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宴は終わって
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闇樹族の村での宴の後、結局ウメボシとイグナは村に泊まる事にした。
夜の九時には解散した宴は、終始笑いに包まれており和やかだった。
皆が去り際に口々にこんなに素敵な宴は今まで経験したことがなかったと褒めるので、ウメボシは照れに照れて瞳を虹色にさせている。
村人が帰ると、ウメボシになにやら相談事を持ちかける者が一人。
リーダーのガノンは(樹族には大抵名字があるが、名乗らないところをみると自分の一族に恨みがあるのかもしれない)村に医療施設が無く、病気になると魔物の襲撃を恐れながら、山奥のシャーマンに診てもらう以外に治療の手段がない事をウメボシに訴えた。
闇側の魔物は闇の住人に対しては滅多に攻撃を仕掛けない。
精々野生動物レベルの脅威しかない。しかし何故か光側の住民に対しては容赦なく襲いかかる。なので闇堕ちしたとはいえ、樹族の彼らは魔物の襲撃に常に悩まされていた。
樹族を殊更嫌うゴブリン達も闇樹族には同情的だ。いきなり見知らぬ土地に放り出されて、殆どの者が長く生き延びられない。
何も知らない闇堕ち樹族は、土地勘がないのでフラフラと絶望平野に入り込んで、強力なアンデッドや見たこともない魔物に襲われて死ぬ。
助けてやればいいのにと思うが、ゴブリン達もそこまでお人好しではない。同情的ではあるが闇堕ちしたとはいえ元は樹族なので、なるべく危害を加えないというのが、最大限の歩み寄りなのだ。
ガノンも長年グランデモニウムに住むようになって、それに気がついた。
なので時折村に訪れる行商人に、国境付近で迷っている闇樹族がいれば連れてくるように言い、ゴブリンたちが仲間を連れて来れば、なけなしの金を握らせる。そうして出来たのがこの村なのだ。
(心を読んだ限りでは、ここの樹族は殆どが、身内やライバルの策略に嵌められて闇堕ちした人たちね。どうかこの土地では幸せになって欲しい)
イグナは厳しい環境の中で生き延びてきた彼らの幸せを願う。
貴族の権力争いに巻き込まれ、深い悲しみや怒りを経験し、闇に堕ちた彼らに落ち度はない。
樹族国から追い出された人々が身を寄せ合って作ったこの村には、魔物避けの結界は張られているが、国境で使われるような高価な結界札ではない。なので盗賊等の襲撃には毎回対処しなければならないだろう。
ボロボロになった門や塀を修復しないという事は、この村への魔物や盗賊の襲撃頻度が高く、修理をする暇がないのだ。
夢中になって喋るガノンは、口の端にかかる長い黒髪を払って、今しがたイグナが考えていた盗賊への対策をウメボシに訴えていた。
「目下、差し迫って支援を乞いたいのが、盗賊の襲撃なのです。ウメボシ殿」
ガノンの口調が先程とは変わっていた。
ウメボシが王の使い魔だと名乗った時は疑っていたが、真剣に耳を傾ける彼女の真面目な人柄や誠実さに、今は好感を持ち、本当に王の使い魔ではないかと思い始めたからだ。
例えこれが何かの目的があっての嘘だったとしても、縋りたいという気持ちがガノンにはあった。
毎日のように何かに怯える生活にはもう疲れたのだ。
ちょっとした油断で村が全滅、という悲惨な目にいつ遭うかも判らない。そんな生活を何十年と続けていれば誰だって疲弊する。
縋りたいという気持ちはあるが、部外者に頼りたくはないという矛盾する意地もある。その気持が【読心】の魔法を使わせ、地走り族とイービルアイを覗き視る。
(ふむ。メイジの属性は善人だ。盗賊の雇ったメイジではないな。盗賊たちがとてつもない魔力の善人メイジを村に寄越すだろうか? 答えは否だ。盗賊たちが彼女を脅して言う事を聞かせようものなら、強力な魔法ですぐに倒されるだろう)
村を襲撃してくる盗賊の殆どは、生まれ持ってメイジである闇樹族達に殺される。
この村を襲う盗賊は、樹族国にいるような優雅で洗練された盗賊とは違い素人が多い。貧民街の片隅でゴミを漁っていたような者が翌日には徒党を組んで盗賊となるのだ。
なので幾ら闇樹族の村に強力なメイジがいると理解していても、空腹には抗えず衝動的に動いてしまう。
盗みをして空腹を満たし、今日を生き延びるか、村を襲って自警団やメイジに殺されるか。もっとリスクの低い村を襲えばいいのだが、そこまで頭が回ればゴミ漁りの末に盗賊などしていない。
少し考えにふけるガノンに、ウメボシは話しかける。
「盗賊はどこからやって来るのでしょうか?」
やって来る盗賊が、ゴデの街からの盗賊ではないという自信がウメボシにはあった。王のお膝元であるあの街は、貧民対策が行き届いているからだ。
今や貧民街は更地となり商業地区になる予定だが、ゴールキ将軍がマッスルランドという名の遊園地を作ろうと主に持ちかけてきて、主もその案に乗り気だった。
ウメボシが止めていなければ、商業地区は危うくマッスルランドになってしまうところだったのだ。
「湖に沿って少し北にある街、デンドロです」
「五百年ほど前は貿易港として盛んだった街ですね。マスターは今、ドワイト様がいるアーイン鉱山町の開発に着手し始めたところですから、デンドロの抜本的な盗賊対策はその後になるでしょう」
「もしかして王は・・・。一人で施政をしているのですか?」
「ええ、残念ながらマスターがこの国を引き継いだ時点で、王族も貴族も財産を持ち出してしまいましたから。国庫は空っぽです。なので人を雇う予算があまりないのです。(ナンベル様に幾らか支援はしてもらってはいますが・・・)なので目下、技術支援を中心にしております」
主は樹族国からの支援金を貰っていない。
支援など受ければ、元老院が王政批判の材料にするだろう。
それにグランデもニウム王国は、ヒジリが統治する樹族国の傀儡国という秘密裏の名目上、堂々とは支援出来ない。それがばれてしまえば、樹族国はツィガル帝国と事を構える事態になってしまう。
「では私財で国を賄っているのですか?」
「そうですよ? マスターは樹族国で奴隷として働いて大きな功績を残しています。その時に貯めた財産で、今は施政を行っているのです」
「なんとも心細い話ですね・・・。でも優しい方なのは解ります」
「じきにアーイン鉱山税金も入ってきますし、コーヒー農園も順調です。マスターは次に医療技術で他国人にお金を落とさせようと考えているようです」
「・・・。これまでの王は何だったのか。ただ民から税金を毟り取るだけで何もしようとはしなかった。我々は盗賊の襲撃に怯え、多くの者を警備に回して、漁に出られる者はほんの僅か。獲った魚は干物にして商人に売り、何とかして稼げたその金も、領主が税金として奪っていく。でも最近は収税官が来ないので不思議に思っていましたが、ここの領主も逃げ出していたのですね」
「ええ」
ウメボシはガノンの声が誰かに似ている事に気がついた。どこかで聞いた低いバリトンの声だ。しかし、今は関係ない事なので直ぐにそれを忘れる。
「さて、目下の要望は医療施設の充実と、防犯対策ですね。医療施設を直ぐに建てるのは無理ですが、近いうちに聖騎士見習いを寄こしましょう。見習いと言っても、もう実戦を経験しており、癒しの祈りも僧侶に劣りません。イグナ、遺跡で見つけた転移石を二つリンクさせておいて下さい。この村とゴデの街を繋げておきましょう」
イグナは頷くと、ショルダーバッグから転移石を取り出し、二つに同質のマナを流し込んだ。これで闇樹族の村とゴデの街に石を置いて置けば繋がる。
「転移石なんて高価なものを、こんな貧村に置いていくというのですか?」
ガノンはそこまでしてもらえるとは思っていなかったので、とても申し訳ない気持ちになる。
グランデモニウム王国に来てから、これまで誰かが自分たちの事を、ここまで気にかけてくれただろうか?
心の中でゆっくりと王への忠誠心のようなものが湧き上がってくるのが解る。今は何も出来ないが、いずれ王の役に立ちたいという気持ちが。
「そ、それに聖騎士見習い?! 聖騎士を目指す方が、ここに来て癒やしの祈りを施してくれるのですか? しかし・・・。我々は神学庁に払うお金を持ち合わせておりません」
「だからですよ、ガノンさん。見習いの間は癒やしの祈りに支払いが発生しません。まだ正式に神学庁と契約しているわけではありませんので。それにここはグランデモニウム王国ですよ。一体誰が神学庁に告げ口をするのでしょうか?」
「確かに・・・。ではお願いしてもよろしいでしょうか? ウメボシ殿」
「まかしんしゃい!」
ヒジリ以上に頼られると放おってはおけない性格のウメボシは、自分が頼りにされている事への嬉しさのあまり、ついインプットされている人格の方言が出てしまった。
「まか・・・?」
「ゲフン、失礼しました。方言が出てしまいました。任せて下さい」
樹族国に居た頃は、絶対に使い魔に下げることのなかった黒髪の頭を深々と下げて、お辞儀をするとガノンはテントから出ていった。
彼が出ていくと、外で吹き荒れる風の音以外は何も聞こえなくなった。
「イグナもこんな時間まで付き合ってくれてありがとう・・・って、寝てますね」
普段は避ける賑やかな場所に疲れたのか、イグナは机に突っ伏してスースーと寝息を立てていた。
ウメボシは会場の机などを綺麗に消し去ると、フカフカのベッドを出してイグナをその上に寝かせる。スヤァと眠るイグナの寝顔はまだまだ幼い。
「明日はピンクのお城に帰りますか・・・。帰らないとイグナもずっとウメボシと一緒にいそうですし」
ウメボシは優しい目で暫くイグナを見つめ、ベッドの周りにフォースフィールドを張ると、その中を暖かくした。そして空中に浮いたまま目を閉じて眠りについた。
夜の九時には解散した宴は、終始笑いに包まれており和やかだった。
皆が去り際に口々にこんなに素敵な宴は今まで経験したことがなかったと褒めるので、ウメボシは照れに照れて瞳を虹色にさせている。
村人が帰ると、ウメボシになにやら相談事を持ちかける者が一人。
リーダーのガノンは(樹族には大抵名字があるが、名乗らないところをみると自分の一族に恨みがあるのかもしれない)村に医療施設が無く、病気になると魔物の襲撃を恐れながら、山奥のシャーマンに診てもらう以外に治療の手段がない事をウメボシに訴えた。
闇側の魔物は闇の住人に対しては滅多に攻撃を仕掛けない。
精々野生動物レベルの脅威しかない。しかし何故か光側の住民に対しては容赦なく襲いかかる。なので闇堕ちしたとはいえ、樹族の彼らは魔物の襲撃に常に悩まされていた。
樹族を殊更嫌うゴブリン達も闇樹族には同情的だ。いきなり見知らぬ土地に放り出されて、殆どの者が長く生き延びられない。
何も知らない闇堕ち樹族は、土地勘がないのでフラフラと絶望平野に入り込んで、強力なアンデッドや見たこともない魔物に襲われて死ぬ。
助けてやればいいのにと思うが、ゴブリン達もそこまでお人好しではない。同情的ではあるが闇堕ちしたとはいえ元は樹族なので、なるべく危害を加えないというのが、最大限の歩み寄りなのだ。
ガノンも長年グランデモニウムに住むようになって、それに気がついた。
なので時折村に訪れる行商人に、国境付近で迷っている闇樹族がいれば連れてくるように言い、ゴブリンたちが仲間を連れて来れば、なけなしの金を握らせる。そうして出来たのがこの村なのだ。
(心を読んだ限りでは、ここの樹族は殆どが、身内やライバルの策略に嵌められて闇堕ちした人たちね。どうかこの土地では幸せになって欲しい)
イグナは厳しい環境の中で生き延びてきた彼らの幸せを願う。
貴族の権力争いに巻き込まれ、深い悲しみや怒りを経験し、闇に堕ちた彼らに落ち度はない。
樹族国から追い出された人々が身を寄せ合って作ったこの村には、魔物避けの結界は張られているが、国境で使われるような高価な結界札ではない。なので盗賊等の襲撃には毎回対処しなければならないだろう。
ボロボロになった門や塀を修復しないという事は、この村への魔物や盗賊の襲撃頻度が高く、修理をする暇がないのだ。
夢中になって喋るガノンは、口の端にかかる長い黒髪を払って、今しがたイグナが考えていた盗賊への対策をウメボシに訴えていた。
「目下、差し迫って支援を乞いたいのが、盗賊の襲撃なのです。ウメボシ殿」
ガノンの口調が先程とは変わっていた。
ウメボシが王の使い魔だと名乗った時は疑っていたが、真剣に耳を傾ける彼女の真面目な人柄や誠実さに、今は好感を持ち、本当に王の使い魔ではないかと思い始めたからだ。
例えこれが何かの目的があっての嘘だったとしても、縋りたいという気持ちがガノンにはあった。
毎日のように何かに怯える生活にはもう疲れたのだ。
ちょっとした油断で村が全滅、という悲惨な目にいつ遭うかも判らない。そんな生活を何十年と続けていれば誰だって疲弊する。
縋りたいという気持ちはあるが、部外者に頼りたくはないという矛盾する意地もある。その気持が【読心】の魔法を使わせ、地走り族とイービルアイを覗き視る。
(ふむ。メイジの属性は善人だ。盗賊の雇ったメイジではないな。盗賊たちがとてつもない魔力の善人メイジを村に寄越すだろうか? 答えは否だ。盗賊たちが彼女を脅して言う事を聞かせようものなら、強力な魔法ですぐに倒されるだろう)
村を襲撃してくる盗賊の殆どは、生まれ持ってメイジである闇樹族達に殺される。
この村を襲う盗賊は、樹族国にいるような優雅で洗練された盗賊とは違い素人が多い。貧民街の片隅でゴミを漁っていたような者が翌日には徒党を組んで盗賊となるのだ。
なので幾ら闇樹族の村に強力なメイジがいると理解していても、空腹には抗えず衝動的に動いてしまう。
盗みをして空腹を満たし、今日を生き延びるか、村を襲って自警団やメイジに殺されるか。もっとリスクの低い村を襲えばいいのだが、そこまで頭が回ればゴミ漁りの末に盗賊などしていない。
少し考えにふけるガノンに、ウメボシは話しかける。
「盗賊はどこからやって来るのでしょうか?」
やって来る盗賊が、ゴデの街からの盗賊ではないという自信がウメボシにはあった。王のお膝元であるあの街は、貧民対策が行き届いているからだ。
今や貧民街は更地となり商業地区になる予定だが、ゴールキ将軍がマッスルランドという名の遊園地を作ろうと主に持ちかけてきて、主もその案に乗り気だった。
ウメボシが止めていなければ、商業地区は危うくマッスルランドになってしまうところだったのだ。
「湖に沿って少し北にある街、デンドロです」
「五百年ほど前は貿易港として盛んだった街ですね。マスターは今、ドワイト様がいるアーイン鉱山町の開発に着手し始めたところですから、デンドロの抜本的な盗賊対策はその後になるでしょう」
「もしかして王は・・・。一人で施政をしているのですか?」
「ええ、残念ながらマスターがこの国を引き継いだ時点で、王族も貴族も財産を持ち出してしまいましたから。国庫は空っぽです。なので人を雇う予算があまりないのです。(ナンベル様に幾らか支援はしてもらってはいますが・・・)なので目下、技術支援を中心にしております」
主は樹族国からの支援金を貰っていない。
支援など受ければ、元老院が王政批判の材料にするだろう。
それにグランデもニウム王国は、ヒジリが統治する樹族国の傀儡国という秘密裏の名目上、堂々とは支援出来ない。それがばれてしまえば、樹族国はツィガル帝国と事を構える事態になってしまう。
「では私財で国を賄っているのですか?」
「そうですよ? マスターは樹族国で奴隷として働いて大きな功績を残しています。その時に貯めた財産で、今は施政を行っているのです」
「なんとも心細い話ですね・・・。でも優しい方なのは解ります」
「じきにアーイン鉱山税金も入ってきますし、コーヒー農園も順調です。マスターは次に医療技術で他国人にお金を落とさせようと考えているようです」
「・・・。これまでの王は何だったのか。ただ民から税金を毟り取るだけで何もしようとはしなかった。我々は盗賊の襲撃に怯え、多くの者を警備に回して、漁に出られる者はほんの僅か。獲った魚は干物にして商人に売り、何とかして稼げたその金も、領主が税金として奪っていく。でも最近は収税官が来ないので不思議に思っていましたが、ここの領主も逃げ出していたのですね」
「ええ」
ウメボシはガノンの声が誰かに似ている事に気がついた。どこかで聞いた低いバリトンの声だ。しかし、今は関係ない事なので直ぐにそれを忘れる。
「さて、目下の要望は医療施設の充実と、防犯対策ですね。医療施設を直ぐに建てるのは無理ですが、近いうちに聖騎士見習いを寄こしましょう。見習いと言っても、もう実戦を経験しており、癒しの祈りも僧侶に劣りません。イグナ、遺跡で見つけた転移石を二つリンクさせておいて下さい。この村とゴデの街を繋げておきましょう」
イグナは頷くと、ショルダーバッグから転移石を取り出し、二つに同質のマナを流し込んだ。これで闇樹族の村とゴデの街に石を置いて置けば繋がる。
「転移石なんて高価なものを、こんな貧村に置いていくというのですか?」
ガノンはそこまでしてもらえるとは思っていなかったので、とても申し訳ない気持ちになる。
グランデモニウム王国に来てから、これまで誰かが自分たちの事を、ここまで気にかけてくれただろうか?
心の中でゆっくりと王への忠誠心のようなものが湧き上がってくるのが解る。今は何も出来ないが、いずれ王の役に立ちたいという気持ちが。
「そ、それに聖騎士見習い?! 聖騎士を目指す方が、ここに来て癒やしの祈りを施してくれるのですか? しかし・・・。我々は神学庁に払うお金を持ち合わせておりません」
「だからですよ、ガノンさん。見習いの間は癒やしの祈りに支払いが発生しません。まだ正式に神学庁と契約しているわけではありませんので。それにここはグランデモニウム王国ですよ。一体誰が神学庁に告げ口をするのでしょうか?」
「確かに・・・。ではお願いしてもよろしいでしょうか? ウメボシ殿」
「まかしんしゃい!」
ヒジリ以上に頼られると放おってはおけない性格のウメボシは、自分が頼りにされている事への嬉しさのあまり、ついインプットされている人格の方言が出てしまった。
「まか・・・?」
「ゲフン、失礼しました。方言が出てしまいました。任せて下さい」
樹族国に居た頃は、絶対に使い魔に下げることのなかった黒髪の頭を深々と下げて、お辞儀をするとガノンはテントから出ていった。
彼が出ていくと、外で吹き荒れる風の音以外は何も聞こえなくなった。
「イグナもこんな時間まで付き合ってくれてありがとう・・・って、寝てますね」
普段は避ける賑やかな場所に疲れたのか、イグナは机に突っ伏してスースーと寝息を立てていた。
ウメボシは会場の机などを綺麗に消し去ると、フカフカのベッドを出してイグナをその上に寝かせる。スヤァと眠るイグナの寝顔はまだまだ幼い。
「明日はピンクのお城に帰りますか・・・。帰らないとイグナもずっとウメボシと一緒にいそうですし」
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