料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

文字の大きさ
83 / 336

エリート種との差

しおりを挟む
 ダーレは昏倒攻撃を得意とするのか、またもや金玉蹴りが繰り出された!

 おい、くそ! 運命の神め! もしお前に会う事があれば、百列キックをお見舞いするぜ! 

「いくぞ!」

 勇ましい掛け声とともに、ダーレは蹴りの構えをとった。

「ひぃ!」

 俺は思わずマタンキーを手で庇おうとしたが、体が動かない。

 繰り出された攻撃は、ダイスの目――――、命中判定、貫通判定によって決まる。つまり俺が防御するもしないも、リュウグ次第!

 ガキッ!

「あれ? 痛くない!」

 そう、痛くない。

 そもそも俺は、金玉を蹴られてはいない。

 攻撃を受けたのはウィングだった。

「あぁ! 運命の神に、祝福のキスを!」

 余裕のある声で、ウィングは天井に投げキッスを送った。

「あー! その手があったか!」

 この司祭兼戦士は女に変身していたのだ。流石、能力者。

「金玉が無ければ、金蹴りを受けても、悶え苦しむ事もない! しかも、僕は! 防御を成功しているときている!」

 美しい顔で金玉とか言うな。ダーレの攻撃は、金玉がなくても尾てい骨に響く。それを防いだなんて、なんて幸運な野郎だ! いや、今は女か。

「チィ!」

 ダーレのフルフェイスの中で舌打ちが響いた。

「ハハッ! 残念だったな! ウィングは性別を変えられるのだ!」

 なぜかサーカが、自分の手柄みたい喜んでから、そう言った。

「あまり敵に情報を与えるなよ。ただでさえ、筒抜けなんじゃないか、って思っているのに」

 俺はサーカを諌める。

「ふん。ウィングの能力など初見殺しもいいとこだろ。能力を使うところを見せれば、即バレる」

 だからってバラすのは良くないと思いまーす。それに、大体の能力が初見殺しだと思いまーす!

「オビオの言う通りだ。この牢屋に、覚えのない匂いが一つ増えた。観察者ウォッチャーかもしれねぇ。あまりベラベラしゃべんなよ、サーカ」

 トウスさんが鼻をヒクヒクさせている。

 観察者か。どうにかして、こちらの情報を得ようとする、いやらしい奴がいるのだな。

「ということはだ。オレたちの情報は、然程バレてねぇってことだな」

 こっちは女戦士の情報を把握しているが、向こうは俺たちの事を知らない。

 なのでダーレが、トウスさんの獅子連弾を全ブロックしようとしたのもマグレに違いない。

「観察者にこちらの情報を与えきるまでは、俺らのほうが有利ってことか」

 とは言ってみるものの、俺達が束になって、やっと敵うかどうかの相手。

「敵は器用さと素早さが十八。それ以外は十五!」

 俺は仲間にそう伝える。さっさと情報共有したほうがいい。お喋り自体は制限がなさそうだからな。

「阿呆が! 士気を下げるような事を言うな! 馬鹿オビオめ」

 フェイント気味に空中で一回転させたサーカのメイスが、俺への悪態と共に、ダーレに襲いかかった。

 ガン!

 ん? ダーレの鎧が凹んだ! 脇腹にダメージが貫通した模様!

 やせ我慢してなければ、あの女戦士は今頃、苦痛で顔を歪ませているはず。

 ・・・ん~。わからん! 相手の表情が読み取れないってのは、結構厄介だな。ダーレはよろめいただけに見える。

 俺はサーカがさっき言った言葉に噛み付いた。

「なんで情報共有したら、士気が下がるんだよ! 何もわからないよりマシだろ!」

「これだから素人は・・・。現実だと、エリート種の能力値には、プラスボーナスが付くんだぞ。運命のボードのルールだと、更に盛られているかもしれんだろ」

「マジ? つまり、同じ実力値、能力値でも、ノーマル種とエリート種では、大きな差があるって事か?」

「そういう事だ。よくわかりましたね、チュピピピ!」

 くっそ! サーカはまた俺を馬鹿にした! ヒヨコのマネなんかして! ん、待てよ? ・・・ちょっと可愛いかも。

「どうりで以前、エリート種の自由騎士様にボコボコにされたわけだ」

「次のターンでは、敵がメイスを使ってきそうな予感~」

 メリィさんが嫌な予言をする。

 メイスって過小評価されがちだけど、強いんだぞ。鎧の上から衝撃を与えるし、軽装で受けたら骨が折れる。むき出しの頭にダメージを喰らおうもんなら・・・。

 その先の悲惨な事態を想像し、ゴクリと唾を飲んで震えていると、何故か恐怖心が薄れていった。

「神の祝福~!」

 メリィの祈りだ。祈りの効果で恐怖心が和らいだんだ!

「パーティって、やっぱ最高だよな。なんせ助け合えるんだからさ!」

 俺の言葉に「フン!」と笑う者が一人。一人で俺らを相手にするダーレの鼻から漏れた嘲りかと思ったが、そうではなく、サーカのものだった。

「弱い者ほど、そんな綺麗事を言えるのだ。裏切りと助け合い、二律背反が存在するのが、パーティというものだ!」

 こいつ! こいつめ~! せっかく決め顔で言ったのにさぁ~! 

「それでも俺は、皆を信じる! 特にサーカを!」

 フハッ! 言ってやったぞ! 臭いセリフを!

「ば、ばかぁ~! そんなだから、お人好しの馬鹿オーガって言われるのよぉ」

 あまりにも臭すぎたセリフだったのか、サーカは顔を真赤にして中盾で顔を隠した。

 その刹那!

 中盾目掛けて、メイスの横薙ぎが入った。

 サーカの盾は真ん中あたりに大きな凹みを作り、取っ手を持つ手は、手首の上でブラブラとしている。

「サーカ! 大丈夫か?」

「大丈夫、と言いたいところだが」

 手首の骨が折れている! 今すぐ助けに行きたいのに、この場所から体が動かない!

「まだ一巡していないぞ! 敵はなんで再攻撃をしてきたんだ?!」

 俺は半ば狂乱気味に叫んだ。

「素早さと器用さが高いと、単純な攻撃であれば、ターン内に複数回可能だ。その辺は現実と同じなんだよ」

 解説ありがたいが、その冷静さが憎いぜ、ウィング。できれば、サーカのために回復の祈りの準備をしてくれていると助かるのだが・・・。防御態勢かよ! くそ!

 ダーレはまだ攻撃態勢を解いていない。攻撃が終わると普通は防御態勢に移行するのに!

「やべぇ!」

 料理馬鹿で語彙の少ない俺は、それしか言えなかった。もう一度、サーカが攻撃を受けたら、死ぬ可能性もある! いやその可能性のほうが高い!

 久しく忘れていた、死と隣り合わせのひりつき。

「頼む、運命の神様! 或いはリュウグ! 俺にサーカを守らせてくれ! 頼む!」

 祈りが届いたのか、ターンが終わる前に俺の体が動いた! そういや俺も器用さと素早さが高いんだった!

 しかし、リュウグは一体、何を考えているのやら・・・。

 この緊迫した状況で、俺は料理の準備をしている。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。 ※本作は小説家になろうでも投稿しています。

キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊
ファンタジー
東京の夜を走り続けるタクシードライバー、清水翔。 ハンドル捌きと道の知識には自信があり、理不尽な客にも笑顔で対応できる――不器用ながらも芯の強い男だ。 そんな翔が、偶然立ち寄った銀座の宝くじ売り場で一人の女性・松田忍と出会う。 彼女との再会をきっかけに、人生は思いもよらぬ方向へ動き出した。 宝くじの大当たり、そして「夢を追う旅」という衝動。 二人は豪華にバスコンをカスタムしたキャンピングカー「ブレイザー」を相棒に、日本一周を計画する。 ――だが、最初のキャンプの日。 雷の直撃が二人を異世界へと連れ去った。 二つの月が照らす森で、翔は持ち前の度胸と行動力を武器に、忍を守りながら立ち向かう。 魔力で進化したブレイザー、忍の「鑑定スキル」、そして翔の判断力と腕力。 全てを駆使して、この未知の世界を切り開いていく。 焚き火の炎の向こうに広がるのは、戦いと冒険、そして新しい絆。 タクシードライバーから異世界の冒険者へ――翔と忍のキャンピングカー旅が、今始まる。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

処理中です...