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カルト教団と修道騎士
しおりを挟む「仕立て屋の親父がオビオにビビってた時の顔、面白かったなぁ! ハハッ!」
ピーターは人間用の皮鎧を、自分に合うように防具職人に仕立て直してもらったので、機嫌良くベラベラと喋っている。
奇妙で不格だった大きな革の胸当ては小さくなり、地走り族の体にジャストフィットしていて、見ていて据わりが良い。勿論仕立て代はパーティ共有の金から出した。買うよりも安かったのでそうしたのだ。
ついでに俺達は武器と防具の店に入り、異世界人が落としていった数々の装備を売る事にした。
俺が亜空間ポケットから鎧を取り出してテーブルに置いていると、ベテランっぽい犬人の戦士が、売り物の鎧だと思って買っていってしまった。
「これ買うワン」「あいよ! 金貨2枚と銀貨8枚でやす!」チャリン!、となんともスムーズな取引だったので止める間もなかった。
「ちょっと店主、まだ俺はあんたと値段交渉はしていないぜ? 勝手に売ってしまうなんて酷いぞ」
店主であるゴツイ体の豚人は、いつもならオークのような強面を使って自分に有利になるよう客を脅すのだろうが、こっちは身長2メートル半の俺や、筋肉粒々の獅子人がいるのだから、強気に出られないようだった。
「へ、へへへ。すいやせん、旦那。その代り売れた額の半値を渡しやすんで。いつもは中古品はどんなに程度が良くても、定価の半額で売るんでさぁ。だから買い取り額はその半分、つまり定価の2割5分なんですがね、旦那の鎧を買って行った戦士には、半額ではなく七割で吹っ掛けたんでやす。でも戦士は文句を言いませんでした。つまりそれだけ物が良かったってこってす。では約束通り売れた額の半分、金貨1枚と銀貨4枚です」
俺は鎧の価値を知っているので、店主が嘘を言っていない事が解った。あの鎧を買った戦士は相当長生きするぜ。
亜空間ポケットから次々に盾やら、剣やら、兜やら、小手やらをガラガラと出してテーブルに置くと、これまたすぐに売れていく。
異世界人の防具すげぇ人気だな。まぁこっちの世界の鎧って、野暮ったくて洗練されてない感じがするもんな・・・。
結局店主は俺に金貨3枚、銀貨7枚のところを色を付けて金貨4枚にして渡してくれた。
いつもは1日に高い武器や防具が1つ売れたら良い方らしい。今日は俺が持ってきた高価な武器や防具が飛ぶように売れて、店主は儲かりホクホク顔だ。
だったら、冒険者相手に直接売れば良かったかな? でも武器や防具を売るのって、免許がいるらしいしな。免許を取るのはメンドクサイ。
最初に売れた鎧と合わせると、合計金貨5枚と銀貨4枚だ。21世紀のお金の価値にすると54万円。これで路銀は十分。次の村に進もう。
「オビオ・・・。お前さん、やっぱ商人になった方がいいんじゃねぇか?」
トウスさんが大金を見て、目を丸くしている。
「いや、俺は交渉とか下手だよ? 鑑定の指輪がなかったら多分、良いカモだったんじゃないかなぁ。指輪があっても、いつか交渉負けしそうだし」
俺は商人気質じゃないからな。でも今のところ、売買の時に損はしていないので素直に嬉しい。ほんと指輪様様だわ。失くしてもいつの間にかズボンのポケットに入ってるし、血の契約装備って便利だなぁ。ある意味呪いのアイテムっぽいけど。
気分良く歩いていると、サーカが俺のマントを引っ張って止めた。
「待て、オビオ。村の入り口が騒がしいぞ」
サーカの視線を追うと、確かに街道沿いにある村が騒がしい。丁度ニーシ村と王都の真ん中あたりにある、小さな村だ。
「なんだろう? 行ってみよう」
割と大きい村の門前では、騎士が十人ほど立って、中の様子を窺っている。俺たちが近づくと、一人の騎士が舌打ちをした。
「チッ! 野次馬冒険者か」
すぐさまカウンターのようにサーカの罵詈雑言が飛ぶ。
「シルビィ隊隊員である私が見えないのか? ネギ坊主。冒険者のようなならず者に毛が生えた程度の底辺と一緒にするな!」
こいつの冒険者への偏見は酷いな。俺たちも冒険者になる予定なんだが?
それにしても・・・、プスス。確かにあの騎士の頭はネギ坊主のようだ。相手が気にしてそうな弱点を突っつくの上手いな・・・。
サーカは事あるごとにシルビィ様の名を出す。こいつは権力を持ったら間違いなく振りかざすタイプだな。
「なっ! なんだと!」
お約束のような反応が返ってくるので、我らが女騎士様は、得意げな顔になってネギ頭騎士たちの素性を訊いた。
「貴様らはどこの騎士団所属だ」
「な、菜の花騎士団だ・・・」
それを聞いた途端、サーカが「ワーッハッハ!」と大笑いした。
「ひよっこ騎士団ではないか!」
お前だって紫陽花騎士団にいた頃は、ひよっこの時期があったんだろ? あんまり偉そうにするなよ。
「くそっ! こいつ、噂の・・・。腐れ口のサーカか!」
ひでぇ二つ名だなぁ、サーカさん。騎士の間ではそう呼ばれているみたいっすよ。
「状況を説明しろ」
サーカは二つ名を気にしている様子はない。寧ろ勲章のように思っていそうだ。
「は! ナッカツ村をカルト教団が占拠したという通報があったので確認に来ました!私は菜の花騎士団副団長のロディ・・・」
「どうせすぐに忘れる名だ。名乗らなくてもいいぞ、雑魚騎士団の副団長。さっさと状況説明しろ」
ほんとひでぇな、サーカは。本来ならロディさんの方がサーカより立場は上だ。
しかしシルビィ隊に貴族の権力は通用しない。それを利用するサーカの態度はいつになく傲慢だ。
俺は後ろで、この腐れ口さんを指さしてから、片手を顔の前にやると、口だけでごめんと言って、ロディさんに謝っておいた。
ロディさんもそれで少しは気が済んだのか、怒り顔が和らいだように見える。
「村にはカルト教団”星の棺桶“が立て籠っています。逃げのびた数人の村人の話では、人質交渉をしようとして修道騎士が入って行ったとの事。しかしどうやらその女騎士も捕まってしまったようです」
「で、お前らは村の入り口で、ウロウロ、アワアワしていただけというわけか。スカシ草騎士団に名を改めるのだな」
なんだよ、スカシ草って。あとで買っておいた植物図鑑で調べてみよう。
俺はあまりに口の悪いサーカを止めようと、ロディさんの味方をしてみる。
「じゃあよ、そんなに言うならお前が何とかできるのか?」
菜の花騎士団の騎士達は声には出さないが、そうだそうだと顔で叫んでいる。
「は? 当たり前だろ。そもそも星の棺桶は、お前らオーガの神を崇めているのだ。なのでオビオにも責任がある。手伝え」
なんだその滅茶苦茶な理論は。ジャイアニズムが酷いぞ!
「っていうか、なんで光側の奴らが、闇側の神を崇めてんだよ」
「誰がどの神を崇めようが自由だ」
そういうところは寛容なんだな。変な国だわ、樹族国は。
「最近、星のオーガを崇めるカルト教団が増えいて、我々も困っているのです」
ロディさんはサーカに言わずに俺に話しかけた。そりゃそうもしたくなるわな。サーカに話しかけると辛辣な言葉しか返ってこない。
これまで影の薄かったヤンスさんが、目深に被ったフードを後ろにやって話に入ってきた。既に俺というオーガがいるせいか、ゴブリンを見ても騎士達は驚かなくなっていた。どうせサーカの下僕かなにかだと思っているのだろう。
「そりゃヒジリさんが、目覚ましい活躍をしているでやんすからね。彼はオーガの神、ハイヤット・ダイクタ・サカモト神の再来とまで言われているでやんす。星のオーガ教の人気はうなぎのぼりでやんすから、名を騙って金儲けする悪い奴らが現れてもおかしくないでやんすよ。恐らくでやんすが、説得しに村に入った修道騎士は、カルト教団を追っていたのだと思うでやんすよ」
「なるほどねぇ。追い詰めたられた結果、カルト教団星の棺桶は村人を人質にして立て籠った。それで責任を感じて説得に向かったはいいが、捕まってしまったと・・・」
トウスさんはそう言いながら、心配そうに村の様子を見ている。
サーカは暫く指の腹で唇を撫でた後、俺を見た。嫌な予感がする・・・。
「よし、オビオ。村の中へ入れ。そして奴らに捕まるのだ。お前はオーガだから、星のオーガの信者だと奴らは勝手に思うだろうし、仲間意識が芽生えるかもしれん。中に入って様子を探れ。そして突入のタイミングを教えろ」
「なにそのスッカスカの作戦。俺次第の、俺頼みじゃねぇか」
「オーガの料理人なら奴らも警戒はすまい。食料を持ってきたとか言えば、中に入れてくれるだろう」
「え! 買いだめしといた食材を使えってか! 誰がそのお金を立て替えてくれるんだ?」
「国から金は出る。さっさと行け、ウスノロオビオ!」
俺はスパンと尻をサーカに蹴られて、その勢いで村の中へ入っていった。
はぁ・・・。いいのかなぁ? サーカ君。俺は君に何でも言う事を一つきかせられるんだぞ。
妄想の中のサーカは、柱にくくりつけられており、熱々のおでん汁をかけられて「あっつ! あっつ!」と言いながら悶えていた。
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