未来人が未開惑星に行ったら無敵だった件

藤岡 フジオ

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イグナを助けに7

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 ヒジリ達が裏門を通り過ぎて林の中の空き地に着くと、そこにはゴブリンよりも体格の大きなホブゴブリン達がナンベルと対峙していた。

 六人いるホブゴブリンの一人が持つエストックには、精巧な作りの人形のようなものが突き刺さっている。それを見た途端ナンベルは慟哭した。

「イギィィィィ! キェェェェ! お前らぁ・・・! いくらここが闇と混沌の国とは言え、最低限の掟はあるだろうが! 当人同士のいざこざに他人を巻き込まないという鉄の掟が! 小生は依頼を受けてお前らのボスを消す契約義務を果たした。恨むならその矛先は小生か依頼主に向くべきだろう! 何故、関係のない子供を殺した! イィィィィイイイイ!」

 凄まじい勢いで魔力が高まるナンベルを見てもホブゴブリンはニヤニヤとしてミミの胸を貫いたままの剣を掲げる。

 だらりと下がったミミの手足は時計の振り子のようにブラブラと揺れた。それを見たイグナはいつものように無表情だったが体が微かに震えている。

 ヒジリはエストックに突き刺さっている人形のような物が、実は魔人族の子供だと解り胸がドクンと鳴る・・・。

(魔人族の子供を殺したのか? 子殺しが許されるのか? この星はそれだけ野蛮だというのか?)

 バチンと黒髪が静電気で弾けた。

 オークは雷を纏うヒジリに一瞬驚いたが、相手がウスノロのオーガメイジだと分かって平静を取り戻す。

「このガキは、魔法でいきなり俺達を攻撃したんだよ。だから当人同士の問題だ。お前には関係ない」

「それは嘘。この秘密の場所でミミと遊んでいたら、いきなり彼らが襲い掛かってきた。ミミは・・・ミミは私を逃がす為に魔法で戦ってくれた」

 大きな闇のような瞳を下に落とし、イグナは無表情のまま涙を流した。

「あれ~そうだったかなぁ? 俺達頭悪いから忘れちゃった~。デヘヘヘ。おっと動くなよ~。動けばこの子供を串焼き肉のように食っちゃうよぉ~? 死体とはいえ大事な子供なんだろぉ~? え~? 殺し屋軍師さんよぉ~」

 怒りで焦点の合わないナンベルが、首だけを動かしてイグナに向く。

「イイ、イグナちゃん、ちょっと後ろのお姉ちゃんたちの所まで下がってなさいイィィ」

 ナンベルにそう言われ、イグナが涙を拭き頷いて走って行こうとすると、ホブゴブリンの一人がイグナ目がけて投げナイフを投げた。

 ナンベルがすかさず自分の投げナイフを投げ、オークの投げナイフの軌道を邪魔した。

 ウメボシはフォースフィールドで、イグナの後方に壁を作り、次に飛んでくるかもしれない投げナイフを警戒した。

 イグナはそのまま走って、タスネの体に顔を押し付け泣いている。

 それを見たウメボシの瞳はこれ以上ない程に赤い。

「マスター・・・」

「駄目だ。これは彼らの問題だ。それよりあの子の亡骸を回収しろ。これ以上“永遠の死者”を冒涜する様は見てられん。地球であればこれは恐れ多い大禁忌だ・・・」

 地球において永遠の死を選んだ者は最上級の敬意を持って埋葬される。

 新しい可能性を秘めた未来の子供達の為に自らの存在を消す、というのはこれ以上無い尊さなのだ。なので蘇る事の無い死体を辱める事は何よりもタブーである。

 この星の住民達の生は基本的に一度限りであり、幼い子供の永遠の死を初めて目にしたヒジリにとって、それはあまりに精神的に負荷の掛かる出来事であった。平静を装っているが鼓動が速まり呼吸も浅くなっている。

「あ! 返せこの野郎!」

 ホブゴブリンがミミの突き刺さった剣を高く掲げている間に、ウメボシは上空から近づき、亡骸を宙高く浮かしてそのまま素早くヒジリ達の所まで運んできた。

 魔人族のミミの胸の穴からは、血では無く気化したマナが溢れだしている。

「感謝しますヨ! イービルアイのお嬢さん! お前たち、覚悟はイイネ? キヒヒヒヒィィィ!」

 ナンベルの怒りと狂気の綯交になった笑いが辺り一帯を揺るがす。

 近くにいた小動物たちは死を予感したのか、一斉に逃げ出した。

 不気味な動きで身をぶるぶると震わせるナンベルの体から、ホブゴブリン達に向かって黒い煙が流れ出る。

 その煙は逃れようとするホブゴブリンを追尾して顔に集りだした。

「馬鹿が! お前相手に俺たちが何も対策をとってないと思うのか? お前んとこのガキもかなり手こずらせてくれたが、このミスリル銀のお守りで・・・あれぇ? く、苦しい・・・。息が・・・出来ない・・・」

 黒い煙に包まれ胸や首を掻きむしっていた六人のホブゴブリン達は、煙が消え去る頃には地面に倒れてピクリとも動かなくなっていた。

「小生の【窒息の煙】が、お前ら如きオークの盗賊に防げるものですカ」

 ナンベルは奇声を挙げながらミミを殺したホブゴブリンの死体を執拗に蹴り、気が済むとミミの亡骸まで近づいて両手と頭をだらりと垂らして、大声で泣き始めた。

「またしても・・・またしても守れなかった・・・。グギギギギッ! 小生はいつもいつも詰めが甘い。許してくレ・・・許してくレ・・・。ルブ、ルビ、ミミ・・・」

 ナンベルが言ったミミ以外の名は、恐らく過去に亡くした妻と娘の事だろうとイグナは察する。そしてミミとナンベルの事を思うと余計に悲しくなって涙が止まらなくなり、タスネの胸に顔を更に押しつけ忍び泣いた。

 ナンベルの泣き叫ぶ声にかき消されない程度に、小さな声でヒジリは突然ウメボシに命令を出した。

「ウメボシ、私はこの状況がとても辛い。蘇生の準備をしろ」

 この星の言葉ではなく、地球の言葉で科学者は言う。

 合理主義者のヒジリからこんな命令を聞くとは思わなかったので、ウメボシは驚きながらヒジリを見た。

 ミミを生き返らせるメリットは無いどころか、デメリットだらけだからだ。

 現状では地球政府の許可無しに他惑星住人の蘇生は許されない。まだ植民星認定を受けていないからだ。

 地球に発見されていない惑星での勝手な行動をすれば、後々何かしらのペナルティは受けるかもしれない。

 しかし、惑星の発見者として登録されれば・・・、もしかして、と考えるウメボシだったが、主の体の異常に気付く。

 過度のストレスが原因だと一目見て解った。

 四十一世紀の地球人は基本的にストレスにも強いが、必ずしも全方位に強いわけではなく、強さを埋め合わせるが如く弱点がある。

 ストレスの原因は人それぞれで、その弱点を突かれると急激にストレスが溜まってしまうのだ。硬い鋼の剣が特定方向の衝撃で簡単に折れるような物である。

 しかしそんなヒジリを見ても、ウメボシは日本語で反論する。

「ウメボシ個人の感情で言えばマスターの命令には賛成です。ですが、マスターの生命を最優先とするお世話ロボットとしての答えはノーです! それをすれば暫くの間、ウメボシは動けなくなってしまい、マスターをお守りする事が出来ません! それに地球の人口管理局による蘇生と違ってロボットによる蘇生は色々と制限が多いのです。蘇生の為の記憶スロットが一つしかないのです。なのでこの子供を生き返らせようとすれば、マスターの蘇生データがこの子供のデータで上書きされてしまいます。そうなればマスターの十八歳の頃のデータが消えてしまうのですよ? もしマスターが死ねば次は十九歳以降の体で再構成されてしまいます。他人の蘇生を何度も繰り返せばマスターはどんどん歳をとった状態でデータの上書きがされます。それは命を削っている事と同じなのです! 地球に帰れば十八歳の頃のデータを人口管理局から簡単に貰う事が可能ですがここでは出来ません。もし地球に帰れなかった場合はどうするのですか! 絶対ダメです!」

「何度も・・ハァハァ・・言わせるな・・。蘇生の準備を・・しろ。少し寿命が削られる・・ぐらいなんだというのだ・・。子供が・・・死んだのだぞ・・貴重な・・未来ある子供が・・・。彼女はまだまだ生きていられたはずなのだ・・・、じぃじや、ばぁばだって同じことを言うだろう・・・」

 ヒジリは異常な発汗と過呼吸で胸を押さえている。精神的ストレスの蓄積が症状として顕著に表れ始めた。流石のナノマシンも精神的なものまでは回復できない。なんとかストレス物質を抑え込もうとするが、本来はそのように作られていないので間に合わない。

「マスター、ここは地球ではありません。こんな事を言うのは何ですが、この星に子供は掃いて捨てる程います。今もこの時この刹那、どこかで子供達が無残に殺されたり、飢えで亡くなったりしています。それがこの星では当たり前の事なのです」

「マスター権限を・・行使する・・・。この子を救え・・」

「マスター・・・。」

 説得出来なかったウメボシは自分の不甲斐なさと主の命を削ってしまう悔しさにボタボタと大粒の涙を流した。

 ウメボシが命令に従って蘇生を開始すると、ナンベルやイグナは徐々に泣くのを止めて浮き上がるミミの亡骸を見つめた。

 一瞬のスキャン後、蘇生データはミミのものに書き換えられる。この瞬間、ヒジリの十八歳の頃のデータは消滅した。ウメボシが次にヒジリをスキャンした時が蘇生時の年齢となる。

 ミミの体がまばゆい光に包まれる様をヒジリは満足そうに見つめ、意識を失って地面に倒れた。

 薄れゆく意識の中でシルビィとタスネの呼ぶ声が聞こえたが、徐々にそれも聞こえなくなり目の前が暗転していく。
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