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聖騎士フリーダ (番外編)
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聖女と呼ばれた老婆は、煙管を咥えて火皿に小さな火種を入れると、スパスパと煙草を吸い始めた。
それからフランを下から上へ舐めるように見て、フンと鼻を鳴らす。
「聖騎士の試練? 私の認可が必要とは思えないけどね。フラン・サヴェリフェ。私が能力を引き出すまでもなく、あんたは見習いの壁を自分で突破して、勝手に聖騎士になってるよ」
「でもぉ聖女バーバ様。聖騎士の試練を受ける掟なんでしょ? 伝統文化ってやつ?」
「あんたは、あんたの信じる神を呼び出して、力を証明する必要もないね。すぐ隣にあんたの神がいるじゃないか。それにこれまでの戦いで、培った経験は下手なベテランより上だよ。成長の遅い聖騎士のあんたが、そのレベルになるまで、普通なら十年はかかるんだけどねぇ。一体何と戦ったんだい?」
「何って・・・。ねぇ? ヒジリ」
「うむ。フランの初めての本格的な戦いは、中等魔法学校でのインキュバス戦か。初戦でとんでもないレベルの敵と戦ったのだから、色んなものが覚醒していてもおかしくはないな」
「なに? インキュバス? そんなもん倒した程度じゃ、こうはならないよ!」
聖女は煙草の煙をヒジリやフランに吹きかけて嘘を戒めようとしたが、ウメボシがその煙をフォースシールドで遮る。
「有害な煙を子供に吹きかけるのは感心しません。あまり度が過ぎるようですと敵対行為、挑発行為と見なします。それに貴方は、もう少しマスターに感謝するべきですね。今この騎士修道会の教会で、煙草をくゆらせていられるのもマスターのお陰である事を、少しは自覚してください」
ウメボシの言葉を聞いて聖女はキョトンとした後、アッハッハと笑いだした。
「そうだった! あんたら神様とその使いだったんだわ。立場的には私の方が下だわな。煙を吹きかけてすまなかったよ」
おおよそ聖女には程遠い老女だなとヒジリは思いつつ、何も無い聖堂の床に腰を下ろそうとすると、ソファが現れた。
ウメボシが主を床に座らせたくないので、椅子のデータからソファを選択して具現化したのだ。
ヒジリはソファに座ると、フランを引き寄せて膝に座らせる。
フランはヒジリを見上げてからにっこりと笑い、膝の上で嬉しそうに足をブラブラとさせている。この席はいつもイグナかウメボシが座っているからだ。
異世界から帰って来て以降、特に自分に対して優しくなったヒジリを、フランは益々好きになっていた。
「たかがインキュバスと考えるかもしれないが、弟のインキュバスを贄として、この世界に現れたあのインキュバスはとにかく素早かった。私とヤイバとフランの三人がかりでないと、倒すのは無理だったかもしれない」
「へぇ、そんなに強かったのかい? ちょっと待っておくれよ・・・。ムムムム」
バーバは水晶に手をかざして何かを見ていた。
その透視は魔法によるものではないのだろうか? 聖女は魔法では見えないはずのヒジリの能力を見て驚く。
「普通の冒険者の実力を5としたら、フランはその倍の10はある。そして凡人の限界は15。なのに現人神様は50くらいあるね・・・。化け物・・・、いや神様だから当然か」
老婆はとんでもないものを見たという仕草で、目をぐるりと一回転させてから更に水晶を見る。
「現人神様の能力の数値は無茶苦茶だね。魔力は0。神様なのに信仰心は5。それ以外はオール18。装備を合わせると腕力と素早さ、頑丈さが26だよ。特殊能力がマナ遮断。全ての行動の成功率が七割以上という万能さ。まさに神だね」
「ほう。私の能力も、数値化して見れるのかね」
「まぁ一種の占いみたいなものだから、あまり真に受けないでおくれ。で聖騎士フランは魅力19で、それ以外がオール15という絵にかいたような聖騎士様だよ。あら! あんたエリート種だね!」
「え~私、やっぱりそうなんだ? でも姉妹の中でなんで私だけ?」
フランの問いにヒジリが答える。
「いや、寧ろフーリー一族のように、エリート種だけしか生まれてこない事の方が異常なのだよ。普通はノーマル種に混じって稀に生まれるものらしい」
二人の会話を無視して、バーバはフランの持つ情報の深堀りをする。
「特殊能力が光側種族に対する絶大な魅了効果。羨ましいねぇ。周りにいる者の能力を底上げする支援効果も、私以上じゃないか。私が死んだらあんたが聖女におなりよ」
「え~どうしようかなぁ~。聖女様って結婚できるのかしら?」
「一生独身だよ! 馬鹿タレ!」
これまで結婚に憧れた事があるのか、聖女は目をひん剥いて怒るので、フランは驚いてヒジリに抱き着いた。
「やだぁ~。私はヒジリと将来子作りしたいし~。それにもう私達って、結婚してるわよねぇ?」
「うむ」
「フン! いいご身分だね! あんたはまるで破戒の聖騎士フリーダのようだよ」
「だぁれ、それ?」
耐火魔法のかかった木の灰皿に、煙管を叩いて煙草の灰を落とすと、バーバは自分が座る椅子の近くの本棚から一冊の本を取り出してフランに渡した。
「なにこれ? 凄くボロボロじゃない。歴史的に価値があるものじゃないの? ページをめくったら破けそう。バーバ様が話の内容を教えてよぉ」
「私はこれでも、それなりに尊敬されている聖女なんけどねぇ。その私に語り部をやれというのかい? 仕方ないねぇ・・・。昔々あるところに・・・」
街道に破壊された馬車が転がっている。御者も馬もとっくに逃げ出してしまった。
シルビィに引き留められて結局、二日も泊まってしまったその帰りである。
「今生の別れになるやもしれぬ。タスネ殿よ、今ここで自分語りをしてもいいであるか?」
「こ、このタイミングで? 駄目だよ!」
エポ村の手前で、タスネとダンティラスは、冒険者達と戦闘状態になっていた。六人組の冒険者パーティが三つ。系十八人が、タスネを庇うダンティラスを襲っている。
「でもどうしてダンティラスさんが吸魔鬼だってバレたんだろ? サングラスはずっと着けていたよね?」
ダンティラスは触手でタスネを覆いつつ、獅子人の戦士に触手を絡めた。
(む? おかしい。エナジードレインは効いているが、効果が薄いのである)
「彼らは最初から、吾輩の存在を知っていたのであろう」
「ってことは、ヒジリが言っていた刺客?」
「そうであろうな。【読心】を警戒してレジストされてしまうので判らないが・・・。前衛は全員神の加護を受けており、後衛は高位の司祭や聖職者が多い。普通、本職の司祭や僧侶が冒険者に混じって行動する事はないのである。つまり彼らはモティからの刺客」
司祭の光魔法が獣人を締め上げるダンティラスの触手を、千切り飛ばした。
「ぐわぁぁ! 生殖腕が!」
ダンティラスは生殖腕を使って獣人を縛り上げていた為、魔法で攻撃されて痛みで頭がくらくらとした。
「せ、生殖椀って・・・。つまりオチン・・・。そんな大事な腕、隠しておきなさいよ!」
タスネは顔を真っ赤にして、辺りを見渡した。
魔物使いは使役する魔物がいなければ、戦士以下の働きしかできない。少しでも戦力になる動物や魔物をさがしたが、いつも街道脇で土を掘っている鬼イノシシすらいなかった。
「んもう!」
大人数の攻撃は続く。光魔法がこれでもかと、ダンティラスとタスネに降り注いだ。
ダンティラスはタスネを抱きしめて庇い、反魔の魔法で防御しつつ反撃の機会を待っていた。迂闊に触手を敵に向ければ、魔法で破壊されていまうだろう。
そのうちにダンティラスの防御魔法も尽きてしまい、触手でドームを作って攻撃を防ぐようになった。
「ねぇ、ダンティラスさん。もしかして死にそうなの?」
徐々に息が荒くなるダンティラスを、タスネは心配して涙目になる。
「流石の吾輩も厳しいものがあるな。彼らを殺さずに追い返すのは・・・。【闇の加護】!」
神の加護を相殺させる黒い太陽(本来は闇魔法の効果を高める場を作り出す魔法)を上空に飛ばして、ダンティラスは更に機会を窺っている。
「ヒジリとの約束なんて守らなくていいよ。倒せるなら倒して! 命令なんかよりも自分の命の方が大事でしょ!」
「それは断るのである。吾輩を偏見なく受け入れてくれた、我が王の期待を裏切る事はできない」
「でも!」
「心配ないのである。もう準備は整った・・・」
雨あられのように降り注ぐ魔法や戦士たちの攻撃を、触手で作ったドームで防ぐのに精いっぱいなダンティラスに一体何の準備があるというのか。
「ねぇ! 降参しようよ! きっと彼らは人質が欲しいんだわ! ダンティラスさんがここでズタボロになる必要なんてないの! アタシが捕まっても、きっとヒジリが助けてくれるから!」
ダンティラスがいつも着ている白のフリル付きシルクシャツにしがみ付いて、タスネは説得しようとしたが、急に攻撃が止み、外が静かになった。暫くしてから冒険者たちのうめき声が聞こえてくる。
「上手くいったのである。ゲップ・・・」
エナジードレインをした吸魔鬼はゲップをする。これは半吸魔鬼のファナとの戦いでもそうだった。ジュウゾの部下たちの能力を吸ったファナは、苦しそうにお腹を摩っていた。
ダンティラスが触手を解いてドームがなくなり、青い夏の空が見え、強い光と太陽の熱が肌を刺す。
街道には冒険者と聖職者たちが、体力や能力をダンティラスに吸われて転がっていた。
「でもどうやって・・・?」
タスネは不思議そうに彼らをよく観察すると、街道にボコボコと穴が開いている事に気が付いた。
「あ! 解った! 触手で地面を掘り進んだんだ!」
「うむ。人型種が浮く事はない。一応【軽量化】で浮けなくもないが、浮いたが最後コントロールが効かなくなって空の彼方に消える。この状況でそれをする者はいないであろう。だから足を狙った」
「それにもう傷が回復してる!」
「彼らから能力を吸いまくったのでな。フハハ!」
タスネは有名人図鑑で見たことのある、英雄レベルに匹敵しそうな聖職者がいる対吸魔鬼パーティに対して、ここまで始祖の吸魔鬼であるダンティラスが強いとは思わなかった。
が、そう思うのも無理はない。いつも近くにいるヒジリが出鱈目に強すぎるのだ。相対的にダンティラスどころか、リツやヘカティニスですら弱く見えるが、本来は彼女らも化け物級の強さなのである。
なので吸魔鬼が本気を出せば、国の一つなら亡ぼせる事をすっかり忘れていた。
タスネは興奮して、まだ背中に収めていない触手を握りしめてぶんぶんと振る。
「すごーーい! ダンティラスさん、強い!」
「タ、タスネ殿、それは生殖腕なのである」
「えっ!! あほばかーー! オチン・・大事な部分なんだからしまっときなさいよ! ヘンタイ!」
仕舞おうとしたらタスネ殿が握ったのであろう、と心の中で文句を言いつつも、ダンティラスは恥ずかしそうにして髭を捩じり気分を落ち着かせた。
騒ぎを聞きつけた自警団がエポ村から駆けつけてくる。まるで戦闘が終わるのを待っていたかのようなタイミングだ。
「何事か!」
村の門番のウォルフとワルフの傭兵親子が、真っ先に駆けつけて来て現場を見て驚く。
「ここで一体なにが? 子爵殿」
「いきなり襲われたのよ。村の自警団じゃ手に負えない相手だから、シルビィ様に報告しておいてくれる? 裏側か隊員が引き取りにくるはずよ」
「はっ!」
自警団のメンバーは取りあえず冒険者たちを縛り上げ始めた。その中にホッフの姿はない。
タスネは自警団の地走り族を呼び止めて聞いた。
「ね、ねえ。ホッフ団長は?」
「団長ですか? 彼なら結婚式の準備で忙しいと思いますけど・・・」
「結婚式!? ホッフは誰かと結婚するの?」
「ええ・・・。知らなかったのですか? 子爵様の住んでいらした家に引っ越してきた一家の親戚と結婚しましたよ?」
「えぇぇぇぇぇえええ!!」
タスネは膝から崩れ落ちる。
「そんなぁ・・・」
暫く会わない内にこれである。
もう少し自分が好意を示していればホッフは気が付いてくれたかもしれないのに、という気持ちで頭がいっぱいになった。
ショックを受けて動かなくなった子爵を、自警団のメンバーは気の毒そうに見た後、モティからの刺客を村の地下牢まで連れて行った。
ダンティラスは戸惑う。こういった時、なんと声を掛ければいいのかと。
取りあえず、固まったタスネを触手で担いで街道から離れる。少し進んだ先にある石像がポツンポツンとある草原に彼女を降ろして、座らせるとダンティラスも横に座った。
「タスネ殿はまだ若いのだから・・・」
月並みな言葉しか出ない。若いのだからまだまだ機会はあるし、新しい男を探せばいい、などと言うのは軽薄だろうか。励ましが逆効果であったらどうしようかと、ダンティラスは言葉を止めて悩む。
「吾輩も昔、失恋をした事があるのである」
果たして自分の経験談など、今の彼女が聞いてくれるだろうか。
タスネは自分の膝に顔を埋めて何も言わない。
それでも慰めになればと、ダンティラスは話を続けた。
「吾輩の片思いした相手は神話時代が終わり、まだまだ世界が混とんとする時代の中に生きる、地走り族の聖騎士だった。今のような貴族社会にもなっておらず、大らかな時代と言えばそうだが、無法者も多い時代でもあった。その中にあって、女の身一つで各地を回り人助けをしていた彼女は、容姿がタスネ殿によく似ていたのである」
自分に似ている聖騎士の話をされて、タスネは少し顔を上げた。
「私は自分の事で精いっぱいだから、その人とは真逆だね。人助けとかあんまりしたことないし。だからホッフを振り向かせる事ができなかったんだ・・・」
地雷を踏んだか? とダンティラスは焦ったが、動揺しまいと髭を扱き話を続けた。
「例え彼が極悪人であろうと、彼は吾輩に助けを求めたのである。このままむざむざと、目の前で死なすわけにはいかない。改心の機会を与えてやってはくれぬだろうか? 聖騎士殿」
ダンティラスは長い間、この地を支配してきた吸魔鬼が、自分に助けを求めてきたので放ってはおけなかった。
「その機会なら長い時の中で、幾度となくあったはずだぞ、吸魔鬼。お前もここで死ね」
タスネに似た聖騎士は、厳しい表情で剣を構える。
たまたま旅の途中で立ち寄った王宮で、まさか吸魔鬼退治の現場に遭遇するとはダンティラスも思っていなかった。
傍観者として霧化して見守るつもりだったが、劣勢になった王宮の吸魔鬼は、しっかりと自分のいる方を見つめて助けを求めてきたのである。
お人好しの性格が災いし、今こうして聖騎士と対峙する羽目となった。
「しかし・・・」
「お前には私の周りの者が見えないのか? 彼らは好き好んで息を止めて、床を舐めていると思うか?」
聖騎士は、吸魔鬼に命を吸われて死に絶えた仲間の事を言っているのだ。
「彼らは私に命と希望を託して死んでいった。その想いを無駄にしろと、貴様は言うのか!」
「そんなつもりはない。しかしもう一度、彼にチャンスを与えてやってくれないか?」
「見逃がせと?」
「うむ。代わりに吾輩が人質となろう。もし彼が改心せず悪さをするようなら、吾輩もお主に力を貸す」
聖騎士は笑う。吸魔鬼の言葉など信用できるものかと。
「信用できぬのなら、吾輩に聖なる呪いをかけるといい。そなたの信じる神は?」
「運命の神カオジフだ。いいのか? 私は神の影ではなく、実際にカオジフを召喚し具現化させた事があるのだぞ? 聖なる呪いの誓約を破れば貴様は瞬時に消えて死ぬが? 貴様、名はなんという? 私は聖騎士フリーダだ!」
「死など恐れぬ。我が名は始祖の吸魔鬼ダンティラス! 吾輩はこの同胞の改心を信じる。誓おう。彼が改心せずに悪さをするようなら、お主に一生従い共に戦うと」
「始祖! 始祖の吸魔鬼だと? ハハハ! 流石は私が崇拝する運命の神! 奇妙な出会いをもたらしてくれる! いいだろう。では運命の神の名の下において、この誓約は結ばれた! この吸魔鬼がお前を裏切り、約束を破った瞬間、お前は私の下僕となるのだ、いいな? ダンティラス!」
ダンティラスの話し方が上手いのか、いつの間にかタスネは顔を上げて、夢中になって話を聞いていた。
「そ、それで? 大体は想像つくけど! きっとその吸魔鬼は約束を破って裏切ったんだよね?」
「展開的にはその通りである。実際のところ、彼は裏切ってはいないのであるが」
「やっぱりね~。ダンティラスさんはお人好し過ぎるんだよ。で、悪い吸魔鬼は倒すしかなかったってわけだ?」
「うむ」
吸魔鬼を救ってから一週間後。
王宮にて、国を明け渡す事にした吸魔鬼が、樹族や地走り族に政の引継ぎをしている最中、彼は突然監視中のフリーダに襲い掛かったのだ。
「ハハハ! 見た事か! ダンティラス! お前の同胞はあっさりとお前を裏切った! お前に助けてもらったこの場所で! この吸魔鬼は襲い掛かってきたのだ」
フリーダは笑いながら、吸魔鬼の触手を盾で往なしている。
眉間に皺を寄せてダンティラスは不本意ながら、といった感じで触手を出してフリーダの前に立ち、彼女を庇った。
「残念である。しかし一つ言わせて頂こう。彼は裏切ってはいない」
ダンティラスの触手が、吸魔鬼を貫くと核を破壊した。その貫いた核をフリーダに見せる。
「核が濁っておろう。これは彼が正気を失ったという事である。第三世代の彼は、精神が薄弱で長い人生に耐えられなかったのだ」
「第三世代? 何のことだ! まぁそんな事はどうでもいい。これから貴様は私の下僕だ! 残念だったな!」
「どうでもいい事ではないのである。お主は彼を裏切り者呼ばわりをした。しかし吾輩は彼が裏切り者ではないと、彼の命で証明した。心の病でこうなったのだから、彼は吾輩を裏切ったわけではない。書物を見る限り、彼の治世も初期は恐怖による統治だったが、中期と後期には繁栄をもたらせてくれているのである。彼の横暴が目立つようになったのはここ十年だ。彼は十年前に狂気に侵されていた。確かに彼は酷い事をしたが、良い治世をした事実もある。それを無視して、彼をどうでもいいと言い捨てるのは、吾輩は納得がいかん。謝罪を求める」
「ふん、バカバカしい! 吸魔鬼の名誉など気にして何になる! 私は謝罪などしない。さぁ誓約通り・・・。なに?!」
フリーダはたじろぐ。誓約が発動していない。つまり運命の神は、始祖の吸魔鬼ダンティラスの言い分を認めたのだ。
「どういうことだ! 運命の神カオジフ!」
するとどこからか、反響音が効き過ぎた声が聞こえてくる。
―――うるさるささいっささいささいさいで・・・。しまったエコーが効きすぎたでヤンス。(カチッ!)これでよしと。煩いでヤンスね! フリーダ! 始祖の吸魔鬼の言い分が正しいでヤンスよ! フリーダを襲った吸魔鬼の暴走は病気によるもの。制約にあった自主的な裏切りではないでヤ―ンス。通信終わり!(ザマァミロ)―――
「くそったれめ! カオジフの腐れ(ピーーー!!)」
聖職者に似つかわしくない言葉を吐いてフリーダは兜脱ぎ、地面に叩きつけた。その勢いで長い黒髪のポニーテールが自分の顔を叩く。予想以上に痛かったのか、フリーダは顔を押さえて蹲っている。
「えぇい! こんな時にも神の恩恵は要らん! 自分の顔に当たるポニーテールの攻撃でさえ、クリティカルヒットとはな!」
運命の神の信仰者はその恩恵として確率に優遇される。富くじを買えば少し当たりやすくなるし、色んな成功率も優遇されるので、攻撃もクリティカルヒットになりやすい。
謝罪を待って髭を捩じり、見下ろすダンティラスを睨むとフリーダは立ち上がった。
「私は謝らん! たとえ神がお前を味方してもな!」
「ならば、吾輩はお主が謝るまで付き纏おうぞ。お主が謝るその時まで! 死を遠ざけてみせる!」
「勝手にしろ!」
これまでの話に興奮して立ち上がったタスネは、地団駄を踏む。
「キィーー! 嫌な奴じゃん! フリーダ! とても聖騎士とは思えない!」
ダンティラスはタスネを落ち着かそうとして、腰の水筒を渡した。
「あ、ありがと! 丁度喉がカラッカラで・・・」
何度か暗殺者を退けたダンティラスに、ヒジリから褒美として渡された魔法瓶の水は、夏の暑い空気の中でも冷たさを保っていた。
「うわぁ~! 冷たくて美味しいレモン水! 頭がキーンとする!」
タスネは水筒を返すと、自分がダンティラスの触手でできた傘の下にいる事に気が付いた。
「気を遣わせちゃってごめんね、木陰に行こうよ。暑かったでしょ? ダンティラスさんって、ほんと優しいよね」
「吾輩の優しさなど、海のような包容力のあるヒジリ陛下に比べたら、水溜まりみたいなものである」
「えぇー? そうかな~? えぇ~?」
タスネ的には、時々セクハラや意地悪をしてくるヒジリよりも、ダンティラスの方が断然紳士的で優しいと感じる。
「話が終わるまでに、街道を馬車が通らなければ歩いて帰ろうか、タスネ殿。愛しい人の結婚式の準備を見ながら、馬車を捕まえるのは嫌であろう?」
「う、うん・・・。ごめんね。ほんと色々気を遣わせちゃって・・・」
(しまった! 片思いの人を思い出させてしまったのである! 誤魔化さねば!)
「話の続きを、聞きたいであるか?」
「うん! 是非!」
「では・・・。それから吾輩はフリーダに纏わりついて、謝罪を待っていたのだが彼女も中々頑固でな。謝罪がないまま何年も行動を共にする内に、互いに友情のようなものが芽生えてきたのである。いや、友情とは違うか。向こうは友情、こちらは愛情であるな」
「ええええ! 凄く嫌な女なのに好きになっちゃったの? なんで? ねぇ! なんで?」
「言葉や態度は人の心を映したものというが、彼女はそれが当てはまらなかった。やはり根っこは優しくて、誰かを助けたいと常々思って行動していたのである。彼女への感心が尊敬に変わり、そこから恋心が芽生えても不思議ではなかろう? しかし吾輩は樹族ベースの吸魔鬼。向こうは地走り族。しかも寿命も違う。吾輩はきっぱりとその恋を捨て、彼女の生涯を見守る事にしたのだ」
「本当はフリーダもダンティラスさんの事を好きだったんじゃないの?」
「さぁ、それはどうだろうな。当時はちゃんと【読心】を習得していなかったので判らないのである。フリーダも同族の恋人を作り、結婚することとなったが、結婚式の前夜、彼女は泣きながら吾輩に抱き着いてきたのである。結局、泣くばかりで何も言ってはくれなかった。もしあの時、彼女がどこか遠くに行こうと言ったならば、吾輩は迷うことなく、彼女を連れ去っていたが。しかし、その言葉はなかったのである・・・」
「ダンティラスさんも、女心が判らない人だね・・・。フリーダはダンティラスさんが連れ去ってくれるのを期待していたんだよ・・・」
「彼女は聖騎士で家柄も良かった。名誉も地位も捨てて、吸魔鬼と一緒になるなんて当時の吾輩は思っていなかったのである。もしタスネ殿がフリーダと同じ立場だったら、告白していたであるか?」
「・・・。世間体とか親の心情を考えたら、それは無理かもね」
「であろう? フリーダは結局、家柄も容姿も良い男と結婚した。我輩はフリーダの子供達の面倒を見たり、人助けを手伝ったりして過ごしたが、とうとう彼女の最期を看取る日が来たのである。あの素晴らしき日々はあっという間だった・・・」
「え? フリーダは聖騎士の務めの途中で力尽きたの?」
「いや、逆である。寿命を全うした。吾輩の感覚ではあっという間だったというだけで。彼女は本当に幸せそうな顔をして眠って逝った。多くの孫や、ひ孫に囲まれてな」
「そっか。でも謝罪は?」
「ない。あの世に持って行ってしまったのである」
「え~。あ、でもその気持ち解るな・・・。謝ったらダンティラスさんとの縁が切れちゃう気がするもん。永遠に生きるダンティラスさんと縁を切らない為には、そうする他なかったんだね」
「そうかもしれないのである」
「で、そのフリーダの一族は、その後どうなったの?」
「時の流れは残酷でな。色んな理由で一族はその場所から去り、結局吾輩一人だけがフリーダの墓を守る事になった。が、吾輩は吸魔鬼。村人が世代交代を重ねる内に、吾輩を怖がる者も出てきた。しまいには吾輩がいない間にフリーダの墓は移されてしまったのである」
「酷い・・・」
「うむ、酷いオチであろう? だが、救いはある」
「ほんと? どんな救い?」
「アルケディア滞在中に地下図書館で調べたのだが、一族の一部はエポ村に住み着いたらしい。一族は代々貧乏な家系だったらしく、あまり良い人生は送っていなかったそうな。そして吾輩は今、視線の先にフリーダの墓を見ているのである」
「え! どこ!」
「草原の草むらの中。ほらあそこに男女の地走り族の像があろう? その後ろである」
ダンティラスが指さした先には自分の両親が立っていた。数年前にバジリスクの目を見て石化してしまった両親。
「待って! あれはうちのお墓だよ! 親が石化しちゃったから、お墓の前まで苦労して持ってきたんだけど! ってことは!」
「そう。サヴェリフェ姉妹は、聖騎士フリーダの末裔なのである」
「ええええ! じゃあ私、ご先祖様を嫌な女呼ばわりしてたの? あのお墓の古い文字も、全然読めなかったからご先祖様が誰かも判らなかった! まさか私たちがフリーダの子孫だったなんて・・・」
「タスネ殿の信仰する神は?」
「ヒジリだと思うでしょ? 実は運命の神カオジフだよ!」
「ではこの出会いは運命の神の巡り会わせである。お帰り、フリーダ」
「フリーダじゃないけど・・・。ただいま、ダンティラスさん!」
笑顔で答えるタスネの顔は、フリーダと重なる。
(フリーダ。お主の描いた命の軌跡は、長い年月を経てもまだ消えてはおらぬ。いつかこのタスネ殿も、お主の様な道筋を残し、命を紡いでいくだろう。吾輩は何度でも見守ろう。お主の血族の進む先を)
山から下りてくる涼しい風に揺れる草原の中の墓に、ダンティラスはフリーダを見たような気がした。
腕を組んでそっぽを向く彼女は幻と消え、永遠の時を生きる吸魔鬼の胸に、懐かしさと幸せな時間をもたらした。
それからフランを下から上へ舐めるように見て、フンと鼻を鳴らす。
「聖騎士の試練? 私の認可が必要とは思えないけどね。フラン・サヴェリフェ。私が能力を引き出すまでもなく、あんたは見習いの壁を自分で突破して、勝手に聖騎士になってるよ」
「でもぉ聖女バーバ様。聖騎士の試練を受ける掟なんでしょ? 伝統文化ってやつ?」
「あんたは、あんたの信じる神を呼び出して、力を証明する必要もないね。すぐ隣にあんたの神がいるじゃないか。それにこれまでの戦いで、培った経験は下手なベテランより上だよ。成長の遅い聖騎士のあんたが、そのレベルになるまで、普通なら十年はかかるんだけどねぇ。一体何と戦ったんだい?」
「何って・・・。ねぇ? ヒジリ」
「うむ。フランの初めての本格的な戦いは、中等魔法学校でのインキュバス戦か。初戦でとんでもないレベルの敵と戦ったのだから、色んなものが覚醒していてもおかしくはないな」
「なに? インキュバス? そんなもん倒した程度じゃ、こうはならないよ!」
聖女は煙草の煙をヒジリやフランに吹きかけて嘘を戒めようとしたが、ウメボシがその煙をフォースシールドで遮る。
「有害な煙を子供に吹きかけるのは感心しません。あまり度が過ぎるようですと敵対行為、挑発行為と見なします。それに貴方は、もう少しマスターに感謝するべきですね。今この騎士修道会の教会で、煙草をくゆらせていられるのもマスターのお陰である事を、少しは自覚してください」
ウメボシの言葉を聞いて聖女はキョトンとした後、アッハッハと笑いだした。
「そうだった! あんたら神様とその使いだったんだわ。立場的には私の方が下だわな。煙を吹きかけてすまなかったよ」
おおよそ聖女には程遠い老女だなとヒジリは思いつつ、何も無い聖堂の床に腰を下ろそうとすると、ソファが現れた。
ウメボシが主を床に座らせたくないので、椅子のデータからソファを選択して具現化したのだ。
ヒジリはソファに座ると、フランを引き寄せて膝に座らせる。
フランはヒジリを見上げてからにっこりと笑い、膝の上で嬉しそうに足をブラブラとさせている。この席はいつもイグナかウメボシが座っているからだ。
異世界から帰って来て以降、特に自分に対して優しくなったヒジリを、フランは益々好きになっていた。
「たかがインキュバスと考えるかもしれないが、弟のインキュバスを贄として、この世界に現れたあのインキュバスはとにかく素早かった。私とヤイバとフランの三人がかりでないと、倒すのは無理だったかもしれない」
「へぇ、そんなに強かったのかい? ちょっと待っておくれよ・・・。ムムムム」
バーバは水晶に手をかざして何かを見ていた。
その透視は魔法によるものではないのだろうか? 聖女は魔法では見えないはずのヒジリの能力を見て驚く。
「普通の冒険者の実力を5としたら、フランはその倍の10はある。そして凡人の限界は15。なのに現人神様は50くらいあるね・・・。化け物・・・、いや神様だから当然か」
老婆はとんでもないものを見たという仕草で、目をぐるりと一回転させてから更に水晶を見る。
「現人神様の能力の数値は無茶苦茶だね。魔力は0。神様なのに信仰心は5。それ以外はオール18。装備を合わせると腕力と素早さ、頑丈さが26だよ。特殊能力がマナ遮断。全ての行動の成功率が七割以上という万能さ。まさに神だね」
「ほう。私の能力も、数値化して見れるのかね」
「まぁ一種の占いみたいなものだから、あまり真に受けないでおくれ。で聖騎士フランは魅力19で、それ以外がオール15という絵にかいたような聖騎士様だよ。あら! あんたエリート種だね!」
「え~私、やっぱりそうなんだ? でも姉妹の中でなんで私だけ?」
フランの問いにヒジリが答える。
「いや、寧ろフーリー一族のように、エリート種だけしか生まれてこない事の方が異常なのだよ。普通はノーマル種に混じって稀に生まれるものらしい」
二人の会話を無視して、バーバはフランの持つ情報の深堀りをする。
「特殊能力が光側種族に対する絶大な魅了効果。羨ましいねぇ。周りにいる者の能力を底上げする支援効果も、私以上じゃないか。私が死んだらあんたが聖女におなりよ」
「え~どうしようかなぁ~。聖女様って結婚できるのかしら?」
「一生独身だよ! 馬鹿タレ!」
これまで結婚に憧れた事があるのか、聖女は目をひん剥いて怒るので、フランは驚いてヒジリに抱き着いた。
「やだぁ~。私はヒジリと将来子作りしたいし~。それにもう私達って、結婚してるわよねぇ?」
「うむ」
「フン! いいご身分だね! あんたはまるで破戒の聖騎士フリーダのようだよ」
「だぁれ、それ?」
耐火魔法のかかった木の灰皿に、煙管を叩いて煙草の灰を落とすと、バーバは自分が座る椅子の近くの本棚から一冊の本を取り出してフランに渡した。
「なにこれ? 凄くボロボロじゃない。歴史的に価値があるものじゃないの? ページをめくったら破けそう。バーバ様が話の内容を教えてよぉ」
「私はこれでも、それなりに尊敬されている聖女なんけどねぇ。その私に語り部をやれというのかい? 仕方ないねぇ・・・。昔々あるところに・・・」
街道に破壊された馬車が転がっている。御者も馬もとっくに逃げ出してしまった。
シルビィに引き留められて結局、二日も泊まってしまったその帰りである。
「今生の別れになるやもしれぬ。タスネ殿よ、今ここで自分語りをしてもいいであるか?」
「こ、このタイミングで? 駄目だよ!」
エポ村の手前で、タスネとダンティラスは、冒険者達と戦闘状態になっていた。六人組の冒険者パーティが三つ。系十八人が、タスネを庇うダンティラスを襲っている。
「でもどうしてダンティラスさんが吸魔鬼だってバレたんだろ? サングラスはずっと着けていたよね?」
ダンティラスは触手でタスネを覆いつつ、獅子人の戦士に触手を絡めた。
(む? おかしい。エナジードレインは効いているが、効果が薄いのである)
「彼らは最初から、吾輩の存在を知っていたのであろう」
「ってことは、ヒジリが言っていた刺客?」
「そうであろうな。【読心】を警戒してレジストされてしまうので判らないが・・・。前衛は全員神の加護を受けており、後衛は高位の司祭や聖職者が多い。普通、本職の司祭や僧侶が冒険者に混じって行動する事はないのである。つまり彼らはモティからの刺客」
司祭の光魔法が獣人を締め上げるダンティラスの触手を、千切り飛ばした。
「ぐわぁぁ! 生殖腕が!」
ダンティラスは生殖腕を使って獣人を縛り上げていた為、魔法で攻撃されて痛みで頭がくらくらとした。
「せ、生殖椀って・・・。つまりオチン・・・。そんな大事な腕、隠しておきなさいよ!」
タスネは顔を真っ赤にして、辺りを見渡した。
魔物使いは使役する魔物がいなければ、戦士以下の働きしかできない。少しでも戦力になる動物や魔物をさがしたが、いつも街道脇で土を掘っている鬼イノシシすらいなかった。
「んもう!」
大人数の攻撃は続く。光魔法がこれでもかと、ダンティラスとタスネに降り注いだ。
ダンティラスはタスネを抱きしめて庇い、反魔の魔法で防御しつつ反撃の機会を待っていた。迂闊に触手を敵に向ければ、魔法で破壊されていまうだろう。
そのうちにダンティラスの防御魔法も尽きてしまい、触手でドームを作って攻撃を防ぐようになった。
「ねぇ、ダンティラスさん。もしかして死にそうなの?」
徐々に息が荒くなるダンティラスを、タスネは心配して涙目になる。
「流石の吾輩も厳しいものがあるな。彼らを殺さずに追い返すのは・・・。【闇の加護】!」
神の加護を相殺させる黒い太陽(本来は闇魔法の効果を高める場を作り出す魔法)を上空に飛ばして、ダンティラスは更に機会を窺っている。
「ヒジリとの約束なんて守らなくていいよ。倒せるなら倒して! 命令なんかよりも自分の命の方が大事でしょ!」
「それは断るのである。吾輩を偏見なく受け入れてくれた、我が王の期待を裏切る事はできない」
「でも!」
「心配ないのである。もう準備は整った・・・」
雨あられのように降り注ぐ魔法や戦士たちの攻撃を、触手で作ったドームで防ぐのに精いっぱいなダンティラスに一体何の準備があるというのか。
「ねぇ! 降参しようよ! きっと彼らは人質が欲しいんだわ! ダンティラスさんがここでズタボロになる必要なんてないの! アタシが捕まっても、きっとヒジリが助けてくれるから!」
ダンティラスがいつも着ている白のフリル付きシルクシャツにしがみ付いて、タスネは説得しようとしたが、急に攻撃が止み、外が静かになった。暫くしてから冒険者たちのうめき声が聞こえてくる。
「上手くいったのである。ゲップ・・・」
エナジードレインをした吸魔鬼はゲップをする。これは半吸魔鬼のファナとの戦いでもそうだった。ジュウゾの部下たちの能力を吸ったファナは、苦しそうにお腹を摩っていた。
ダンティラスが触手を解いてドームがなくなり、青い夏の空が見え、強い光と太陽の熱が肌を刺す。
街道には冒険者と聖職者たちが、体力や能力をダンティラスに吸われて転がっていた。
「でもどうやって・・・?」
タスネは不思議そうに彼らをよく観察すると、街道にボコボコと穴が開いている事に気が付いた。
「あ! 解った! 触手で地面を掘り進んだんだ!」
「うむ。人型種が浮く事はない。一応【軽量化】で浮けなくもないが、浮いたが最後コントロールが効かなくなって空の彼方に消える。この状況でそれをする者はいないであろう。だから足を狙った」
「それにもう傷が回復してる!」
「彼らから能力を吸いまくったのでな。フハハ!」
タスネは有名人図鑑で見たことのある、英雄レベルに匹敵しそうな聖職者がいる対吸魔鬼パーティに対して、ここまで始祖の吸魔鬼であるダンティラスが強いとは思わなかった。
が、そう思うのも無理はない。いつも近くにいるヒジリが出鱈目に強すぎるのだ。相対的にダンティラスどころか、リツやヘカティニスですら弱く見えるが、本来は彼女らも化け物級の強さなのである。
なので吸魔鬼が本気を出せば、国の一つなら亡ぼせる事をすっかり忘れていた。
タスネは興奮して、まだ背中に収めていない触手を握りしめてぶんぶんと振る。
「すごーーい! ダンティラスさん、強い!」
「タ、タスネ殿、それは生殖腕なのである」
「えっ!! あほばかーー! オチン・・大事な部分なんだからしまっときなさいよ! ヘンタイ!」
仕舞おうとしたらタスネ殿が握ったのであろう、と心の中で文句を言いつつも、ダンティラスは恥ずかしそうにして髭を捩じり気分を落ち着かせた。
騒ぎを聞きつけた自警団がエポ村から駆けつけてくる。まるで戦闘が終わるのを待っていたかのようなタイミングだ。
「何事か!」
村の門番のウォルフとワルフの傭兵親子が、真っ先に駆けつけて来て現場を見て驚く。
「ここで一体なにが? 子爵殿」
「いきなり襲われたのよ。村の自警団じゃ手に負えない相手だから、シルビィ様に報告しておいてくれる? 裏側か隊員が引き取りにくるはずよ」
「はっ!」
自警団のメンバーは取りあえず冒険者たちを縛り上げ始めた。その中にホッフの姿はない。
タスネは自警団の地走り族を呼び止めて聞いた。
「ね、ねえ。ホッフ団長は?」
「団長ですか? 彼なら結婚式の準備で忙しいと思いますけど・・・」
「結婚式!? ホッフは誰かと結婚するの?」
「ええ・・・。知らなかったのですか? 子爵様の住んでいらした家に引っ越してきた一家の親戚と結婚しましたよ?」
「えぇぇぇぇぇえええ!!」
タスネは膝から崩れ落ちる。
「そんなぁ・・・」
暫く会わない内にこれである。
もう少し自分が好意を示していればホッフは気が付いてくれたかもしれないのに、という気持ちで頭がいっぱいになった。
ショックを受けて動かなくなった子爵を、自警団のメンバーは気の毒そうに見た後、モティからの刺客を村の地下牢まで連れて行った。
ダンティラスは戸惑う。こういった時、なんと声を掛ければいいのかと。
取りあえず、固まったタスネを触手で担いで街道から離れる。少し進んだ先にある石像がポツンポツンとある草原に彼女を降ろして、座らせるとダンティラスも横に座った。
「タスネ殿はまだ若いのだから・・・」
月並みな言葉しか出ない。若いのだからまだまだ機会はあるし、新しい男を探せばいい、などと言うのは軽薄だろうか。励ましが逆効果であったらどうしようかと、ダンティラスは言葉を止めて悩む。
「吾輩も昔、失恋をした事があるのである」
果たして自分の経験談など、今の彼女が聞いてくれるだろうか。
タスネは自分の膝に顔を埋めて何も言わない。
それでも慰めになればと、ダンティラスは話を続けた。
「吾輩の片思いした相手は神話時代が終わり、まだまだ世界が混とんとする時代の中に生きる、地走り族の聖騎士だった。今のような貴族社会にもなっておらず、大らかな時代と言えばそうだが、無法者も多い時代でもあった。その中にあって、女の身一つで各地を回り人助けをしていた彼女は、容姿がタスネ殿によく似ていたのである」
自分に似ている聖騎士の話をされて、タスネは少し顔を上げた。
「私は自分の事で精いっぱいだから、その人とは真逆だね。人助けとかあんまりしたことないし。だからホッフを振り向かせる事ができなかったんだ・・・」
地雷を踏んだか? とダンティラスは焦ったが、動揺しまいと髭を扱き話を続けた。
「例え彼が極悪人であろうと、彼は吾輩に助けを求めたのである。このままむざむざと、目の前で死なすわけにはいかない。改心の機会を与えてやってはくれぬだろうか? 聖騎士殿」
ダンティラスは長い間、この地を支配してきた吸魔鬼が、自分に助けを求めてきたので放ってはおけなかった。
「その機会なら長い時の中で、幾度となくあったはずだぞ、吸魔鬼。お前もここで死ね」
タスネに似た聖騎士は、厳しい表情で剣を構える。
たまたま旅の途中で立ち寄った王宮で、まさか吸魔鬼退治の現場に遭遇するとはダンティラスも思っていなかった。
傍観者として霧化して見守るつもりだったが、劣勢になった王宮の吸魔鬼は、しっかりと自分のいる方を見つめて助けを求めてきたのである。
お人好しの性格が災いし、今こうして聖騎士と対峙する羽目となった。
「しかし・・・」
「お前には私の周りの者が見えないのか? 彼らは好き好んで息を止めて、床を舐めていると思うか?」
聖騎士は、吸魔鬼に命を吸われて死に絶えた仲間の事を言っているのだ。
「彼らは私に命と希望を託して死んでいった。その想いを無駄にしろと、貴様は言うのか!」
「そんなつもりはない。しかしもう一度、彼にチャンスを与えてやってくれないか?」
「見逃がせと?」
「うむ。代わりに吾輩が人質となろう。もし彼が改心せず悪さをするようなら、吾輩もお主に力を貸す」
聖騎士は笑う。吸魔鬼の言葉など信用できるものかと。
「信用できぬのなら、吾輩に聖なる呪いをかけるといい。そなたの信じる神は?」
「運命の神カオジフだ。いいのか? 私は神の影ではなく、実際にカオジフを召喚し具現化させた事があるのだぞ? 聖なる呪いの誓約を破れば貴様は瞬時に消えて死ぬが? 貴様、名はなんという? 私は聖騎士フリーダだ!」
「死など恐れぬ。我が名は始祖の吸魔鬼ダンティラス! 吾輩はこの同胞の改心を信じる。誓おう。彼が改心せずに悪さをするようなら、お主に一生従い共に戦うと」
「始祖! 始祖の吸魔鬼だと? ハハハ! 流石は私が崇拝する運命の神! 奇妙な出会いをもたらしてくれる! いいだろう。では運命の神の名の下において、この誓約は結ばれた! この吸魔鬼がお前を裏切り、約束を破った瞬間、お前は私の下僕となるのだ、いいな? ダンティラス!」
ダンティラスの話し方が上手いのか、いつの間にかタスネは顔を上げて、夢中になって話を聞いていた。
「そ、それで? 大体は想像つくけど! きっとその吸魔鬼は約束を破って裏切ったんだよね?」
「展開的にはその通りである。実際のところ、彼は裏切ってはいないのであるが」
「やっぱりね~。ダンティラスさんはお人好し過ぎるんだよ。で、悪い吸魔鬼は倒すしかなかったってわけだ?」
「うむ」
吸魔鬼を救ってから一週間後。
王宮にて、国を明け渡す事にした吸魔鬼が、樹族や地走り族に政の引継ぎをしている最中、彼は突然監視中のフリーダに襲い掛かったのだ。
「ハハハ! 見た事か! ダンティラス! お前の同胞はあっさりとお前を裏切った! お前に助けてもらったこの場所で! この吸魔鬼は襲い掛かってきたのだ」
フリーダは笑いながら、吸魔鬼の触手を盾で往なしている。
眉間に皺を寄せてダンティラスは不本意ながら、といった感じで触手を出してフリーダの前に立ち、彼女を庇った。
「残念である。しかし一つ言わせて頂こう。彼は裏切ってはいない」
ダンティラスの触手が、吸魔鬼を貫くと核を破壊した。その貫いた核をフリーダに見せる。
「核が濁っておろう。これは彼が正気を失ったという事である。第三世代の彼は、精神が薄弱で長い人生に耐えられなかったのだ」
「第三世代? 何のことだ! まぁそんな事はどうでもいい。これから貴様は私の下僕だ! 残念だったな!」
「どうでもいい事ではないのである。お主は彼を裏切り者呼ばわりをした。しかし吾輩は彼が裏切り者ではないと、彼の命で証明した。心の病でこうなったのだから、彼は吾輩を裏切ったわけではない。書物を見る限り、彼の治世も初期は恐怖による統治だったが、中期と後期には繁栄をもたらせてくれているのである。彼の横暴が目立つようになったのはここ十年だ。彼は十年前に狂気に侵されていた。確かに彼は酷い事をしたが、良い治世をした事実もある。それを無視して、彼をどうでもいいと言い捨てるのは、吾輩は納得がいかん。謝罪を求める」
「ふん、バカバカしい! 吸魔鬼の名誉など気にして何になる! 私は謝罪などしない。さぁ誓約通り・・・。なに?!」
フリーダはたじろぐ。誓約が発動していない。つまり運命の神は、始祖の吸魔鬼ダンティラスの言い分を認めたのだ。
「どういうことだ! 運命の神カオジフ!」
するとどこからか、反響音が効き過ぎた声が聞こえてくる。
―――うるさるささいっささいささいさいで・・・。しまったエコーが効きすぎたでヤンス。(カチッ!)これでよしと。煩いでヤンスね! フリーダ! 始祖の吸魔鬼の言い分が正しいでヤンスよ! フリーダを襲った吸魔鬼の暴走は病気によるもの。制約にあった自主的な裏切りではないでヤ―ンス。通信終わり!(ザマァミロ)―――
「くそったれめ! カオジフの腐れ(ピーーー!!)」
聖職者に似つかわしくない言葉を吐いてフリーダは兜脱ぎ、地面に叩きつけた。その勢いで長い黒髪のポニーテールが自分の顔を叩く。予想以上に痛かったのか、フリーダは顔を押さえて蹲っている。
「えぇい! こんな時にも神の恩恵は要らん! 自分の顔に当たるポニーテールの攻撃でさえ、クリティカルヒットとはな!」
運命の神の信仰者はその恩恵として確率に優遇される。富くじを買えば少し当たりやすくなるし、色んな成功率も優遇されるので、攻撃もクリティカルヒットになりやすい。
謝罪を待って髭を捩じり、見下ろすダンティラスを睨むとフリーダは立ち上がった。
「私は謝らん! たとえ神がお前を味方してもな!」
「ならば、吾輩はお主が謝るまで付き纏おうぞ。お主が謝るその時まで! 死を遠ざけてみせる!」
「勝手にしろ!」
これまでの話に興奮して立ち上がったタスネは、地団駄を踏む。
「キィーー! 嫌な奴じゃん! フリーダ! とても聖騎士とは思えない!」
ダンティラスはタスネを落ち着かそうとして、腰の水筒を渡した。
「あ、ありがと! 丁度喉がカラッカラで・・・」
何度か暗殺者を退けたダンティラスに、ヒジリから褒美として渡された魔法瓶の水は、夏の暑い空気の中でも冷たさを保っていた。
「うわぁ~! 冷たくて美味しいレモン水! 頭がキーンとする!」
タスネは水筒を返すと、自分がダンティラスの触手でできた傘の下にいる事に気が付いた。
「気を遣わせちゃってごめんね、木陰に行こうよ。暑かったでしょ? ダンティラスさんって、ほんと優しいよね」
「吾輩の優しさなど、海のような包容力のあるヒジリ陛下に比べたら、水溜まりみたいなものである」
「えぇー? そうかな~? えぇ~?」
タスネ的には、時々セクハラや意地悪をしてくるヒジリよりも、ダンティラスの方が断然紳士的で優しいと感じる。
「話が終わるまでに、街道を馬車が通らなければ歩いて帰ろうか、タスネ殿。愛しい人の結婚式の準備を見ながら、馬車を捕まえるのは嫌であろう?」
「う、うん・・・。ごめんね。ほんと色々気を遣わせちゃって・・・」
(しまった! 片思いの人を思い出させてしまったのである! 誤魔化さねば!)
「話の続きを、聞きたいであるか?」
「うん! 是非!」
「では・・・。それから吾輩はフリーダに纏わりついて、謝罪を待っていたのだが彼女も中々頑固でな。謝罪がないまま何年も行動を共にする内に、互いに友情のようなものが芽生えてきたのである。いや、友情とは違うか。向こうは友情、こちらは愛情であるな」
「ええええ! 凄く嫌な女なのに好きになっちゃったの? なんで? ねぇ! なんで?」
「言葉や態度は人の心を映したものというが、彼女はそれが当てはまらなかった。やはり根っこは優しくて、誰かを助けたいと常々思って行動していたのである。彼女への感心が尊敬に変わり、そこから恋心が芽生えても不思議ではなかろう? しかし吾輩は樹族ベースの吸魔鬼。向こうは地走り族。しかも寿命も違う。吾輩はきっぱりとその恋を捨て、彼女の生涯を見守る事にしたのだ」
「本当はフリーダもダンティラスさんの事を好きだったんじゃないの?」
「さぁ、それはどうだろうな。当時はちゃんと【読心】を習得していなかったので判らないのである。フリーダも同族の恋人を作り、結婚することとなったが、結婚式の前夜、彼女は泣きながら吾輩に抱き着いてきたのである。結局、泣くばかりで何も言ってはくれなかった。もしあの時、彼女がどこか遠くに行こうと言ったならば、吾輩は迷うことなく、彼女を連れ去っていたが。しかし、その言葉はなかったのである・・・」
「ダンティラスさんも、女心が判らない人だね・・・。フリーダはダンティラスさんが連れ去ってくれるのを期待していたんだよ・・・」
「彼女は聖騎士で家柄も良かった。名誉も地位も捨てて、吸魔鬼と一緒になるなんて当時の吾輩は思っていなかったのである。もしタスネ殿がフリーダと同じ立場だったら、告白していたであるか?」
「・・・。世間体とか親の心情を考えたら、それは無理かもね」
「であろう? フリーダは結局、家柄も容姿も良い男と結婚した。我輩はフリーダの子供達の面倒を見たり、人助けを手伝ったりして過ごしたが、とうとう彼女の最期を看取る日が来たのである。あの素晴らしき日々はあっという間だった・・・」
「え? フリーダは聖騎士の務めの途中で力尽きたの?」
「いや、逆である。寿命を全うした。吾輩の感覚ではあっという間だったというだけで。彼女は本当に幸せそうな顔をして眠って逝った。多くの孫や、ひ孫に囲まれてな」
「そっか。でも謝罪は?」
「ない。あの世に持って行ってしまったのである」
「え~。あ、でもその気持ち解るな・・・。謝ったらダンティラスさんとの縁が切れちゃう気がするもん。永遠に生きるダンティラスさんと縁を切らない為には、そうする他なかったんだね」
「そうかもしれないのである」
「で、そのフリーダの一族は、その後どうなったの?」
「時の流れは残酷でな。色んな理由で一族はその場所から去り、結局吾輩一人だけがフリーダの墓を守る事になった。が、吾輩は吸魔鬼。村人が世代交代を重ねる内に、吾輩を怖がる者も出てきた。しまいには吾輩がいない間にフリーダの墓は移されてしまったのである」
「酷い・・・」
「うむ、酷いオチであろう? だが、救いはある」
「ほんと? どんな救い?」
「アルケディア滞在中に地下図書館で調べたのだが、一族の一部はエポ村に住み着いたらしい。一族は代々貧乏な家系だったらしく、あまり良い人生は送っていなかったそうな。そして吾輩は今、視線の先にフリーダの墓を見ているのである」
「え! どこ!」
「草原の草むらの中。ほらあそこに男女の地走り族の像があろう? その後ろである」
ダンティラスが指さした先には自分の両親が立っていた。数年前にバジリスクの目を見て石化してしまった両親。
「待って! あれはうちのお墓だよ! 親が石化しちゃったから、お墓の前まで苦労して持ってきたんだけど! ってことは!」
「そう。サヴェリフェ姉妹は、聖騎士フリーダの末裔なのである」
「ええええ! じゃあ私、ご先祖様を嫌な女呼ばわりしてたの? あのお墓の古い文字も、全然読めなかったからご先祖様が誰かも判らなかった! まさか私たちがフリーダの子孫だったなんて・・・」
「タスネ殿の信仰する神は?」
「ヒジリだと思うでしょ? 実は運命の神カオジフだよ!」
「ではこの出会いは運命の神の巡り会わせである。お帰り、フリーダ」
「フリーダじゃないけど・・・。ただいま、ダンティラスさん!」
笑顔で答えるタスネの顔は、フリーダと重なる。
(フリーダ。お主の描いた命の軌跡は、長い年月を経てもまだ消えてはおらぬ。いつかこのタスネ殿も、お主の様な道筋を残し、命を紡いでいくだろう。吾輩は何度でも見守ろう。お主の血族の進む先を)
山から下りてくる涼しい風に揺れる草原の中の墓に、ダンティラスはフリーダを見たような気がした。
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