料理をしていたらいつの間にか歩くマジックアイテムになっていた

藤岡 フジオ

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両思いの告白

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 目が覚めると、俺は草原の中に咲き誇る花を見ていた。

 いや、よく見るとそれは絵だった。天井に描かれた幸せの園(地球)は、オーガやドワーフが死ぬと、そこに魂が運ばれると言われているが、地球のマザーコンピューターがそのような話をしたことはない。

 なぜ、オーガ達はそこまでして地球に理想を描くのか?

「どこだここは? 確か俺は、無理やり鎧を一式を着せられて・・・」

 俺は自分の体をまず確かめる。寝間着にしては豪華過ぎるダブレットとズボン。オーガ用に仕立て上げられた物だ。

 牢屋に転送された時に失った右腕は治っている。これは超回復力を持つナノマシンの働きを思えば、想定内だ。ただ全身に纏わりつく倦怠感はなんだ? 

「オビオ!」

 俺の横からサーカの声が聞こえる。

「うわ!」

 近い! 近い! 顔が近い! なんで俺の横でサーカが添い寝してんだ? え? 事後? とうとうヤッてしまったのか?

 サーカは俺の上に乗っかってきて、ヤンデレ風美少女みたいな顔でじっと見つめてくる。

 そして顔が段々近づいてくる。こえぇ。怖いって・・・。

「チュッ!」

 チュッ! って言いながら、頬にキスしてくる女、初めて見たわ。

 そのまま俺を抱きしめ、耳元で囁いた。

「心配したんだから。私はオビオが死んだと思って、ずっと泣いてたんだよ?」

「それは、サーカがダーレに殺された時の俺もそうだったよ」

「嬉しい。オビオ、大好き! 生きててくれて、ありがとう!」

 うはぁ! 人生初の告白だ! 

 ・・・あぁ、これは夢だな。紛うことなき夢オチだ。

 サーカがこんなに可愛くて素直なはずがない。なんなら『俺の知ってるサーカがこんなに可愛いはずがない』っていう題名の小説を2ページぐらいは書ける自信がある。

 たったの2ページか~~い!

 自分の脳内で自身にツッコんでおいた。さぁ夢から覚めろ、俺。

 だが、いつまで経っても暗転しない。暗転して、ここはまだカクイ司祭の地下牢でしたってオチにならない。おかしい。

 どうせ夢なら、俺も告白しとこ。

「俺もサーカの事が大好きだよ。綺麗なストロベリーブロンドの髪も、汗の匂いも、ジト目も」

「嬉しいけど、汗の匂いとかジト目は褒めてな~い~」

 うへぇ! めっちゃ甘えてくるやん! サーカは俺のほっぺをツンツン・・・。いやドリドリ虫のように、指先でドリドリグリグリしてくる。いててて。

「あ! ごめんなさい! オビオ、痛かった?」

 慌ててサーカは俺の頬を撫でてくる。あぁ、痛いって事は、これは夢じゃないんだ。幸せ。

「ううん、これぐらいカクイ司祭に飲まされた変な劇薬とか、呪いの装備に比べたら大した事ないよ」

「・・・。ごめんね、直ぐに助けられなくて。私、オビオが殺されたと勘違いして、魔力暴走を起こしてたの。それでピーターに気絶させられて・・・」

 魔力暴走って確か、魔法が下手な奴とか、初心者が極稀に起こすやつだよな? 感情の昂ぶりでも起こすのか。勉強になった。

「ところで皆は?」

 俺がそう尋ねると、外から野太い声が拡声器でも使ってるのかってくらい、大きな声で聞こえてきた。

「・・・敵を前にして、ワシは一歩も引かず、千切っては投げ、投げては千切り! いや、大胆なる鉄球にそのような事はできんか。少し誇張し過ぎましたかな? グハハハ!」

「あの声はどこかで聞いた事が。確か闘技場だったかな・・・」

 俺が思い出そうとしていると、サーカが教えてくれた。

「ムダン・ムダン侯爵が、カクイ司祭の審問の場で、自分の武勇伝を語っているみたいね」

 俺は目を丸くして驚いた。

 って事は俺の救出に、ムダン侯爵が動いたって事だろ? なんでだ?

「話がよくわからないな・・・」

 怠い体を起こして、体を引きずるようにして歩き、俺は窓辺に立った。

「まだ寝ていないと・・・」

 サーカが心配そうにして、後からついて来る。

 窓の下は割と小さめの広間になっており、無駄な装飾はなく、上座にシュラス国王が座っている。

 国王に対するように、カクイが両手を後ろ手に縛られて立っている。何らかの魔法対策がされているのか、カクイ司祭の口を塞ぐような物は何も付いていない。俺はカクイ司祭の四角い後頭部を見ながら、まだ武勇伝を語るムダン侯爵の薄くなった頭頂部も見ていた。

「髭はターンAガンダ○みたいに立派なのに、髪が少し寂しいな・・・」

「プフー。ククク!」

 部屋のドア付近で、誰かが陰気に笑ったので、サーカが振り返る。

「ステコ殿!」

 赤と金色の刺繍のある近衛兵の制服を着たステコ・ワンドリッターが、開いた扉をノックしてズカズカと入ってきた。

「今のは聞かなかった事にしておく。さて、目覚めたならば、君もあの法廷に立ってくれたまえ。何せ上位鑑定の指輪は君にしか使えないのでな」

「???」

 俺の意識がない間、何があったんだ?

「これ・・・」

 サーカは俺に、戦士の指輪と上位鑑定の指輪を渡した。ん? サーカの顔が曇っている。

 なにか、あったんだ。きっと良くない何かが・・・。




「で、大胆なる鉄球卿は情けなくも、カクイの契約した悪魔に斬り殺されたと?」

 身を乗り出し、興奮して話を聞いていたシュラス国王は、落胆して椅子に深く座り直した。

 それから「ん?」っと言って、王は瞳を上にやり、小さな人差し指も上に向けた。

「では、なぜ貴殿はここにおる」

「その話は・・・。大魔法使いビャクヤ殿に聞いて下さい、陛下」

 ムダンが手を叩くと、タキシードを着たビャクヤが大扉から現れ、シルクハットを脱いで手に持ち、前に進むとシュラス国王に丁寧にお辞儀をした。

「ご機嫌麗しゅう、陛下。樹族の生まれた地の、偉大なるシュラス・アルケディア国王陛下にお会い出来て光栄です。おっと、申し遅れました。吾輩の名はビャクヤ・ウィンです。どこかの道化師と、同じ名字である事はご容赦下さい」

 ビャクヤの冗談に笑ったのは、シュラスだけであった。

 この場にいる諸侯貴族は、に辛酸を嘗めさせられているので、苦い顔をするばかりだ。

「ハハハ! だが発音がおかしいな。共通語に帝国訛りがある」

 この小さな王は鋭い、とビャクヤは一瞬焦る。もし【完璧なる変装】を使っていなければ、自分がナンベル・ウィンの孫である事がばれていたかもしれない。そうなれば、キリマルが喜々として影から飛び出して、敵対者を斬り殺していただろう。

「出身は、ニムゲイン王国です。たまたまツィガル帝国に、訛りが似ているのでしょう」

 ニムゲイン王国の名を聞いて、数人のウィザードがざわめいた。【遠目】の魔法で、国としての存在は知っているが、内情には誰も詳しくないのだ。探求者たるウィザード達はビャクヤに質問をしたくて、ウズウズしているが、国王の前でそれは不敬な事なのでじっと我慢している。

「ニ、ニムゲイン? 知っとるか? リューロック」

 自分が座る椅子の右側に立つ、王の盾リューロック・ウォールは微動だにせず答えた。

「名前ぐらいしか知りませぬ。陛下。が、どこぞの島国だとウィザードから聞いたことがあります」

「そうか・・・。で、そのムニムニ王国から何故やって来たのだ?」

「ニムゲイン王国です、陛下。吾輩は悪魔を追ってやってきました」

「ほう? では、暗黒大陸のデーモンバスターみたいなもんかの?」

「いえ、ただのメイジです。契約中の悪魔が逃げ出したので追っておりました。人修羅キリマルはご存知でしょうか? 陛下」

 ただのメイジが、今日の裁判に参加している闇魔女イグナと同じ色のオーラを纏うものかと、シュラスは心の中で思う。

「勿論知っておる。今や知らぬ者がいないほど有名になった、バトルコック団が退治した悪魔であろう? その戦い、菜の花騎士団は添え物のようだったと聞いている」

 この冗談には各侯爵も大笑いした。この自虐ネタに笑っていないのは、リューロックだけだった。

「で、その悪魔が何だというのかね?」

「それは吾輩の悪魔でもあるのです、陛下」

 そう言った途端、場の空気が凍りついた。

「ほう?」

 シュラスの目が据わる。

 ここが、魔法無効化空間だと知っていても、貴族たちはワンドを構え、ビャクヤに対して敵意を剥き出しにした。
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