ユリナイト

三國氏

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波乱の序章

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 短パンTシャツそして下着を脱いでいく。
 ようやく汗でベタついた気持ち悪さから解放された。

 そして隣を見ると、同様に服を脱ぎ生まれたままの姿となった舞姫ちゃんがいる。
 細過ぎず太過ぎず、お尻と胸にも十分な栄養の行き渡った、丁度良い肉付き。
 いわゆる男性から見て一番抱き心地の良いであろう、女性らしさを感じさせる体型。
 勿論私から見ても抱きつきたくなる体型なのは言うまでも無い。

「ふむふむふーむ。やっぱりスタイルいいよねー、ゆりっぺは」

「いやいや、私なんて背も大っきくてお尻も大っきくて、全然スタイル良くないよ」

「そんな事ないって、そのくびれとか羨ましいもん。割れるまでには至ってないけど、割れそうなくらいに引き締まった腹筋が特にいいよね。私なんてほら、プニプニー」

 人差し指と親指でお腹を摘むと、皮膚の下の脂肪が僅かばかり挟まれていた。
 あれだけお菓子を食べておきながら、栄養が胸に集中しているのだから、私以外の人間に言えば僻みの対象となりかねないだろう。

 シャルちゃんと雅先輩は麗華お姉様が話があるとのことで、まだ部室に残っている。
 私はシャルちゃんがシャワー室にいなくて本当に良かったと、この時だけは思ったのだった。

「いやいや、それくらいが丁度良いんだって。子供の時からダイエットとか考えるちゃダメだよ。良く食べて良く寝て良く動く、それが一番だからね」

「お菓子を沢山食べてお昼寝してダンジョンで運動する。つまりこれがベストということか!」

「そう!舞姫ちゃんは今のままが一番抱き心地が良さそうってこと!」

「え?あっ、うん。ありがと……う?」

 私の熱意が舞姫ちゃんに届いたようで何よりである。
 これで舞姫ちゃんのさらなる成長は確約されたようなもの、実に素晴らしい仕事をした気分だ。

 ◇◇◇◇◇◇

「麗華ー、話って何?」

 ここはダンジョン部の部室、肌に張り付く服を引っ張り忌々しげに見つめるシャルが口を開いた。
 ちなみにシャルは一年生、麗華は二年生だが、二人は従姉妹同士であるため畏まった話し方はしない。

「ごめんねシャル、雅も。ちょっと百合子さんのことで相談したいことがあって、二人には残ってもらったのよ」

「性格はともかく麗華が無理言って入学させただけはある。身体能力の高さは異常だった、途中からゴブリンに同情さえ覚えたゾ」

「握力48kg、上体起こし38回、長座体前屈66cm、反復横跳び63回、シャトルラン151回、50m走6.4秒、立ち幅跳び256cm、ハンドボール投げ35m。所属していたバスケ部は弱小だったにも関わらず、全国2位に導いた身体能力。彼女を入学させたのは間違いではなかったようですね」

「なんと、牛女ではなくゴリラ女だったあやつ」

「……シャル。言葉遣いには気を付けなさい。まさかとは思うけど百合子さんに牛女、なんて言ってないわよね?」

「ゆっ、言ってない!本当だゾ!」

 麗華にジト目で見つめられたシャルが慌てて否定し、今後は牛女と呼ばないことを誓うのだった。



 ここで再び麗華の顔色が曇る。
 麗華の頭には先程母親である学園長に言われた言葉が、幾度となく繰り返されていたからである。

「どうした麗華。優秀な新人の加入だぞ、喜ばしいことじゃないのか?」

 シャルが麗華に敬語を使わないのと同様、雅は麗華と話す時普通・・に話す。
 つまり中二病は封印されるということだ。
 いくつか理由があるが、その最たるものは麗華と中二病の相性が悪く、上手くコミュニケーションが取れなかったため。

 そんなわけで眼帯も包帯も取った雅との普通の会話が始まった。

「私百合子さんに謝らなければいけないことがあるんです」

「入学式の前に麗華が木から降りられなくなった話か?いや、違うか。麗華が猫を助けて、木から降りようとしたら、麗華を受け止めると言って聞かない新入生がいた話だったか」

「確かにあの木からなら普通に降りられました……あっ、でもそのことではないです。実は百合子さん、受験でのテストの点数が足りなかったんです。私はそれを自分のわがままで合格にしてしまった」

「ダンジョン部に入れるためにか?でもそれは謝ることではないだろ。むしろ感謝されるのではないか。まぁ、本人に言うのは勧めないが」

「私は百合子さんに本当のことを告げるつもりです。確かに彼女の入学の手助けはしました、しかしそれを盾にとってダンジョン部に勧誘するのは卑怯だと今更気付いたんです。私は……私の勝手な片思いで彼女の人生を左右したくはありません」

 麗華の意思は固かった。
 それはわざわざ二人に聞かせて、自ら退路を立つような真似をしたことからも想像がついた。
 部室に残ってもらったのはつまり、相談ではなく決意表明のためだったということである。

 シャルも雅も麗華を止めようとは考えず、麗華の意思を尊重しようと一瞬のアイコンタクトのみで意思疎通を図った。



「とは言っても百合子なら二つ返事でこの部に入るって言いそうだな。麗華が頼めばきっといちころだゾ」

「それは百合子さんが他人思いの素晴らしい人だからです。でなければ見ず知らずの人を身を呈して守るなど、なかなか出来るものではありません。だから……だから私はっ、彼女が自らダンジョン部に入りたいと言ってくれるのを待つつもりです」

 もう一度言うが、これも相談ではなく決意表明である。
 麗華は見た目に反して、心に一本真っ直ぐな鉄の棒が通っているような頑固者。
 こうなって仕舞えば他人の話を聞いても揺るがない。

 だがシャルとしては否定したいことが一つだけあった。
 それは百合子が既にダンジョン部入部を望んでいるであろうということ。

 誇張でも自惚れでもなく、客観的にも主観的にも、ダンジョン部のメンバーは容姿が良い。
 シャルは今日会ったばかりの百合子が、嬉々としてダンジョン部に入る姿が容易に想像出来てしまった。

 無理をしないでくださいと入部届を受け取らない麗華、どうしても入部したいとしつこく迫る百合子。
 考えただけでも面倒くさい構図。
 そして麗華同様シャルも決意した、表明こそしないが、せっかくだから少しかき回してやろうと。

「麗華の言いたいことはよーくわかった。実は私も同意見だった。私の方からもそれとなく聞いてみるゾ」

「いいのシャルちゃん?ならお願いするわ」

 シャルの心の中で小悪魔がほくそ笑んでいるとは知らず、麗華は天使のような笑みで応えた。



「とりあえずシャワー浴びてきていいか?背中のところが少し痒い、なんていったって今日の私はブラをしているからな」

「……シャル……ちゃんがブラ……ジャー……」

「これぞ高校デビューというやつだゾ。驚いたか麗華」

「そうね、シャルに合うブラジャーのサイズもあるのね」

 本音を吐露した麗華。
 嫌味とかの感情も無く、素直に思った言葉を口に出す方が時に残酷であることを麗華は知らなかった。

「……こうなったらとことん掻き回してやるゾ」

「え、何か言ったらしらシャル」

「いいや、こっちの話だとも。気にしないでいいゾ」

 静かに二人のやり取りを見ていた雅だけが、今後訪れるであろう波乱の幕開けを予感していた……。
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