1,044 / 1,198
第十四章 他学年試合編
1031話 二人の馴れ初め
しおりを挟むシルフィ先輩とリーメイのデートを見届けた私は、リリアーナ先輩とのお出かけにシフトチェンジ!
シルフィ先輩は女の子と二人で出かけるのは初めてだって言ってたし、心配なところもあったけど……もう、大丈夫そうだ。
まさか、こうしてリリアーナ先輩と二人でお出かけすることになるなんて。
「私もあてもなくふらふらしていただけだから、エランちゃんと過ごせて嬉しいわ。生徒会で一緒になることは多かったけど、女二人で話すことはあまりなかったものね」
「確かに……」
生徒会室じゃ、最近はともかく以前までならリリアーナ先輩たちとも会っていた。
それでも、こうして二人で……というのはあんまりなかったもんね。
私としても、友達……クラスメイトと一緒に過ごすことは多いけど、先輩とってのはなかなかない。
「女だけともなれば、やっぱり恋バナかな!」
「私とゴルドーラ様の話を聞きたいだけですよね?」
そんなことは……いやまあ、そういうことになるのか。
「そんなに面白い話でもありませんよ。幼い頃より、このベルザ国の第一王子と婚約する……そう言い聞かされて育ってきた。それだけのことです」
「ほぉほぉ」
なんだかんだ言っても話してくれるんだね。あるいは実は話したかったのか。
婚約ってのは確か、親が決めた結婚相手って意味だったと思う。
ゴルさんは言うまでもなく王子様だし、彼と婚約するように親に言われた……リリアーナ先輩の家も、相当な貴族なんだろう。
「それじゃあ、はじめはゴルさんのこと好きじゃなかったんだ?」
「顔も知らない相手のことを、どう好きになれと? 私はただ、カロライテッド家の長女として与えられた役割を全うするだけ。そう考えて日々生活してきた……」
……顔も知らない相手を好きになれるはずもない。そりゃそうだよなぁ。
いきなり「あなたは王子の婚約者よ」なんて言われて、幼いリリアーナ先輩は困惑したことだろう。
それでも、自分が貴族という自負があるからこそ、役割を全うしようとした。
というか、リリアーナ先輩がゴルさんの顔も知らなかったってことは、ゴルさんの方も先輩の顔は知らなかったのか。
「それがどうして、あんな両思いに?」
「……婚約者であるゴルドーラ様と初めて顔を合わせる日。私は正直、憂鬱でした。自分が将来結婚する相手が、いったいどんな方であるのかと」
足を止め、当時を思い出しているのか目を閉じるリリアーナ先輩。私も合わせて目を閉じる。
そして胸の前で手を組む。
「一目会って、私は胸の高鳴りを感じました……そして、これまでにない胸の高鳴りを感じたのです。その瞬間、私は思いました……これは恋だと」
「まさかの一目ぼれ!?」
それは意外な答えだった。ま、まさか一目ぼれだったとは……
顔も知らない相手なのだから、まあ会った瞬間にっていうのはわからなくもないんだけど……
でも、リリアーナ先輩はただ顔に惚れただけではないらしい。
「それから、ゴルドーラ様と二人で話をする機会を設けてもらって。ただ、いざ話をしてみたらなんともぶっきらぼうな方で」
「あー」
小さいゴルさんはなんだか想像しにくいけど、なんでかぶっきらぼうだというのは『そうだろうな』って感じがする。
なんというか、無愛想なのだ。
「私がいくら話しかけても、たいした反応はなく。なにを考えているかわからないので、心が折れそうになってしまって」
「なんと」
私も、初めて会ったときはゴルさんがなに考えてるのかわからなかったもんなぁ。いや、今ならわかるってわけでもないんだけどさ。
人が考えていることなんてわからないんだけど、ゴルさんは特にって感じだ。
小さい頃からそのへんは変わってないんだなぁ。
「それでそれで?」
ただ、今の無愛想エピソードを聞いていると、それ以上関係が進みそうにはないんだけど。
「私、何度も何度も話しかけて……でも反応が薄く、落ち込んでいました。なので、室内に用意してあった紅茶を淹れようと思って。紅茶の淹れ方は幼い頃から、たたき込まれてきたので」
リリアーナ先輩の紅茶は絶品だ。それは、生徒会でいつも紅茶を淹れてもらってる私が保証する。
なるほど、紅茶のおいしさは小さい頃から教えられていたからか。
「紅茶を淹れようと、容れ物を手にした瞬間……持ち手が壊れていたんでしょうね、その部分が外れてしまって」
「え」
紅茶が入っている容れ物を手に取る……だけど、持ち手が外れてしまった。そんなことになれば、その後どうなるかは考えるまでもない。
容れ物は落下し、床に叩きつけられ……容れ物が割れ、中身がぶちまけられる。
「紅茶を被ってしまった私は、大泣きしてしまって。それまで、涙など決して見せないようにと言いつけられていたのに」
きっと熱かったのだろう……いや熱くなくても、そんなことになれば泣いてしまっても不思議ではない。
まして第一王子の目の前だ。不敬だと言われてもおかしくはない。
だけど……
「それまで無表情だったゴルドーラ様が、焦ったように私に駆け寄ってきて……大丈夫か、と声をかけてくださったんです。あの時の表情や、切羽詰まった声は忘れられません」
当時の思い出に、ひっそりと頬を染めている先輩。その顔や声は、本人だけの思い出なのだろう。
「火傷をしているといけない、と焦って、私に回復魔術をかけてくれたんです。その時、私は思ったんです……あぁ、この人は不器用なだけで優しい人なんだな、と」
一目ぼれしたのは、本当……でも、その後にゴルさんの人柄に惚れたのも、また本当なのだ。
11
あなたにおすすめの小説
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
無能と蔑まれ敵国に送られた私、故郷の料理を振る舞ったら『食の聖女』と呼ばれ皇帝陛下に溺愛されています~今さら返せと言われても、もう遅いです!
夏見ナイ
恋愛
リンドブルム王国の第二王女アリアは、魔力を持たない『無能』として家族に虐げられ、厄介払いとして敵国ガルディナ帝国へ人質に送られる。死を覚悟した彼女だが、あまりに不味い帝国の食事に耐えかね、前世の記憶を頼りに自ら厨房に立つことを決意する。
彼女が作った温かい家庭料理は、偶然離宮を訪れた『氷の皇帝』レオンハルトの孤独な心を癒していく。やがてその味は堅物騎士団長や宰相をも虜にし、食べた者を癒す奇跡から『食の聖女』と讃えられるように。
価値を知った故郷が「返せ」と言ってきたが、もう遅い!
これは、料理で運命を切り開き、最強皇帝から世界一甘く溺愛される、美味しい逆転シンデレラストーリー。
転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜
みおな
ファンタジー
私の名前は、瀬尾あかり。
37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。
そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。
今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。
それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。
そして、目覚めた時ー
昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ
蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。
とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。
どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。
など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。
そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか?
毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。
婚約破棄された公爵令嬢は冤罪で地下牢へ、前世の記憶を思い出したので、スキル引きこもりを使って王子たちに復讐します!
山田 バルス
ファンタジー
王宮大広間は春の祝宴で黄金色に輝き、各地の貴族たちの笑い声と音楽で満ちていた。しかしその中心で、空気を切り裂くように響いたのは、第1王子アルベルトの声だった。
「ローゼ・フォン・エルンスト! おまえとの婚約は、今日をもって破棄する!」
周囲の視線が一斉にローゼに注がれ、彼女は凍りついた。「……は?」唇からもれる言葉は震え、理解できないまま広間のざわめきが広がっていく。幼い頃から王子の隣で育ち、未来の王妃として教育を受けてきたローゼ――その誇り高き公爵令嬢が、今まさに公開の場で突き放されたのだ。
アルベルトは勝ち誇る笑みを浮かべ、隣に立つ淡いピンク髪の少女ミーアを差し置き、「おれはこの天使を選ぶ」と宣言した。ミーアは目を潤ませ、か細い声で応じる。取り巻きの貴族たちも次々にローゼの罪を指摘し、アーサーやマッスルといった証人が証言を加えることで、非難の声は広間を震わせた。
ローゼは必死に抗う。「わたしは何もしていない……」だが、王子の視線と群衆の圧力の前に言葉は届かない。アルベルトは公然と彼女を罪人扱いし、地下牢への収監を命じる。近衛兵に両腕を拘束され、引きずられるローゼ。広間には王子を讃える喝采と、哀れむ視線だけが残った。
その孤立無援の絶望の中で、ローゼの胸にかすかな光がともる。それは前世の記憶――ブラック企業で心身をすり減らし、引きこもりとなった過去の記憶だった。地下牢という絶望的な空間が、彼女の心に小さな希望を芽生えさせる。
そして――スキル《引きこもり》が発動する兆しを見せた。絶望の牢獄は、ローゼにとって新たな力を得る場となる。《マイルーム》が呼び出され、誰にも侵入されない自分だけの聖域が生まれる。泣き崩れる心に、未来への決意が灯る。ここから、ローゼの再起と逆転の物語が始まるのだった。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国の辺境で、ただ静かに生き延びたいと願う少年、ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、前世の記憶と、母が遺した『物理法則を応用した高圧魔力』という危険な理論だけだ。
敵の大軍が迫る中、ヴァンは剣も振るわず、補給線と心理を切り裂く。
結果、敵軍は撤退。代償も、喝采も、彼には無意味だった。
だが、その「効率的すぎる勝利」は帝国の目に留まり、彼は最高峰の『帝国軍事学院』へと引きずり出される。
「英雄になりたいわけじゃない。生き残りたいだけだ」
謎の仮面メイド『シンカク』、命を取引に差し出した狼耳の少女『アイリ』。
少年は選択する。正義ではなく、最も費用対効果の高い道を。
これは、合理が英雄譚を侵食していく、学園ミリタリーファンタジー。
【※作者は日本語を勉強中の外国人です。翻訳ソフトと辞書を駆使して執筆しています。至らない点もあるかと思いますが、物語を楽しんでいただければ幸いです。】
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる