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離れ離れは嫌だ
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オビオと同じ高さまで飛ぶ俺を、念力が捕らえて握りつぶそうとする。
黒竜も使ってたらしいこの不思議な力。
マナとは関係のない竜族独特の力なのか、エフェクトもなにもない。ただ潰れろと念じる思念が俺を襲ってきやがる。
寧ろ、この念力を浴びせられると、自ら潰れなくてはいけないと思わせるような何かがある。
人間てぇのは、火傷をしたと強く思い込むと、本当に皮膚が焼けただれて火傷をするからな。これはそういった類の力だ。外からの圧力云々じゃねぇ。内から来る力。思い込ませる力。
――――だが。
俺様は人間じゃねぇ!
悪魔だ! 人智を超える力も手に入れた! 相性の悪い神属性のあいつには負けても、たかがトカゲなんかに負けるかよ!
しかも、こいつは本物じゃねぇ! なんの努力もせずに得た力で俺に挑んできた。まぁ非戦闘職の料理人が戦う術を得るとしたら、こういったズルをするしかねぇけどよぉ。
それでも、過ぎた力だ。
俺は念力を弾いて消す。ふざけるなよ、昨日今日で強くなった奴の奇妙な力に屈するか! ボケェ!
「やい! Q! クロノの本心を言え! なんでオビオはこうなった?」
フードを外してオールバックの白髪と長い耳を見せた老人は、人のいなくなった闘技場で静かに立ち上がった。
「探求者の性質を、君も知っているだろう」
研究や目的のためなら、全てを犠牲にする無慈悲なる者。中には魂や感情を悪魔に売り渡す者もいるらしい。
ヒジリとてその例外ではねぇ。あいつは辛うじて人の心を保っているが、感情がどこか希薄でおかしい。笑顔も嘘臭ぇ。
「クロノの探究心と、オビオの復讐心が合致した結果が今なのだよ」
「生意気な小僧め。たかがコックのくせに大勢を救えると勘違いして自分を責め、憎しみを俺に向ける阿呆だ」
――――カッ!
空間を削る何かが俺を襲う。
だが、俺にはもう効かねぇ。空間を削る刹那の間で、古竜の攻撃を察知できるようになったからだ。
透明な泡みてぇなもんが、小さく発生して大きく膨らみ、空間を削る。小さい時点で気を抜かずに避ければ問題はねぇ。
瞬間移動のごとく素早く動いて、空間を削り取るブレスを俺は更に躱す。
ブレスと言ったのは、オビオが口を開いた後に、この事象が起きるからだ。次元断が球形になったような感じのブレスだな。
「今の地球は死と無縁なんだろうなぁ。だから人の死に鈍感になるか、敏感になるかの両極端なんだろうよ。素敵な星からお越しで、星のオーガ様! オビオの場合は後者だな。いい加減、カルト教団事件の事は忘れろ」
俺は竜の背中に現れて羽の皮膜を切り裂いて、爆ぜさせる。
オビオは吠えながら地面にゆっくりと羽ばたいて下降した。忌々しい悪魔め! とでも言っているのか? だったら嬉しいねぇ。
首の長い竜の噛みつき攻撃を避け、貫くような手刀をオビオの心臓に繰り出すが、やっぱ硬ぇわ。ダメージを与えられるのは羽の皮膜のみ。
互いに決め手がないまま攻防を繰り返していると、背中のクラックがクロノを捉える。
杖を突きながら階段を降りたエルフの老人は、マサヨシの頭を拳骨で叩いた。
「ドッ!」
マサヨシは首を傾げて人差し指で天を指す。急に頭を叩かれたので、驚いてそうしたみたいだ。
「貴様さえ来なければ、予定が狂う事はなかった! 本当なら今頃はキリマルだけが・・・! 誰の差し金だ! コズミックペンか!」
「あのさ~、いきなり人を殴りつけて、意味不明な事言うの止めてくんね?」
マサヨシは頭を擦って抗議する。
「黙れ! この神モドキ! あんたの役目はヒジリとヤイバという二つの特異点のサポートだよ! あんたが来たお陰で全てが台無しだ!」
どうやらマサヨシは、Qにとってイレギュラーな存在のようだな。
「試合中止! この芝居はもうおしまいだよ! コズミックペン!」
口調がいつものQに戻っている。クロノを装う余裕もなさそうだ。なんだ? 何を焦ってやがる?
「止めておくれ! 私の可愛いビャクヤを連れて行かないでおくれ! あんたのお気に入りでもあるんだろう? もう飽きたのかい? だったら捨てないで私に譲っておくれよ! コズミックペン!」
なんの話だ? マサヨシが転移してきた事で何が変わった? コズミックペンがまた何かやらかすのか?
「そう、行くのはキリマルだけだったんだよ!」
天に向かって喚くクロノは、蝿を追い払うような動作をしている。
「止めておくれってば! ビャクヤの坊や、逃げて! そこから逃げるんだよぉ!」
エルフの爺は闘技場を囲う高い壁から飛び降りた。普通に飛び降りたならば、両足骨折で大怪我を負うが、彼は魔法を使ってゆっくりと降下する。
ビャクヤは乱入してきたクロノを警戒するべきか、古竜を警戒すべきか迷っている。
「え? え? え?」
俺はとんでもねぇことが起きると察知して、すぐにビャクヤに近づいた。もう離れ離れになるのは嫌だからな。
その途端、地面に大きな懐中時計の幻影が現れ体が動かなくなった。
「連れて行かないでおくれって言っているだろう! そうさ! 白状する! 禁断の箱庭を作動させて新たな世界を作ったのは私さ! ほら、欲しい答えだったろう? だから箱庭が影響を与える前の世界に、ビャクヤを連れていかないでおくれよ! コズミックペン! 私はそこは行けないんだよぉ!」
何の話かはわからんが、地面の大きな懐中時計の針は重なって十二時をピッタリと指した。きっとQが意図してない事なんだろうな。奴の慌てっぷりは半端ねぇ。
「離れるなよ、ビャクヤ。お前に死なれると、お前の先祖であるカナとミドリの幽霊が怒鳴り込んでくる」
ゴ~~ン、ゴ~~ン! と、どこからか鐘の音が聞こえてくる。
音が止むと時間魔法トラップの外にいるリンネ、ダーク、ピーター、そして席に座ってポカンとするマサヨシの驚く顔が、歪んでいった。
黒竜も使ってたらしいこの不思議な力。
マナとは関係のない竜族独特の力なのか、エフェクトもなにもない。ただ潰れろと念じる思念が俺を襲ってきやがる。
寧ろ、この念力を浴びせられると、自ら潰れなくてはいけないと思わせるような何かがある。
人間てぇのは、火傷をしたと強く思い込むと、本当に皮膚が焼けただれて火傷をするからな。これはそういった類の力だ。外からの圧力云々じゃねぇ。内から来る力。思い込ませる力。
――――だが。
俺様は人間じゃねぇ!
悪魔だ! 人智を超える力も手に入れた! 相性の悪い神属性のあいつには負けても、たかがトカゲなんかに負けるかよ!
しかも、こいつは本物じゃねぇ! なんの努力もせずに得た力で俺に挑んできた。まぁ非戦闘職の料理人が戦う術を得るとしたら、こういったズルをするしかねぇけどよぉ。
それでも、過ぎた力だ。
俺は念力を弾いて消す。ふざけるなよ、昨日今日で強くなった奴の奇妙な力に屈するか! ボケェ!
「やい! Q! クロノの本心を言え! なんでオビオはこうなった?」
フードを外してオールバックの白髪と長い耳を見せた老人は、人のいなくなった闘技場で静かに立ち上がった。
「探求者の性質を、君も知っているだろう」
研究や目的のためなら、全てを犠牲にする無慈悲なる者。中には魂や感情を悪魔に売り渡す者もいるらしい。
ヒジリとてその例外ではねぇ。あいつは辛うじて人の心を保っているが、感情がどこか希薄でおかしい。笑顔も嘘臭ぇ。
「クロノの探究心と、オビオの復讐心が合致した結果が今なのだよ」
「生意気な小僧め。たかがコックのくせに大勢を救えると勘違いして自分を責め、憎しみを俺に向ける阿呆だ」
――――カッ!
空間を削る何かが俺を襲う。
だが、俺にはもう効かねぇ。空間を削る刹那の間で、古竜の攻撃を察知できるようになったからだ。
透明な泡みてぇなもんが、小さく発生して大きく膨らみ、空間を削る。小さい時点で気を抜かずに避ければ問題はねぇ。
瞬間移動のごとく素早く動いて、空間を削り取るブレスを俺は更に躱す。
ブレスと言ったのは、オビオが口を開いた後に、この事象が起きるからだ。次元断が球形になったような感じのブレスだな。
「今の地球は死と無縁なんだろうなぁ。だから人の死に鈍感になるか、敏感になるかの両極端なんだろうよ。素敵な星からお越しで、星のオーガ様! オビオの場合は後者だな。いい加減、カルト教団事件の事は忘れろ」
俺は竜の背中に現れて羽の皮膜を切り裂いて、爆ぜさせる。
オビオは吠えながら地面にゆっくりと羽ばたいて下降した。忌々しい悪魔め! とでも言っているのか? だったら嬉しいねぇ。
首の長い竜の噛みつき攻撃を避け、貫くような手刀をオビオの心臓に繰り出すが、やっぱ硬ぇわ。ダメージを与えられるのは羽の皮膜のみ。
互いに決め手がないまま攻防を繰り返していると、背中のクラックがクロノを捉える。
杖を突きながら階段を降りたエルフの老人は、マサヨシの頭を拳骨で叩いた。
「ドッ!」
マサヨシは首を傾げて人差し指で天を指す。急に頭を叩かれたので、驚いてそうしたみたいだ。
「貴様さえ来なければ、予定が狂う事はなかった! 本当なら今頃はキリマルだけが・・・! 誰の差し金だ! コズミックペンか!」
「あのさ~、いきなり人を殴りつけて、意味不明な事言うの止めてくんね?」
マサヨシは頭を擦って抗議する。
「黙れ! この神モドキ! あんたの役目はヒジリとヤイバという二つの特異点のサポートだよ! あんたが来たお陰で全てが台無しだ!」
どうやらマサヨシは、Qにとってイレギュラーな存在のようだな。
「試合中止! この芝居はもうおしまいだよ! コズミックペン!」
口調がいつものQに戻っている。クロノを装う余裕もなさそうだ。なんだ? 何を焦ってやがる?
「止めておくれ! 私の可愛いビャクヤを連れて行かないでおくれ! あんたのお気に入りでもあるんだろう? もう飽きたのかい? だったら捨てないで私に譲っておくれよ! コズミックペン!」
なんの話だ? マサヨシが転移してきた事で何が変わった? コズミックペンがまた何かやらかすのか?
「そう、行くのはキリマルだけだったんだよ!」
天に向かって喚くクロノは、蝿を追い払うような動作をしている。
「止めておくれってば! ビャクヤの坊や、逃げて! そこから逃げるんだよぉ!」
エルフの爺は闘技場を囲う高い壁から飛び降りた。普通に飛び降りたならば、両足骨折で大怪我を負うが、彼は魔法を使ってゆっくりと降下する。
ビャクヤは乱入してきたクロノを警戒するべきか、古竜を警戒すべきか迷っている。
「え? え? え?」
俺はとんでもねぇことが起きると察知して、すぐにビャクヤに近づいた。もう離れ離れになるのは嫌だからな。
その途端、地面に大きな懐中時計の幻影が現れ体が動かなくなった。
「連れて行かないでおくれって言っているだろう! そうさ! 白状する! 禁断の箱庭を作動させて新たな世界を作ったのは私さ! ほら、欲しい答えだったろう? だから箱庭が影響を与える前の世界に、ビャクヤを連れていかないでおくれよ! コズミックペン! 私はそこは行けないんだよぉ!」
何の話かはわからんが、地面の大きな懐中時計の針は重なって十二時をピッタリと指した。きっとQが意図してない事なんだろうな。奴の慌てっぷりは半端ねぇ。
「離れるなよ、ビャクヤ。お前に死なれると、お前の先祖であるカナとミドリの幽霊が怒鳴り込んでくる」
ゴ~~ン、ゴ~~ン! と、どこからか鐘の音が聞こえてくる。
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