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第十四章 他学年試合編
1038話 まさかのお誘い
しおりを挟むノマちゃんのことを考えていて、かつ口が固そうな人。そしてクラスメイト。
それを考えた結果、一人思い出した。
「カゲくん」
「カゲくん?」
私の言った聞き覚えのない名前に、マーチさんが首を傾げている。
ま、そりゃそうだよね。さすがに一学生の名前まで把握してないだろうし。
「うん、カゲ・シノビノくん。ノマちゃんのクラスメイトで、ノマちゃんの……ともだ……あれ、友達?」
「……シノビノ家は、代々エーテン家に仕えてきた家系だったな。なるほど」
あぁ、ここに一学生でも把握してそうな人いたわ。さすがは生徒会長。
それにしても、名前を聞いただけでその家の人が、ノマちゃんの家に仕えている人とまでわかるなんて。
その記憶力は相変わらず感心しちゃうなぁ。
「確か、かなり優秀な生徒だったはずだ。目立ったものこそないものの、卒なく器用にこなすといった感じだな」
「ほーん。そんなら、その子に話してみてもいいかもね?」
「うん。カゲくんはノマちゃん第一に考えてるし、きっとこういう大事なことはペラペラ喋らない。ノマちゃんのためだって言えば、絶対ね」
正直、カゲくんと接した機会はあんまり多くない。初めてノマちゃんとルームメイトになった日に部屋に侵入してきたことや、男の子が好きだったことくらいだ。
それでも、ノマちゃんのことを大切に思っているのはわかる。
それはきっと、そういう家系だから……以上に、個人的に大切に思っているのだろう。
「なら、その子にはエランちゃんから話しておいてもらえるかな」
「りょーかい。ノマちゃんに呼んでもらえば、すぐに現れると思うから」
別のクラスで男の子。寮も離れているからこそこそとなかなか会う機会がないけど、ノマちゃんに呼んでもらえればすぐに来るだろう。
どうせノマちゃんにも聞いてもらわないといけない話。二人同時に話そう。
それにカゲくんなら、なにがあっても冷静に対処しそうだ。なんか大人っぽいし。
「はぁー……それにしても、こんなにも色々調べてるのになぁんにもわからないなんて。自信なくしちゃうなぁ」
唐突に、マーチさんが言う。その場に座り込み、あぐらをかいてぶーぶーとほっぺたを膨らませている。
「そう言うな、なにもかも初めてのこと……そう簡単にはわかりはしないだろ。それと、行儀が悪いぞ」
「でもさー、一応私もそれなりに偉い立場なわけじゃん? そんな私がこんな体たらくじゃ、自信なくしちゃう」
「お前でわからなければ、この国の誰にもわからん。頑張ってくれ」
なんかマーチさんちょっとめんどくさいな! いやまあ、わからないことを一生懸命調べてくれているんだから、気持ちはわからなくもないけど。
私が知らないだけで、かなり頑張って調べてくれているんだろう。
私で力になれることが、なにかあればいいんだけどなぁ。
「ま、引き受けた以上は責任を持って解明するよ。ノマちゃんの身体のこと、隅から隅までね!」
「おぉ、なんかえっちな言い方」
「くだらないことを言ってないで、頼むぞ」
それから少しだけ話をして、私はお城を後にすることに。
お城の外に出ると、外はすっかり暗くなってしまっている。あれだけ話し込んでいたら、そりゃそうか。
さて、どうしようか。このまま学園に戻って食堂に行くか、それともせっかくだから外で食べてくるのもいいなぁ。
「おーい、エランちゃーん」
「! マーチさん」
すると、後ろから私を呼ぶ声。振り向くと、お城から出てきたマーチさんが走ってきていた。
袖から出てきていない腕をぶんぶんと振って。ほんっと子供みたいな見た目だな。
彼女は私の前に止まり、「ふぅ」と息を漏らした。
「せっかくだし、お城でご飯食べていかない?」
「えっ」
それは、思わぬお誘いだった。
「もしかして、誰かと食べる約束をしていたり?」
「いや、そうじゃないけど……」
「じゃあ、行こう!」
ぐいぐいと私の手を引っ張るマーチさん。まるで子供に手を引っ張られているみたいだ。
仕方ない、断る理由もないし……せっかくだから、ご馳走になるとしよう。
私は再びお城に入り、案内されるままにマーチさんについていく。
そしてたどり着いたのは、王の間……ではなく、それより一回り以上小さい扉だった。
いや、王の間の扉が大きすぎるんだよ。
「みんなー、エランちゃんを連れてきたよー」
扉を開け、中にいるだろう人たちに声を掛けるマーチさん。
み、みんな?
中に入ると、大きな丸テーブル……そしてそこには、人が座っていた。
「! アルミルおじいちゃんに、カゼルさん」
「はは、久しいの娘よ」
「よーう、先日ぶり」
席に座っているのは、ナタリアちゃんのおじいちゃんで魔術のエキスパートでもある、アルミル・カルメンタール。学園祭ぶり、かな?
そしてもう一人は、武術のエキスパートカゼル・オートライン。先日手合わせでやり合った仲だ。
そして、マーチヌルサー・リベリアン。開発研究のエキスパート。この三人で、食事会?
てか、アルミルおじいちゃんとカゼルさんって仲悪くなかったっけ。
「えっと……」
「ささっ、遠慮なくなく!」
と、困惑する私の背中をマーチさんが押す。
私ここでご飯食べるの?
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