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第十三章 黒髪少女の軌跡編
986話 抱擁
しおりを挟む「ふわぁー」
「はは、さすがに眠いか」
「んん……」
ご飯食べて、おふろ入って、すっきりしたら……どっと眠気がおそってきちゃった。
大きなあくびをして、目をこする。ね、眠い……
ずっと寝ていたはずなのに、今日だけでいろいろあったからかなぁ。
「魔力を使って疲れたのもあるだろうし……安心したのかもな」
「……あんしん?」
「あぁ。倒れている前のエランがなにをしていたのかはわからないけど、あんな冷たい場所で倒れていたんだ。
だからあたたかい布団で眠って、ご飯を食べて、お風呂に入って……そういったことで、エランの身体が安心して、眠くなっちゃったんだよ」
「……そうかも」
この家に来て……いや、ししょーに会ってから、私は安心しているのかもしれない。
それは、いいことなんだろうな。
私はししょーに言われるがまま、布団にもぐった。
すると、すぐにすいまがおそってくる。昨日目を覚ましてからも、いっぱい寝ていたというのに。
「おやすみ、エラン」
「……おやすみぃ」
おやすみ……か。なんだか、その言葉がとても嬉しくて。とてもなつかしい感じがして。
私もなんとか言葉を返して……ゆっくりと、目を閉じた。
――――――
「ん、んぅ……」
目をさました。なんか、とっても気分がいい。
起き上がる。背中が柔らかいし、部屋があたたかい。
私は……そっか、ししょーの家で、眠ったんだった。
「……あったかいな」
身体にかけられた布団を見て、私はそれをぎゅっと握る。
それから、きょろきょろとあたりを見回す。
すると、離れたところにししょーがねむっているのが見えた。
「……私に布団、使ったから」
ししょーは壁にもたれるようにして、寝ていた。
もともと一人用だったためか、私に布団をかしたからししょーはそんなところで寝ている。
別に、いっしょに寝てもよかったのにな。気を遣ってくれたのかな。
そっと近づく。
「……きれいな顔」
その顔は、思わずほれぼれしてしまうくらいにきれいだ。
び青年、とはこういう人を言うんだろうな。目をつぶっているため、長いまつげがよくわかる。
それに、肌も白い。たしか、エルフのとくちょうなんだっけ、色白の肌は。
このきんいろの髪も、とがった耳も……今は閉じられているけど、緑色の目も。
「ん……」
「ふふ」
ついつい手を伸ばして、鼻先をつつく。つんつんすると反応するし、面白い。
このまま遊んでいてもおもしろそうだけど……
「……お腹すいた」
一晩ねむったせいだろうか。お腹がすいてる。
くぅくぅと騒ぐお腹をおさえて、ししょーの肩を揺らす。
「ししょー、おきてー。おなかすいたー」
「んん……ん? ……エラン?」
「そうだよ?」
目を開けたししょーは、私の顔を見た。なんでか、パチパチとまぶたを開いては閉じている。
どうしたんだろう。まるで、信じられないものを見たかのような……?
「わっ」
次のしゅんかん、身体があたたかいものに包まれる。それに、なんだかいいにおいもする。
ぎゅ……っと、抱きしめられたんだ。だれに、って考えるまでもない。
ししょーだ。起きたししょーが、私を力強く抱きしめたんだ。
「え、えっと……?」
「エラン……エラン……! 会いたかった……」
「し、ししょー?」
な、なんだなんだ? きゅうにどうしたんだ? そんなに私ががわいかったのか?
こんらんする私がししょーを呼ぶと、ししょーははっとした様子になる。
「……すまない、少し寝ぼけていたみたいだ」
そう言って、ししょーはゆっくりと離れた。
「いや、いいけど……」
寝ぼけていた……寝ぼけて、私に抱きついちゃったってこと?
まあ、そういうときもあるのかな。でも、それにしては会いたかったって……どういうことだろう?
それからししょーに、お腹がすいたことを伝える。するとししょーは、顔を洗ってくるように言って、いっしょに洗面所へ。
「はぁーっ、すっきりー」
「じゃあ、作ってくるとするかな」
ししょーはキッチンに向かい、しょくざいを確認している。
私はその姿にわくわくしながら、待っていた。
それから、少しして……
「はい、お待たせエラン」
「ありがとーししょー!
…………これは?」
目の前に出されたのは……お肉だった。
「昨日採っておいた、モンスターのお肉だよ!
それも、昨日とは違って……ステーキ風にしてみました!」
どやっ、とししょーが自信まんまんげに言う。
確かに昨日のような丸やきではないし、おいしそうなんだけど……
「……朝から?」
朝からこれは、重くないる
「元気が出るだろう!?」
「……そう、かも?」
とりあえず、おいそうなのには変わりはない。くぅくぅとおなかもうるさいので、ありがたく食べさせてもらうとしよう。
手を合わせて、いただきます。お肉を切り、食べる。
もぐもぐ……
「どうかな?」
「ぅんんー、おいしー!」
お肉は柔らかいし、かむ度に肉汁があふれてくる。うーん、おいしー!
それに、味付けもばっちりだ! おしおがいい感じのすぱいすになっている!
朝から重いかなと思ったけど、わりと食べやすいし!
「エラン、今日……ベルザ国に行ってみようか」
「えっ、ほんとう!?」
「あぁ。なにか手掛かりがあるかもしれないからね」
もぐもぐと食べながら、私はうれしさに笑顔を浮かべていた。
自分の手がかり……というのは、正直どうでもいいけど。ししょーと、おでかけだぁ!
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