史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十三章 黒髪少女の軌跡編

1013話 感覚

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 急所を狙い、確実に貫いた一撃。太い氷のトゲは、まじゅうのうなじから喉にかけて貫通し、突き刺した。
 まじゅうの身体はまもの以上に硬いと言っていたけど……あんな、あっさりと……

 それだけ、ししょーのまりょくの質が高いということなのかも、しれない。

「ル、ゴ……!」

「……」

 大きな口を開け、まじゅうは苦悶の声を漏らす。そして……赤く光っていた目は、その輝きを失っていく。
 それは、まじゅうの命が尽きたということだろうか? そう考える暇もなかった。

 ……まじゅうの身体が、黒いきりみたいになっていったから。黒いもや……あるいは、砂が風にさらわれていくような。
 その現象には、見覚えがある。ついさっきのことだ。

 まものを倒し……そのまものが絶命した時のこと。

「死んだら……死体も、残らない……」

 まものもまじゅうも、死んだら死体は残らずにその場から消えてしまう……と、ししょーは言っていた。
 この現象はつまり、こういうことだ。

 死体が残らないから、まものやまじゅうの生態に謎は多い。
 でも死んだら消えてしまう……ということは、まものやまじゅうが死んだふりをしている可能性もない、ってことだよね。

 ししょーは、まじゅうを倒したんだ……!

「ふぅ……さて。そろそろ出てきたらどうだい、エラン?」

「!」

 やっぱりししょーはすごい……そんなことを思っていたけど、地面に着地したししょーがため息をつき、言葉を漏らした。
 そして首を動かして……私が隠れている場所を、見ていたのだ。

 その声は、顔は、完全に私に気づいていた。

「……えへへ」

 これは隠れてごまかすのは無理だな、と思った私は、身体を小さくして草陰から出た。
 背筋を曲げて、頭をかきながらなるべく笑顔を浮かべて。

「まったく……家に戻っているよう言ったろう」

「き、気づいてたんだ?」

「当然だ」

 いったいいつから……って、最初からかな。
 でも、すでにまじゅうと対峙していたから私に構う余裕がなかった……ってところか。

 ししょーの言いつけを守らなかったのは、悪かったと思ってるけど……

「ご、ごめんなさい。でも、ししょーすごかった。あんな一方的にまじゅうを倒せるなら、私を無理に遠ざける必要もなかったんじゃない?」

「……魔獣はエランに気がついていなかったからね。もしも最初からエランが隣にいたら、魔獣は執拗にエランを狙っただろう」

 ……まじゅうは、私には気づいてなかった。それはししょーを前にしていたからだろう。
 もし最初から私がししょーの隣にいたら。そう考えたら、確かに……ししょーの心配もわかる気がする。

 そう思うと、私が遅れて来たのは……ほんと、ぎりぎりだったのかもしれない。反省。

「……まあ、精霊も着いてきてくれたんだ。エランに危害が加わることはないと、わかってはいたけどね」

 そう言ってししょーは、まるでせいれいさんにお礼を言うかのように笑いかけた。
 せいれいさんがいてくれたから、私がここにいても心配することはなく……ってことか。

 そうだね……せいれいさんが、私に危害が加わらないように結界を張ってくれたり。おかげで私は無事だ。

「ありがとうね、せいれいさん!」

 改めて、せいれいさんにお礼を言う。私のことを守ってくれて、嬉しい。なんだか、私もせいれいさんになにかお返ししたいな。
 とはいえ……私がせいれいさんにできることって……? 料理……いや、せいれいさんってなにか食べるのか?

 うんうんと考えていると、ししょーに頭に手を置かれる。

「! ししょー」

「魔獣は倒した。もうこの森は安全だ……戻ろうか」

「……うん」

 私はこくりとうなずいて、ししょーと手を繋ぐ。
 あとに残っているものは……なにもない。まじゅうの死体も、まじゅうを仕留めたししょーのまほうも。どちらも同じように、消えてしまった。

 それにしても……どうして、森にあんなまじゅうが現れたんだろう?

「ねえししょー、どうしてまじゅうが現れたんだろう?」

「……わからない。魔獣は魔物が変化した姿だ……だから、まず魔物の気配があるはず。それも、もう魔獣になってしまうような魔物は、それだけ魔力の気配も濃いはずなんだが……」

 うむ……と考えるように、ししょーは顎を触る。

 そうだよなぁ。まものと対峙したときのあの感覚。あの感覚が他にもあれば、気づけると思うし。
 それがまじゅう一歩手前だったというのなら、ししょーなら気づかないはずがないだろうしな。

 いきなり、まじゅうが現れた? あんなの、まりょくを感じないなんてありえないだろうし。

「うーん、わかんないや」

「はは、そうだね。考えたってわからないし、それはまたにしよう」

 ……ししょーの言う通りだ。考えてもわからないことは、考えたってわからない。当たり前の事だけど、割り切るのは大事だ。

「そうだ、ししょー。まじゅうの攻撃が当たらなかったり、まじゅうが動かなくなったり……あれは、なんだったの?」

「ん? あれは言葉に魔力を乗せて……いや、今のエランになにもかも教えるのは、詰め込みすぎて逆効果かな。
 まあ、いずれ教えてあげるよ」

「えー」

 いじわる、とあかうわけではないんだろうけど、結局あの力のことは教えてもらえず。
 ししょーと手をつないだまま、家に戻ったのだった。
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