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第十四章 他学年試合編
1132話 人間砲弾
しおりを挟む会場に残ったのは、私とゴルさん。そして離れたところでは、クロガネとサラマンドラが戦っている。
強力な使い魔の戦いは未だ決着はついていないが、疲弊しているのが見て取れる。
そして疲弊しているのは、私たちもだ。
「やはり残ったのは、俺たちか」
「やはり、って予想してたんだ?」
「そうだろうな、とは思っていたのでな」
それだけ、ゴルさんが私を買ってくれているということだ。
ゴルさんとこうして対峙するのは二度目。一度目の決闘の時とは、なにもかもが違う。お互いの力も、考え方も。
私はゴルさんのことを知っているし、ゴルさんだって私のことを知っている。決闘を通じて、そして同じ生徒会で過ごすうちにお互いを知っていった。
そして今こうして、クラス単位の試合で向かい合っている。
なにより……あの頃との一番の違いは、私にはクロガネがいる!
「せっかくだし、最後はド派手にやろうよ」
「……いいだろう」
私たちは、それぞれの使い魔を呼び戻す。
私とクロガネ、ゴルさんとサラマンドラ。それぞれがにらみ合う。
文化祭ではつけられなかった決着を、今ここでつけよう!
「クロガネ!」
「ゴォォオオオ!!」
「ドラ!」
「ジェアアアア!!」
繰り出されるのは、クロガネの竜魔息。対してサラマンドラの炎……両者の、魔術にも匹敵する攻撃がぶつかり合った。
攻撃の衝突は凄まじく、近くにいる私たちはその衝撃をもろに受ける。
押しも押されもしない互いの攻撃……けれど、私もゴルさんもそれをじっと見ていることはしない。
互いに飛び出し、二体の攻撃がぶつかり合うその下で私とゴルさんは拳を繰り出した。
「ぬぅう……!」
「くっ……!」
魔力で強化した拳。これまでにもいろんな相手と拳を打ち合ったりしてきたわけだけど、やっぱりゴルさんのは一味違う。
拳の衝突、その衝撃でも周囲が……大気が揺れる感覚がある。
弾けるように拳を引き、逆の手で再び放つ。それはゴルさんも同じだ。
まるで鏡合わせのように、再び二人の拳がぶつかった。
「相変わらず、凄まじい力だな」
「乙女なんだからもうちょい言葉を選んでよ」
「乙女?」
ゴルさんは私から視線を外さないまま、足払いを仕掛ける。私は飛んでかわすけど、拳を打ち合ったままそんなことをしては体勢が崩れる。
そのせいで拳に向ける力も抜け、ゴルさんの拳にふっ飛ばされてしまう。
ふっ飛ばされ、そのまま背中をなにかに打ち付ける。見上げると、そこにいたのはクロガネだ。
「あたた……ごめんクロガネ、邪魔しちゃった」
『なに、気にすることはない』
背中にぶつかったのは、クロガネの足か。
すでにクロガネは、次の行動に移っていた。私を拾い上げると、その場から飛び上がる。けれど、決して遥か上空へ飛んでいくわけではない。
あくまでも少しの距離を飛び、サラマンドラから距離を取る。そして上空から、再び竜魔息を放った。
サラマンドラもまた、炎を放つ。二つの攻撃は、まったくの互角だ。
「クロガネ、どうする?」
『契約者はなにを狙っているんだ?』
「狙いってほどでもないんだけど……そうだ! クロガネ、私をあっちに向けて思い切りぶん投げてみてくれない?」
『……』
なにを言っているんだこいつは、といった表情をしている。まあ、言いたいことはわかるよ、うん。
「でも、そんな顔しないで。別にトチ狂ったわけじゃないから」
『……聞こうか』
地上からは、サラマンドラが火の玉をいくつも放ってくる。それをクロガネは、翼のはためきで弾き、あるいはかき消し、攻撃が当たらないようにしている。
器用なことだ。
「クロガネの力で思い切りぶん投げてもらえば、それはもうすごい勢いになると思うんだよ! だから、ね?」
『だから……?』
「人間砲弾、みたいな!」
『……』
どうしてだろう、クロガネから呆れたようなため息が聞こえた。というかすごく悲しそうな顔をしている。
やだなぁ、そんな目で私を見ないでよ。
『……まあ、契約者がやれと言うのなら、我はそれに従うが』
呆れた様子で、けれど私のお願いは聞いてくれるクロガネ。
早速私を握りしめたまま振り被り……思い切り腕を振り抜き、ぶん投げた。
向かう先はゴルさんとサラマンドラ。さすがのゴルさんも、面食らった顔をしている。
「なにっ、バカか!?」
「誰がバカじゃい!」
私は人間砲弾となって、突撃する。その際、魔力強化で全身を固く固めるのも忘れない。
見えない鎧を全身に着込んでいるようなものだ。その状態での、この勢いでの突撃……当たればサラマンドラだって無事では済まない。
私は魔導で細かな位置を調整。狙うのはサラマンドラの額!
「いっけぇええええっ……ぇんっ……?」
……だけど、狙っていた額にぶつかる前に異変が起こった。というのも、私の身体がぼよんとなにかにぶつかり……軌道をずらされたのだ。
壁……というよりは、まるでトランポリンみたいな。
つまりは……魔力防壁を超柔らかくして、私の突撃を受け止めるのではなく跳ね返して軌道を変えてしまおうってことだ。
「ぅわー!?」
そのまま私は跳ね返り、来た方向……つまりクロガネがいるところへと向かっていく。
『……なにをやっているんだ』
そして、呆れた様子のクロガネにキャッチされたのだった。
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