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第十四章 他学年試合編
1098話 自分vs自分
しおりを挟む目の前で、魔力が目に見える形になって現れた。
しかも、形作るのは人の形……それも、私がよく知った人物。
というか、私そっくりの姿だった。
「こ、これは……」
まさか、思いもしなかった事態に動きが止まってしまう。
青白く光っている魔力だ、そっくりそのまま私の姿というわけではない。
でも、さっき……
『複製!』
って言ってたよな。ってことは……私の複製体?
まさか外側だけってこともないだろうけど……そもそも魔力の塊で作っているからか、複製の私の魔力がどんなもんなのかいまいちわからないな。
条件は、対象に触れる……ってところか。
「さあ、いきなさい!」
四本腕の先輩は、私を指差す。その指示に従うように、複製の私は私に向かってくる。
ちょうどいいや。相手の力量がどんなものか、確かめさせてもらおうじゃない。
まずは小手調べ……
「うりゃあああ!」
「……!」
右拳に魔力を込め、思い切りぶん殴る。
相手も同じように、私に向かって右拳を繰り出してきた。お互いの拳は衝突し、力は拮抗する。
これは……なるほど、私とまったく同じ力だ。
「おっとと」
しかも、テクニックもある。衝突していた拳、それを受け流して私の体勢を崩した。
その隙を狙い、複製の私は前かがみにふらついた私の顔面に蹴りを放ってくる。
私はとっさに魔力弾を地面に放ち、衝突の際に起こった爆風で上空に飛び回避。
それを追うように、複製の私は上空へと飛び出してきた。
「! 浮遊魔法も使えるのか」
ぴょんぴょんと空中を蹴り、私を追いかけてくる。それを見て私も同じく、浮遊魔法を使う。
空中で足を蹴り、相手の懐へ。繰りだした拳は魔力防壁で防がれ、その場でジャンプ……続けて放った踵落としも魔力の帯びた腕でガードされる。
それどころか足を掴まれ、ぶん投げられてしまう。
「うわわ!」
びゅん、と吹っ飛ばされ、さらには私を追撃するようにいくつもの氷の槍を放ってくる。
それを確認し、私は空中でブレーキをかけながら、炎の壁をイメージ。氷の槍を呑みこんでいく。
「……私と同じ姿、力……それだけじゃなくて、私と似たような考え方をしているんだね」
まったく、驚くべき魔法だ。
相手に触れただけで、その外見や中身……頭の回路までほぼ完ぺきに複製するなんて。
……ただ、それだけ強力な魔法だ。使用条件が難しい、あるいはリスクが大きい。
使用条件が触れるだけ、である以上、可能性は後者……この魔法は、リスクが大きいってことだけど。
「……っ、はぁ、はぁ……」
ちらっと、四本腕の先輩の姿を確認する。
すると、先輩はどっと汗をかいて……まるで全力疾走をした後であるかのように、息切れを起こしていた。
最初の接触以降、特に激しく動いているわけではないのに、どうして……いや……
「そういうこと、なのかな?」
おそらく相手の力を複製することと、術者が疲弊しているのは無関係じゃない。
たとえば、対象の力を使えばそれだけ、術者の魔力や体力も消耗される……みたいな。
複製の私が術者の指示で動いているのか、それともオートで動いているのかわからないけど……
「このまま時間を稼げば、相手は自滅する……か」
私は、自分の魔力に特別な自信を持っているわけじゃない。でも、わりとハチャメチャな使い方をしている自覚はある。
それを、一般的な人間の身体で肩代わりみたいなことをしたらどうなるか。
……長い時間は耐えられなくなり、勝手に倒れてしまうのだろう。
でも、そんなことは相手も承知のはず。なにより……
「それじゃあ、面白くないもんね」
せっかく"自分"と戦えているんだ。こんな面白い機会、時間切れで終わらせてなるものか。
そりゃ、分身魔法を使えば疑似的な自分vs自分を作り出すことはできる。
でも分身魔法の場合は、視界が共有されるから……あっちの目の前には私、こっちの目の前にも私って感じで気持ち悪くなっちゃうんだよな。そもそもオートじゃないし。
だから、こういう機会を逃したくはない。
「こんな機会を設けてくれて、ありがとう四本腕の先輩!」
「それ私のこと!?」
私は空中を蹴り、複製の私へと突撃。複製の私は私を迎えうつ。
そして交わる拳や足。それらの乱打が行ったり来たりだ。
なるほど……ここは、こうなっているのか。
複製の私の思考が私と同じなら、ここでこういう攻撃をされたら私ならどう対応するか……それを相手側の目線から観察できるというのは、実に新鮮だ。
あぁ、防御するのも惜しい! 一発与えれば一発食らい、一発食らえば一発与え。その繰り返し!
「うららららら!」
「……!」
殴った感触も、ちゃんと人を殴った感触だ。すごい、こんな魔法まであるなんて。
それに、こうして交えることで、自分の癖なんかを見ることが出来る。こんないい魔法、最高じゃないか!
もしかして、このクラスは彼女の魔法で自分との特訓をしてきたのかな。あぁ、いいなぁ……私のクラスにも実はこういう魔法使える子いないかな!
もしくは、教えて欲しい! この魔法!
「っ、りゃああああ!!」
「……!!」
私の右拳と、複製の私の右拳が……今度は衝突することなく、お互いのほっぺたに突き刺さった。
さ、さすが私……いい拳、してるじゃないか……!
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