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第十四章 他学年試合編
1066話 魔導具を駆使して
しおりを挟む……『魔力剣』の弱点とも言える点。魔力を吸収できるけど、限界値を超えると壊れてしまうところ。
魔力を刀身として放出し続ければ魔力は消費されるけど、それでも放出する以上の魔力を吸収してはやはり壊れてしまう。
そこで今回の改良版は、それが改良されている。
誰かと手を繋ぐことで、その誰かに魔力を分け与えることができるのだと。
「なるほど。それならその魔導具は威力を発揮し続けられる。魔力を分け与えられた者の魔力も回復する……魔導具の欠点を補い、さらに幅を広げるとは」
「へへん、褒めてもなにも出ないにゃ。あ、魔力は出てるか」
「だが、確かにこういったチーム戦でこそ力を発揮するだろうが……個人戦では、結局以前のものと変わらないのではないか?」
「うぐっ、痛いところを……いーの! 今回のは他学年試合……いんにゃチーム戦を想定した魔導具として作ったんだから!」
痛いところを突かれた、とピアさんは表情を歪める。ゴルさんの指摘した通り、個人戦では補ったはずの欠点が補えていないからだ。
でも……チーム戦で力を発揮するのは、事実。現にレニア先輩や、他に消耗したクラスメイトに魔力を分け与えることもできる。
消費した魔力が回復する。こんなに心強いことはない。
「それに、魔力吸収限界値を大幅に見直したのも本当だし! サラマンドラの攻撃だって吸収できることが、証明できた!」
ビシッ、と刀身をゴルさんに向けるピアさん。
どのみち『魔力剣』のすごさは健在だ。あの威力を吸収でき、自分の力にできるのならすごいなんてもんじゃない。
前回、私は『魔力剣』でサラマンドラの攻撃を吸収できなかったんだけどね。てか調子に乗って魔力を込めすぎちゃったのが原因だし。
「あぁ、素直に驚いた。ドラの炎を吸収するとは」
「ふふん!」
「だが……そう何度も上手くいくかな?」
その瞬間、サラマンドラが低く唸る。その目は赤く光っていた。
そう、クロガネと同じく……魔術級の威力がありながら、何発も撃てるのだ。使い魔の攻撃は。
だからこそ強大な使い魔で、こっちだって手こずってしまう。
「! レニア、離れてて!」
「え、いや僕も……」
「あのサラマンドラには多勢で挑んでも意味ないよ。レニアは他の人たちをお願い!」
「……わかった」
レニア先輩が飛び退き、その場にはピアさんとゴルさん、そしてサラマンドラが残された。
サラマンドラの目は鋭く光り、大きな口を開ける。そして、魔力が集中していく。
次に炎が放たれる……けど、それは先ほどの光線みたいなものじゃない。炎の弾だ。
それも、複数の弾だ。
「! そう来るか!」
それを見たピアさんは、なんと自ら炎の連射弾に突っ込んでいく。
それはまるで自殺行為……けれど、その表情には笑みさえ浮かんでいた。
間近にあった炎の弾へと『魔力剣』を振るい、その魔力を吸収。刀身は青から一気に赤へ。
しかし、おそらく限界値に到達するその前に、『魔力剣』を振るい魔力を放出。別の炎の弾へとぶつけて相殺。
ピアさんは、炎弾をそれぞれ二つで一組に見ている。片方を吸収し、片方へぶつけて相殺……これで、スムーズに攻撃を防ぐことができる。
なにより、この方法なら『魔力剣』の限界値を超えることはない。
「ほほぉ」
「まだまだ!」
さらにピアさんは、片手で『魔力剣』を振るいながら片手に先ほどの銃を持つ。魔力を吸収し、さらに魔力で防がれない銃だ。
それを、遠慮なしにゴルさんに撃つ。
「物理的に防げなくとも、防ぐ手段ならいくらでもある」
するとゴルさんは落ち着いた様子で、魔法による突風を起こす。自分を中心に。
すると弾は、風の壁に阻まれ……軌道を変えられ、空の彼方へと飛んでいく。
攻撃で相殺しなくても、壁で防御しなくても、防ぐ方法はあるんだ。
「確かにドラに対し、数を揃えても状況は覆らんが……それでも一人よりはマシなはずだ。いいのか? クラスメイトの力を借りなくて」
「みんなを信頼してないから力を借りないんじゃない。みんなを信頼してるから、他を任せているんだよ!」
ついに目の前へと到達したピアさんの『魔力剣』が、ゴルさんへと放たれる。
ゴルさんはそれを、魔力強化した杖で防ぐ。けれど、触れてしまった以上杖を通してゴルさんの魔力は吸収されてしまう。
力のバランスは、すぐに変わる。
「いつも教室におらず、一人研究室に籠もっていると話に聞いていたが……随分とクラスメイトを信頼しているんだな」
「そりゃ、一年以上一緒にいたんだもん!」
剣撃が、ぶつかり合う。
「うぬぼれるつもりはないよ。でも、アタシならアンタさんを釘付けにできる。そうすれば、みんなの負担も減る!」
「……なるほど」
今の状況……ピアさんが無謀なタイマンを挑んでいると見る人もいるかもしれない。
でも、見方を変えれば……ピアさんが、ゴルさんを食い止めている。クラスメイトを狙わせないために。
ゴルさんを自由にさせたら、そりゃもうすごいことになる。だからピアさんはゴルさんを相手取りながら、サラマンドラへの牽制も忘れないんだ。
「魔導具を駆使し、俺とドラを足止めか。なら……これでどうだ?」
サラマンドラの火炎が、ゴルさんとピアさんの間に入り込む。ピアさんはすぐに魔力を吸収するけど、そのほんのわずかな時間で……ゴルさんは、次なる魔法を使った。
……ゴルさんが、二人に増えた。それは、分身魔法だった。
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