料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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ノームのリュウグ

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 取り敢えず俺はノームの女の子をリュウグと呼んだ。名前が長すぎて覚えられない。それはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール並みに覚えにくいので短くしたのだ。

「詳しく話を聞く前に、店へ弁償代を払ったほうがいいな」

「お金なんかないで。飛空艇代で全部消えたから」

「はぁ・・・? じゃあ立て替えとくよ。いくら?」

 俺はムチムチの猫人のバーテンダーに訊いた。すると猫人女の片頬が上がった。

「ざっと見積もって、金貨二枚ってとこですかにゃ」

 たっか! まぁそうか。カウンターは半壊してるし、高そうなお酒や食器もあったもんな・・・。

「ほら」

 俺は自分の財布の革袋から金貨二枚を出して、猫人に握らせた。

「これで後腐れなしな?」

 恐らくこの商売っ気に満ちた猫人の女は多めに見積もっているだろうから、慰謝料込みの金額だと暗に念を押す。

 リュウグも悪いと思ったのか、少し大人しい。

「うーん、もっと大々的に全快祝いをしたかったけど、場所がないなら仕方ない。ホッチさんの家の庭でこぢんまりとやるか・・・。お前も来いよ」

「えっ! ええの?」

「腹減ってんだろ? さっきから腹が鳴ってる」

 リュウグはお腹を押さえて顔を赤くした。

 ノームか・・・。イメージ的には髭の爺さんって感じだけど、女は普通なんだな。

 耳たぶが若干大きいぐらいで、背は地走り族よりも更に小さい。

 顔も小さいなー。黒目も大きいし、妖精に近い感じがする。

 彼女の髪の色はメリィと同じく銀色に見えるけど、マットな灰色に近い。チッチに似たクリクリの癖毛が可愛いな。ほんとこの星は可愛いが溢れている。




「ええ! オビオが人殺しオーガ? あり得ないわ!」

 ホッチさんが驚いて丸い目を更に丸くしている。そうでしょう、もっと言ってあげてください。

「寧ろ人助けオーガだよね、お母さん」

 チッチはそう言うと、鳥の丸焼き(醤油味)の脚に噛みついて鼻の穴を大きくした。

「わぁ! 香ばしくて美味しい!」

「うはぁ! 美味しいね! 助けてもらった上にこんなご馳走まで作ってくれるオビオ君が、人殺しなんてするわけがない」

 アッチさんもそう喜んでくれている。メリィが治すまで土気色した顔をしていたのが嘘のようだ。

「でも・・・。殺人現場を調査してくれた司祭様は、現場にあった血塗れのロングソードを鑑定して持ち主を調べてくれたもの。そしたら持ち主の名前はミチ・オビオだって・・・」

「俺のロングソードは亜空間・・・、無限鞄に入ってるけど? それに鑑定の魔法で詳細を知ることができるのは、魔法をかけた本人だけだ。つまり複数人に鑑定してもらわないと、情報なんていくらでも捏造できるぜ?」

「そやな・・・。私も頭に血が上ってたわ・・・。はぁ・・・。ポルロンドに家族旅行なんか、行かんかったらよかったわ」

「ポルロンドで両親は殺されたのぉ? 遺体は?」

 神聖国モティに関して調査しているメリィは、俺のあげたメモ用紙とペンでメモを取っている。忘れっぽい性格をしていると聞いたのであげたのだ。

 修道女メリィが、この上等な紙と無限にインクが出てくるボールペンに驚き、喜んでくれるのは想像できていたけど、嬉しさのあまり、ほっぺにチューをしてくれたのには驚いた。

 この世界の女子は凄く嬉しいと、高確率で頬にキスをしてくれる。

 正直、それは嬉しいので今後は、女子が喜びそうなデザートを作っていこうと思う。キリッ!

「よく解らない肉塊になってた。怪力のオーガだからできる芸当だって・・・。私が商店街で買い物をしているときに、両親はオーガに裏路地に連れ込まれて殺されたって・・・」

「待て、オビオの筋力は12しかないのだぞ。オーガは基本的に筋力値や生命力に補正がかかるのだが、オビオはどういうわけかそれがない。だからストレートに12という、戦士として最低限の筋力しかないというわけだ。私よりも腕力の弱いオビオが、ノームを肉塊にするには、相当時間がかかるだろう。その間に目撃者は何をしていた? 通報なり騒ぐなりできただろう。それにリュウグの両親だって抵抗はするだろうし」

 珍しく俺に味方してくれるサーカさんが頼もしい。

 感謝の意味を込めて彼女に素早くウィンクをして、口だけの投げキッスをした。

 しかしサーカは鼻に皺を寄せ、歯をむき出しにして声に出さず「死ね」と返してきた。酷い・・・。

「でもオビオは樹族国に来るまでの記憶がないんだろ? 殺人犯の可能性はまだ残ってるじゃん」

 ピーターがまた悪い顔してまーす! 先生! あの顔はいけないと思いまーす!

「でもぉ、リュウグちゃんの両親が殺されたのは最近だよねぇ? オビオはぁ、ずっと私たちと一緒にいたよ? ねー?」

 メリィの「ねー!」は可愛さの破壊力抜群だ。俺の顔を見て、首を傾げるのはズルイですぞぉ!

「メリィ、擁護してくれてありがとな? な? これな? お礼な? な? な?」

 事後のオッサンが若い娘にお金を握らせるように、俺はチョコ菓子をメリィに握らせた。

「わぁ~! お菓子~!」

 メリィは素直に喜ぶから可愛い。どこかの誰かさんと違って。

「確かにオビオにはアリバイがあるからなぁ。どう転んでも、その司祭が嘘を言っているのは間違いねぇぜ」

 俺はスッと立ち上がるとトウスさんのところへ行って、メリィ同様チョコ菓子を握らせた。

「オビオぉ! 賄賂渡してんじゃねぇぞ!」

「うるせぇ、ピーター! どの道、俺は無実だから賄賂じゃねぇ! ところでリュウグ。両親の遺品か何か持ってないか?」

 リュウグは胸のシャツからお守りを取り出す。その時ピーターが素早く彼女の胸元を見て、小さな声で「B」と囁いて残念そうな顔をした。胸のサイズを目で測ってじゃねぇよ! スケベが!

「これだけは死体の近くに、綺麗なままで落ちてたんや・・・」

「なるほど、上位鑑定の指輪で手がかりを探るのか」

 サーカは豆のスープを食べていた手を止めて、スプーンで俺の指輪を指した。

「そういう事。上位鑑定の指輪は、俺の成長に合わせて視れる情報が増えていく。何か解るかもしれない」

 早速俺はお守りに触れて意識を集中する。魔法陣が描かれた金属のペンダントはひんやりと冷たい。

 鑑定の指輪は物に触れてから、鑑定するぞ! という意識を持たないと、基本的に効果を発揮してくれない。時々勝手に視させてくる時もあるけどさ・・・。

「視えてきた・・・。あ! また四角い顔の司祭! カルト教団のホキキが、こいつに跪いていたのを、前に見たぞ! 路地裏に言葉巧みに連れ込んで、なにかの魔法をリュウグの両親にかけて、連れ去ったようだ。肉塊になんてなってなさそうだけど・・・?」

「四角い顔の司祭? それやったら事件現場を鑑定してくれた司祭様と同じや! ほな、両親は生きてるって事か? あの目撃者もグルやったって事?」

「その可能性はあるな。どうすんだ? 探すのか?」

「うん、探すで!」

「当てはあるのか? 路銀は?」

 そう訊くとリュウグはテーブルに突っ伏して、肩を細かく震わせた。

「どっちもない・・・。うぐっ・・・! ぐすっ! なんで私がこんな目に遭わないかんの? 両親が生きてるって分かっても、今度は探し出すのに、お金とかいるし!」

 うぉ・・・。リュウグが泣いている。可哀想になってきた。俺はそっとリュウグの肩に触れて慰めようとした。がついつい能力値を見てしまう。

 種族はノーム。適正職業が機工士。実力値10。実力値ってのは、10から伸び悩むみたいだな。能力的には体力と信仰心と器用さと魅力と運の数値が高い。何気に優秀だな。

「もしよければ、俺たちと一緒に来るか? 地図で見る限りブラッド領から、ポルロンドまでそんなに遠くないし。魔法をかけて連れ去ったって事は、リュウグの両親を何かに利用するって事だろ? だったら殺したりはしないと思う。ブラッド辺境伯に剣を返したら、すぐに向かおう」

「ええの?」

 顔をガバっと上げたリュウグは鼻水を垂らしていたので、俺はティッシュでさっと拭く。

「いいーんです」

 どうせ気ままに旅するつもりだったしな。サーカが嫌そうな顔してるが、無視無視。

「オビオはお節介だなぁ。これからもそうやって、色々な事に首を突っ込みそうな予感がするよ」

 ピーターが呆れながらも肉に夢中になっている。

 その同族のピーターに、ホッチとチッチが反論してくれた。

「オビオに任せれば、なんだって解決するわよ!」

「そうだよ! オビオは良いオーガなんだから!」

 俺はまたスッと立ち上がるとホッチさんとチッチの席まで行き、二人の前にチョコ菓子を更に山盛り入れて置いた。

「やったー!」

「賄賂すな!」

 ピーターがお菓子を羨ましそうに見てそう言う。

 だが菓子はやらんぞ。

 俺の印象を貶めようとしたからな。
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