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第十三章 黒髪少女の軌跡編
1007話 訓練
しおりを挟む「ふわぁー」
眠っていた意識が起き上がり、私は目を覚ます。
布団の上で身体を起こして、のびのびと伸びをする。うーん、あくびも出ちゃうやぁ。
昨日、まじゅつを使って……そのまま寝ちゃったんだっけ。
「お、エラン起きたね」
「ししょー」
私が起きたのを察したのか、ししょーが部屋に入ってくる。
「よく寝ていたね、エラン」
近くの椅子に座り、ししょーは私の頭をなでる。
私、そんなに寝ていたのか。
「私、どのくらい寝てたの? もしかして、半日くらい?」
「んーや、丸一日かな」
「まっ……」
私の頭をなでながら何気なく話すししょーのことばに、私が言葉を失ってしまう。
だって、丸一日も眠っていたというのだ。
まさか、そんなに寝ちゃってたなんて……?
「そ、そんなに……?」
「ま、はじめて魔術を使ったんだ、無理もない」
うわぁー……それだけ疲れちゃってたってことなんだろうけど。
うぅ、なんだか損しちゃった気分かも。
とはいえ……いっぱい寝たおかげで、寝る前に感じていた脱力感は今は感じないかな。
強いて言うなら、寝すぎていたせいか寝起きとくゆうの気だるさ……みたいなものはある。
「よい、しょ」
「おっ、大丈夫かい?」
立ち上がる私を、ししょーは支えてくれる。少しふらつきながらも、問題はない。
「ふぅ。こりゃ、まじゅつの練習をするのも手こずっちゃうわけだ」
まじゅつには高い集中力が必要、とししょーは言っていたけど、集中力以外の問題もありそうだね。
今回は、私がはじめてまじゅつを使ったからぶっ倒れた……ってのが大きいんだろうけど。
それでも、まじゅつを使うたびにこんな疲れてたら、そりゃ軽弾みに練習はできないよね。
くぅー……
「……」
「はは、そりゃあお腹減るよな」
とつぜん、お腹が鳴ってしまった。とっさに押さえるけど、もう遅い。
うぅ、恥ずかしい……顔が熱くなっちゃってるよ。
そりゃ、一日も寝てたんだしなにも食べてないんだから、お腹へっちゃって当然なんだけどさぁ。
「とりあえず、なにか食べたほうがいい。体力は回復しても、空腹は満たせないからね」
「うん……」
そんなこんなで、私はししょーが取って来てくれていた木の実を食べる。
私がいつ起きてもいいように、用意してくれていたみたいだ。ほぞんのいいものばかり。
むしゃりと食べる。甘い果汁が口の中に広がって、おいしい!
「ししょー、私の使ったまじゅつって、どんな感じ? まだまだ?」
「……正直に言うなら、とても驚いている。なんせ、そんな小さな身体で……それも、はじめて魔術を使って、あの結果だ。私は自分の幼い頃を覚えているわけではないが、エランほどすごいものを撃てた記憶はないな」
ししょーは腕を組み、私がまじゅつを撃ったときのことを思い出しているようだ。
どうやら私のは、かなりすごかったみたい。
比較対象がないから、私はよくわかんないけど。
「精霊とそれほどまでに親和性が高いのはもう何度も言っているが……聞いたばかりの詠唱が頭の中に浮かんでくる。これはもう、才能があるとしか言えない」
「わぁ」
私、才能あるんだ! 素質があるとは言われていたけど、そっかそっか。
「ふむ……これだけの才能を、私のところで眠らせておくには惜しいな……」
「ぱくっ」
もしゃもしゃと木の実を食べながら、ししょーを見る。ししょーってば、またなにかを考えている。
ししょーって考え事するとき、ぶつぶつするくせがあるよね。
私のことちらちら見ているから、私のことを考えてくれているんだろうけど。
「よし、エラン。キミにこれから、私が知っている知識や技術を教えていこうと思う」
「ごくっ。えっ、ほんとに!? やったぁ!」
「エランも魔導に興味津々だし、それだけの力がどこまで伸びるのか……私も、興味が出てきたよ」
……その日から、本格的にししょーの教えでまどうを学ぶことになった。
まほうにまじゅつ、それぞれの知識はもちろんのこと、使用に関してのめりっとやでめりっとなんかも。
まほうを使うのはいめーじの力が大切。そしてまほうの基礎として、身体強化のまほうと言うのがある。
まりょくを自分の身体に流して、文字通り身体機能を強化するんだ。まりょくを攻撃として飛ばすだけやなくて、こんなやり方もあるんだ。
「基礎を疎かにしては、それ以上伸びることはないからね。基礎が大切だ、それを心に刻んで」
「はい!」
まほうの訓練。結構むずかしいものだったけど、やりがいは感じていた。
だって、まほうのことが知れるのが、うれしいから。自分の力が、どんどん成長していくのがわかるから。
まじゅつに関しては、時と場合を選んでしんちょうに……ではあったけどね。
そして、ある日……
「ししょ、森の中に入ってどうしたの?」
「これからエランに、魔物を見せようと思ってね」
……まもの? そういう生き物がいるようだ。
森の中。先を行くししょーについていく私は、しばらく歩いて周囲に変な気配を感じた。
な、なんだろうこれ……まりょくの、塊みたいな……
「し、ししょー……」
「! もしかして、気付いたかい? 魔物の気配……魔物は体内に魔力を持っている……魔力の塊みたいなものだ。だから、魔力を感じ取れる人間にとっては、少し感じやすいかもしれないね」
これが……まもの……! この先に、いるんだ……!
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