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さよならをいうマサヨシ
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「やっぱり!恨みますぞ!運命の神カオジフ!」
雷竜のいる洞窟に入った途端、雷撃が運命の神に恨み言を吐くマサヨシに飛んできた。
すかさず帝国鉄騎士鎧を着るリツが大盾を構えて前に出た。
「どうやら逃がしてくれなさそうですわね」
リツはスキルを発動させているのか、体から衝撃波のようなものが何度も発している。
「我らキツネ目トリオの恐ろしさを思い知らせてやりましょうかネ。キュッキュ!」
リツが大盾を叩いて竜を挑発するのを見届けるとナンベルは岩の影に沈んでいった。
「盗人たちめ!我の宝物を盗みに来たな!?」
「そんなつもりはありません、と言ったところで貴方は許してくれないのでしょう?」
リツは接近戦に持ち込むつもりなのかジリジリと竜に近寄る。
「当たり前だ!昨日も盗むつもりはないと言ったゴブリンがその口で金貨を一枚盗もうとした。その前はオークが魔法の宝石を!お前達人型種は殺しても殺しても湧いて出てくるし、嘘もつく。だからもう許しはしない」
「何を盗まれたかきっちりとチェックしているなんて意外とせこいな・・・」
ライトニングボルトがマサヨシに飛んでくる。が、それもリツが大盾で防いだ。
リツのフルヘルムからくぐもった声が聞こえてくる。
「ヘイトを稼がないでください、マサヨシ!」
「ご、ごめん・・・」
リツはもう一度、盾を叩いて竜の目を自分に向ける。
竜は顔を横にしてリツの胴体に噛みつこうとした。
リツはそれをバックステップで避けると鼻面にバトルハンマーを打ち込む。
「ぐあっ!」
「守りに関しては鉄騎士の右に出る者はいませんことよ!」
竜は長い舌で鼻をペロリと舐めて血が出ていないかを確認し、笑う。
「嘘をつけ。この地に来る前に戦った聖騎士はもっと凄かったぞ!だが、噛み殺してやった」
もう一度噛みつき攻撃が来たが、それはフェイントだった。竜の小さな右手が光る。
「エリートオーガに雷魔法は効果がないのに・・・」
竜はニヤリと笑った。
「【衝撃の塊】!」
パンとリツの顔の前で空気が弾ける。練度の低い風魔法【衝撃の塊】だったが、猫騙し程度には役に立つ。
面食らってよろめくリツに雷竜は今度こそとばかりに噛みつき攻撃を仕掛けた。
「危ない!」
マサヨシがお返しにとばかりに竜の顔に向かって同じ魔法を撃ちこむ。
その攻撃は竜の目に当たり、竜はのた打ち回って暴れまわった。
暴れる竜の尻尾がリツに当たり、彼女は吹き飛んで洞窟の壁に叩きつけられる。
「ぐっ!意外と力が強い・・・」
リツはすぐさま立ち上がって盾を構えると体に異常はないかを痛みの度合いで確かめる。
「よし!問題無し!よくもやってくれましたわね!」
溜め動作も何も無い、大盾を構えたままの体当たりが竜の顔を叩く。
リツの得意技であるシールドバッシュトレインである。本来は長い隊列に向かって突貫する技なのだが、技をもろに直撃してしまった竜は半分意識が飛ぶ。
脚をもつれさせて何とか踏ん張っていると背中に激痛が走った。
「ヒャッハー!今夜は竜の焼き肉だぁー!」
道化師ナンベルは狂ったように竜の背中にダガーを何度も突き刺している。
「どうですぅ?痛いですか?痛いですよねぇ?キュキュキュ!それもそのはず!小生は貴方の鱗の隙間に的確にダガーを差し込んでいますからぁ!」
背中の痛みの所為で意識がはっきりした雷竜は立ち上がると背中を洞窟の壁にぶつけた。
しかし手応えは無い。
「ざぁんねん。小生は影に入り込めるのです。洞窟の入り口から入り込む光と宝物の反射光を恨んでくださぁい!」
岩の影からナンベルは頭だけを出して笑っている。
「忌々しい!」
ドラゴンは尻尾で岩を砕いた。飛び散る岩の影から弾かれるようにしてナンベルは現れた。
「うわっと・・・」
振り返ると竜の顔が目の前あった。
「チェックメイトだな、道化師」
「はわわわ、どうかご慈悲を!雷竜様!どうか!お願いしますぅ~どうかぁ~!」
必死になって命乞いをする道化師に滑稽さを感じるも、この手のタイプが一番油断ならない事を竜は知っている。
遠慮はしないとばかりに牙に雷を纏わせ、口を大きく開けた。
顎を前に突き出して噛みつけば道化師は死ぬはずだ。
「おや?虫歯がありますよ。雷竜殿。治療薬をお出ししておきますね」
ナンベルは竜の口の中に毒雲を発生させ、竜の影に素早く沈んでしまった。
「ごわぁ!こほぉ!」
黄色い竜の体がどんどんと紫色になっていく。
「毒の巡りが早い・・・。このままでは死んでしまう・・・。参った降参だ。もう抵抗はしない。だから命だけは助けてくれ・・・」
ドラゴンは地面にひれ伏して降参の意思を示す。
「最初から我々は宝物を盗む気が無いといったでしょう?貴方が私達を信じていれば毒で瀕死になる事はなかったのですよ?」
リツはバトルハンマーを腰に下げて、戦闘態勢を解く。
「うむ・・・。そうしておくべきだった。最初から【読心】でお前たちの本心を調べておけば良かったのだ。悪かった。だから解毒薬をくれないだろうか?」
「仕方ねぇなぁ・・・。いでよ!クソビッチ!」
マサヨシは息も絶え絶えなドラゴンに近づくと天使を召喚した。
「お久ぶりぶり~!」
「うるせぇ。さっさとこの竜の毒を治せ」
「えぇ!いいんですか?この竜は治した途端、噛みついてくるかもしれませんよ?」
「まじ?」
「約束する、もうお前達に危害は加えない・・・。だから頼む・・・」
「解った!俺はお前を信用する!クソビッチ、治してやれ」
「噛みつかれても知りませんよ。【解毒】!」
雷竜の体から毒が消えていくと同時に体の色も元の黄色に戻っていく。
「れ、礼を言う」
ドラゴンはまだ体力が戻らないのかひれ伏したままだ。
「じゃあご主人様、報酬を」
「な、なんだよ・・・。何がいいんだよ・・・」
「ん~そうですねぇ・・・。何も思いつかないので私の頬にキスですかね」
マサヨシはこれ以上ない不愉快な顔をする。
「あ~、その顔、素敵。ご主人様が不愉快な思いをするたびに私の体が喜びで震えます!」
空中で気味の悪い震え方をして天使は喜んでいる。
「おえっ!サキュバスのウェイロニーちゃんなら問題無くキスが出来るけど、お前はなぁ・・・。生理的に受けつけないんよ・・・」
「だからいいんじゃないですか。さぁ」
クソビッチは頬をマサヨシの前に突き出した。
「くそ!何か屈辱的ですわ・・・」
それでもマサヨシが天使の頬にキスをしようとすると、クソビッチは目を剥いて上を見た。
「ご主人様、危ない!」
マサヨシの背後で雷竜が大きく口を開けていたのだ。油断していたリツもナンベルも驚いてマサヨシに近づくが何もかも遅く間に合わなかった。
―――ビシャァ!!―――
体液が辺り一面に飛び散る。
「ご主人様・・・・」
クソビッチ・テコキコフは目に涙を溜めて顔を抑えた。
「そんな・・・。ああ、不死身のご主人様も今度ばかりは・・・」
リツもナンベルも顔を背けて険しい顔をする。
「おいっ!勝手に殺すなよ・・・。竜さんよぉ・・・これは一体どういうことだ・・・」
雷竜はスッキリした顔をした後、申し訳なさそうに言う。
「す、すまない。体内に毒の残留物が残っていて、吐き気がどうしても抑えられなくて・・・。召喚士殿の上に吐いてしまった事を謝罪する」
「まぁいいさ。慰謝料は適当なマジックアイテムでいいわ。あーくっさ。さぁクソビッチ、キスをしてやろう」
汚物塗れのマサヨシはクソビッチに両手を広げて近寄る。
お前の全てを受け入れんとばかりに清々しい顔をして近づいて来るマサヨシにクソビッチは後ずさった。
「やっぱいらないです!さようなら!」
クソビッチは舞い散る天使の羽と光の柱の中へと逃げるようにして消えていった。
「チッ!」
マサヨシは宝の山から適当に指輪を拾う。
「これ貰っていくからな!いいな?雷竜!」
「ぐむう・・・。仕方あるまい・・・。もう行ってくれ!」
マサヨシは顔の汚物を手で拭ってビシャリと地面に叩きつけると出口に向かって歩きだした。その後ろをナンベルとリツがついていく。
「いいなぁ~、マサヨシ君。何気にお宝ゲットしているじゃありませんか。ちょっと見せてくださいよォ」
「いいけど・・・」
ナンベルはなるべくマサヨシの体に触れないように指輪を受け取ると【知識の欲】で鑑定しだした。
「ふむふむ・・・。こ、これは!(うわ~、要らない)中々いい物を手に入れましたネ。ヒーリング効果バッチシの指輪ですよ。キュキュ」
「まじ?やった。今はダメージ追ってないから怪我した時にでも使いますわ」
「なんだかマサヨシはいつものマサヨシに戻った気がしますわ」
「そう?だとしたらリッちゃんの愛の力だと思うよ。おふうおふう」
「誤解を招くような言動は慎んでくださるかしら?」
「小生も愛を振りまいていますよ?」
ナンベルはいつもの癖でマサヨシの肩を抱こうとしたが、ゲロ塗れなので直ぐに手を引っ込める。
「勿論、おっさんのお陰でもありんす。心が傷ついた時に傍に仲間がいるってのは良い事でつね」
「あ!そういえば、フェアリーの予言は外れましたねぇ?」
「予言っていうか、ナンベルのオッサンの憶測だろ?」
「小生はてっきり、貴方が雷竜の餌食になると思っていたのですがぁ・・・チッ・・・」
「チッ!ってなんだよ!チッ!って!それにしてもあのフェアリーは何を言いかけていたんだろうか?」
マサヨシは首を捻りつつも、結局判らないままゴデの街へと歩いて行った。
オーガの酒場にある自分の部屋に入るとマサヨシは急いで部屋備え付けの風呂場に駆けこんだ。
「くぅ~!くっせぇ~!まさかドラゴンのゲロを浴びるとは思わなかったぁ~」
ヒジリが各家庭に引いたサラマンダー石熱発電所から送られてくる廃熱用の水は丁度いいお湯となって人々の生活に役立っている。蛇口をひねればお湯が出てくるのもヒジリのお陰なのだ。
「インフラ整備のお陰でこうやってシャワーが浴びれるんだから現人神様に感謝だな。はぁ~。スンスン。よし臭いも取れた」
「はぁ~たまんね」
風呂場のドアから女性の声がする。
「きゃあ!だ、誰だ!」
マサヨシは体を洗うタオルで胸を隠す。
「普通、股間を隠しませんか?」
ヴャーンズの使い魔、サキュバスのウェイロニーが上気した顔で両頬を手で押さえマサヨシの股間を見つめている。
「やだっ!なによ!あんた!何しに来たのよ!」
「何でオネェ言葉なんですか・・・。別にマサヨシに会いに来たわけじゃないのですけど。ヒジリ陛下に書類を届けに来ただけですよ」
「じゃあ、ここには用はないでしょっ!んん、もう!出て行って頂戴!」
「はいはい。あ!そうだ!そういえば貴方を訪ねて来た女性がいますよ?」
「え?誰?」
「ん~、マサヨシと同じレッサースターオーガかな?よくわかりません。カウンターで待ってますから早く会いに行ってやってください。では」
ウェイロニーは蝙蝠に姿を変えると風呂場の窓から飛び去ってしまった。
「誰だ?レッサースターオーガ?つまり地球人って事か?地球人の知り合いはヒジリ以外いなかったはずだけど・・・」
マサヨシはタオルで頭を拭きながら一階に降りる。
書類に目を通していたヒジリがニヤニヤしながらこっちを見た。
「な、なんだよぉ・・・」
ヒジリだけじゃない。酒場で寛ぐナンベルもヒヒヒと笑っており、リツも口に手を当てて笑いを堪えている。
「あのぉ~。どちらさんでしょうか?」
カウンターに座っていた長髪の女性は確かに地球人の見た目をしていた。清楚な黒髪の女性で何となくだが自分と同じ日本人だと解った。
黒髪の女はマサヨシを見ると抱き着いて泣き始めた。
「ごめんなさい!マサヨシ!」
「え?」
「私、貴方に酷い事しちゃって・・・」
「ごめん、誰?」
「私はオンブル・・・」
「えええええ!!どういうことー?」
ヒジリが待ってましたとばかりに立ち上がって二人に近づく。
「私が説明しよう。彼女は確かにオンブルだ。じゃあなぜ地球人の姿をしているかと思っているのだろう?彼女は愛しい人と同種族になるアイテムを使ったのだよ」
「でも、オンブルちゃんは俺の事好きじゃなくなったんじゃ・・・?」
「それがだな、時間が経つにつれて君の事をどんどんと思い出したそうなんだ。つまりこの世界のオンブルが別世界のオンブルの記憶に打ち勝ったという事だ」
オンブルはもう一度マサヨシに抱き着いた。ぎゅっと抱きしめてくるので程よい大きさの胸がプニプニと当たる。
「ごめんなさい、マサヨシ。私、村を抜け出してきたわ。貴方と同じ種族になったのも貴方に私の気持ちを解って欲しかったからなの!」
「じゃあ村からアイテムを盗んで出てきたのかい?」
「ううん、アイテムはムロさんが村の中で一週間滞在して私の為に手に入れてくれたの」
「ああ、そうか。村での一週間は外の世界の一日だもんな。だから昨日の今日で来たんだ」
「うん、とにかくマサヨシに会いたくて。会って謝りたかった。例え許してくれなくても何度でも謝ろうと思ったの」
「ムロに連れて来てもらったんだろう?お礼を言わなくちゃ」
マサヨシは酒場をキョロキョロするがムロの姿は見当たらない。
「ムロならお礼を言われるのは照れくさいからといってバートラに帰って行ったぞ?」
ヒジリがそういうとウメボシがうんうんと頷く。
「優しくて控えめ。なんて素晴らしい好人物なんでしょうか、ムロ様は」
「あいつぅ・・・」
マサヨシは鼻の下を擦ってヘヘッと笑う。想像の中のムロはニッコリと笑ってサムアップしていた。
ヒジリは抱き合う二人を見て微笑み、頷くと広い酒場の全員に向かって声を挙げた。
「聞いてくれたまえ、諸君。今日、ここに素晴らしいカップルが誕生した。召喚士マサヨシと元影人のオンブル!私の星では廃れて無くなり、この星でもそういった習慣がない事は知っているが、今日この場を二人の結婚式会場とする。結婚式とは愛し合って一生を共にする男女を祝福する儀式の事だ。このカップルを祝福してくれる者の飲食代は私が払う!好きなだけ飲み食いするがいい!」
「ひゃぁ!なんだかわかんねぇが!めでてぇって事だよな?ここはヒジリ大先生に甘えて存分に飲み食いしようや!」
スカーが調子に乗ってグビグビとエールを飲む。若い砦の戦士達も先輩に負けじと酒をあおりだした。
「マサヨシ、結婚指輪のような物は持っているかな?確か、結婚式で指輪を交換するはずだった気がするが」
「そうだけど・・・。あ!俺、さっき雷竜から貰った指輪があるわ!」
オンブルは恥ずかしそうにして人差し指同士をツンツンしている。
「あの、私は何も持って無くて・・・」
ガハハとカウンター向こうでヘカティニスが笑った。
「だったら、ほだ。これを受け取れ」
明らかに今しがた強引にデザートフォークを曲げて輪っかにして作った指輪をヘカティニスはオンブルに渡した。
「マサヨシみたいなもんには、そでで十分だど」
「ああ、俺はそれでいい!こんな記念になる指輪は他にないでつよ!ありがとう、ヘカちゃん」
「いいってことよ」
ウメボシがマサヨシとオンブルの間に浮いた。特別に良い声で場を仕切る。
「それでは指輪交換の後に誓いのキスを!」
「お、おう・・」
マサヨシがごくりと喉を鳴らし雷竜から貰った指輪をオンブルの指にはめた途端・・・。
「ぶもぉぉ!!」
オンブルは指輪の呪いでトロールになった。
「キューーーキュキュキュ!!」
ナンベルがそれを見て笑う。
「言い忘れていましたがその指輪、トロールリングですよぉ!驚異的な自然治癒能力と引き換えに姿がトロールになるんです!キュキュキュ!」
「全く・・・ナンベルは・・・」
ヒジリは呆れながら、トロールとなったオンブルの指輪に触れる。ヒジリが触れた途端、指輪は効力を失って唯の指輪となった。オンブルも元の姿に戻る。
「びっくりしたぁ!うふふ!」
オンブルは魔法の呪いでトロールになった事に驚いて笑っている。
「はぁぁぁ!!オンブルちゃん可愛い!」
マサヨシはオンブルにはめてもらう予定だったフォークの指輪を自分でつけると、オンブルの口にキスをした。
オンブルもマサヨシの首に手をまわしてキスを受け入れた。
酒場のあちこちから指笛や祝福の声が飛んだ。
マサヨシはその祝福に手を振って応える。
「ありがとう、皆!俺、一生オンブルちゃんを大事にします!そして、悲しみに沈む俺、さようなら!幸せの俺、ようこそ!」
グビっと片手に持った葡萄酒のグラスをあおると、マサヨシはフェアリーが何を言いたかったのかに気が付いた。
(そうか、この幸せが俺に訪れる事を彼女は言いたかったんだ。あの笑いは不吉な笑いじゃなくて微笑みだったんだな!)
こうしてマサヨシはオンブルと結ばれた。
二人を祝福する宴は翌朝まで続き、オーガの酒場の周辺は暫くお酒臭かった。
雷竜のいる洞窟に入った途端、雷撃が運命の神に恨み言を吐くマサヨシに飛んできた。
すかさず帝国鉄騎士鎧を着るリツが大盾を構えて前に出た。
「どうやら逃がしてくれなさそうですわね」
リツはスキルを発動させているのか、体から衝撃波のようなものが何度も発している。
「我らキツネ目トリオの恐ろしさを思い知らせてやりましょうかネ。キュッキュ!」
リツが大盾を叩いて竜を挑発するのを見届けるとナンベルは岩の影に沈んでいった。
「盗人たちめ!我の宝物を盗みに来たな!?」
「そんなつもりはありません、と言ったところで貴方は許してくれないのでしょう?」
リツは接近戦に持ち込むつもりなのかジリジリと竜に近寄る。
「当たり前だ!昨日も盗むつもりはないと言ったゴブリンがその口で金貨を一枚盗もうとした。その前はオークが魔法の宝石を!お前達人型種は殺しても殺しても湧いて出てくるし、嘘もつく。だからもう許しはしない」
「何を盗まれたかきっちりとチェックしているなんて意外とせこいな・・・」
ライトニングボルトがマサヨシに飛んでくる。が、それもリツが大盾で防いだ。
リツのフルヘルムからくぐもった声が聞こえてくる。
「ヘイトを稼がないでください、マサヨシ!」
「ご、ごめん・・・」
リツはもう一度、盾を叩いて竜の目を自分に向ける。
竜は顔を横にしてリツの胴体に噛みつこうとした。
リツはそれをバックステップで避けると鼻面にバトルハンマーを打ち込む。
「ぐあっ!」
「守りに関しては鉄騎士の右に出る者はいませんことよ!」
竜は長い舌で鼻をペロリと舐めて血が出ていないかを確認し、笑う。
「嘘をつけ。この地に来る前に戦った聖騎士はもっと凄かったぞ!だが、噛み殺してやった」
もう一度噛みつき攻撃が来たが、それはフェイントだった。竜の小さな右手が光る。
「エリートオーガに雷魔法は効果がないのに・・・」
竜はニヤリと笑った。
「【衝撃の塊】!」
パンとリツの顔の前で空気が弾ける。練度の低い風魔法【衝撃の塊】だったが、猫騙し程度には役に立つ。
面食らってよろめくリツに雷竜は今度こそとばかりに噛みつき攻撃を仕掛けた。
「危ない!」
マサヨシがお返しにとばかりに竜の顔に向かって同じ魔法を撃ちこむ。
その攻撃は竜の目に当たり、竜はのた打ち回って暴れまわった。
暴れる竜の尻尾がリツに当たり、彼女は吹き飛んで洞窟の壁に叩きつけられる。
「ぐっ!意外と力が強い・・・」
リツはすぐさま立ち上がって盾を構えると体に異常はないかを痛みの度合いで確かめる。
「よし!問題無し!よくもやってくれましたわね!」
溜め動作も何も無い、大盾を構えたままの体当たりが竜の顔を叩く。
リツの得意技であるシールドバッシュトレインである。本来は長い隊列に向かって突貫する技なのだが、技をもろに直撃してしまった竜は半分意識が飛ぶ。
脚をもつれさせて何とか踏ん張っていると背中に激痛が走った。
「ヒャッハー!今夜は竜の焼き肉だぁー!」
道化師ナンベルは狂ったように竜の背中にダガーを何度も突き刺している。
「どうですぅ?痛いですか?痛いですよねぇ?キュキュキュ!それもそのはず!小生は貴方の鱗の隙間に的確にダガーを差し込んでいますからぁ!」
背中の痛みの所為で意識がはっきりした雷竜は立ち上がると背中を洞窟の壁にぶつけた。
しかし手応えは無い。
「ざぁんねん。小生は影に入り込めるのです。洞窟の入り口から入り込む光と宝物の反射光を恨んでくださぁい!」
岩の影からナンベルは頭だけを出して笑っている。
「忌々しい!」
ドラゴンは尻尾で岩を砕いた。飛び散る岩の影から弾かれるようにしてナンベルは現れた。
「うわっと・・・」
振り返ると竜の顔が目の前あった。
「チェックメイトだな、道化師」
「はわわわ、どうかご慈悲を!雷竜様!どうか!お願いしますぅ~どうかぁ~!」
必死になって命乞いをする道化師に滑稽さを感じるも、この手のタイプが一番油断ならない事を竜は知っている。
遠慮はしないとばかりに牙に雷を纏わせ、口を大きく開けた。
顎を前に突き出して噛みつけば道化師は死ぬはずだ。
「おや?虫歯がありますよ。雷竜殿。治療薬をお出ししておきますね」
ナンベルは竜の口の中に毒雲を発生させ、竜の影に素早く沈んでしまった。
「ごわぁ!こほぉ!」
黄色い竜の体がどんどんと紫色になっていく。
「毒の巡りが早い・・・。このままでは死んでしまう・・・。参った降参だ。もう抵抗はしない。だから命だけは助けてくれ・・・」
ドラゴンは地面にひれ伏して降参の意思を示す。
「最初から我々は宝物を盗む気が無いといったでしょう?貴方が私達を信じていれば毒で瀕死になる事はなかったのですよ?」
リツはバトルハンマーを腰に下げて、戦闘態勢を解く。
「うむ・・・。そうしておくべきだった。最初から【読心】でお前たちの本心を調べておけば良かったのだ。悪かった。だから解毒薬をくれないだろうか?」
「仕方ねぇなぁ・・・。いでよ!クソビッチ!」
マサヨシは息も絶え絶えなドラゴンに近づくと天使を召喚した。
「お久ぶりぶり~!」
「うるせぇ。さっさとこの竜の毒を治せ」
「えぇ!いいんですか?この竜は治した途端、噛みついてくるかもしれませんよ?」
「まじ?」
「約束する、もうお前達に危害は加えない・・・。だから頼む・・・」
「解った!俺はお前を信用する!クソビッチ、治してやれ」
「噛みつかれても知りませんよ。【解毒】!」
雷竜の体から毒が消えていくと同時に体の色も元の黄色に戻っていく。
「れ、礼を言う」
ドラゴンはまだ体力が戻らないのかひれ伏したままだ。
「じゃあご主人様、報酬を」
「な、なんだよ・・・。何がいいんだよ・・・」
「ん~そうですねぇ・・・。何も思いつかないので私の頬にキスですかね」
マサヨシはこれ以上ない不愉快な顔をする。
「あ~、その顔、素敵。ご主人様が不愉快な思いをするたびに私の体が喜びで震えます!」
空中で気味の悪い震え方をして天使は喜んでいる。
「おえっ!サキュバスのウェイロニーちゃんなら問題無くキスが出来るけど、お前はなぁ・・・。生理的に受けつけないんよ・・・」
「だからいいんじゃないですか。さぁ」
クソビッチは頬をマサヨシの前に突き出した。
「くそ!何か屈辱的ですわ・・・」
それでもマサヨシが天使の頬にキスをしようとすると、クソビッチは目を剥いて上を見た。
「ご主人様、危ない!」
マサヨシの背後で雷竜が大きく口を開けていたのだ。油断していたリツもナンベルも驚いてマサヨシに近づくが何もかも遅く間に合わなかった。
―――ビシャァ!!―――
体液が辺り一面に飛び散る。
「ご主人様・・・・」
クソビッチ・テコキコフは目に涙を溜めて顔を抑えた。
「そんな・・・。ああ、不死身のご主人様も今度ばかりは・・・」
リツもナンベルも顔を背けて険しい顔をする。
「おいっ!勝手に殺すなよ・・・。竜さんよぉ・・・これは一体どういうことだ・・・」
雷竜はスッキリした顔をした後、申し訳なさそうに言う。
「す、すまない。体内に毒の残留物が残っていて、吐き気がどうしても抑えられなくて・・・。召喚士殿の上に吐いてしまった事を謝罪する」
「まぁいいさ。慰謝料は適当なマジックアイテムでいいわ。あーくっさ。さぁクソビッチ、キスをしてやろう」
汚物塗れのマサヨシはクソビッチに両手を広げて近寄る。
お前の全てを受け入れんとばかりに清々しい顔をして近づいて来るマサヨシにクソビッチは後ずさった。
「やっぱいらないです!さようなら!」
クソビッチは舞い散る天使の羽と光の柱の中へと逃げるようにして消えていった。
「チッ!」
マサヨシは宝の山から適当に指輪を拾う。
「これ貰っていくからな!いいな?雷竜!」
「ぐむう・・・。仕方あるまい・・・。もう行ってくれ!」
マサヨシは顔の汚物を手で拭ってビシャリと地面に叩きつけると出口に向かって歩きだした。その後ろをナンベルとリツがついていく。
「いいなぁ~、マサヨシ君。何気にお宝ゲットしているじゃありませんか。ちょっと見せてくださいよォ」
「いいけど・・・」
ナンベルはなるべくマサヨシの体に触れないように指輪を受け取ると【知識の欲】で鑑定しだした。
「ふむふむ・・・。こ、これは!(うわ~、要らない)中々いい物を手に入れましたネ。ヒーリング効果バッチシの指輪ですよ。キュキュ」
「まじ?やった。今はダメージ追ってないから怪我した時にでも使いますわ」
「なんだかマサヨシはいつものマサヨシに戻った気がしますわ」
「そう?だとしたらリッちゃんの愛の力だと思うよ。おふうおふう」
「誤解を招くような言動は慎んでくださるかしら?」
「小生も愛を振りまいていますよ?」
ナンベルはいつもの癖でマサヨシの肩を抱こうとしたが、ゲロ塗れなので直ぐに手を引っ込める。
「勿論、おっさんのお陰でもありんす。心が傷ついた時に傍に仲間がいるってのは良い事でつね」
「あ!そういえば、フェアリーの予言は外れましたねぇ?」
「予言っていうか、ナンベルのオッサンの憶測だろ?」
「小生はてっきり、貴方が雷竜の餌食になると思っていたのですがぁ・・・チッ・・・」
「チッ!ってなんだよ!チッ!って!それにしてもあのフェアリーは何を言いかけていたんだろうか?」
マサヨシは首を捻りつつも、結局判らないままゴデの街へと歩いて行った。
オーガの酒場にある自分の部屋に入るとマサヨシは急いで部屋備え付けの風呂場に駆けこんだ。
「くぅ~!くっせぇ~!まさかドラゴンのゲロを浴びるとは思わなかったぁ~」
ヒジリが各家庭に引いたサラマンダー石熱発電所から送られてくる廃熱用の水は丁度いいお湯となって人々の生活に役立っている。蛇口をひねればお湯が出てくるのもヒジリのお陰なのだ。
「インフラ整備のお陰でこうやってシャワーが浴びれるんだから現人神様に感謝だな。はぁ~。スンスン。よし臭いも取れた」
「はぁ~たまんね」
風呂場のドアから女性の声がする。
「きゃあ!だ、誰だ!」
マサヨシは体を洗うタオルで胸を隠す。
「普通、股間を隠しませんか?」
ヴャーンズの使い魔、サキュバスのウェイロニーが上気した顔で両頬を手で押さえマサヨシの股間を見つめている。
「やだっ!なによ!あんた!何しに来たのよ!」
「何でオネェ言葉なんですか・・・。別にマサヨシに会いに来たわけじゃないのですけど。ヒジリ陛下に書類を届けに来ただけですよ」
「じゃあ、ここには用はないでしょっ!んん、もう!出て行って頂戴!」
「はいはい。あ!そうだ!そういえば貴方を訪ねて来た女性がいますよ?」
「え?誰?」
「ん~、マサヨシと同じレッサースターオーガかな?よくわかりません。カウンターで待ってますから早く会いに行ってやってください。では」
ウェイロニーは蝙蝠に姿を変えると風呂場の窓から飛び去ってしまった。
「誰だ?レッサースターオーガ?つまり地球人って事か?地球人の知り合いはヒジリ以外いなかったはずだけど・・・」
マサヨシはタオルで頭を拭きながら一階に降りる。
書類に目を通していたヒジリがニヤニヤしながらこっちを見た。
「な、なんだよぉ・・・」
ヒジリだけじゃない。酒場で寛ぐナンベルもヒヒヒと笑っており、リツも口に手を当てて笑いを堪えている。
「あのぉ~。どちらさんでしょうか?」
カウンターに座っていた長髪の女性は確かに地球人の見た目をしていた。清楚な黒髪の女性で何となくだが自分と同じ日本人だと解った。
黒髪の女はマサヨシを見ると抱き着いて泣き始めた。
「ごめんなさい!マサヨシ!」
「え?」
「私、貴方に酷い事しちゃって・・・」
「ごめん、誰?」
「私はオンブル・・・」
「えええええ!!どういうことー?」
ヒジリが待ってましたとばかりに立ち上がって二人に近づく。
「私が説明しよう。彼女は確かにオンブルだ。じゃあなぜ地球人の姿をしているかと思っているのだろう?彼女は愛しい人と同種族になるアイテムを使ったのだよ」
「でも、オンブルちゃんは俺の事好きじゃなくなったんじゃ・・・?」
「それがだな、時間が経つにつれて君の事をどんどんと思い出したそうなんだ。つまりこの世界のオンブルが別世界のオンブルの記憶に打ち勝ったという事だ」
オンブルはもう一度マサヨシに抱き着いた。ぎゅっと抱きしめてくるので程よい大きさの胸がプニプニと当たる。
「ごめんなさい、マサヨシ。私、村を抜け出してきたわ。貴方と同じ種族になったのも貴方に私の気持ちを解って欲しかったからなの!」
「じゃあ村からアイテムを盗んで出てきたのかい?」
「ううん、アイテムはムロさんが村の中で一週間滞在して私の為に手に入れてくれたの」
「ああ、そうか。村での一週間は外の世界の一日だもんな。だから昨日の今日で来たんだ」
「うん、とにかくマサヨシに会いたくて。会って謝りたかった。例え許してくれなくても何度でも謝ろうと思ったの」
「ムロに連れて来てもらったんだろう?お礼を言わなくちゃ」
マサヨシは酒場をキョロキョロするがムロの姿は見当たらない。
「ムロならお礼を言われるのは照れくさいからといってバートラに帰って行ったぞ?」
ヒジリがそういうとウメボシがうんうんと頷く。
「優しくて控えめ。なんて素晴らしい好人物なんでしょうか、ムロ様は」
「あいつぅ・・・」
マサヨシは鼻の下を擦ってヘヘッと笑う。想像の中のムロはニッコリと笑ってサムアップしていた。
ヒジリは抱き合う二人を見て微笑み、頷くと広い酒場の全員に向かって声を挙げた。
「聞いてくれたまえ、諸君。今日、ここに素晴らしいカップルが誕生した。召喚士マサヨシと元影人のオンブル!私の星では廃れて無くなり、この星でもそういった習慣がない事は知っているが、今日この場を二人の結婚式会場とする。結婚式とは愛し合って一生を共にする男女を祝福する儀式の事だ。このカップルを祝福してくれる者の飲食代は私が払う!好きなだけ飲み食いするがいい!」
「ひゃぁ!なんだかわかんねぇが!めでてぇって事だよな?ここはヒジリ大先生に甘えて存分に飲み食いしようや!」
スカーが調子に乗ってグビグビとエールを飲む。若い砦の戦士達も先輩に負けじと酒をあおりだした。
「マサヨシ、結婚指輪のような物は持っているかな?確か、結婚式で指輪を交換するはずだった気がするが」
「そうだけど・・・。あ!俺、さっき雷竜から貰った指輪があるわ!」
オンブルは恥ずかしそうにして人差し指同士をツンツンしている。
「あの、私は何も持って無くて・・・」
ガハハとカウンター向こうでヘカティニスが笑った。
「だったら、ほだ。これを受け取れ」
明らかに今しがた強引にデザートフォークを曲げて輪っかにして作った指輪をヘカティニスはオンブルに渡した。
「マサヨシみたいなもんには、そでで十分だど」
「ああ、俺はそれでいい!こんな記念になる指輪は他にないでつよ!ありがとう、ヘカちゃん」
「いいってことよ」
ウメボシがマサヨシとオンブルの間に浮いた。特別に良い声で場を仕切る。
「それでは指輪交換の後に誓いのキスを!」
「お、おう・・」
マサヨシがごくりと喉を鳴らし雷竜から貰った指輪をオンブルの指にはめた途端・・・。
「ぶもぉぉ!!」
オンブルは指輪の呪いでトロールになった。
「キューーーキュキュキュ!!」
ナンベルがそれを見て笑う。
「言い忘れていましたがその指輪、トロールリングですよぉ!驚異的な自然治癒能力と引き換えに姿がトロールになるんです!キュキュキュ!」
「全く・・・ナンベルは・・・」
ヒジリは呆れながら、トロールとなったオンブルの指輪に触れる。ヒジリが触れた途端、指輪は効力を失って唯の指輪となった。オンブルも元の姿に戻る。
「びっくりしたぁ!うふふ!」
オンブルは魔法の呪いでトロールになった事に驚いて笑っている。
「はぁぁぁ!!オンブルちゃん可愛い!」
マサヨシはオンブルにはめてもらう予定だったフォークの指輪を自分でつけると、オンブルの口にキスをした。
オンブルもマサヨシの首に手をまわしてキスを受け入れた。
酒場のあちこちから指笛や祝福の声が飛んだ。
マサヨシはその祝福に手を振って応える。
「ありがとう、皆!俺、一生オンブルちゃんを大事にします!そして、悲しみに沈む俺、さようなら!幸せの俺、ようこそ!」
グビっと片手に持った葡萄酒のグラスをあおると、マサヨシはフェアリーが何を言いたかったのかに気が付いた。
(そうか、この幸せが俺に訪れる事を彼女は言いたかったんだ。あの笑いは不吉な笑いじゃなくて微笑みだったんだな!)
こうしてマサヨシはオンブルと結ばれた。
二人を祝福する宴は翌朝まで続き、オーガの酒場の周辺は暫くお酒臭かった。
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