史上最強魔導士の弟子になった私は、魔導の道を極めます

白い彗星

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第十四章 他学年試合編

1090話 か弱い乙女

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「お、大きいですわぁ」

 見上げながら、ノマちゃんが言った。でも、その感想を持っているのはノマちゃんだけではないだろう。

 だけど、それもそのはず。ただでさえ背の高かったメメメリ先輩が、さらに大きくなったのだから。
 身長だけというよりは、全体的に大きくなった。あんな姿、初めて見る。

 私は彼の性格を知っているからいいけど……あんまり知らない人は、あの姿見たら泣いちゃうんじゃないか。

「うわぁー! なにあの人怖いぃいいい!」

 ほら、泣いちゃった! またラメちゃんかよ!
 まるで滝のような涙を流している。そこまで泣くのか。

「む、むぅ……そんな怖がらんでもええじゃろう……」

 それを見て、メメメリ先輩は少ししゅんとしていた。
 どうやら、姿こそ大きくなったけど性格までは変わっていないらしい。よかった。

 ただ……圧倒的なまでの圧迫感。筋肉は大きく膨れ上がり、ガタイの良くなった身体は一見スピードを犠牲にパワーが上がったように見えるけど。
 あれは恐らく、どちらも……

「行くぞ!」

 ダッ、と駆け出したその巨体は、やっぱり思った通り。身体が大きくなってもスピードは落ちることはなかった。
 あの大きさでスピードは元のまま。これはかなりの脅威だろう。

 そして、向かった先にいるノマちゃんへと大きな拳を振り落とす。

「むぅん!!」

「ぬぅうう!」

 ノマちゃんは咄嗟に、全身に身体強化の魔法をかける。拳を受け止めるように手を上げて、両手で受け止めた。
 その衝撃で、足元にはヒビが入り……ボカンと、割れた。

「早々にクラスの頭を叩けば、後は容易く対処できる……!」

「あら……っ、クラスの頭は、コーロラン様、ですわよ……!」

「ふん、謙遜は美徳じゃが、事実を認めるのもまた大切なことじゃぞ?」

 二人がなにを話しているのかはわからないけど、二人の力は拮抗している。
 この場合、ノマちゃんのあの強大な力と張り合っているメメメリ先輩が凄いのか、メメメリ先輩のあの姿と張り合っているノマちゃんが凄いのか。

 二人は押しも押されぬ感じだ。どちらかが少しでも力を抜けば、一気に形勢が傾く。
 身体強化以外に、魔力を回す余裕がないくらいに。

「……! 彼女はあの先輩相手で低一杯だ! 私たちは、私たちにできることを!」

 呆気にとられていたけど、我に返ったコーロランが声を張り上げる。
 王子様ゆえのカリスマ性か、それとも関係なく本人にリーダー性があるのか。

 私たちと試合をした時は、自分の立場への重圧、お兄さんであるゴルさんへの想い、焦りから追い詰められていた。
 でも今は、そんな様子はない。あまり深く考えず、まるで吹っ切れたみたいだ。

 それがいいのか悪いのか……少なくともコーロランにとっては、よかったのだろう。

「俺たちもやるぞ!」

「おぉ!」

 三年生側も声を張り上げる。どちらも、ノマちゃんとメメメリ先輩の戦いに割り込もうとはしない。
 もし割り込めば、それは助太刀ではなく足を引っ張ることになるとわかっているのだ。

「わ、私は……」

「ラッへさんも、わたくしのことはお気になさらず!」

「わ、わかった」

 ラッへの補助程度ならば、ノマちゃんの足を引っ張ることにはならないかもしれない。
 でも、ノマちゃんに気を回せばそれだけ、他のクラスメイトへの注意が向かなくなる。

 ラッへの力……他人の魔力を上昇させるそれは、三年生相手になくてはならないものだ。

「ほほぉ、一人で向かってくるか。なかなかの漢気じゃわい!」

「こんなか弱い乙女を捕まえて、失礼ですわよ!」

「か弱い乙女はこの状態のわしと互角にはやり合えんよ!」

 ノマちゃんは力を受け流し、メメメリ先輩の拳を地面へと誘導する。今まで受け止められていた拳の行き先を変えられ、メメメリ先輩は体勢を崩す。
 その腹部に、ノマちゃんは魔力を込めた拳を打ち付けた。

 ドォン……と、およそお腹を殴ったとは思えないほどの音が響く。爆撃でもあったのかってくらいだ。怖え。

「……んっ、やはりか弱い乙女ではないようじゃのぉ」

「! そんな……」

 だけど、メメメリ先輩は口の端を上げ、にやりと笑った。あの衝撃を受けて、ダメージがないのか?
 この結界の中じゃ一定以上のダメージは無効化される……でもそれは、全てのダメージがなかったことになるわけじゃない。

 たとえば、結界内ダメージの許容量が十なら、十を超える攻撃を受けた時……十二の攻撃なら、十はダメージ受けるけど二は無効化されるってことだ。
 だけど今のメメメリ先輩は……

「それだけ、あの先輩が硬いってことかしらね」

「ノマさん……」

 クレアちゃんもルリーちゃんも、その様子をじっと見ている。

「やっぱり、ただの身体強化魔法ではありませんわね」

「あぁ……まあ、亜人の特異体質とでも思ってくれ。わしはそれに身体強化をかけとるがの」

 ノマちゃんは咄嗟に距離を取りつつ、魔力弾を放つ。
 けれどそのことごとくが、メメメリ先輩の腕によって払われてしまう。

 遠距離からの攻撃が効かないことを判断したノマちゃんは、一旦着地しすぐに踏み出す。踏み出した地面が、少しひび割れていた。

「うりゃああですわ!」

「むん!」

 勢いを乗せたノマちゃんの蹴りが、メメメリ先輩の顔を狙う。それを、顔の前で腕をクロスすることで受け止める。
 攻撃する側と受け止める側……今度は、先ほどと構図が逆になった。
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