料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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地球の玩具

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 どうする? 俺。このままだと、報酬の料理上手のミトンが手に入らないぞ。あれは絶対に欲しい。

 なにせ、あのミトンをはめて作った料理は十倍美味しくなるんだからな。それだけじゃあない。何か隠し能力があるんだ。こないだ触った時点では、大して鑑定できなかったけど、あれは使い込むと表に現れる系の隠し能力だ。

 誰も発現させていないミトンの能力。

 相当強力に違いない。

「話はこれで終わりかね?」

 ヒジリは、コーヒーの熱さに苦戦する猫舌のトウスさんを見て微笑んでいる。

 終わらせてなるものか! 何か、ヒジリの気を引く話題は・・・。

 そうだ!!

「オデ!・・・いや、オデ達は! ヒドラ星人と戦いました!」

「ヒドラ? 蛇人が崇める神か何かかね?」

 現人神は勘違いをしている。それもそのはず。この星の住人は宇宙人の存在を信じていない。ヒジリのように星のオーガと呼ばれる存在は、宇宙人ではなく神として扱われているのだ。

 なので惑星外知的生命体の概念がない。いや、ウィザードならその概念があるかもしれないが、一般人にはほぼない。

「そうではあでぃません、聖下。星の外からの侵略者と戦ったのです」

 暫く間が空いてから、ヒジリの目に光がどんどんと灯る。

「ほう・・・。その証拠はあるのかね?」

 流石は科学者。証言だけでは信用しようとはしない。とはいえ、ソファに座る姿勢が前のめりなったので、関心があることは間違いない。

「ピーター。それを聖下に」

 俺はピーターにそう言って、彼の腰にぶら下がっている蛇の頭の干物を指差した。

 ヒドラ聖人が爆発して飛び散った時に、一つだけ残っていた頭である。他の肉片や部位は、光の粒となって消えてしまったが、これはそうならなかった。

「え~。お金が舞い込む幸運のお守りなんだけど。俺の物だよ?」

「いいから、聖下にお渡しして!」

 渡さねぇと今後二度とチョコ菓子作ってやんねぇからな、と視線に気迫を込める。

「ちぇっ!」

 ピーターは渋々、腰から干物を外して、ヒジリに渡した。俺の眼力の勝ち。

「ふむ・・・」

 地球人科学者はめっちゃ蛇の干物を見ている。あ、この人、多分網膜に情報が流れるタイプだ。

 ってことは、俺もヒジリに触れられないほうがいいな。正体がバレてしまう。

「見たこともないスペクトルだな。ナノマシンも地球のものとは違う。これは・・・。ふむ・・・」

 俺は例外だが、普通の地球人は感情が希薄だ。ヒジリもそうだと思うが、そんな彼でさえ興奮で手が震えているのが見て解る。

「なんたる大発見・・・。しかし、これを自分の物として、地球で公表するのは違う気がするな・・・。よし」

 ヒジリは一度深呼吸をして落ち着くと、ピーターを見た。

「ピーター。暫くこのお守りを借りてもいいかね?」

「え? 別にいいけど」

「それから、ビチビチ君。君の要求にもなるべく応じよう。ちょっと一緒に来てくれ。あぁ、君だけでいい。他の者はコーヒーを楽しんでいたまえ。さぁこっちだ、ビチクソ君」

 ビチビチ、ビチビチうるせぇな。まぁ自分で名乗ったから仕方ないんだけども。

 ヒジリは早足で城から出ていく。俺も後をついていくと、彼は近くの酒屋兼宿屋に入った。オーガの酒場と看板に書いてある。凄く大きな酒場だ。

「やぁ、ミカティニス!」

 ヒジリは店の主に手を振って、酒場奥の階段を登っていく。

 そして物置部屋に入ると、宝箱をゴソゴソと探り始めた。

「えぇ~っと。これは・・・」

 ヒジリは箱から猫じゃらしを出して、俺の癖毛と見比べる。

「チッ!」

 チッ! ってなんだよ! 何で猫じゃらしと俺の癖毛を見比べたのか? で、なに? 俺はその勝負に勝っちゃったの?

「いや、こんなものはどうでもいい」

 どうでもいいなら、出すなよ!

「あぁ、あったこれだ。・・・。クサッ! 妙に生臭いな・・・。プフゥ」

 ヒジリは地球製の玩具を取り出して、動作するか確かめている。俺はこの玩具を知っている。

 通称コピーロボット。パー○ンとかに出てくる、鼻を押せば自分のコピーを作り出せるロボットだ。

 ヒジリは素早く鼻を押すと、コピーロボットを床に置いた。ムクムクと大きくなって、もうひとりのヒジリがそこに立っていた。

「問題はなさそうだな」

 自信満々の顔で腕を組むコピーロボットを見て、現人神は頷いた。

「このコピーロボ・・・。いや、この星ではなんと言うべきだったか・・・。魔法傀儡・・・。そう! 魔法傀儡をブラッド辺境伯の所に連れて行ってくれ。これは本物とほぼ同じだから、問題ないだろう」

 いいよなぁ。科学者は。色んな物を持てて。俺の亜空間ポケットとは、キャパシティが段違いなんだろうなぁ。

「こでなら、依頼をこなした事になる! 流石は現人神様!」

 俺は一応驚いてみせる。驚きついでに、とある事を訊いてみた。

「そういえば、聖下は一人でづけど、ウメボシ様やサヴェリフェ子爵様とその姉妹は、どうなされまじた?」

「君は彼女らの知り合いなのかね?」

「サヴェリフェ子爵様とその姉妹とは、ほんのちょっと顔を合わせた程度でじて」

「ふむ。姉妹は樹族国の用事でいない。ウメボシは・・・。メンテナンス・・・。いや、健康診断に出かけていない。だから今日は、私一人なのだよ」

「そうだったんでづか」

 おほ~! やっぱ俺って幸運!

「そういう事で、私が忙しい身だという事は解っただろう。ではこれで」

 そう言うと、ヒジリは階段を降りて視界から消えた。本当に忙しそうだった。

 そういや、さっきからコピーロボットは一言も発していないな。試しに話しかけてみよう。

「あの、聖下? コーヒー豆は、どこで買えます?」

「ミカティニスが売ってくれる」

 おっ。普通に返事をした。ミカティニスって、この酒場の女主人のオーガだな。

 俺はコピーロボットを引き連れて、一階に行きコーヒー豆を買えるだけ買った。流石、生産地だけあって、安い!

 ホクホク顔で城の門前まで行くと、パーティメンバーが待っていた。

 そうだ! どぅふふ。コピーロボットでちょっとメンバーをからかってやろう。
 
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