみの気の強そうな印象の少女で、確信を得ているとばかりにもう1人の少女に言う。

「そうですわね|千佳峯(ちかね)。なんでも入学前からの知り合いで杏花さんはゾッコンですものね。男の人の気持ちはよくわかりませんが多田さんも嫌ってはいないと思いますけど」

 千佳峯の言葉にそう返したのは同じくヒーラーの絵汰詩音。
 千佳峯とは対照的に落ち着いたら雰囲気で、ウェーブがかった長い黒髪を結ぶことなく腰の辺りまで伸ばしており、並んで歩くと杏花や千佳峯よりも上級生に見える大人びた少女。

 度々杏花から恋愛相談を受けている2人は、自身が男子との恋愛経験がないにも関わらず、自分のことのように親身に話を聞いている。
 だから杏花が明日告白するという話も当然聞いている。

「そりゃ嫌っていないのはわかるわよ。だってあんないい子いないでしょ普通。というかあんなにアピールされても気付かないような鈍感さはどうにかならないのかしら。うちが多田の立場だったら、とっくに杏花に告白して自分のものにしてるわよ」

「それはわかります。わたくしでも杏花さんならとお付き合いを申し込んでいるかもしれません。しかも多田さんが入学するかもわからないのに、この第一ダンジョン学園に入学しようと努力してきた杏花さんの気持ちに気付いて頂けないのは悲しいことですね」

 呆れたように真司への不満をこぼす千佳峯の言葉に同意する詩音。
 涙ぐましいまでの杏花のアピールを見ていた2人は明日のことが気が気でないのだ。
 絶対大丈夫だと杏花の背中を押したものの、万が一ということもありうるという気持ちが簡単に拭いされるものではない。
 そして千佳峯はそうだ、と机を軽く手のひらで叩き立ち上がると、詩音の耳元まで口を近づけてからある提案をする。

「ねぇ、明日こっそりついて行くってのはどう?うちこのままじゃ気になって、せっかくの休みなのに何にも手がつかないもの」

 名案を思い付いたと自慢げに鼻を鳴らす千佳峯だが、詩音はその言葉に上品さを失わない程度に器用に顔を歪める。

「それはどうかしら。幾ら何でも2人の秘め事を邪魔するのは少しはしたないのではないですか?」

「いや、秘め事って。なんかその言い方の方がはしたないというかいやらしいというか」

「へぇっ!ちょっ、そんなことありませんわ。そういうこと言う人がいやらしいですわ」

 顔を真っ赤に染め声を荒げてしまった詩音だが、自分が声を荒げていたことに気付き押し黙る。
 詩音は自分に集まるクラスメイトの視線を気まずげに耐え、視線が離れたことを確認して再び口を開く。

「ふぅ。気になるのはわたくしも同じですけど、やっぱりやめた方がいいのではないかしら」

「でもでもでも~。行こうよ詩音~」

 詩音の両肩をがっしりと掴んだ千佳峯はゆさゆさと詩音の肩を揺らしせがむが、詩音は簡単には首を縦に振らない。

 するとそんな2人のやり取りを見兼ねた1人の男子生徒が近づいてくる。
 入学前に染めた金髪もだいぶ根元が黒くなり、最近染め直したばかりのガタイのいい男。
 真司とはクラスで一番付き合いのある東こと剛力東である。

「なぁ、お二人さん。さっきからちょいちょい声が漏れてきてるんだけどさぁ。遂に真司に告んのか?」

 興奮して自分たちの声が大きくなっていたことにまるで気付かず話していた千佳峯は、驚きを露わに半ば叫びのように声を荒げる。

「はぁ~??なんであんたがそんなこと知ってんのよ」

「なんでも何も、声まる聞こえだったぞ。しかも2人を尾行するとかなんとか」

「うっ、マジか。千佳峯失念!」

 頭を抱えショックを受ける千佳峯を見下ろしながら、東は一つの名案を思い付いつきニタリと顔を歪める。

「それで真司は予定あるからって誘いを断ったのか。まぁ、それはいいとしてお二人さん。折角真司達を尾行するなら俺達と一緒に行かね?」

「はぁ?誰があんたとなんか行くもんですか。てかこの話絶対多田にバラすんじゃないわよ。バラしたら今度あんたに攻撃当てるから」

「いいだろ、ケチケチすんなよ。ほら、慶瞬と蘭丸も連れて行くからさ」

 その言葉に一瞬千佳峯の目が宙を泳ぐ。

「へっ、へぇ~、そっかぁ。前田君も来るんだ。いやまぁそれはいいとして、別にうちらがあなた方を止める権利もないんだけど、漏らした責任としてあんたが変なことしないよう見張るくらいはしなきゃいけないかもね」

 明らかに動揺している千佳峯は言葉は早口で目は泳ぎという有様。
 千佳峯が慶瞬に好意を寄せてることは梅雨とも知らない東だが、千佳峯が動揺しているという好機を見逃すはずもなく、さらなる言葉の追撃をお見舞いする。

「それに俺達男子3人もサポートするからさ。俺だってあの2人がさっさと付き合わないのがじれったくて仕方ないんだ。しかもそういう話題を振っても話を濁すだけでさ、この際ハッキリさせちまおうぜ」

 じれったいからハッキリさせたいという意見には千佳峯も大賛成である。
 それに下手に断って2人のデートの邪魔をされでもしたら、杏花に合わせる顔がないと千佳峯はようやく観念する。

「わかった。じゃあ明日の9時2人が正門で待ち合わせだから、うちらは9時に体育館裏で集合でいい?もう一度言っとくけど、ほんとに邪魔だけはダメだから。やったら今度の戦闘演習の授業で攻撃魔法当てるから、しかも怪我してる時に後ろから頭に当てるから。わかった?」

「9時に体育館裏だな。あと、俺は親友の恋を邪魔するような野暮なやつじゃねぇからな。邪魔じゃなくて恋のお手伝いに行くんだ」

「ならいいわ。それでその、えっと」

「なんだ?いつもみたいにはっきり言えばどうだ?」

「ちゃんと慶瞬君も連れてきなさいよね。それが最低条件だから」

 ふんっと鼻を鳴らす千佳峯の真意には全く気付かないが、取り敢えず負けた気分になるのが嫌なので東も言い返す。

「わかったぜ。よくわかんねぇけどならお前も、絵汰をちゃんと連れてこいよ」

「当然よ」

 睨み合う2人を横で見ながらもう好きにしてくれと心の中で思う詩音は、自分も絶対行かなければならない流れに対し諦めがちにため息をこぼした。

 こうして真司と杏花の知らぬうちに、周りではちょっとしたお祭り騒ぎになっていたのであった。



 だが、このことはおそらく真司にとって非常に幸運なことだったろう。
 もし東達が明日のデートを尾行しなかったならば、きっと被害はあれだけでは済まなかったことだろう。
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