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第十四章 他学年試合編
1095話 大金星
しおりを挟む「ふー、ふー……」
もはやノマちゃんは満身創痍。私たちでもそう思うのだから、きっと対峙しているメメメリ先輩もそう感じているはずだ。
とはいえ、メメメリ先輩だってもう限界は近いはずだ。身体の大きさも、もうほぼ元の大きさだ。
じっと二人は睨み合う。お互いに小細工の魔法を使うことはせず、使い魔すら召喚することはなく。
限界まで高めた力を、ぶつけ合う。
お互いにじっと見つめ合い……びゅう、と風が吹いた。
いったい、なにが合図になったのか……二人ともほぼ同時にその場から踏み出し、相手に向かって走り出した。
「うりゃああああああ!!」
「おぉおおおおおおお!!」
もう、残った力をすべて自分の身体に……右拳にだけ込め。
二人がぶつかってしまう寸前。お互いに繰り出した拳が、衝突する。
その衝撃が、会場外にまで伝わる。
「……っ」
周りから驚きの声が聞こえる。私は、声を押し殺してその光景を見ていた。
結界内の攻撃は結界外に出てくることはない。中と外では攻撃も通らないのだ。
ただし、衝撃は別だ。中で起こった衝撃なんかは、関係なく外にも感じる。
そういう使用にしないと、空気の出入りも出来なくなっちゃうからね。
「わぁ、すごぉい」
そして、私とは別にもう一人会場の光景をじっくり見ている子がいた。
フィルちゃんだ。みんなが衝撃の前に目を閉じたりしているのに、フィルちゃんだけはキラキラした目でそれを見ている。
なんて肝の据わった子だろう……とは今更ながら思ってしまう。
そして、長いようで短い衝突が終わりを告げる……果たして、立っているのは……
「……って……」
だけど、私の考えは正解とはならなかった。なぜなら、二人ともが……同時に、倒れてしまったのだから。
ドサッと倒れ、そのまま眠ってしまったかのように動きもしない。
そして、戦闘不能状態と判断され……結界の外に弾き出された。
「試合終了! 結果は、引き分けだ!」
試合終了の合図が響く。
結果は、今言ったように引き分け……それはつまり、どうなるってことだ?
「引き分けの場合は……確か、どちらも勝ち上がりはできないという話でしたわね」
私の疑問に応えてくれるように、カリーナちゃんが話しているのが聞こえた。
引き分けだからどちらも勝ち上がり。とはならないのか。
残念だけど……少なくともノマちゃんたちは、大金星だと思う。
一回戦目では三年生に勝ち、二回戦目では三年生相手に引き分けに持ち込んだんだから。
「すごかったです、ノマさん。それに、ラッヘさんも」
「そうだね」
今回特に印象に残っている二人だな。ラッヘは性格的な意味で。
「……ラッヘさん、記憶が戻ったんでしょうか?」
「……どうだろうね」
ルリーちゃんの考えていることは、私も気になっていることだ。
あの時のラッヘは、以前の……記憶を失う前のラッヘを思わせた。言っちゃあなんだけど、記憶喪失前のラッヘは乱暴だったからね。
多分、久しぶりに性格や魔力が昂ぶったことで、気を失ってしまったんだろう。
目覚めた時、いったいラッヘがどうなっているのか。
「……」
ルリーちゃんにとっては、複雑だろうな。ラッヘの記憶喪失には、ルリーちゃんが大きく関わっているのだから。
魔大陸で、魔力を暴走させてしまったルリーちゃん。ラッヘに彼女を任せたため、私はそこでなにがあったのか見ていない。
だけど、そこで感じた爆発的な魔力。その後二人の所に戻ると、ラッヘは記憶を失っていた。
調べたらそれはおそらく、限界魔力というエルフ特有の技の影響だとわかった。暴走したルリーちゃんを止めるために、自分の魔力を極限まで上昇させるそれを使った。
ただ、使用後は魔力体力ともに限界へ達し、回復まで長い時間を要するらしいんだけど……記憶に影響がある技ではないはずなんだ。
「ラッヘさんの記憶が戻ったら、私、謝りたいです……」
「……うん」
私はそっと、ルリーちゃんの頭を撫でる。
本当は直接撫でたいけど、みんなの前だし……フード越しで我慢だ。
……私が気になるのは、ラッヘ以外にノマちゃんだ。
「あの子、すごかったねー」
「な、三年生相手に大立ち回りじゃん」
周りは、ノマちゃんがただただすごい、という認識だ。そりゃすごいのは確かだけど。
まるで、力に身体がついていっていない。そんな風に感じた。
それに……気になったのは、白くなった髪。
髪の先が、白くなっていたのだ。私は、ちゃんと見た。
あれは、いったい……
「"魔人"、か」
私は、誰にも聞かれないようにつぶやく。
ノマちゃんの今の状態は、"魔人"と呼ばれるものだけど……"魔人"と"最上位種"の魔獣は同じ存在だ。
そして"最上位種"は、白い姿をしている。私は実際に対峙した。
「……あんまり悪いようには考えたくないんだけど」
ただノマちゃんが、自分の魔力と魔石の魔力が混ざり合った結果飛躍的に魔力が上昇した……というのなら、いい。
だけど、もしも……ノマちゃんがいずれ、魔獣みたいな姿になってしまったとしたら。
そんなことは考えたくないんだけど……今まで頭の隅にはあったものだ。
それが、改めて突き付けられた感じだ。
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