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第十四章 他学年試合編
1045話 成長したなぁ
しおりを挟む魔力を足場に、空中に立っている。浮遊魔法だ。
別に飛んでいるわけじゃない。けれどうまく足場を作ることができれば、まるで空中を歩いているように見せることができる。
私がコーロランのクラスと試合をした時に見せた魔法……ダルマスの前では、あの時しか見せてなかったような気もするけど。
まさか、それだけで自分も使うようにするなんて。
「へぇ、やるじゃん」
「そりゃどうも」
見た目に反して、わりと使い方の難しい魔法だ。足場となる分だけの魔力を使い、見えない場所に足場を作る。
自分が作った足場とはいえ、魔力は目に見えない。だから足を踏み外して落下、なんてことも私もよくしたものだ。
だけどダルマスは……私に狙いをつけさせないよう、あちこちに動き回っている。
「まったく、私との訓練のときには隠してたな」
浮遊魔法を使ったことに加えて、それを使いこなしている。私と訓練していた時間や、授業中なんかは練習できなかったはずだ。
そんな限られた時間の中で、ああも扱うとは。
やっぱり、才能あるな。
「でも、私だって同じことができるんだよ!」
私はその場からジャンプし、空中で着地……踏み込み、さらに飛ぶ。
同じく浮遊魔法を使い、上空のダルマスへと向かう。
「あぁ、知っている!」
「せい!」
私は魔力で強化させた杖を振り上げ、ダルマスは剣を振り下ろす。再びお互いの武器が接触し、鋭い音が響く。
……のだけど。先ほどとは違う光景があった。
「はぁあ!」
気合を入れるダルマスの手に握られている剣の刀身は、赤い炎に包まれていた。
……いや、正確には魔力だ。魔力が炎のように見えている。これが、魔導剣士の実力だ。
彼らが扱う剣を、魔導剣と呼ぶらしい。そして魔導剣が魔術を纏いその力を発揮するとき、『魔剣』と呼ばれるものへ昇華するとか。
ダルマスは、本来魔導士は杖を使うところを、幼い頃からの訓練で魔導剣を魔導の杖の代わりとして使用している。
これは、魔導剣士には必須の技術らしい。単純な話、片手に杖片手に剣ではまともに戦えないからだ。
「ぐっ……」
振り下ろされる重力、身体強化された腕力、魔術を纏う剣……それらは、私の力を上回りぐぐぐ……と押し込んでくる。
いくら私の魔力量が多いといっても、私だってかよわい女の子だ。男の子には、純粋な力では敵わない。
なので、力任せの戦い方が無理なら……テクニックで避けるだけ!
「私にばっかり、注目してていいのかなっ?」
「!」
ダルマスの周囲に、四方から氷の槍を作り出す。それを一斉に、ダルマスへと放つ。
ダルマスはその場から飛び退き、さらに魔導剣を振るう。炎のような魔力が、氷の槍を焼き払っていく。
「これが……テクニックぅ!」
「どこがだ! だが、さすがの集中力だな!」
再び私に斬りかかるダルマス。私は全身を魔力強化し、振り下ろされる剣を受け止め……即座に、弾き返す。
振り下ろされ、弾き、振り抜かれ、弾き……キンキンッ、と激しい音が鳴り響く。
「俺の剣を受け止めながら、別に魔法を展開するとはな! さすがの集中力と、気に食わないほどの余裕だ!」
「わっ、とっ、やっ!」
ダルマスの剣は、強い。そして速い。いや、どんどん速くなっている?
ダルマスってば、いつの間にか全身を魔力強化している。あのときは、全身はおろか部分強化しかできなかったのに。
しかも、剣に魔術を纏わせ、かつ浮遊魔法を使っているのと同時にだ。足場を作り、自身の身体を強化し、剣にも魔術を纏わせる……
「成長したなぁ」
なんだろ、なんだか嬉しくなっちゃった。こんなときなのに、ついつい笑っちゃうよ。
「なにが、おかしい!」
だけどダルマスは、私が笑ったのは自分を馬鹿にされたからだと思ったらしい。勢いが強くなる。
馬鹿にしてるなんて、そんなことないのに。むしろ、褒めてるんだけど。
って、それはあとあと……このままじゃ、いずれ私が先に尽きる。
魔力を多く使っているダルマスの魔力が尽きるよりも、多分私が先に押し負ける。
その前に……
「えいっ!」
「なっ……!?」
剣を弾き、その隙を狙い杖の先端をダルマスへと向ける。その先端を、一瞬激しく光らせる。
目くらましだ。この距離なら魔法を撃つのもありだけど、全身強化しているダルマスに生半可な攻撃は効かない。
それに比べて、目くらましは殺傷能力こそないけど、どれだけ身体が硬くったって意味がない。
相手に視覚があれば、問わず効果を発揮するのだから。
「ぐっ……目くらましを……っ」
「卑怯なんて、言わないでよね!」
私はその場から距離を取りつつ、イメージを固める。想像するのは、氷の塊だ。
炎相手に氷は不利かもしれない。けど、炎の温度を、上回る冷気で凍らせてしまえばいい。
この魔法は、燃費がいいし威力もいい。結構気に入っている。魔獣にもぶつけたことあるしね。
「飛んでけ!」
具現化した巨大な氷の塊を、放つ。それはぶつかればただではすまないだろう。
それに、さっき打ち合った感じ今のダルマスの力や炎じゃあの氷は砕けない。
……今のダルマスならね。
「魔剣……」
ダルマスは、剣を鞘に収める。けれど、それは降参の意味ではない。構えを解かないままだ。
目は閉じたまま……けれど、それは諦めではなく単に目くらましの影響だ。
そんな状態で、ダルマスは軽く息を吐く。
「火の型……! 炎天狼牙!!!」
そして抜き放った一閃は……氷の塊を真っ二つに砕き、切断面ををはじめに全体を燃やし尽くした。
目を閉じたまま、タイミングもバッチリ。これは、ダルマスが私の魔法の魔力を視覚頼りではなく感じ取ったことによる。
そして、今はなったのは……魔導大会でも見た、魔導剣士の本領……!
「面白い……!」
真っ赤に燃える刀身の先端が、私に向けられていた。
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