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酒場でお祝い3
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シルビィが慌ただしく酒場から出ていった後、ウメボシがタスネに尋ねた。
「ところでタスネ様、下級魔法学校の件を教えなくていいんですか? てっきりここで発表するのかと思っていましたが」
「あ、そうだった。妹達よ、喜びなさい。下級魔法学校に!またかっよえるよ~!」
嬉しそうに人差し指を立てて告げる姉にフランは驚き戸惑う。
「また通えるのは嬉しいけど、皆と会うのはなんか気恥ずかしいわぁ。一年ぶりだもの~」
「やったねー! やったねー! 皆とまた学校で会える!」
コロネはイグナの首に飛びついて喜んでいる。イグナは特に感情を見せずにされるがままだ。
姉妹たちは学校に通わなくなってから、何となく気まずくなって学校の友達とは遊ばなくなっていた。勿論再開を喜んでくれる友達も大勢いるだろう。それでも疎遠になった友達と顔を合わせるのは恥ずかしいのだ。
「来月から新学年だからいいタイミングで通えるね! それまで怪我とかしないでね!」
お姉さんぶりながら腰に手を当ててそう言うと、タスネはふぅと席に着く。そして目の前の金貨の入った袋を見て大金を貰った事を思い出して椅子から飛び跳ねて驚く。
「どぇぇぇぇ!! こんな(ここで自分の大声に気付きヒソヒソ声になる)大金どうしたらいいのよ」
「良かったな主殿。これで暫くお金の工面をしなくて済むだろう」
「でもやっぱりこのお金はヒジリやウメボシの・・・」
「毎回、このやり取りは面倒だ。ではこうしよう。どんな時でも主殿と我々で折半だ。我々は二人で一人みたいな所があるのでね」
ヒジリの言葉を聞いたウメボシは、照れながらねっとりとした視線をヒジリに絡める。
「まぁ二人で一人なんて嬉しいですぅ。マスターはいっそウメボシと一つになって・・・」
と言うもヒジリに顔をグイっと押されて言葉を遮られる。
「我々は主殿に居場所を提供してもらっているのだから、半々でも多いくらいだ。だから気にせず半分は受け取りたまえ」
「うん、解った。でも頼ってばかりじゃ悪いし、私も何か目指してみるね」
「そうなるとやはりモンスターテイマーですね。ウフフ(レロレロレロレロ)」
ウメボシはヒジリに顔を押さえられながらも気が付かれない程度に手のひらを高速でスキャンしている。つまりぺロペロと舐めているのだ。
「もう、ウメボシまで~。モンスターテイマーって魅力が高くないと無理なんだよ!」
「お姉ちゃんの魅力は低くない」
イグナはぼそっとそう言って、タスネに手をかざし使えるはずのない魔法【知識の欲】を使っている。
「あ、あんたいつの間にその魔法覚えたの?」
「騎士様の魔法を見ていたら勝手に習得した」
「!!!!」
タスネとフランは驚いてフリーズする。
「どうかしましたか、タスネ様」
タスネは鼻水と涎を垂らし「アガガガガ!」と遠い目でガクガクと震えだした。可愛らしい顔が台無しだ。
「おかしい・・・・ヒジリ達が来てから良い事ばかりだわ・・。そうだ、アタシはきっと明日にはオバップに齧られて死ぬんだ・・・」
「オバップ? なんだね、それは・・・。主殿はいつも死ぬ死ぬと言っているな。縁起でもない」
「イイイイ、イグナは・・・今しがた能力が開花したのよ。なんて名前だったかしらフラン・・・」
「『一度見覚え』ね・・・。ハァ羨ましいわぁ~! 何で私じゃないのよぉ~」
「ほう。一度見覚え、とな?」
「おおお、オーガ達にはそれが無いのかしら? 神が与えたもうた特殊能力の一つよ。他人が唱える魔法を見ただけで習得してしまうエリートクラスの能力なの。同じ能力を持つ人は滅多にいないから、きっと今この能力を持った人が亡くなったのね・・・。その能力を神様がイグナに渡したんだよ!! 誰がいつ能力を授かるかは解らないし、こんな事は稀なの!」
「ほほう! それは素晴らしい!」
「やったじゃないですか! イグナ! 将来安泰ですね!」
「イグナ姉ちゃんすごーい!」
イグナは無表情で
「私、嬉しいー」
と、どう見ても嬉しくなさそうに言う。
「いいなぁ~、いいなぁ~。ところでお姉ちゃんの魅力値ってどれくらいだったのぉ?」
「二十点満点で十八点」
「え! タスネお姉ちゃんってどちらかっていうと地味な見た目なのにぃ?」
「うふふ、魅力ってね内面からも滲み出てくるものなのよ。外見だけじゃないの」
「よくいうわよぉ。ホッフ団長に相手にされていないくせにぃ~」
「煩いわね! 子供のあんたに言われたくないわよ!」
言い争うタスネとフランを見ながらヒジリは真剣な顔で主を見つめた。
「ふむ、確かに主殿には憎めない魅力のような何かがあるな。我々も実際、主殿を頼るという選択肢を選んでいるのだし、ある意味魅了されているのかもしれない」
「でしょう? 流石ヒジリね」
何が流石なのかは解らないが、タスネは有頂天になっている。
その後、フランに【知識の欲】で魅力値を見るようにせがまれたイグナが見た結果、フランが十九点、コロネが十二点だった。自身に鑑定魔法はかけられないのでイグナの魅力値は今のところ解らない。十八点で秀才クラス、十九点で天才、二十点で超人レベルだ。なのでフランの魅力は尋常ではない。
ヒジリはフランを見る男達の視線を思い出し、納得して頷いた。
「そういえば道で二人を抱いて歩いている時、大人の地走り族と思われる男たちの視線がよくフランに向いていたな。あれはそういう事なのか。今までよく無事だったな・・・、フラン」
「彼女は我々の美的感覚で見ても美しいですからね。それにしてもなんという事でしょうか。いい大人が子供に劣情を抱くなんて。このロリコンどもめ!」
ウメボシは目をカッと見開き、体の周囲に放射状の黒いウネウネとしたオーラのような物をホログラフィーで投影し怒り表現した。
フランは自分の魅力が高かった事に当然ねという顔をし、タスネはキィィと悔しがる。コロネはどうでもいいやという感じで忙しそうにテーブルの料理を一口ずつ食べていた。
ヒジリは急に立ち上がると、ぶどうジュースの入ったゴブレットを掲げて大声で酒場にいた全員に声をかけた。
「諸君! 聞いてくれたまえ! 我が主殿の妹、イグナが一度見覚えの能力を開花させたのだ! 諸君らにもこれを祝って頂きたい! 今日は私のおごりだ! 好きなだけ飲んでくれたまえ!」
酒場に二十人ほどの地走り族の冒険者とシルビィの部下が数名いた。皆が一斉に湧き立ちイグナに向けてあちこちから祝福が飛ぶ。
その後、酒場は大騒ぎになり、ヒジリは酔っぱらった地走り族の冒険者達に次々と肩まで登られたり、馴れ馴れしく体を触られたりした。
その度にウメボシが軽い電流をビリっと放電し追い払った。ウメボシの電流で地走り族達は大げさに飛び上がるので、それを見た姉妹は指さして大笑いをする。
ヒジリ達は二時間ほど食事や会話、ふざけた地走り族とのやり取りを楽しんだ後、あまり遅くなると子供たちが眠くなってしまうので、店員に明日お金を払いに来ると言い残し家へと帰っていった。
「ところでタスネ様、下級魔法学校の件を教えなくていいんですか? てっきりここで発表するのかと思っていましたが」
「あ、そうだった。妹達よ、喜びなさい。下級魔法学校に!またかっよえるよ~!」
嬉しそうに人差し指を立てて告げる姉にフランは驚き戸惑う。
「また通えるのは嬉しいけど、皆と会うのはなんか気恥ずかしいわぁ。一年ぶりだもの~」
「やったねー! やったねー! 皆とまた学校で会える!」
コロネはイグナの首に飛びついて喜んでいる。イグナは特に感情を見せずにされるがままだ。
姉妹たちは学校に通わなくなってから、何となく気まずくなって学校の友達とは遊ばなくなっていた。勿論再開を喜んでくれる友達も大勢いるだろう。それでも疎遠になった友達と顔を合わせるのは恥ずかしいのだ。
「来月から新学年だからいいタイミングで通えるね! それまで怪我とかしないでね!」
お姉さんぶりながら腰に手を当ててそう言うと、タスネはふぅと席に着く。そして目の前の金貨の入った袋を見て大金を貰った事を思い出して椅子から飛び跳ねて驚く。
「どぇぇぇぇ!! こんな(ここで自分の大声に気付きヒソヒソ声になる)大金どうしたらいいのよ」
「良かったな主殿。これで暫くお金の工面をしなくて済むだろう」
「でもやっぱりこのお金はヒジリやウメボシの・・・」
「毎回、このやり取りは面倒だ。ではこうしよう。どんな時でも主殿と我々で折半だ。我々は二人で一人みたいな所があるのでね」
ヒジリの言葉を聞いたウメボシは、照れながらねっとりとした視線をヒジリに絡める。
「まぁ二人で一人なんて嬉しいですぅ。マスターはいっそウメボシと一つになって・・・」
と言うもヒジリに顔をグイっと押されて言葉を遮られる。
「我々は主殿に居場所を提供してもらっているのだから、半々でも多いくらいだ。だから気にせず半分は受け取りたまえ」
「うん、解った。でも頼ってばかりじゃ悪いし、私も何か目指してみるね」
「そうなるとやはりモンスターテイマーですね。ウフフ(レロレロレロレロ)」
ウメボシはヒジリに顔を押さえられながらも気が付かれない程度に手のひらを高速でスキャンしている。つまりぺロペロと舐めているのだ。
「もう、ウメボシまで~。モンスターテイマーって魅力が高くないと無理なんだよ!」
「お姉ちゃんの魅力は低くない」
イグナはぼそっとそう言って、タスネに手をかざし使えるはずのない魔法【知識の欲】を使っている。
「あ、あんたいつの間にその魔法覚えたの?」
「騎士様の魔法を見ていたら勝手に習得した」
「!!!!」
タスネとフランは驚いてフリーズする。
「どうかしましたか、タスネ様」
タスネは鼻水と涎を垂らし「アガガガガ!」と遠い目でガクガクと震えだした。可愛らしい顔が台無しだ。
「おかしい・・・・ヒジリ達が来てから良い事ばかりだわ・・。そうだ、アタシはきっと明日にはオバップに齧られて死ぬんだ・・・」
「オバップ? なんだね、それは・・・。主殿はいつも死ぬ死ぬと言っているな。縁起でもない」
「イイイイ、イグナは・・・今しがた能力が開花したのよ。なんて名前だったかしらフラン・・・」
「『一度見覚え』ね・・・。ハァ羨ましいわぁ~! 何で私じゃないのよぉ~」
「ほう。一度見覚え、とな?」
「おおお、オーガ達にはそれが無いのかしら? 神が与えたもうた特殊能力の一つよ。他人が唱える魔法を見ただけで習得してしまうエリートクラスの能力なの。同じ能力を持つ人は滅多にいないから、きっと今この能力を持った人が亡くなったのね・・・。その能力を神様がイグナに渡したんだよ!! 誰がいつ能力を授かるかは解らないし、こんな事は稀なの!」
「ほほう! それは素晴らしい!」
「やったじゃないですか! イグナ! 将来安泰ですね!」
「イグナ姉ちゃんすごーい!」
イグナは無表情で
「私、嬉しいー」
と、どう見ても嬉しくなさそうに言う。
「いいなぁ~、いいなぁ~。ところでお姉ちゃんの魅力値ってどれくらいだったのぉ?」
「二十点満点で十八点」
「え! タスネお姉ちゃんってどちらかっていうと地味な見た目なのにぃ?」
「うふふ、魅力ってね内面からも滲み出てくるものなのよ。外見だけじゃないの」
「よくいうわよぉ。ホッフ団長に相手にされていないくせにぃ~」
「煩いわね! 子供のあんたに言われたくないわよ!」
言い争うタスネとフランを見ながらヒジリは真剣な顔で主を見つめた。
「ふむ、確かに主殿には憎めない魅力のような何かがあるな。我々も実際、主殿を頼るという選択肢を選んでいるのだし、ある意味魅了されているのかもしれない」
「でしょう? 流石ヒジリね」
何が流石なのかは解らないが、タスネは有頂天になっている。
その後、フランに【知識の欲】で魅力値を見るようにせがまれたイグナが見た結果、フランが十九点、コロネが十二点だった。自身に鑑定魔法はかけられないのでイグナの魅力値は今のところ解らない。十八点で秀才クラス、十九点で天才、二十点で超人レベルだ。なのでフランの魅力は尋常ではない。
ヒジリはフランを見る男達の視線を思い出し、納得して頷いた。
「そういえば道で二人を抱いて歩いている時、大人の地走り族と思われる男たちの視線がよくフランに向いていたな。あれはそういう事なのか。今までよく無事だったな・・・、フラン」
「彼女は我々の美的感覚で見ても美しいですからね。それにしてもなんという事でしょうか。いい大人が子供に劣情を抱くなんて。このロリコンどもめ!」
ウメボシは目をカッと見開き、体の周囲に放射状の黒いウネウネとしたオーラのような物をホログラフィーで投影し怒り表現した。
フランは自分の魅力が高かった事に当然ねという顔をし、タスネはキィィと悔しがる。コロネはどうでもいいやという感じで忙しそうにテーブルの料理を一口ずつ食べていた。
ヒジリは急に立ち上がると、ぶどうジュースの入ったゴブレットを掲げて大声で酒場にいた全員に声をかけた。
「諸君! 聞いてくれたまえ! 我が主殿の妹、イグナが一度見覚えの能力を開花させたのだ! 諸君らにもこれを祝って頂きたい! 今日は私のおごりだ! 好きなだけ飲んでくれたまえ!」
酒場に二十人ほどの地走り族の冒険者とシルビィの部下が数名いた。皆が一斉に湧き立ちイグナに向けてあちこちから祝福が飛ぶ。
その後、酒場は大騒ぎになり、ヒジリは酔っぱらった地走り族の冒険者達に次々と肩まで登られたり、馴れ馴れしく体を触られたりした。
その度にウメボシが軽い電流をビリっと放電し追い払った。ウメボシの電流で地走り族達は大げさに飛び上がるので、それを見た姉妹は指さして大笑いをする。
ヒジリ達は二時間ほど食事や会話、ふざけた地走り族とのやり取りを楽しんだ後、あまり遅くなると子供たちが眠くなってしまうので、店員に明日お金を払いに来ると言い残し家へと帰っていった。
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