殺人鬼転生

藤岡 フジオ

文字の大きさ
244 / 299

強さゆえに

しおりを挟む
 知らなかったぜ。聖騎士の【閃光】の魔法に、目眩まし以外でこんな効果があるなんてな。

 俺とピーターとダークは、潜っていた影から強制的に弾き出された。

「以前の僕ではないと言ったはずだ!」

 生意気だぞ、早漏のリッド。

 そう思っている間にも速攻の帰還の祈りが・・・、なぜかダークにかけられる。

(あいつらまじでダークを俺だと思っているのか?)

 俺はまるっきり無視されているような気がしてならない。ダークは「フハハハ!」と笑って負のオーラを撒き散らしている。

「無駄無駄無駄無駄無駄ッ! 我の力の前に祈りなど無意味なり!」

 まぁお前は悪魔じゃなくて人間だからな。悪魔や召喚獣を元の世界に強制送還する祈りは効かないだろうよ。

「馬鹿な!」

 僧侶たちはほぼ命中する祈りを外した事に驚いて、首を伸ばす。

 いや、無視される俺の立場よ。なんかおかしいぞ。またQが絡んでいるんじゃねぇだろうな? まぁいいか。あいつはこの世界じゃ、力をあまり発揮出来ないみたいだしな。高みの見物と洒落込もうじゃねぇか。

 リッドが聖属性の付与された剣を中段に構えて、地面を滑空するように走ってダークに突進する。

 しかし、武器のリーチはダークの方が上だ。

 剣の一撃よりも早く、空間を切り裂く鎌が聖騎士見習いを襲う。

 暗黒騎士の通常攻撃は常に空間を切り裂き、その亀裂に少し遅れて小さな爆発が発生する。どういう仕組みかは知らねぇ。多分魔法のなんかだ。

 空間を切り裂くと言っても時間差次元断のような強烈なものではなく、武器性能の底上げのような軽いものに見える。それでも物理防御を無効にする攻撃は恐ろしいものだ。

 それを恐れもせずにリッドは右からの水平斬りに突進して、鎌の柄を中盾で押しのける。しかし、湾曲した大鎌の先が背中を刺した。

「くっ!」

 金髪碧眼の聖騎士見習いのハンサムな表情が苦痛に歪んだが、それでも突進できるだけの気力が残っていた。

 聖騎士リッドの恐れ知らずな行動の原因は、後衛の僧侶があっという間にリッドの傷を祈りで治してしまうからだ。

 こりゃやべぇぞ。

 ダークは中距離戦が得意な戦士。しかも防御力自体は低い。影に潜って回避するにしてもすぐに【閃光】の光魔法で炙り出されるだろうぜ。

 いくら普通の暗黒騎士よりも耐久力が高いとはいえ、敵に懐に入られると相当不利なのだ。

 戦い方として、リーチの短い武器を持った者が、長い得物の持ち主の懐に素早く入るというのは基本中の基本だ。

 経験値の低いと躊躇したりして戸惑いが出るものなのだが、リッドは胆力を見せて真っ直ぐに踏み込んでくる。

「ハ! 我が弱点を克服していないとでも? 敵意を跳ね返せ! 紅月!」

 ダークの腹に赤い月が浮かんだが、リッドは今更止まれない。

 月に聖属性の剣を突き刺すと、リッドチームの後衛に赤い月が現れて、剣が僧侶の肝臓を突き刺した。

「いぎゃああああ!!」

 肝臓を刺されれば人は激痛で苦しむ。良い声だ、もっと喚け。

 もう一人の僧侶が致命的な傷の癒やしで、仲間をすぐに治してしまったので悲鳴は止む。僧侶がいるチームは実にしぶとい。

「ほう、ダークは俺が思っている以上に強えじゃねぇか。こんな強い奴が在野にいたとはよぉ。召し抱えなかったのは国の損失ともいえるな」

「性格に問題あるから採用しなかったんだろ」

 邪悪な顔をしたピーターが俺の影に沈みながらそう言った。俺が狙われていない事に気が付いたみてぇだな。流石は小賢しいピーター君。

「お前もだろ、ピーター」

「うるさいよ」

 影に爪を突き刺してやろうか。そうすればお前の脳天に突き刺さるぞ、邪悪なるピーター君。

「く! 卑怯な! というか、そのスキルは味方にも跳ね返る可能性があったのだぞ!」

 なんだと?

 って事は紅月は敵味方関係なくランダムに攻撃を跳ね返すスキルか?

 まぁビャクヤはリフレクトマントと分身の魔法に守られているし、リンネには分厚い鎧がある。ピーターは影の中。一番危なかったのは俺じゃねぇか。聖属性の剣だと普通にダメージが通るぞ!
 
「ヒヒヒ、卑怯上等! 我を誰だと心得る! 正義を説きながら、小姓の後で腰を振る法王ではない!」

 あぁ、中々いい挑発だ。やっぱこいつ俺とキャラが被るわ。アニメだと死亡フラグだけどよ。

「貴様! なんという侮辱を!」

 リッドは顔が真っ赤だ! そりゃそうだ。法王はロリペドだと言われたようなものだからな。

 紅月の効果が消えたのを見計らってからの、白い鎧を着たリッドのタックルが炸裂する。

 ダークは吹き飛び転げ回るが、全身を包む黒い革鎧が衝撃を吸収してくれるので、体勢を整える余裕があった。

 この間ビャクヤたちはなにをしているかというと勿論、神殿騎士や司祭の魔法攻撃を引き受けている。

 と言っても神殿騎士たちは、ビャクヤの分身や俺の分身と戯れているだけだが。

 ビャクヤも調子に乗ってきている。ナンベルのようなタップを踏んでから、神殿騎士をおちょくるように弱い魔法を撃っていやがる。いや、殺さないように注意しながら、弱い単体魔法を選んで撃っているのかもしれねぇ。

 これまでの冒険に比べてこの大会はイージーモードだからな。一撃必殺の多い俺はともかく、搦手の多いビャクヤには余裕だろう。まぁ油断すると歯抜け戦士に腕を持っていかれるような珍事も起こるがな。

「この戦いは、案外難しいかもよ」

 影の中からピーターが俺の考えとは反対の事を言う。

「なんでだ?」

 まぁ理由はわかっているが、一応聞いてみる。

「だってそうだろ? 俺たちが実力を発揮なんてすれば敵チームを殺してしまうじゃないか。そうなると負け確定。かといって手加減しながら戦っていると、いつまでも僧侶が回復してしまう。長期戦必至じゃないか」

「そんなのは最初から承知だ、アホが」

 一撃必殺のアタッカー揃いのビャクヤチームは、確かに手加減が難しい。

 臆病なピーター君でも、バックスタブの一突きで、腕力の高い獣人並の攻撃力を発揮する。そんなものを僧侶にぶちかませば、即死間違いなし。

「お前、パチンコ持ってるだろ?」

 俺は退屈で腕をぶらぶらさせながらピーターに提案する。

「あるけど、なに?」

「それで後衛を狙え。僧侶だけじゃだめだ。司祭も回復手段を持っているからな。ほぼ同時に三人の頭に石をぶつけて気絶させるんだ。名付けて――――、俺様の天才的発想に脱帽したピーターが、平伏しながら敵を気絶させる作戦!」

「作戦名長いわ! 平伏なんかしてたらパチンコを撃てないだろ! それにそんな都合よくいくかよ!」

「いや、俺相手に毒クッキーを食わせたお前ならやれる。俺が奴らの相手をしてもいいんだが、爪の裏で頭を叩いただけでも僧侶たちはひしゃげて死ぬんだわ。それこそクッキーみたいに平らになるんよ。それでも良いならやるが?」

「おえ! 想像しちゃっただろ! わかったよ。やるけど、ちゃんとフォローしてくれよな!」

 するか、アホ。なんなら返り討ちで死ね!

「わかった、わかった。尻拭いはしてやるから、安心して行ってこい」

 影に沈みながら訝しむ視線を残して、ピーターは影世界に消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

『召喚ニートの異世界草原記』

KAORUwithAI
ファンタジー
ゲーム三昧の毎日を送る元ニート、佐々木二郎。  ある夜、三度目のゲームオーバーで眠りに落ちた彼が目を覚ますと、そこは見たこともない広大な草原だった。  剣と魔法が当たり前に存在する世界。だが二郎には、そのどちらの才能もない。  ――代わりに与えられていたのは、**「自分が見た・聞いた・触れたことのあるものなら“召喚”できる」**という不思議な能力だった。  面倒なことはしたくない、楽をして生きたい。  そんな彼が、偶然出会ったのは――痩せた辺境・アセトン村でひとり生きる少女、レン。  「逃げて!」と叫ぶ彼女を前に、逃げようとした二郎の足は動かなかった。  昔の記憶が疼く。いじめられていたあの日、助けを求める自分を誰も救ってくれなかったあの光景。  ……だから、今度は俺が――。  現代の知恵と召喚の力を武器に、ただの元ニートが異世界を駆け抜ける。  少女との出会いが、二郎を“召喚者”へと変えていく。  引きこもりの俺が、異世界で誰かを救う物語が始まる。 ※こんな物も召喚して欲しいなって 言うのがあればリクエストして下さい。 出せるか分かりませんがやってみます。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

異世界亜人熟女ハーレム製作者

†真・筋坊主 しんなるきんちゃん†
ファンタジー
異世界転生して亜人の熟女ハーレムを作る話です 【注意】この作品は全てフィクションであり実在、歴史上の人物、場所、概念とは異なります。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

処理中です...