料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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トウスの遠吠え

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「泣きっ面に蜂だな」

 トウスは剣を鞘にしまって、構えを解く。オビオがヒドラ星人と命名した蛇達は、扁平な機械の攻撃を受け、次々爆散し、片っ端から火炎放射器で焼かれているからだ。

「キシャー!」

 ヒドラ星人の連続猛毒攻撃が、堅牢な装甲に弾かれる。

 王国近衛兵団独立部隊の隊長から派遣されたであろう鉄傀儡に、猛毒攻撃は効かない。更には物理攻撃や魔法攻撃に耐性がある。

 どの私兵、傭兵、王国騎士団よりも素早く蛇を殲滅する――――凄まじい火力の鉄傀儡を見ながら、トウスは思い出した。

 オビオが以前話した、試練の塔で出会った鉄傀儡に形状が似ている。頭部に砲身がある機体と、猫耳がある機体。恐らくは同一機だろう。

「あの女の前では、牙を隠しておくか」

 適材適所。どの敵にどの味方を当てるか。

 短期間で情報を集めて、対策をとってきたシルビィにトウスは感心する。

「この力を、ずる賢い猿どもに向けれれば、最高なんだがな」

 獣人国レオンは今や猿人の支配下にあり、首長国としての機能を果たしていない。

 どんなに強い戦士だろうと、統率力や指揮力がなければ、ただの戦士だ。

 指揮官として才能を持つシルビィに、トウスは少々嫉妬をしたが、いつまでもグダグダと後悔するのは自分の性分に合わない。

「腹が減ったな。館に戻るか」

 後始末を鉄傀儡に任せて、トウスは館へと向かった。




「オビオを担ぎ上げろーーー!」

 トウスは館前で、十字に組んだ丸太に貼り付けにされているオビオを見て、頭に「?」を浮かべる。

「オラオラオラ!」

 私兵や傭兵たちの鼻息は荒い。オビオを縛り付ける丸太を持ち上げ、何度も上下に揺すっている。

「また厄介事に首を突っ込んだか?」

 トウスは誰にも見つからないうちに、そっと茂みに身を隠した。ネコ科の獣人は、戦士であっても物陰に潜むと見つかりにくい。

 ボコボコに殴られて意識が朦朧としているように見えるオビオが、何かを言っている。トウスは耳をピンと立てて、オビオの声を拾おうとした。

「せ・・・。おろせよ・・・。馬鹿野郎」

(何があった?)

 一料理人がどうすれば、これだけの数の戦士たちの怒りを買うのか。

 白獅子の眉根が寄った。

「あいつの事だ・・・。誰かを庇ったな?」

 一体誰を庇った? サーカか? だがサーカにはウォール家とムダン家という強力な後ろ盾がある。憎まれ口を叩いたぐらいで、本気になって喧嘩を仕掛ける者はいないだろう。

 それにオビオだって、シルビィの庇護下にある。下手に手出しなどすれば、何らかの報復を覚悟しなければならない。

「だが・・・。後ろ盾など、お構いなしといった雰囲気だな。仲間はどこにいった?」

 いない。

 これだけの騒ぎをバトルコック団が無視をするはずがない。

 いや、いた。サーカが。館のバルコニーで、オビオを見てニヤニヤしている。

「あいつ、オビオを売りやがったか?」

 そのバルコニーの少し奥から、ピーターも現れた。

「相変わらず邪悪な顔してやがる。そうか・・・! 蛇の洗脳を受けたんだな。それ以外考えられねぇ!」

(どうする? 鉄傀儡が来るのを待つか? いや、待っている間にオビオが殺されるかもしれねぇ。それは駄目だ。オビオは絶対に助ける。あいつには大恩がある。だが、どうやって? ・・・強引に突破だ。後のことは後で考えればいい)

 間を置かず、茂みから片足を出したその時――――。

 館の大きな入口前に、無表情のメリィとウィングを見つけた。

「オビオがあんな目に遭っても、眉毛一つ動かさねぇ・・・。あいつらも確定だな」

 腰に浮く魔剣を背中に回して、トウスは四つん這いになった。

「ウォォォ!!」

 獣のように四足で走って、オビオを縛り付けているロープを爪で切った。

「オビオ、立て! 逃げるぞ!」

 周囲の傭兵たちに牙を見せて威嚇しながら、トウスはオビオを肩に担ぐ。

 意識がはっきりとしてきたのか、オビオは黒い癖毛の下から、意志の強い目でトウスの助けを断った。

「駄目だ! 俺はぜってぇ、逃げねぇ!」

 身長二メーター五十センチあるオーガは、しっかりと立って拳を握った。

「何があったか知らねぇが・・・。お前がその目をしている時は、何を言っても無駄だな。よっしゃ! 俺も腹をくくるぜ!」

 現状がどうだろうと、トウスはオビオを信じる事にした。

(そもそも、オビオがいなければ今頃、俺は・・・)

 薄暗い拷問室で、朽ち果てていたかもしれないのだ。

 白獅子は全身に力を漲らせて、背中の魔剣を抜くと、遠吠えをしてウォークライのスキルを発動させた。
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